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名手達のベストプレイ第5回~ジェフ・ポーカロ

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多くのミュージシャン達に愛されたドラムの神童ことジェフ・ポーカロは、1954年4月1日にコネチカット州ハートフォードで生まれた。
父親がジャズ・ドラマーでパーカッション奏者としても著名なジョー・ポーカロということもあり、7歳から本格的にドラムを習い始める。
17歳になった71年にはジャズ作編曲のジャック・ドーハティの『The Class Of Nineteen Hundred And Seventy One』にレコーディングに参加し、プロドラマーとしてデビューする。翌72年にはソニー&シェールのツアー専属ドラマーとなり、更にシールズ&クロフツの『Diamond Girl』(73年)からシングル・カットされたタイトル曲に参加するなど、プロドラマーとしての活動基盤を築いていくのだ。

また後のプレイ・スタイルに大きな影響を与えたとされるスティーリー・ダンの準メンバーとして参加するのもこの時期で、当時同バンドのギタリストだったデニー・ダイアスの紹介でスタジオに招かれた時、まだ19歳だったというから驚かされる。スティーリーのツアーとレコーディングでのプレイは評判となり、多くのセッションにオファーされるようになる。 
76年には幼馴染みのデビッド・ペイチ(ジェフと同様に父親はジャズ・ミュージシャンで、ピアニスト兼アレンジャーのマーティー・ペイチ)、スティーヴ・ルカサー、それに弟のスティーヴ等とTOTOを結成し、82年の4thアルバム『TOTO IV』はグラミー賞で6冠に輝き成功を得たのは読者もご存じだろう。
その後もTOTOのリーダーとして、また一流のセッション・ドラマーとして活動を続けたが、92年8月5日に悲劇は起こる。ロサンゼルスの自宅のバラ園に農薬を散布後アレルギーで心臓発作を起こし、38歳という若さで急死してしまう。
彼の葬儀にはその人望の厚さを証明するかのように多くのミュージシャンが参列し、棺側葬送者はスティーリーのプロデューサーだったゲイリー・カッツが務め、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーからの弔電も読み上げたという。

ここではそんなジェフ・ポーカロ氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者の内5名がドラマー(経験者含め)であり、その巧みなプレイを詳しく解説してくれた。特にこのシリーズでは初の女性ミュージシャンでドラマーの北山ゆう子氏は、掲載前の最終編集中に急遽ベストプレイを提出してくれた。
全9名分のサブスクリプションの試聴プレイリスト(2時間45分!)を聴きながら読んで欲しい。 
 

   

【ジェフ・ポーカロのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


足立浩(アダチ ヒロシ)】
 Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com
 

●Better Make It Through Today / 大村憲司 
(『Kenji Shock』/ 1978年)
◎アルバム唯一ボーカル曲の幕開けはジェフのビートから。
このテンポでこの強固なグルーヴにまずは驚嘆。
そしてキメへ向かう”タカタドン”(0:51)。最高に気持ち良い。
その後、ギターソロに呼応するように入るタム回し(2:07)と手足コンビネーション(2:14)も聴き所である。
ソロ後には、1拍目にスネア(3:15)を入れることでより場面転換を印象付け、さらにクローズリムショットとスネアの交互打ちで新鮮な空気を呼び込む。
前出のベースのフレーズに乗っかりに行ったような、引っ掛けたスネアに魅力を感じる。(3:29) 

●Sweetest Music / 竹内まりや
(『Miss M』/ 1980年)
◎アルバムの1曲目。カウントが全てと改めて実感させられる。ダンサブルな曲調の中、重心が低くメリハリの効いたドラムでバンドサウンドを鼓舞し牽引する。随所に散りばめられたフィルイン”タカドン”のスピード感。これこそが楽曲の推進力をさらに高めている。シンプルなフレーズだが、ドラムを知れば知るほどジェフの凄さには感嘆するばかり。
唐突なエンディングからのM2「Every Night」への導入がまた何とも心地良い。

●If You Want Me / 河合奈保子
(『Daydream Coast』/ 1984年)
◎イントロの6連フィルから痛快!そのままこれぞ!というサウンドへなだれ込む。シモンズのタムとの融合がもたらす楽曲への影響は絶大。
フィルインはもちろん、リズムパターンへも組み込み、自身のプレイへと昇華させている。マイケル・ランドウの饒舌なギターも必聴だ。

●Love Everlasting / オフ・コース
(『As Close As Possible』/ 1988年)
◎打ち込みのビートと生ドラムの対比が楽しめる1曲。
サビの1小節前から華々しく入り、素晴らしいサウンドで曲にエネルギーを生み出す。打ち込みとの共存にとどまらず相乗効果をもたらしている。素晴らしいアレンジだ。
ジェフは全体を通して大きなグルーヴを作り、1音の大切さをこれでもかと教えてくれるプレイ。説得力しかない! 
エンディングに登場する4拍目のスネア(4:05) 、これには思わず背筋がピンとなる。

●Tema Purissima / 大貫妙子
(『PURISSIMA』/ 1988年)
◎オーケストラアレンジの華やかで壮大な世界観の中、絶妙に溶け込みながら心地良いビートを刻む。 パワフルでタイトに全体を牽引するプレイも素晴らしいが、音楽に寄り添うリラックスした温かいビートもジェフの魅力。改めてドラムアプローチの深さを感じさせてくれる名演だ。
 実父ジョー・ポーカロがパーカッションを担当しており、親子共演も聴き所の一つである。

Sweetest Music / 竹内まりや


【北山ゆう子(lake、キセル、王舟、流線形THE LAKE MATTHEWS etc)】
 

●Keepinʼ It To Myself / Jaye P. Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎元曲AWB版よりもテンポアップして軽快なディスコナンバーに。
でもハイパー過ぎなくって好みのタイプです。

●Hard Times / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 77年) 
◎バックはほぼTOTO。前作よりリズムがたっている印象。 重心が低いのに軽やかなビートは名人芸。

●Come As You Are / Laura Allan
(『Laura Allan』/ 78年)
◎うたに寄り添うコントロールされた演奏。

●All Right / Christopher Cross 
(『Another Page』/ 83年)
◎アルバム中シングル・カットされたこの曲だけ(ジェフ)ポーカロの演奏でした。 シンプルでムダがないですね。
わたしが語ることなんて何もないや。

●The Girl Is Mine / Michael Jackson
 (『Thriller』/ 83年)
◎もう、曲が好き。自然と歌に耳がいってしまう演奏って理想だ。
 

The Girl Is Mine / Michael Jackson 


【小園兼一郎(small garden)】
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 
 

●Black Friday / Steely Dan
 (『Katy Lied』 / 75年)
◎6/8系の小気味良いシャッフルビートが心地良い楽曲だ。開き過ぎない品のあるハイハットがシャープな印象を与えている。ジェフの細かいロールの正確さ、乱れのない打点は非常に気持ちのよい音で、ドラムセットを「叩いている」というよりも「奏でている」と言った方がしっくりくるだろう。当時は20歳くらいだろうか、この若さでの才能の開花はまさに天性のものだ。

●Point it up / Larry Carlton 
(『Larry Carlton』 / 78年) 
◎カールトンのサードアルバムからアップテンポでスリリングな楽曲。 ある意味で音色に特徴のない「耳障りでない」完璧すぎるドラミングこそがジェフ・ポーカロ、その人を指すといっても過言ではないと思う。これほどスリリングな曲でも自分の存在をアピールせずにメインアーティストのサポートに徹するプレイが業界において高評価を得ていることは間違いない。まさに職人ワザの極みではないだろうか。

●Breakin’ Away / Al Jarreau 
(『Breakin’ Away』 / 81年) 
◎要所で細かいアウフタクトが多い曲だがソツなくこなしてしまうジェフには脱帽だ。 ミドルテンポの16thシャッフルビートでの一糸乱れぬ演奏にはドラムロボットのような質感が伴いやすいがその背景には非常に細かい揺らぎが隠れており、それが機械たらし めない「ジェフ・ポーカロのヒューマニズム」が常に存在しているのである。

●蒼夜曲 セレナーデ / 尾崎亜美
(『Hot Baby』 / 81年)
◎尾崎亜美のアルバムよりダイナミックなバラード風楽曲。 恐らく数テイクもかからずに録音を終えているのではないだろうか。楽曲を身につけているという解釈より譜面を初見で間違いなくこなすようなプレイが目立つジェフの演奏は注目さえしなければメインアーティストを引き立てる最良のプレイだとも言える。 しかし、そのソツのない演奏は「絶対で間違いのない演奏」として重宝がられていたことはその圧倒的レコーディング数からも証明出来るのではないだろうか。

●Dear John / Elton John
(『Jump Up!』 / 82年)
◎ストレート8ビートの正統派ロックポップス、そんな副題にピッタリのジェフのプレイは泥臭さが無いところが、エルトン・ジョンのロックテイストをいわゆるアメリカの「ビッグビートロック」ではなく「ブリティッシュロック」に落とし込めている要因の一つになっているはずである。
 
  Breakin’ Away / Al Jarreau 


 【ショック太郎(無果汁団)】
アレンジャー。只今ファースト・アルバムを製作中。学生の頃はドラムもやっていました。
https://twitter.com/shocktarou 
 

●Doctor Wu / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎フィル・ウッズのサックスソロの素晴らしさはもちろん、フェードアウト間近の歌心溢れるジェフのドラムソロも印象的。この曲のサックスとドラムの関係性は、後の「Aja」のウェイン・ショーターとスティーヴ・ガッドを彷彿させます。

●Livin’s Easy / Sanford & Townsend 
(『Duo Glide』/ 77年)
◎Aメロのスネアのパラディドル部分が、なんとなくポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」のガッドのプレイに影響された感も。その曲の8分裏のタンバリンはフット・ハイハットで対応し、これがまた絶妙なカントリーテイストに。

●Goodbye Elenore / TOTO 
(『Turn Back』/ 81年)
◎10代の頃に買った「ジェフ・ポーカロ/ドラム奏法」にも載っていた超難曲。バーナード・パーディーのハーフタイム・シャッフルをストレートなロックサウンドに見事に応用。
コピーは無理でも譜面だけは見て繰り返し聴いていた筆者の思い出の1曲。

●One Step Ahead Of The Bad News / Randy Goodrum
(『Fool’s Paradise』/ 82年)
◎ランディ・グッドラムの名盤ですがジェフのプレイも名演ぞろい。
この曲はソウルフルなミディアム16ビートのノリを残しながらも32ビートの細かい刻みをひたすらキープしていて圧巻。
それでいて、この大らかなグルーヴ感。さすがです。

●Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理 
(『My Heart In Red』/ 89年)
◎ジェフ得意の「ロザーナ」系ビートで、時代が時代だけにスネアの音がデカいですが、この強弱を使い分けながら絶妙にグルーヴするハイハットワークに耳を傾けるべし。デュエットしている男性ボーカルは、何とジョセフ・ウィリアムス本人!
 


Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理 
 


【西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】
集団行動HP https://www.syudan.com/ 
ツイッターアカウント @tikanakangana 
 

●Brother Love's Traveling Salvation Show / Sonny & Cher
(『Mama Was A Rock And Roll Singer Papa Used To Write All Her Songs』/ 73年)
◎発売年からするとレコーディング時はまだ10代ですか。恐ろしい。こんな一面もあったのね…という感じで荒々しく叩きまくっている若き日のジェフを楽しめます。

●Lowdown / Boz Scaggs
 (『Silk Degrees』/ 76年) 
◎この曲のリズム隊の息を呑むクールさよ!2つのドラムトラックが効果的なこちら、イントロのフィル、流れるような16のハットとキック、陶然でございます。

●Thank You For Being A Friend / Andrew Gold
(『All This And Heaven Too』/ 78年) 
◎ピアノポップの名曲。ドラム的には手数も多くなく地味かも知れませんが、歌モノのドラムかくあるべし!という教科書のようなジェフのドラムが流石です。サビのハイハットのオープンクローズとキックのダブルの入れ方が素晴らしいです。

●Lost In Love With You / Leon Ware
(『Leon Ware』/ 82年) 
◎匂い立つ80年代AOR臭のアダルト具合に赤面してしまいそうになるこの曲ですが、恥ずかしがりながら聴き耐えていると02:10〜からの怒涛のキメフレーズでヤッホーイ!とテンションが上がり楽しいです。
「キメフレーズでも過剰なエモさがなく小気味良い」これぞジェフの真骨頂。

●Rosanna / TOTO 
(『TOTO IV』/ 82年) 
◎臆面もなくこちらをチョイス。「簡単そうで実は超えげつない」ドラムでおなじみのこちら、語り尽くされているハーフタイム・シャッフルについてはググって頂くとして、個人的にはサビ前のキメのフィルが超かっこよくて最高です。

Rosanna / TOTO


【洞澤徹(The Bookmarcs)】
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 
 

●Look Who's Lonely / Bill LaBounty 
(『Bill LaBounty』82年)
◎イントロのスネアのフィルから心掴まれます。Bill LaBountyとの相性の良いハネ具 合も気持ちよい。

●That’s Why / Michael McDonald
(『If That’s What It Takes』82年)
◎ポーカロらしい躍動するドラミング。
ハットとバスドラのタイミングが最高に好み。

●Jamaica / Bobby Caldwell 
(『Carry On』82年)
◎TOTOでも聴いたことあるアフロっぽいリズムパターンがとってもポーカロっぽい。

●Stay The Night / Chicago
(『17』84年)
◎加工された、まさに80’のドラムサウンドだけどその迫力がかっこいい。中学生の頃 リピートしまくっていた。

●Running With The Night / Lionel Richie
 (『Can’t Slow Down』84年)
◎ポーカロのドラムの音色と16ビートがライオネル・リッチーの声ととっても相性が良い と思える1曲。
 

Jamaica / Bobby Caldwell


増村和彦(GONNO × MASUMURA etc)】
http://www.ele-king.net/writters/masumura_kazuhiko/
 

●Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan
(『Jaye P.Morgan』 / 76年)
◎デイヴィッド・フォスター初期プロデュースの自主盤中のキラーチューン。
サビで飛び出すスネアと同時に叩くフロアからやって来る推進力が渋い。

●The Devil In You / Ned Doheny 
(『Prone』 / 79年) 
◎何故か当時日本だけでリリースされたらしい3rd。このポーカロのプレイは全部の音に配慮が行き届きすぎていてちょっとこわい…。

●Nice Girl / Eye To Eye
(『Eye To Eye』 / 82年)
◎Julian MarshallとDeborah Bergのユニット。プレイヤーはスティーリー・ダンでお馴染みのメンバー。タイト!

●Take A Good Look Around You / Timothy B.Schmit
(『Timothy B.Schmit』/ 87年)
◎ポコ、イーグルスと渡り歩いたティモシー・シュミットのソロ2枚目。イントロの2拍目のバスドラム、ハイハット、リムショットが、シンプルながら一人三役やっているような印象を与えて気持ちよい。

●Krougnegne / Mory Kanté
(『Touma』/ 90年)
◎ギニアのシンガー。ジェフ自らプログラミングしたというビートは、やはりジェフらしく端正で、クラブ・ミュージックにも通じそうだ。1:38〜間奏のコラはフランスのfolamourみたいだ。
 

Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan


【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】 http://blog.livedoor.jp/soulbass77/ 
 

 ●Directions And Connections / Tom Jans 
(『The Eyes of an Only Child』/ 1975年)
いくつか残されているジム・ケルトナーとのツインドラム。圧倒的な個性のケルトナー、その影響下にあるポーカロも個性が確立され、素晴らしいアンサンブルに。

●It's So Real / Originals
(『Communique』/ 1976年) 
◎御大ジェイムス・ジェマーソンとの貴重なコンビネーションでシンプルなソウルミュージックを。ハイハットの引っ掻け方、後半のキメに対するアプローチなど、しっかりと斬新で最高。

●Slowdown / Paul Anka
(『The Music Man』/ 1977年) 
◎クロスオーバー~フュージョン風にウネるパターンを、1音の淀みも無く太い音色で。マシーンのようにジャストなビートは、ハードロックまでカバーするポーカロの面目躍如。

●Whatcha Gonna Tell Your Man / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 1977年) 
◎歌い出し直前のサァァァというスネアだけでもう痺れる。フィリーソウルの黄金パターンをポーカロ流に仕上げた1曲。その熱量故に珍しく荒いが、それも含めて完璧なソウルミュージック。

●What I My Doing Wrong / Waters
 (『The Waters』/ 1977年)
◎個人的に思うポーカロの最高傑作がこれ。BPM84、沈むようなフロアに、軽く舞うようなスネア。スロウでも強靭なグルーヴと深い音色は変わらない。マイケル・オマーティアンも流石のセンス。
 
Slowdown / Paul Anka 


 【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】 
●Your Gold Teeth II / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎前作『Pretzel Logic』(74年)から更にスタジオ・ラボ化が進んだ4作目の収録曲。ジェフの神童振りが発揮されたハチロクのビパップ・ビートを基調に3/8、9/8の変拍子パートを加えたジャズ・ロック。
2000年のリユニオン以前の中期スティーリー・ダンのイメージはこの曲に代表される独自性が大きいと思う。

●Let's Get Together / Jaye P Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎Dフォスター最初期プロデュースの自主製作盤だがレアグルーヴ・ブームによって後年リイシューされたことでも知られる。DハンゲイトとSルカサーも参加したこの曲でのプレイはTOTO結成前夜の名演の一つに数えられるだろう。
繊細な16分のハイハットとタイトなスネアのコントラスト、ロータムのバックビートのタメの利いたグルーヴも最高だ。

●Zorro Rides Again / Les Dudek
(『Say No More』/ 77年)
◎ジェフといえばボズ・スキャッグス作品での名演が多いが、バンド・ギタリストだったレス・デューデックのセカンドからこのインスト大作を。新主流派以降のジャズ界きっての名ドラマー、トニー・ウィリアムスとのツインドラムは同時録音らしく、刺激を受けて徐々に白熱していくジェフのプレイは聴き応えがある。
トニーは右ch、ジェフは左chなので各名手のプレイを聴き比べることをお勧めする。

●Room To Grow / Brian Elliot
『Brian Elliot』/ 78年)
◎知る人ぞ知るシンガーソングライターの隠れた名盤より。素早いタムのフィルから始まるジェフのプレイはDハンゲイトのベースとのコンビネーションで良質なミッドテンポ・グルーヴを醸し出している。ハンゲイトのスラップとダブル・ストップ、ギターのJグレイドンの例のチョーキングなどが乱舞するアクセントに呼応するジェフの多彩なプレイも聴きものだ。

●Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross
(7”『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』/ 81年)
◎アカデミー歌曲賞を受賞した映画『Arthur(ミスター・アーサー)』のタイトル・テーマ曲。シンガーソングライターのクリストファー・クロスの他BバカラックとCBセイガー、Pアレンの共作でマイケル・オマーティアンのアレンジによるミディアム・テンポのバラード。
ドラムキットでピアニシモからフォルテシモを演出する歌伴の理想型がここにある。
 
Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross 


(企画 / 編集:ウチタカヒデ)


connie:『VOICES』(Fall Wait Records/FAWA-0001)

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新潟在住のアイドル・ユニットNegicco(ネギッコ)のプロデュースの他、他アイドルへの楽曲提供などをしているクリエイターのconnie(コニー)が初のソロ・ミニアルバム『VOICES』を8月21日にリリースした。
全5曲に各ゲスト・ヴォーカルを迎えて制作されており、6月に『夜霧』をリリースしたばかりのウワノソラのいえもとめぐみをはじめ、女優兼歌手の遠藤瑠香、CRCK/LCKやceroのサポート・メンバーとして知られる小田朋美、謎の音楽ユニット“さよならポニーテール”のみぃな、KIRINJIのメンバーやギタリストとしても多くのセッションに参加している弓木英梨乃を迎えている。
実にバラエティに飛んだ人選なのだが、曲毎にマッチするヴォーカリストを適切にアサインしているプロデュース力には敬服してしまった。

筆者が2016年5月に弊サイトでNegiccoのサード・アルバム『ティー・フォー・スリー』(TPRC-0159)を取り上げた際も感じたのだが、楽曲提供とプロデューサーも務めこのユニットを支えているのが、畑違いの業界でサラリーマンをしている彼ということで非常に驚いた。
これまでにNegiccoには、小西康陽やORIGINAL LOVEの田島貴男といったポップス・マエストロ達が楽曲提供をしてきたが、その楽曲にも引けを取らないクオリティーが彼の才能を証明している。

ここではWebVANDA読者をはじめとする音楽マニアにもお勧め出来る、このアルバム収録曲から筆者が気になった主要曲を解説していこう。

   connie「グリッター」feat.小田朋美

冒頭の「グリッター」はアタックの強いシンセ・パッドのリフと目映い変拍子が特徴的なダンス・ミュージックで、歌入れが非常に難しいトラックではないかと思うが、確かなスキルを備えた小田朋美の類い希なヴォーカル・テクニックでそれをクリアしている。
続く「月夜の森で」はニュージャックスイング期のR&Bを彷彿とさせるトラックと弓木英梨乃の無垢な歌声のコントラストがやみつきになり、KIRINJIの「Mr.BOOGIEMAN」(『ネオ』収録 16年)にも通じるセンスに脱帽してしまった。

そして筆者がこのアルバムで最もリピートして聴いたのは「赤い涙」だ。リズム・セクションの中でアコースティック・ピアノとウーリッツァーがブレンドして主リズムを刻んでいて、テンションで鳴っているハモンド・オルガンやコーラス・アレンジの構造から東海岸のソウル・ミュージックに影響されたシンガー・ソングライター系の曲調とアレンジである。 更にいえもとめぐみの表現力あるヴォーカルはこの曲に普遍的な存在感を与えており、直ぐに風化することはないと保証するので、良識ある音楽ファンは聴くことを強くお勧めする。
筆者の本年度のベストソング10曲に確実に入る名曲であり、こういう曲との出会いは人生においても大切であると感じるばかりだ。
(ウチタカヒデ)


【ガレージバンドの探索・第六回】 We The People

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前回、サザンロックバンドCowboyについての記事を書く為にメンバーのTommy Taltonの経歴を調べていたら、Cowboy結成前にはガレージバンドをやっていたと知って少し驚いた。
1965年から1968年まで、We The Peopleという、フロリダ州オーランドのガレージバンドに所属していた。
地元紙Orlando Sentinel のライターRon Dillmanが最強のガレージバンドを作ろうと、人気のあったローカルグループThe TrademarksのメンバーとThe Offbeets(以前はThe Nonchalantsとして知られていた)のメンバーを集めて構成したのがWe The Peopleだったそうだ。彼らの楽曲はNuggetsやPebblesなど数多くのガレージコンピにも収録されている。 



【メンバー】
Randy Boyte - Organ (1966–1970)
David Duff - Bass (1966–1970) 
Tommy Talton - Guitar (1966–1968)
Wayne Proctor - Lead guitar (1966–1967) 
Tom Wynn - Drums (1966)
Lee Ferguson - Drums (1966–1967) 
Terry Cox - Drums (1967–1970) 
Carl Chambers - Guitar (1968–1969)
Skip Skinner - Guitar (1969–1970)  

We The People の最初のリリースは1966年初頭。
Ron Dillmanがバンドのマネージャーとなって地元のレコードレーベルHotlineから、「My Brother, the Man」(B面「Proceed With Caution」)【 Hotline Records-3680】をリリースした。
地元でトップ10ヒットとなり、それはChallenge Recordsとのレコーディング契約につながった。 そして1966年6月、Tony Moonプロデュースでセカンドシングル「Mirror of Your Mind」(B面「The Color of Love」)【Challenge-59333】をリリース。全国チャートには到達しなかったものの、全米の多くの地域、特にナッシュビルとオーランドで地域的な大ヒットとなった。この曲は後に多くのコンピに収録された。



Mirror of Your Mind / We The People 

1966年9月には「He Doesn't Go About It Right」(B面「You Burn Me Up And Down」)【Challenge-59340】をリリース。B面曲だった「You Burn Me Up And Down」は、「Mirror Of Your Mind」と同様多くのコンピに収録された為、バンドの代表曲のひとつになっている。
最初は、この2曲のように荒々しいサウンドのバンドイメージが強かったようだけれど、We The Peopleが制作した楽曲はとても多彩。
Wayne Proctor とTommy Taltonの2人は特にバンドにとって重要なソングライターだったようだ。
「Mirror of Your Mind」のB面「The Color of Love」はバラード曲で、これはボサノヴァ曲「The Girl From Ipanema」の影響を受けて書かれたらしい。 4番目のシングル「In the Past」(B面「St. John's Shop」)【Challenge-59351】は、1966年後半にリリースされた。サイケデリックな曲で、シタールの代わりに使用したのが、友人の祖父によって作られた"octachord"という大きなマンドリンのような、8弦の楽器だった。
「In the Past」をA面としてリリースするも、地元のラジオ局はサイケデリックなサウンドよりソフトなB面の「St. John's Shop」を好んだらしく、「St. John's Shop」がオーランドチャートで2位になった。
「In the Past」は、1968年にThe Chocolate Watchbandのセカンドアルバム『The Inner Mystique』【Tower ‎– ST 5106】でカバーされている。


In the Past / We The People  

1967年初頭、ソングライター兼リードギタリストのWayne Proctorがベトナム戦争の徴兵を避けるためにバンドを辞め大学に戻った。
それはバンドにとって大きなダメージとなったけれど、その後も1967年、1968年を通じてRCAレコードから3枚のシングルをリリースしている。 「Follow Me Back To Louisville」(B面「Flourescent Hearts」)【RCA Victor ‎– 47-9292】 「Love Is A Beautiful Thing」(B面「The Day She Dies」)【RCA Victor ‎– 47-9393】 「Ain't Gonna Find Nobody (Better Than You)」(B面「When I Arrive」)【RCA Victor ‎– 47-9498】 1968年半ばにTommy Taltonが脱退。RCAとの契約満了も相まって、バンドのレコーディングキャリアは事実上終了し、1969年10月31日のハロウィンコンサートの後、Ron Dillmanがグループを解散することを決定した。
Wayne Proctor はバンドを去った後、The Lemonade Charadeに「Follow the Yellow Brick Road」を書きマイナーヒットした。現在はサウスカロライナ州のローカルバンドで演奏している。
Tommy Taltonは、冒頭にも書いた通りサザンロックバンドのCowboyとして活動した。

We The Peopleの楽曲は多くのガレージコンピで聴けるけれど、1998年にSundazedから出ている2枚組CDの『Mirror of Our Minds』(Sundazed SC 11056)では、未発表のトラック、デモ、代替テイクや、The Trademarks、The Offbeetsなどの関連音源も含む、We The Peopleの歴史全体の音源がまとめられている。



【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)/編集:ウチタカヒデ】 

参考・参照サイト: http://therockasteria.blogspot.com/2017/04/we-people-mirror-of-our-minds-1964-67.html 

FMおおつ 音楽の館/Music Note 2019年8月号

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私の番組「音楽の館/Music Note 8月号」の「Waterboysサントラ特集」について、遅ればせにはなってしまったが報告さていただく。この『ウォーターボーイズ』は2001年に映画化されて話題になった“男のシンクロ”で、映画のヒットを受けて2003~2005年にかけてテレビ・ドラマ化され、計4シリーズが制作されている。

今回の特集では、この4作品のシンクロ演技で使用されたナンバーで構成している。さらに「衝撃のアノ人!その後を追跡」(NTV)なる番組で、「ウォーターボーイズのモデル、知らざれる苦労、高校生の今」というタイトルで放映された2004年9月に川越高校でシンクロ・チームのダンスの振付を担当した柴田周平君の選曲も加えた。

 
彼は、当日押し掛けた1万人以上の観客から大喝采を浴びるも「やりきり症候群」となり、大学受験に失敗。その後二浪して大学進学した彼は、映画研究会に入部する。そこで「エコーズ」なる作品で役者デビュー。その作品は「東京学生映画祭」で準グランプリを受賞し、演技に開眼する。現在は映画で知り合った女性と結婚し、サラリーマン兼舞台俳優として活動しているという概要だった。


  その2004年文化祭でシンクロ演技に使われた曲解説する。Bill Haley & The Comets<ロック・アラウンド・ザ・クロック(We're Gonna Rock Around The Clock)>、発表されたのは1954年で、翌1955年にMGM映画『暴力教室』のオープニングに採用され8週連続全米1位を記録したロックンロール創世記を代表する1曲。

 
次は大塚愛さんの<さくらんぼ>。この曲は2003年12月リリースの2曲目で代表曲、翌2004年の第55回紅白歌合戦に初選出されている。なお彼女の近況は2019.2.1.のミュージック・ステーション3時間スペシャルLIVE・テレ朝開局60周年や、Rock In Japan 2019.8.12.のステージでもこの曲を披露している。

 
そしてユーミン<真夏の夜の夢>、この曲は1993年に発表された佐野史郎さんの怪演が評判となった『誰にも言えない』の主題歌。この番組は1992年に大ヒットした『ずっとあなたが好きだった』の続編的なドラマで、共演者は野際陽子さん・賀来千香子さん。この曲は彼女にとって<あの日に帰りたい>に続く2曲目のNo.1ヒットだった。


 
ここで、「男のシンクロ」について簡単に紹介する。モデルは男子高校の埼玉県立/川越高校の水泳部が1988年から実施の文化祭用の演目だった。その後、1999年に『ニュースステーション』で放送され、その特集を見た矢口史靖監督によって2001年に映画化に至る。


 その第一作となったのが『ウォーターボーイズ』(カタカナ表記)、この言葉自体は映画プロデューサーが作った造語で、正式名称ではない。この作品は少数館の上映だったが、評判をよび上映館が100館まで増え、上映期間は半年を越える大ヒット作となっている。この現象はシネマコンプレックス(シネコン)普及と重なり、2000年以降の邦画復活の起爆剤になったとも言われる。この映画の大ヒットで、モデルとなった川越高校の2002年文化祭には約3万人の入場者を記録した。



 なおこの作品で主役の鈴木智役を務めた妻夫木聡さんと、準主役の佐藤役の玉木宏さんは、当時はまだ無名の若手俳優だった。彼らの起用は映画を制作に一か月以上前からシンクロの練習をする必要があり、二か月以上スケジュールの空いていた著名俳優がいなかったという事情による。なおストーリーは廃部寸前の唯野高校水泳部の顧問に真鍋かおりさん扮する美人教師が顧問に着任し、シンクロナイズドスイミングを教え、紆余曲折を経て公演を成功させるといったもの。



  
ではこの映画の演技シーンで使用された曲を紹介する。まずSylvie Vartanの<あなたのとりこ(Irresistiblement)>、彼女はフレンチ・ポップスのスーパー・スターで、本国で1968年に発表した代表曲のひとつ。おりしも1968.4.11.(23歳)自動車事故からの復帰作だった。日本では1969.1.に 16作として発表されるも不発で、1970.11.5.に21作で再発され大ヒット(Jp.18位  11.8万枚)。なお余談ながら、ウルトラマンに登場するバルタン星人は彼女から付けられたというのはかなり有名なエピソードだ。

 日本の夏の風物詩のひとつとなったThe Venturesの<Diamond Head>。全米でのリリースは1965年で70位程度だったが、日本では最も人気のあるナンバー。作曲者のDanny Hamiltonは、1971年にHamilton, Joe Frank & Reynoldsを結成して<恋のかけひき(Don’t Pull Your Love)>を大ヒットさせ、1975年にはPlayboyに移籍し<Fall in Love>で全米1位を獲得している。

 3曲目はPuffy<愛のしるし>、1998.3.14.に発表された 6枚目のシングル。この曲の作者はスピッツの草野正宗さん、アレンジは奥田民生さんだった。エンディングにBay City Rollers<Satuday Night>のフレーズを拝借するという民生風隠し味が付いている。そのスピッツの最新シングル<優しいあの子>は現在放映中のNHK連ドラ『なつぞら』の主題歌になっている。

 
4曲目は青江三奈さん<伊勢佐木町ブルース>、1968.1.5に発表された彼女の代表曲で、1960年代の演歌を代表する1曲。彼女はこの曲で『第19回NHK紅白歌合戦』に出場するも、イントロの“吐息”に「Stop」がかかり、カズーに差替えられてる。なお彼女がこの曲を歌ったのは27歳で、先日元AKBの大島優子が30歳になったと聞き、その貫禄には驚きだ。
 そして最後のフィンガー・ファイブの<学園天国>、全盛期1974年の第5作シングル。この曲は後にキョンキョンのカヴァーで1989年にも大ヒット、ちなみに彼女版のバックは野村義男率いる「三喜屋・野村モーター’s BAND」。



 続いては2003年7.1.から始まったテレビ版『WATER BOYS』(CX系)。この作品は映画版から2年後の同じ唯野高校水泳部が舞台で、二代目主人公新藤勘九郎役には山田孝之さん、そしてその相棒立松憲男役には森山未來さん。山田さんは「ちゅらさん」出演後のひ弱な感じで、その後の『闇金ウシジマくん』(2012年~)の強面雰囲気は微塵の欠片も感じられない。そして森山さんも『世界の中心で、愛を叫ぶ』(2004年)で大ブレイクする直前だった。


 このテレビ版のシンクロ演技シーンに使われた曲から、Dick Dale & His Deltones<MISIRLOU>。この曲は1962年のヒットだが、有名にしたのは1994年に公開されたクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』への起用。なおこの作品はジョン・トラボルタがダークな役を演じた作品としても有名だ。

 2曲目は山本リンダさんで<狙いうち>、1973.2.25.に発表された 23th Singleで 14位止まりだが、リンダさんの大胆な振り付けで子供たちにもオオウケ、さくらももこさんは「ちびまるこちゃん」に度々登場させている。なお今では「応援ソング」の定番で、甲子園でも頻繁に演奏され続けている。
 3曲目のThe Rubettes<Sugar Baby Love>、1974.1. に発表された彼らのデビュー曲で全英4週1位、欧州各国でも1位という大ヒット、全世界で800万枚以上セール。この曲はスタジオ・ミュージシャンによる製作からグループが結成されているも、発売前にヴォーカリストが脱退し、ヒットした時点では別のメンバーだった。
 
 4曲目は松浦亜弥さん<♡桃色片想い♡>、2002.2.6.にリリースした第5作で2位を記録、この時期はあややの全盛期で曲が選ばれたのは当然の成行きだった。
 そして5曲目のMichel Polnareffで<シェリーに口づけ(Tout, Tout Pour Ma Cherie)>、この曲は本国フランスで1969.5.に<追わないで(後に、「渚の想い出」と改題)>のB面曲でリリース。日本では1969.9. にCBS/Sonyからフランス同様B面扱いで<可愛いシェリーのために>のタイトルで発売された。その後1971年にCBS/Sony がEpicレーベルをスタートした際に <シェリーに口づけ>として発売し大ヒット。当時のPolnareff人気は青森で「来日要請署名」活動が起こったほどだった。




 次は2004.7.6.から始まった『WATER BOYS 2』(CX系)、名目上前作の続編だが、前作と直接的なかかわりはほとんどなかった。舞台は3年前まで女子高で、9割以上が女子生徒の姫乃高校。そこには男子の運動部がなく、「シンクロ部」創設しようという活動が始まり。三代目主人公水嶋泳吉役には市原隼人さん、そしてその相棒山本洋介役には中尾明慶さん。市原さんは2009年の『ROOKIES』『猿ロック』でブレイク、中尾さんと言えば奥様が仲里依紗さんで、タレント以外に2016年には小説家としても活動している。なおヒロイン矢沢栞役には石原さとみさんが起用された。



 ではこの作品のシンクロ演技シーンに使われた曲から、まず布袋寅泰さんで<バンビーナ>、彼は元BOOWYのギタリストで、吉川晃司と組んだCOMPLEXでもお馴染み。彼が1999.4.16.にリリースした 18作で 2位を記録した大ヒット曲。
 続いて<Mickey>、番組ではB*Witchedのヴァージョンだったが、一般には全米1位のTony Bazil版が有名。彼女は振付師で、その振り付けしたこの曲は“世界で最も有名なチアリーディング曲”になっている。また日本では『ワンナイR&R』(CX系)でゴリ(ガレッジセール)扮する松浦ゴリエのパフォーマンスでも大ブレイク。

 
3曲目は松谷祐子さんの<ラムのラブソング>、アニメ「うる星やつら」の主題歌だが、もはやアニソンの域を超えた名曲。なおアニメ放映期間は4年半にもおよび、劇場版も6本という大ヒット作で、関連商品の売り上げも100億円を超え。原作は「犬夜叉」でも有名な高橋留美子先生で、故佐野へさん同様に私も彼女の生みだす“想像を超えたナンセンス”の大ファンだ。
 ラストはDuran Duranで<The Reflex>1、980年代に一世を風靡したニューロマンティックの代表的グループ。この曲は世界中で1位を獲得した彼らの代表曲。そんな彼らの人気は日本でも絶大で、1982年から2017年まで10回を数える。


 そして最後に『WATER BOYS 2005夏』(CX系)、この作品は二夜連続作で、シリーズの完結作にもなっていた。



 このドラマの舞台は架空の島で、東京の大学生になった元・唯野高校シンクロ部員の田中晶俊が、島の夏祭りイベントで「シンクロ公演」を成功させるもの。四代目主人公田中晶俊役には瑛太さん、そしてその相棒上原賢作役には小出恵介さん。なおヒロイン垣原玲奈には2007年にL’Arc~en~Cielのベーシストtetsuyaさんと結婚した酒井彩名さんを起用。

 
ではこの作品のシンクロ演技シーンに使われた曲から、まず野際陽子さん<非情のライセンス>。この曲は人気TV.ドラマ『キーハンター』のテーマ。当時の彼女はハイセンスな大人の女性の代表的存在。現在は1992年の『ずっとあなたが好きだった』の冬彦さんの母親、桂田悦子、1994年『ガラスの仮面』の月影先生役のほうが馴染み深いかと。
 Starship<シスコはロック・シティ(We Built This City)>、1960年代にデビューしたサンフランシスコを代表するバンドJefferson Starship初の全米1位曲。バンドは結成以来、数々のメンバー・チェンジを経て1985年にバンド名をStarshipに変更、その後の大ヒット。また翌年には、映画『マネキン』の主題歌<愛は止まらない(Nothing’s Gonna Stop Us Now)>も全米1位を記録。

 またまた登場、あややの<ね~え?>。この曲は2003.3.12.発表の第 9作で最高位3位、不思議なことに彼女には1位曲が無く、“シルバー・ホールダー”のアイドルといえる。なおこのタイトルは他にもドリカム(2010.6.30.46th)やPerfume(201011/10.12th)のヒット曲にもあり、人気タイトルだった。
  “ゴッドねぇちゃん”和田アキ子さんで<古い日記>、この曲は1974.2.25.リリースの第 18作で最高位44位止まり。ただ曲中の印象的なシャウト「はぁ!」は彼女のトレードマークになっている。今回は2013.6.12にリリースされた『AKIKO WADA 45TH ANNIVERSARY ESSENTIAL COLLECTION』に収録された(Dynamite Soul Mix)。
 そしてOlivia Newton-John と ELOの夢の共演で<Xanadu>、これはOlivia主演の同名ミュージカル映画の主題歌。映画はコケたものの、曲は全米8位全英をはじめ世界5か国で1位に輝いた大ヒット曲。

<オンエア曲>
1. ロック・アラウンド・ザ・クロック(We're Gonna Rock Around The Clock)
  /Bill Haley & The Comets
2.さくらんぼ /大塚愛
3.真夏の夜の夢 /松任谷由実
 ~20190年「ウォーターボーイズのモデル、知らざれる苦労、高校生の今」

4.あなたのとりこ /Sylvie Vartan
5. Diamond Head  /The Ventures
6.愛のしるし /Puffy
7.伊勢佐木町ブルース /青江三奈
8.学園天国 /フィンガーファイブ
  ~映画『ウォーターボーイズ』

9. MISIRLOU /Dick Dale & His Deltones
10.狙いうち/山本リンダ
11.Sugar Baby Love /The Rubettes
12.♡桃色片想い♡/松浦亜弥
13.シェリーに口づけ/ Michel Polnareff
  ~2003年テレビ『WATER BOYS』

14.バンビーナ/布袋寅泰
15.Mickey/Tony Bazil
16.ラムのラブソング/松谷祐子
17.The Reflex/ Duran Duran
  ~2004年テレビ『WATER BOYS 2』

18.非情のライセンス/野際陽子
19.シスコはロック・シティ(We Built This City)/ Starship
20.ね~え?/松浦亜弥
21.古い日記(Dynamite Soul Mix)/和田アキ子
22.Xanadu/ Olivia Newton-John & ELO
  ~2005年テレビ『WATER BOYS 2005夏』

次回9月号は「9月&秋ソング特集」をお届けする予定です。

本放送:第四土曜日9/28(土)15:30~18:00
再放送:第四日曜日9/29(日)8:00~10:30

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/


                          (鈴木英之)

George Falkner:『Murry Christmas!/ George Faulkner sings Murry Wilson』(Bolt Records)

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2018年1月24日付けの記事で紹介させていただいたThe Bachelorsによる「Happy, Happy Holiday」(Wilson兄弟の実父Murryの作)をなんと60年以上の時を超えてカバーした強者がいた! 
当方も制作にささやかながら協力させていただいた関係でリリース前のプロモキットの送付が先日あった。
当の本人George Faulknerは過去にもThe Beach Boys関連のカバー作(と、言っても知名度の低い楽曲ばかり)のリリースを行っている。 

◎Mike Loveの「Wrinkles」
 (1970年代に未発表となったアルバム『Country Love』より)
◎Dennis Wilsonによる「Under The Moonlight」
 (ソロ作『Pacific 年Ocean Blue』(77年)に続く『Bambu』(77年~83年録音、2017年リリース)収録曲) 

そしてMurry Wilson作の「Two Step,Side Step」(それぞれ、2015,2016リリース) 本作は今年の6月にGeorgeからカバー曲制作に基づく形で、当方へ原盤の音源提供の依頼があり、それに応じて音源の提供を行った。
提供した音源から「Happy, Happy Holiday」とそしてもう一曲同じくThe Bachelorsによる「Te-e-e-e-ex-as」の二曲が本作に収められている。 しかしながら、本作の「Happy,Happy Holiday」の演奏は原曲の100%再現というわけではなく、原曲がポルカ風なのに対して、sunshine-pop風の曲想を基本に1970年代中葉の『Christmas Album』 や『M.I.U』あたりのトラックにシンセがからむポップな曲調に生まれ変わっている。
二曲目の「Te-e-e-e-ex-as」についてはペダルスティールやマンドリンにギターを重ねた丁寧な演奏になっており、中西部出自であるWilson一族への敬愛が演奏にうかがわれる。

本作の制作にあたっては主にNew YorkのAlternative関連の人脈が関わっている。一曲目のプロデュースはTony Maimone、Pere UbuやThey Might Be Giantsのメンバーであり、Hüsker DüメンバーBob Mouldのアルバムなどを手がけている。アレンジはJoe Mcginity、Psychedelic FursのキーボーディストにしてThe Ramones、Ronnie Spectorとの共演も行っている。
演奏で参加しているのはJoe率いるLosers Lounge、カバー曲主体のプロジェクトでABBAからThe Zomebiesまで幅広くカバーし、しかも大ヒットもあればほとんど知られていない曲まで演奏し長年好評を博している。
参加メンバーは豪華で、Paul Williams、Foetus、They Might Be Giants、Debbie Harryと多彩だ。
また、ジャケットのイラストは米国の漫画の賞で有名なHarvey Award  1991年受賞者であるPeter Bagge。短期間とはいえ、手間暇がかなりかかっている良作である。

George自信も長年Murry Wilson作品の探求に勤しみ、これまで五十曲以上の存在を確認しており、新たな楽曲発見を夢見ている。
公式サイトBOLT RECORDS(https://boltrecords.net/)では試聴できないが、正式リリースは11月8日を予定しており、CDとアナログ・7インチ(45rpm)、 配信(Apple Music, Spotify, Google Play)の形態で入手可能とのこと。



【text by MaskedFlopper/編集:ウチタカヒデ】


the Sweet Onions:『夏のシンフォニー』/ KNIT RED RUM:『SUNSET』

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The Bookmarcs(ブックマークス)の作詞兼ヴォーカリストの近藤健太郎がリーダーとして率いるポップス・バンド、the Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)が、2006年4月のセカンド・アルバム『Life is Beautiful』(PHA-11)以来、実に13年振りの新曲「夏のシンフォニー」を9月25日に配信リリースした。


スウィート・オニオンズは98年に結成された男性3人組のバンドで、現在はヴォーカル兼ギターの近藤とドラムやキーボードなどマルチプレイヤーの高口大輔の2人を中心に活動している。04年のファースト・アルバム『pictures』(PHA-10)の頃から弊サイトでは高く評価しており、その親しみやすい甘いメロディと近藤のソフティーなヴォーカルが魅力なのだ。
彼等はインディーズ・レーベルphilia records(フィリア・レコード)を主宰しており、近年では女性シンガー・ソングライターの小林しのの『Looking for a key』(PHA-13)を全面プロデュース、リリースしておりその活動は多岐に渡る。



今回「夏のシンフォニー」と同日に配信リリースしたのが、今年5月よりフィリア・レコードに参加したシンガー・ソングライター刈間哲司によるソロ・プロジェクトKNIT RED RUMのセカンド・シングル「SUNSET」である。
ファースト・シングル「TWILIGHT RAIN」からプロデューサーとして関わっているのは、刈間と旧知の間柄であるオニオンズの高口で、アレンジやエンジニアリングまで手掛けている。


苅間のプロフィールにも触れておくが、二十代の頃に所属バンド解散後にソロに転身し、シンガー・ソングライターとしてライヴ活動をおこなうようになり、この時期高口と知り合ったようだ。平行してエレクトロ・ミュージックにも興味も持っており、クラブ・ハウス・ミュージシャンのPAX JAPONICA GROOVE(パックス・ジャポニカ・グルーブ)のアルバムではヴォーカリストとして参加している。二十代後半になるとロン・セクスミスなどのシンガー・ソングライターに影響を受け、現在のスタイルに至っている。

ではこの2曲について解説しよう。 
オニオンズの「夏のシンフォニー」は、近藤のソングライティングによるエイト・ビートのサマー・アンセムで、コーラス・ワークにはビーチボーイズの匂いがする。ピアノとハモンド・オルガンは高口がプレイし、ベースはRicaropeなどのプロデュースやthe Carawayのサポートで知られる及川雅仁がゲストで招かれている。コーダでワルツのパートになるなどアレンジのアイディアも面白い。

KNIT RED RUMの「SUNSET」は、ファースト・シングル同様に80年代シティポップ・サウンドに通じており、ホーンやストリング・シンセの配置など高口のアレンジ・センスが光っている。
06年のコンピ・アルバム『Easy Living Vol.1』に収録されたオニオンズの「The fancies of a poet」にも通じるサウンドで好感がもてる。
刈間の声質には暑苦しくないソウルさを感じており、オリジナル・ラヴ(田島貴男)のファンにもお勧め出来る。

配信リンク(amazonは下記画像からリンク)
the Sweet Onions:『夏のシンフォニー』
Apple Music  Spotify 

KNIT RED RUM:『SUNSET』

Apple Music(リンク先後報) Spotify

(text:ウチタカヒデ)


FMおおつ 音楽の館/Music Note 2019年9月号「9月&秋歌特集」

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今回のトップはEarth,Wind & Fire の<September>。この曲は彼らの全盛期にあたる197811月のリリースで全米8位・R&B.チャートでは見事1位に輝き、翌1979年にはこの曲をひっさげ初来日している。この曲はアンコールで足を上げて踊りまくるエキサイティングながらも一糸乱れない完璧なパフォーマンスを展開した。現在はその精神的支柱ともいえるリーダーのモーリス・ホワイトを2015年に失うも、弟のヴァーダインやリード・シンガーのフィリップ・ベイリーを中心に活動を。2017年にはジャパン・ツアーを敢行、また当時の主力メンバーのひとりギタリストのアル・マッケイも今年2月にオールスターズを率いて来日公演を行っている。




続いては化粧品メーカーの「秋」CMソング。「1981年カネボウ秋のキャンペーン」からザ・ヴィーナス<キッスは目にして>。彼らは80年に結成(改名)した50’sのアメリカン・オールディーズが売りのバンド、この曲はベートーヴェンの<エリーゼのために>をリ・アレンジした曲で4位の大ヒット。リード・ヴォーカルのコニーさんは、その昔キャンディーズの結成メンバー候補だった。
2曲目は「1982年カネボウ秋のキャンペーン」の一風堂<すみれSeptember Love>で2位のヒット。一風堂は元大橋純子&美乃屋セントラルステーションのギタリスト土屋昌己さんが、ミックこと山本翔さんのバック・バンドとして結成した5人組。この曲発表時には3人組で、1984年の解散時には彼とキーボードの見岳章さんの二人。その見岳さんは解散後に作・編曲家に転身。代表作は美空ひばりさんの<川の流れのように>(1989)などがある。
3曲目は「1988年資生堂 秋のキャンペーン」、今井美樹さんの<彼女とTIP ON DUO>。この曲は彼女初のトップ108位)ヒット。作曲は上田知華さんで、以降彼女には欠くことのできない存在になった。(勿論、布袋寅泰さんとコンビを組むまで)


次は個人的なチョイス、チューリップ1974年発表のサード『Take Off』収録の<セプテンバー>。リード・ギター担当の安部俊幸さんの「俺がリード・ギター」といった派手なプレイがツボ。彼は1985年に脱退するも1989年解散コンサートには参加。彼は1997年以降の再結成以降はほぼ帯同するも2014年に脳出血で逝去。
続いて、オフコース1977年の第5作『JUNKTION』収録曲で、先行シングルの<秋の気配>。彼らは小田・鈴木の二人体制でのサード・アルバム『ワインの匂い』(1975)で頭角を現した。第4作『Song Is Love』(1976)以降のステージでは五人体制となり、繊細さに加えダイナミックなバンド・サウンドも備わる。

3曲目は村田和人さんの1982年のデビュー・アルバムからファンには絶対的人気の<Lady September>。そして山下達郎さんで「日立マクセル・カセットテープ」のCMソング「RIDE ON TIME」(1980)のアカペラによる「秋編」。


洋楽「秋」ナンバー、まずはThree dog NightAn Old Fashoned Love Song>。彼らは1970年代に全米1位を3曲送り込むなどヒットを量産したポップ・グループ、代表曲は1970年に5週連続全米1位の<喜びの世界(Joy To The World)>。当時の日本では1971年に全米5位の<An Old~>が大ヒット。作者はアメリカの結婚式定番ソング<愛のプレリュード(We’ve Only Just Begun)>の作者Paul Williams、彼は映画「猿の惑星」などの出演経験もある俳優兼作家。彼らは4回来日公演を行っており、私は再結成後の1993年に大阪公演を見ている。メイン・ヴォーカルのChuck Negronは不在ながら、昔からのファンとして楽しめる公演だった。バンドは現在も活動中だが、2015年にはサウンドの要ともいえるキーボードのJimmy Greenspoon、それにソウルフルなヴォーカルのCory Wellsが亡くなっている。このバンド名は、オーストラリアの原住民「アボリジニ」の言い伝え「厳寒(げんかん)には3匹の犬を抱いて寝る」という慣習から命名。



2曲目はEaglesフォロワーのひとつThe Ozark Mountain Daredevilの<You Know Like I Know>。彼らは1975年に全米3位となった<Jackie Blue>のヒットで有名なミズリー州出身のバンド。この曲は日本では未発売の1976年第4作『Men From Earth』からのシングルで74位を記録。作者のLarry Lee1982年発表のソロ・アルバム『Marooned』に収録された<ロンリー・フリーウェイ(Marooned)>が、1991年の映画『波の数だけ抱きしめて』(主演:中山美穂、織田裕二)に採用されている。

3曲目はカントリー・シンガーのMichael Martin Murpheyで<Wildfire>。この曲は1975年に発表した6作目のシングルで、全米3位、アダルト・コンテンポラリー(AC)やカナダのチャートでは1位の代表作。

引き続き洋楽ナンバーで、Vigrass & Osborne<秋はひとりぼっち(Forever Autumn)>。1972年後期に日本のみ大ヒット、海外ではB面扱だった。Moody BluesJustin Haywardのヴァージョンが有名。彼らはアルバム2枚を残してコンビを解消、このデュオの一人Gary Osborneは後にエルトン・ジョンの作詞パートナーとして<Little Jeannie>をヒットさせている。 



2曲目は、Badfinger<明日の風(Carry On Till Tomorrow)>。デビュー・アルバム『Magic Christian Music』の収録曲で、Ringo Starr主演の映画『Magic Christian』の挿入曲。映画ではタイトルソングが終わり、霧の立ち込める本編の始まりに流れていた。全米では<嵐の恋>のB面ながら、日本では<Without You>とのカップリングで独自ヒット。バンドはアップルからデビュー、<嵐の恋(No Matter What)><Day After Day>をはじめ、全米トップ10ヒットを3曲持つ。NillsonMaraiha Callyでもお馴染みの<Without You>はこのバンドのオリジナル曲。またDef Lepard2006年に発表したカヴァー・アルバム『Yeah!』に<嵐の恋(No Matter What)>をチョイスしている。

3曲目はBee Geesで<傷心の日々(How Can You Mend A Broken Heart)>。1963年にオーストラリアでデビューの5人組、1967年にはで全米に進出、やがて兄弟3人になり、1970年にはBarryMouriceの二人になるもRobinが復帰。1971年発表のこの曲は初の全米1位に。この当時の日本では『小さな恋のメロディ』の主題歌<Melody Fair>の大ヒットで印象薄。
4曲目はNeil Sedakaで<悲しき慕情(Breaking Up Is Hard To Do (Slow Version))>。この曲は1962年に全米1位に送り込んだ大ヒット曲のセルフ・カヴァーで、1975年にトップ10ヒット。彼は1950年代末から1960年代初頭にかけてPaul Ankaなどと共に一世を風靡、1960年代から1970年代初頭にかけて低迷するも1974年に<雨に微笑を(Loughter in the Rain)>の全米1位で復活。さらに当時Elton Johnの「Rocketレコード」と契約し、ヒットを連発と第二期黄金時代を迎える。この曲はヨーロッパや日本では『Overnight Success』、全米ではそのものズバリ『Sedaka’s Back』に収録。

また日本物でユーミンの<さざ波>。曲は1976年に彼女が荒井由実名義で発表した最後の第4作『14番目の月』の収録曲。正確には10月だが歌詞にある「秋の日差しに~」を聴くと、秋にはやはりこの曲!


2曲目は小坂明子さんの<もう一度>。特大ヒット曲<あなた>に続く第2作で2510.2万枚と残念なものだったが、編曲を担当した.萩田光雄さんのスタンダード・ジャズ風のハイセンスなスコアの出来は前以上。なお彼女が大ヒットさせた<あなた>はファンだった<美しすぎて>を歌うGAROへ捧げた曲だった。
3曲目は荒木一郎さんの自作によるデビュー曲で<空に星があるように>。この曲が発表されたのは1966年で、60万を超えるヒットになり、レコード大賞の新人賞を受賞。ただ、この年には同じシンガーソングライターの先輩格加山雄三さんの<君といつまでも>が大旋風を引き起こしており、陰に隠れてしまった感がある。
4曲目はちあきなおみさんの<黄昏のビギン>、1991年発表の『すたんだーど・なんばー』収録曲。元は<黒い花びら>の水原ひろしさんが195910月にリリースした<黒い落葉>のB面曲。1999年から2003年まで4年間に渡り「ネスカフェ・プレジデント」のCMに起用されている。
5曲目はジュリーの<つづくシアワセ>。2002年にJULIE LABELからのファースト『忘却の天才』収録曲。1年間とてつもなく大きな四季の花が届く「つづく幸せプレゼント」CMソング。CMテイクはアレンジ違いの<つづく幸せ>(漢字です)。


最後終パート1曲目は松田聖子さんで<風は秋色>、曲はセカンド『North Wind』に収録。彼女はこの1980年のサード・シングルから1988年の26作目<旅立ちはフリージア>まで24作連続1位という記録を樹立し、約12年間保持した。また当時登場した「レンタル・レコード」が成功した要因の1つに彼女のファースト『SQUALL』と『North Wind』が借りまくられたからだと言われている。
2曲目は原田知世さんで<色彩都市>、2007年にリリースされた17作『music & me』収録曲で大貫妙子さんのカヴァー彼女はこれまでにオリジナルを21作、カヴァー・アルバムが6作、その他高橋幸宏さんのバンドpupaにも参加するなど、シンガーとしても精力的に活動している
3曲目は松山千春さんで<もう一度>、小坂明子さんとは同名異曲。1980年にリリースした彼の第5作で自身が設立した「NEWSレコード」からの第一作『浪漫(ろまん)』収録曲だが、元々は伊東ゆかりさんの『素猫(Sketch)』(1980年)への提供曲。ラストは安全地帯の<悲しみにさよなら>、1985年にリリースした9作目で最大のヒット。彼らは1116日(土)に阪神甲子園球場での野外ライヴが決定している。

1. September /Earth,Wind & Fire
 ~B.G:L-O-V-E / Nat King Cole

2. キッスは目にして/ ザ・ヴィーナス
3. すみれSeptember Love / 一風堂
4. 彼女とTIP ON DUO / 今井美樹
~B.G: Smile / Nat King Cole

5. セプテンバー / チューリップ
6. 秋の気配 / オフコース
7. Lady September/ 村田和人
8. RIDE ON TIME(秋編)/ 山下達郎
~B.G: Unforgettable / Nat King Cole

  9. An Old Fashioned Love Song / Three Dog Night
10. You Know Like I Know/ The Ozark Mountain Daredevil
11. Wildfire / Michael Martin Murphey
~B.G: Mona Lisa / Nat King Cole

12. 秋はひとりぼっち(Forever Autumn) / Vigrass & Osborne
13. 明日の風(Carry On Till Tomorrow) / Badfinger
14. 傷心の日々(How Can You Mend A Broken Heart) / Bee Gees
15. 悲しき慕情(Breaking Up Is Hard To Do (Slow Version)) / Neil Sedaka
~B.G: Too Young / Nat King Cole

16. さざ波 / 荒井由実
17. もう一度 / 小坂明子
18. 空に星があるように / 荒木一郎
19. 黄昏のビギン / ちあきなおみ
20. つづくシアワセ / 沢田研二
~B.G: Autumn Leaves(枯葉) / Nat King Cole

21. 風は秋色 / 松田聖子
22. 色彩都市 / 原田知世
21. もう一度 / 松山千春
22. 悲しみにさよなら / 安全地帯

次回10月号は「My Favarites」をお届けする予定です。
本放送:第四土曜日10/26(土)15:30~18:00
再放送:第四日曜日10/27(日)8:00~10:30
【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/                          (鈴木英之)

鈴木恵TRIO:『come here my dear』(FLY HIGH RECORDS / VSCF-1773(FRCD-065))

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パワーポップ・バンド、EXTENSION58のギター&ヴォーカルでソングライターの鈴木恵(すずきさとし)のソロ・プロジェクト“鈴木恵TRIO”が、ファースト・フルアルバムを10月9日にリリースする。
彼等は拠点の新潟の他、東京など全国でライブ活動をしており、メンバー全員による3声コーラスが特徴となっている。
メンバーはリーダーの鈴木(ヴォーカル兼ギター)、ドラム兼コーラスの青木宏美とギター、キーボード兼コーラスの田邉周平から構成され、これまでにマキシ・シングル『毎日が8ビート』(SONG CYCLE/KOSC-001)とミニアルバム『恋は水色』(同/KOSC-002)をリリースし、コンピレーション・アルバム1枚に楽曲提供している。


鈴木のソングライティングには、60、70年代のソフトロックやバブルガム・ポップ、モータウン・サウンドから80年代のネオアコやギター・ポップに強く影響を受けており、温故知新派の音楽ファンにも注目されている。
彼は弊サイトでも評価しているガール・グループRYUTistへの楽曲提供をはじめ、絵本の読み聞かせライブ、最近ではイラストレーター兼アート・ディレクターの大塚いちお氏とのコラボレーションなど多岐に渡る活動をしている。特にRYUTistへの提供楽曲「サンディー」では、古き良きブリルビルディング系の匂いを感じていたので以前から筆者も注目していた。
本作にはそのRYUTistをはじめ、秘密のミーニーズの渡辺たもつ、The Laundriesの遠山幸生、女性シンガーソングライターのやまねみわこ、ヴァイオリニストの越川歩(こしかわ あゆむ)などがゲスト参加しており、ジャケット・アートワークはサニーデイ・サービスやシャムキャッツなどを手掛ける小田島等氏が担当している。

9月初頭から本作の音源を聴き込んでいるが、鈴木の巧みなソングライティング・センスと、メンバーやゲスト・シンガーのコーラス・ワークに耳を奪われており、弊サイト読者にも強くお勧め出来るので筆者が気になった主要曲を紹介していこう。

California Love / 鈴木恵TRIO  

冒頭の「California Love」はアルバムのリード・トラックで、ピアノと弦楽四重奏による印象的なイントロから一転してシャッフルのリズムで展開され、まるでジェリー・ロス・サウンドのようなノーザン・ソウル寄りのソフトロック・ナンバーである。この曲だけで鈴木のソングライティング・センスの深みが理解出来ると思う。
ヴァイオリンがホーンライクなリード・リフを奏でるのも特徴で、アレンジのアイディアも面白い。ストリングス・アレンジは山根美和子、ホーン・アレンジは鈴木によるものだ。
続く「かなかも」は古き良きカントリー・タッチのフォーク・ポップで、鈴木とやまねみわこ(山根美和子)がデュエットで歌唱しているのが楽しい。バンジョーとペダルスチールは渡辺たもつのプレイ。
「Day By Day」も「California Love」と同様に越川歩のヴァイオリンがフューチャーしており、こちらは英国寄りでトニー・マコウレイのソングライティングに通じる。バースの出だしがキャプテン・センシブルの「It's Hard To Believe I'm Not」(82年)を彷彿とさせてニュー・ウェイブ少年でもあった筆者は直ぐに反応してしまった。

 
鈴木恵TRIO New Album 「come here my dear」 Trailer

そして弊サイト読者のビーチボーイズ・ファンに最もアピールするのが、4曲目の「何もかも忘れたら」だろう。BB5マニアならこの曲のエレメントの曲群が直ぐに浮かぶと思う。筆者は音源をもらって一聴してこのイントロに胸を締めつけられた。単にフォロワーというだけでなく、ブライアン・ウィルソンへのオマージュの中に独自のセンスも忍ばせているのに好感が持てる。 ホーン・セクションにフリューゲルホルンやファゴットを加えているのも効果的だ。
続く「花と恋情」はブルース・ジョンストン作の「Disney Girls (1957)」(71年)に通じる無垢なラヴ・ソングで、RYUTistのメンバー4名が参加しており抜群のコーラス・ワークを披露している。このコーラスを聴いていると、ヴォーカル・グループとして彼女達はもっと評価されるべきだと感じてしまう。マンドリンは渡辺たもつ、ウクレレは遠山幸生がプレイしている。


アルバム後半では「Brand New Morning」にも触れぬ訳にいかない。イントロからして60年代中後期ビーチボーイズの匂いがするサウンドをもった深いバラードであり、BB5マニアにも聴いて欲しい。美しいコーラス・ワークに絡むグングルやマリンバの響き、ペダルスチールが心地いい。
紹介しきれない曲も含め良曲が多く収録されている本作のラストとして、実に相応しいのが「夜行列車」である。
『Skylarking』(86年)時のXTCに通じるアレンジとサウンドは、本作の着地点として計算されていたかのようだ。 複数のエレキ・ギターの展開や各楽器の配置、コーラス・アレンジ、エフェクティブな空間処理やミックス処理まで含め、極めて完成度が高い1曲である。この曲でもRYUTistの4名がコーラスで参加している。
最後にアルバム全体を通して感じたのは、過去の音楽的遺産を独自に消化してよくプロデュースされた作品であるということだ。
このレビューを読んで気になった音楽ファンは是非入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)



名手達のベストプレイ第6回~ニック・デカロ

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ニック・デカロことNicholas De Caroは、1938年6月3日オハイオ州のクリーヴランドで生まれた。
幼い頃からアコーディオンを演奏して弟フランクとアマチュア・バンドを組んでいたニックは、十代半ばになると当時テナー・サックス奏者だったトミー・リプーマ(1936年7月5日生まれ)と運命的出会いをしてバンド・メンバーに加える。トミーは直ぐにニックのアコーディオンのプレイに魅了され、お互い影響し合うようになった。

その後ニックは陸軍に徴兵され、トミーはクリーヴランドのレコード・ディストリビューターからLiberty Recordsのプロモーターとなりそれぞれ別の道を進んだが連絡は常に取り合っていたという。
64年めでたく陸軍を除隊したニックは、トミーの推薦でアレンジャーとしてLiberty Recordsと契約する。スタッフ・ソングライターのジャッキー・デシャノンやランディ・ニューマンなどのスコア仕事から信頼を得て、プロデューサーのスナフ・ギャレットを紹介され彼のプロジェクトと、自身でプロデュースしたメル・カーターのシングル「Hold Me, Thrill Me, Kiss Me」のヒットで初めての成功を手にした。
65年トミーはハーブ・アルパートとジェリー・モスにより創設されたA&Mレコードに移籍したことで、ニックもLiberty Recordsを離れフリーのアレンジャーとなる。同時期トミーの同僚でLiberty Records会長のサイモン・ワロンカーの息子であるレニー・ワロンカーも66年にワーナーブラザーズに移籍している。
この二人の名プロデューサーの元でニックは数々のシンガーやグループのアレンジを手掛けていくことは、VANDAの熱心な読者ならご存じの通りだろう。

ハーブをリーダーとしたスタジオ・バンドであるティファナ・ブラスをはじめ、アンディ・ウィリアムズ、当時アンディの妻だったクロディーヌ・ロンジェ、クリス・モンテス、サンドパイパーズ、そしてロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、ハーパース・ビザール等と、弊誌が監修した『ソフトロックA to Z』で取り上げたアルバム収録曲の多くのアレンジを彼が手掛けているのだ。60年代中期から70年代をピークにポップス、ロック名盤の影にこの人ありといわれた名アレンジャーとしてまず挙げるのは彼をおいて他にいないだろう。
また自らボーカルを取ったソロ・アルバム『Italian Graffiti』(74年)は、日本ではAORの原点としても評価が高く、今でも熱く聴き続けられている。
92年3月4日、ニックは心臓疾患で惜しくも亡くなる。53歳だった。 彼の葬儀はカリフォルニア州ウェストレイクと、故郷のオハイオ州クリーヴランドで執り行われたという。

筆者は常々ソフトロックをはじめポップスは「アレンジャーの音楽」と考えていたので、ニックの存在の重要さに早くから注目しており、こうして取り上げられることが非常に嬉しい。
そんなニック・デカロ氏が手掛けた楽曲に大きく魅了されたミュージシャン達と、彼のベスト・アレンジ曲を挙げてその偉業を振り返ってみたい。
是非サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。
参考出典元:http://www.spectropop.com/NickDeCaro/




 【ニック・デカロのベストアレンジ5】 
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


GROOVE UNCHANT(グルーヴあんちゃん)
https://groove-unchant.jimdo.com/ 



●Time After Time / Chris Montez 
(『Time After Time』/ 66年)
◎ごぞんじ、Tommy LipumaプロデュースNick DeCaroアレンジという 「 A&M 」 鉄壁の布陣によるFrank Sinatraのカバー。
これぞソフトロックといえる曲の1つなのでは? 
”ソフトロックの定義がいまいちわからない”という方も、この曲をオリジナルと聴き比べるとその魅力が理解し易いはずです。

●Kinda Wasted Without You / The Parade
(『The Parade』/ 発表67年 収録アルバム:88年)
◎Web VANDAをご覧のみなさまには説明不要の超名曲。
Roger Nichols & The Small Circle Of Friendsのバージョンと、テンポも含めアレンジはほぼ一緒なのですが、The Pradeのバージョンはアコースティックギターが主張していてフルートのアレンジもいなたくなっており、こちらもおすすめです!

●Music to Watch Girls By / Andy Williams 
(7”『Music to Watch Girls By』/ 67年)
◎Bob CrewedのオリジナルバージョンではTijuana Brassを意識したアレンジになっており、 このAndy WilliamsのバージョンではもちろんTijuana Brass感を残しつつも、際立ったリズムセクション、メロディアスなストリングス・アレンジ、さらには女性コーラスをブラスしユニゾンさせることによって、本家の面目躍如とも言えるNick DeCaroの仕事ぶりが堪能できます。

●Come Saturday Morning / The Sandpipers 
(7”『 Come Saturday Morning』/ 69年)
◎Liza Minnelli主演の映画「くちづけ(1969)」 原題「The Sterile Cuckoo」のサウンドトラックに収録。
The Sandpipersの華麗なコーラスハーモニーに織り重なるようなNick DeCaroのハープ、ストリングス、ブラスアレンジは至福。

●Midnight At The Oasis / Maria Muldaur
(『Maria Muldaur』/ 74年)
◎Maria Muldaurといえば間違いなくこの曲。
40年以上経ってもこの曲が色褪せないのは、カントリーミュージックという枠に囚われない複雑で華麗なコード進行はもちろんのこと、地味過ぎず派手すぎないストリングス・アレンジをほどこしているNick DeCaroによる功績も大きいと思います。
   
Kinda Wasted Without You / The Parade


小園兼一郎(small garden)
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 



●Tea For Two / Nick DeCaro 
(『Italian Graffiti』/ 74年)
◎ニック・デカロ本人のリーダーアルバムから。
 原曲の美しさを全く損なわず、そして自分の色をはっきりと提示した上で更により良いものへと楽曲を昇華させている。特徴的なのはやはりニック自身によるコーラスワークだろう。
いわゆる往年の映画音楽アレンジこそがニックだという人もいるだろうが同アルバムの楽曲「Wailing Wall」にもあるようなスローなバラードと美しいコーラスがニック・デカロの魅力ではないかと僕は思っている。

●Lady Of The Night / Helen Reddy 
(『We'll Sing In The Sunshine』 / 78年) 
◎AORらしいしっとりとした質感を保ちながらポップスらしさをしっかり残すこの曲は作曲陣が3人という豪華さ。
ニックの堅実なアレンジ、ボーカル・アレンジもしっかり効いており安心して聴くことが出来る。この後紹介する曲もそうなのだが僕の好きな冨田恵一さんもニックのアレンジはかなり参考にしているのではないかと思われる節が多く、聴き比べてみるのも一興だと思います。

●Better Off Alone / Shirley Bassey
(『The Magic Is You』 / 79年)
◎プロデュース、アレンジメントを行っているアルバムからの一曲。
非常に美しい構成で原曲を綺麗に昇華させるお手本のようなアレンジ。 楽曲の途中からエレキピアノが被ってくるところが80年代の始まりを予感させる。またクレジットには、ニックがボーカル・アレンジを行っているとされており、彼の音楽に対するこだわりを感じる。

●On Saturday Afternoons In 1963 / Rickie Lee Jones 
(『Rickie Lee Jones』/ 79年) 
◎同アルバムの中ではあまり目立たないこの曲ではあるが同氏のアレンジはここでも手腕を発揮している。
何でもないようなオーケストラアレンジのように聴こえてしまうかもしれないがその構成力は原曲を全く壊しておらず、むしろはじめからこの編成で曲が作られたのではないかと思う程である。カウンターメロディ、リフの構築力にニックの実力を汲み取れる。

●I Have Ev'rything but You / Randy Crawford 
(『Windsong』/ 82年)
◎この時代らしい爽やかでポップなナンバー。
Randy Crawfordの前作でもニックはストリングス・アレンジを担当していたが今作ではより音に激しさを持たせている。シンセサイザーのパッドのように歌の後ろの隙間をただ埋めるように鳴っていた前作に比べてフレーズに幅を持たせ、かつアクションが大きくなってきた印象がある。ニックも時代に合わせてそのスタイルを上手に使い分けてきた名手だといえると思う。


Tea For Two / Nick DeCaro


鈴木恵(スズキサトシ)
作詞/作曲/編曲家。 ボーカル、ギター、サックスを担当。 自身のクループ「鈴木恵TRIO」「EXTENSION58」の他、アイドルグループ「RYUTist」への楽曲提供、作家「大塚いちお」氏との共同楽曲の制作等を行う。
Official HP https://suzukisatoshi.com 



 ●Me, Japanese Boy / Harpers Bizarre
(『The Secret Life』/ 68年) 
Caroline No / The Beach Boysを彷彿とさせるようなサウンド。オリエンタル=日本への限りなき誤解。
何を隠そうこの曲のデカロアレンジ、自分の管弦アレンジにかなり影響受けています。ので、素直にベスト5にあげました。

●Feel Your Groove / Ben Sidran 
(『Feel Your Groove』/ 71年) 
◎個人的にこういう味のあるボーカルが大好き。
歌が終わると壮大なインストのインプロビゼーションに入るが、長い曲全体をデカロのストリングスで覆い包んでいる雰囲気がただのインプロだけで終わらせない物語を感じる。ウェザー・リポート的な雰囲気は時代性か。

●Butterfly / Goldie Hawn
(『GOLDIE』/ 72年) 
◎S&G的トラディショナルなサウンドと子供達のコーラス、そこに乗っかるフレンチポップ的な味わいのボーカル、と聞けばまず誰しもアンマッチでは。と思いきや、なぜが見事に融合して見せるのは、デカロの隠し味のストリングの仕業。最後にだけ出てくるペニーレイン風ラッパの対旋律がまた良いですね。

●Getting Mighty Crowded / Nick De Caro 
(『ITALIAN GRAFFITI』/ 74年)
◎BETTY EVERETTのカバー。格好良さでは圧倒的にコステロだけど、デカロの絶妙なタイム感と頼りなさげなボーカルが好き。
僕が子供の頃、よくテレビで観ていた日本の歌謡曲バックのオーケストラアレンジに何となくニュアンスがよく似ています。

●I Don't Know Why I'm So Happy I'm Sad / Michael Franks
(『The Art of Tea』/ 75年) 
◎声が魅力的なんですよね。ボーカルとかイケてない方がメロウ度増す気がするのは僕の気のせいか。
最高にメロウはエレピとボーカルにこれぞバックグラウンドって言うくらいの主張しないストリングスはデカロマジック。実は、歌とストリングスの関係って密接なんですよね。

Getting Mighty Crowded / Nick De Caro 


【TOMMY (VIVIAN BOYS)】
オフィシャルサイト: https://twitter.com/VIVIAN_BOYS 



●My Love Grows Deeper / Clydie King 
(7”『Missin' My Baby』B面/ 65年)
◎フィレスの影武者プロデューサーを務めたジェリー・リオペルと、デカロによる音壁イミテーション作品には、このノーザン/モータウン風楽曲のような、本家スペクター作品では聴けないアプローチも。
シャングリラス的なボニー&ザ・トレジャーズ「Home of the Brave」(65年)とか。リオペルは、ロジャニコのマレイ・マクリオードらとの、自身やデカロらが手掛けた、ザ・パレードのメンバーとしても名を残す。

●Stage Door / The Grads 
(7”『Everything in the Garden』B面/ 66年) 
◎ゴフィン/キング作。「スパニッシュ・ハーレム」「ビー・マイ・ベイビー」の系譜たるスパニッシュ・スペクター風味、二拍三連キメ、付点8分ピアノを配すポップス王道編曲。
リピューマ、ボトニックとの制作チームは、改名、再出発したザ・サンドパイパーズに移行。スパニッシュ風味ならば、同グループの1stアルバムには、デカロがブルース&テリーに書いた「Carmen」(65年)の、より内省的なデカロ編曲のカバーも。

●For A Little While / Del Shannon
(7”『For A Little While』/ 66年)
◎リバティ/インペリアル周辺からキャリアが始まったデカロの、同社のヒット・メイカー、スナッフ・ギャレットとの最良の仕事の一つ。
デカロのアレンジは、ポップ・チューンを極上のソフトロックに、ソウル/ジャズ・テイストを蕩けるようなライト・メロウに変換するが、ロックン・ロールと融合すれば、このような多幸感溢れるパワーポップ・チューンを生み出す。

●All My Love’s Laughter / Jennifer Warnes 
(『Jennifer』/ 72年)
◎ジャック・ニッチェ(82年のジェニファーの大ヒット「愛と青春の旅立ち」の作者でもある)の仲介で、ジョン・ケイルがプロデュースした『Jennifer』(72年)に収録のジミー・ウェッブ作品(同じく「P.F.スローン」に捧げられた同名曲の、デカロ編曲による好カバーも収録)。
本作収録の「Needle And Thread」(編曲はジェリー・ピータース)を、後にデカロは『Italian Graffiti』で採り上げる。

●Tapestry / Nick DeCaro 
(『Italian Graffiti』/ 74年) 
◎チェット・ベイカー的な自身の歌唱を初めて起用した、先行初シングル「Caroline,No」や「I’m Gonna Make You Love Me」のカバーを含む、名義1st作『Happy Heart』(69年)。
イージーリスニングの規範とジャズ/ソウルとの交配編曲は、後のこの『Italian Graffiti』の雛形に。A&Mサウンド構築を経て、両作品を手掛けた、デカロとトミー・リピューマ。ラテン・ルーツの両名タッグ、初リリースの「Angelita di Anzio」のカヴァー(64年)に回帰するかの、イタリア繋がりの本作タイトルや、最後のHot Love→ジェニファー・ウォーンズ経由のこのカバーの収録経緯は、文字通り音楽史の「つづれ織り」たる物語を体現する。

All My Love’s Laughter / Jennifer Warnes 






 ⚫Our Last Goodbye / Andy Williams
 (『Honey』/ 68年 )
◎プロコル・ハルムの名曲「青い影」を思わせるイントロ、ダブル・トラックで録音された内省的なボーカル。
全盛期の華やかなウィリアムスのイメージとはかなり掛け離れているが、1968年・アメリカの退廃感を感じさせる中毒性のある曲だ。

●Drifter / Harpers Bizarre
(『The Secret Life of Harpers Bizarre』/ 68年) 
◎黄金コンビによる名曲で、多数のカバーが存在するが、このハーパース・ビザール版をベストに挙げる音楽ファンは多い。
デカロの編曲はドリーミーでカラフル、まさにポップスの魔法が散りばめられたサウンドであり、僕の "生涯ベスト5"の一曲にも選びたい素晴らしいトラックだ…!

●All in Love is Fair / Barbra Streisand
(『The Way We Were』/ 74年 ) 
◎こちらはスティーヴィー・ワンダーの名曲カバー。
すべてを優しく包み込むような泣きのストリングスは、彼女の伸びやかな歌唱を一層引き立てていて、非常に感動的だ。間違いなく、デカロの名仕事の一つに挙げられるだろう。

●Somewhere in the Night / Helen Reddy
(『No Way to Treat a Lady』/ 75年) 
◎個人的にはバリー・マニロウ版(78年)の方が馴染み深いが、先のリリースはヘレン・レディで、その編曲がニック・デカロ。
愛らしいイントロから、淡々と美しいメロディを引き立てていくアレンジは、マニロウと比べれば薄味だが、聴くほどに味わい深い。

●Here You Come Again / Dolly Parton
(『Here You Come Again』/ 77年 )
◎アメリカでは、様々な意味で大御所/成功者として知られるドリー・パートンの代表曲。
彼女がカントリーからポップ路線に進出した頃の作品で、バリー・マンの卓越した作曲センスと、デカロのさり気ないストリングス・アレンジはかなり相性が良い。

Drifter / Harpers Bizarre 




●(I Want A) True, True Love / Irma Thomas
(7”『(I Want A) True, True Love』/ 64年)
◎リバティでの若きニック・デカロの初期ワークスの中の大好きな一曲。シングル”He's My Guy” のB面。
いわゆるノーザン的バラードだが、当時のモータウンとはちょっと風味が違う奥ゆかしさがあります。この曲はちょっと個性的なサビのコード感が抜群なんです。両面ともストリングスは出てこないのだけど、不思議と聴こえてくるのが不思議。コーラスがほとんどオーケストレーションの役目を果たしているようです。弦アレンジで有名なニック・デカロですが、どうやったら曲が良くなるかの才能、まさにこんなことからにじみ出ているようです。

●Meditation / Claudine Longet
(『Claudine』/ 67年) 
◎サイケ人間として、予備知識なくレコード屋で見つけ、こんなジャケの人がまさかサイケっぽいことをしているのか?と期待が高まり、購入。だけど良い意味で裏切られた思い出の曲です。
オリジナルがジョビン作の有名曲であることは後から知りました。ゆったりまったりしたテンション低めのボサノバポップの傑作。昔のテレビで流れていたようなモノクロームなイージーリスニング的フルートが、最後の最後に16ビートに乗って盛り上がりつつ、クロディーヌ・ロンジェのSE的笑い声も加わってフェイドアウトする部分には、サイケ感とともにオルタナ感まで感じてしまいます。きっとそう狙っていたと信じたい。 この曲にサイケな映像つければハマる!

●All Strung Out / Nino Tempo & April Stevens
(『All Strung Out』/ 67年) 
◎90年代に『ソフトロックA to Z』(VANDA監修)で知り、ソフトロック全盛期にも比較的このレコードは見つかりやすかったように思います。
まさにフィル・スペクターなサウンドですが、発売年を見てしまうとオーケストレーションがすごく天然サイケっぽく聴こえてしまうんですよね。このストリングスのちょっとメロトロンぽい質感が大好きです。たまに気がつくとサビを口ずさんでしまっている一曲。

●Beautiful / Gordon Lightfoot
(『Don Quixote』/ 72年) 
◎カナダのシンガーソングライターで、ガールポップ期イミディエイト時代のNICOがカバーした ” I’m Not Sayin ’” のオリジナルシンガーということから知った。
ちょっとアシッドっぽさも感じてしまう60年代から、70年代前半はニック・デカロと組んで結構ヒットを飛ばしています。この曲はまず初っ端のコードからやられます。白玉系のストリングスとアコギの絡みがまさにビューティフルな一曲。

●Tattler / Ry cooder
(『Paradaise and lunch』/ 74年) 
◎チキン・スキン・ミュージックと並ぶ、70年代中期のライ・クーダーの言わずと知れた名盤の中の一曲。
自分も高校性のころからの愛聴盤です。クーダーの土臭さとアクの強さも、さりげなくも大変効果的なニック・デカロのストリングスでまろやかに仕上がってしまうという、ストリングス・アレンジの魔法のお手本のような曲だと思います。

(I Want A) True, True Love / Irma Thomas





●I Love How You Love Me / Claudine Longet 
(『The Look of Love』/ 67年)
◎クロディーヌロンジュのボーカルを最大限に引き立てて音域を邪魔にしないアレンジ。
キーボードアルペジオから始まる8分の6拍子バラードパターンにバカンスの終わりを 感じます。邦題は「わすれたいのに」。

●Chances Are / Ben Sidran
(『 I Lead A Life』/ 72年)
◎程よく軽く洒脱なアレンジが気持ち良い。
途中から入ってくるストリングスと少し唐 突な女性コーラスの広がりがこの上なく気持ち良い。後半の各楽器が押したり引いたりし てフレーズを奏でる展開も爽快!ニック・デカロはストリングス・アレンジで参加。

●Can't Take My Eyes Off You / Andy Williams
(『Love, Andy』/ 67年)
◎言わずと知れたフランキー・ヴァリの歌唱での大ヒット曲だが、ニック・デカロのアレン ジでほぼ同時期にリリースされている。
フランキーのバージョンより4つもキーが下な 分、サビのブラスアレンジがどっしりと派手でゴージャスに聴こえてこちらのバージョ ンがむしろ好き。

●Honeysuckle Magic / Mac Davis
(『Burnin' Thing』/ 75年)
◎右チャンの乾いたギターの音がいい。シンプルな構成で最後までしっかり聴かせるア レンジはさすが。
こういった、いなたいカントリーロック調なアレンジもするんだなぁ 。キャリアに奥域が感じられます。

●Wait For Me / Alessi Brothers
(『Words and Music』/ 79年)
◎往年のAORの匂いがイントロからプンプンしてくる。
ハイトーンボイスのボーカルラ インとバックのサウンドが見事に溶け合っている。ニック・デカロはプロデューサーとし ても参加。


Chances Are / Ben Sidran 



 【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)

●Just Beyond Your Smile / Roger Nichols & The Small Circle Of Friends
(『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』/ 68年)
◎ソフトロックの聖典とされるこのアルバムでニックは半数に当たる6曲のアレンジを手掛けている。特にこの曲でのオーケストレーションは白眉の完成度だ。
左チャンネルのスライド・ギターのリフと対位する右チャンネルで駆け上がるストリングスのトリル、またセンターでたたみ掛けるホーンのフレージングなど巧みなスコアが僅か2分19秒に詰まっている。プロデューサーの盟友トミー・リピューマとの信頼関係ゆえの傑作といえる。

●Knock On Wood / Harpers Bizarre 
(『Harpers Bizarre 4』/ 69年)
◎初期スタックスを代表するエディ・フロイドのサザン・ソウル名曲をバーバンク・サウンドでやるとこうなる。
総帥レニー・ワロンカーからニックにどんなオファーがあったのか興味は尽きないが、ポルタメントが利いたストリングスの展開とフランジャーのエフェクティブな効果により幻想的なサイケデリック・ソフトロックに変貌させた。永遠の名曲「Witchi Tai To」の導入曲としてもこれ以上の演出はないだろう。

●I Was A Fool To Care / James Taylor 
(『Gorilla』/ 75年)
◎ピーター・アッシャーが手掛けた初期アルバム群とNY録音の前作を経て、ワロンカーと組んだジェームス・テイラー(以降JT)の6作目から。
ニックはアコーディオンとアルバム全体のストリングス・アレンジで参加しており、この曲ではジェントリーなJTの歌声に叙情的なストリングスを添えて、よりエバーグリーンなものに仕上げている。飽き性の筆者も30年以上愛聴しているマジックは、このニックのアレンジにあるんだな。

●Nightmoves / Michael Franks 
(『The Art Of Tea』/ 75年)
◎AOR名盤としてよく取り上げられる本作は、トミー・リピューマがマイケル・フランクスを売り出すために当時のジャズ・フュージョン系のベスト・スタッフでバックアップしたのはよく知られているが、ニックもストリングス・アレンジで全面的に参加している。
特に冒頭を飾るこの曲はセカンド・ヴァースから入るニックによる弦がないとこの曲のムード(世界観)にならないほど重要なエレメントになっていることが理解出来ると思う。

●Take Me To The Bridge / Crackin' 
(『Makings Of A Dream』/ 77年)
◎後年プロデューサー・チームとして成功するバネッタ&チューダコフが在籍した白人黒人混成のファンク・バンドの3作目から。
プロデューサーはラス・タイトルマンなので旧知のニックがストリングス・アレンジを担当している。これまでの4曲を選曲した理由も同じなのだが、彼のアレンジが曲にもたらす必然性という点が重要なのだ。この曲でもテンションで鳴っているシングル・ノートから一転して全体を覆う弦のヴォイシングの見事さに耳を奪われる。

Take Me To The Bridge / Crackin' 



 (企画 / 編集:ウチタカヒデ) 

RYUTist 『きっと、はじまりの季節』(PENGUIN DISC / PGDC-0011)

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アルドル・ヴォーカル・グループRYUTist(リューティスト)が、前作『センシティブサイン』(PGDC-0010)に続いてニュー・シングル『きっと、はじまりの季節』を10月29日にリリースする。
RYUTistのメンバーはリーダーの佐藤乃々子をはじめ、宇野友恵、五十嵐夢羽、横山実郁の4 人で、全員が新潟で生まれ育ったことでご当地を中心に活動しており、素晴らしいヴォーカル・ワークを誇っているのが特徴である。
また今月アルバム・レビューしたばかりの鈴木恵TRIOの鈴木恵が楽曲提供しているなどソングライター陣の層が厚く、音楽通を唸らせるそのサウンドとプロダクションは数多存在するアイドル・グループとは一線を画している。  



前作は若きシンガー・ソングライターのシンリズム『柳都芸妓』(PGDC-0005)から参加している佐藤望(Orangeade他)、microstarの飯泉裕子と佐藤清喜が楽曲提供していたが、本作ではシンガー・ソングライター兼ギタリストで、2013年からはKIRINJI (キリンジ)のメンバーとして活躍している弓木英梨乃がタイトル曲「きっと、はじまりの季節」を提供しており、大きな注目を集めるだろう。この曲のアレンジはsugarbeansことキーボーディストの佐藤友亮によるものだ。
カップリングの「Never let me back」は、リリース元であるPENGUIN DISCのレーベルヘッドを努める音楽ライターの南波一海が作詞し、作編曲はEspeciaのサウンド・プロデュースで知られる東新レゾナント(=Schtein & Longer)が担当している。
もう1曲「愛のナンバー」は、今年7月にライヴ会場で限定発売した7インチ・シングル『Majimeに恋して』のB面の既出カバー曲で、いずれもMagic, Drums & Loveのキーボーディストでシンガー・ソングライターの℃-want you!(シー・ウォンチュ!)のソングライティングである。アレンジは多くのメジャー作品で知られる武藤星児、コーラス・アレンジはRYUTistのプロダクションではお馴染みのカンケこと柏崎三十郎がそれぞれ手掛けていて音楽マニアの心をくすぐるだろう。

きっと、はじまりの季節

ではこのシングル収録曲について解説していこう。
「きっと、はじまりの季節」は、スチュワート・コープランド(元ポリス)が叩きそうな独特でタイトなドラミングがリズムを引き締めたドラマティックなポップスで、複数のギターでサウンド・ウォールしたオケをバックにRYUTistのコーラス・ワークの見事さを引き出している。またパーソナル・クレジットが手元にないので定かでは無いが、メロディックで流れるような運指から間奏のギター・ソロはこの曲の作者である弓木自身ではないだろうか。
「Never let me back」は所謂R&B歌謡サウンドではあるが、クレシェンドしていくホーン・セクションやベンディングを多用したシンセ・ベース、トーク・ボックスのアクセントなど80年代初期ファンクのエッセンスが感じられて面白く、また嘗てのSPEED等も想起させた。


そして弊サイト読者に最もアピールするのは、ラストのカバー曲「愛のナンバー」かも知れない。オリジナルは昨年4月に℃-want you!がリリースしたサード・シングルで、イラストレーター兼漫画家の本秀康氏が主宰する“雷音レコード”から7インチでリリースされた。レコードコレクターズ誌ではお馴染みだが、国内随一のジョージ・ハリスン・マニアとして著名な本氏のレーベルということもあり、あの3枚組をこよなく愛するビートル・マニアから強く支持され直ぐにソールド・アウトした。

ここでのRYUTistヴァージョンは、これまたラジオ番組を持つほどのビートルズ研究家として知られるカンケ氏のコーラス・アレンジにより、多彩でスウィートなハーモニーがフューチャーされて、この曲が持っていたポテンシャルを更に高めたサウンドになったといえよう。
「My Sweet Lord」(70年)や「All Things Must Pass」(70年)のオマージュとされるソングライティングもさることながら、様々なアイディアを忍ばせたコーラスにビートル・マニアは唸ると思う。そしてフックの「いつの間にか、コーラはお酒に変わったけれど」のパンチラインが耳に残って離れない。
ニール・ヤングの「After The Gold Rush」(70年)を英国フォーク・トリオのプレリュードが美しいハーモニーでアカペラ・カバー(73年)したヴァージョンを引き合いに出したら褒めすぎかも知れないが、とにかく筆者はこのRYUTistのカバー・ヴァージョンが最近のお気に入りになっているのだ。
 (ウチタカヒデ)


FMおおつ 音楽の館/Music Note 2019年10月号「My Favorites」

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 本日1曲目はPuffyの<これが私の生きる道>。この曲は1996年10月7日私の厄年42歳の誕生日にリリースされた彼女たちの2曲目で初1位、私がこの曲をどのように楽しんだのかは後ほど。 Puffyのデビュー曲<アジアの純真>ではElectric Light Orchestra風のサウンド、仕掛け人奥田民生さんのセンスに脱帽。また井上陽水さんのユニークな歌詞「アジアなのに北京の次の詞がダブリン、ベルリン」や「白のパンダを~」にもはまりまくり。この歌詞に嘉門達夫さんは「新・替え歌メドレー」で、「北京原人、クロマニヨン人」、「白のパンダは白くま」とつっこんでる。

  そして、<これが私の生きる道>ではThe Beatlesのフレーズが散りばめられ、その明細は「Ticket To Ride(涙の乗車券)~From Me To You ~All My Loving ~She Love You ~Day Tripper ~Mr.Moonlight ~Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)~From Me To You ~Please Please Me ~Twist And Shout ~She Loves You」の9種11曲と言われている。またこの曲のタイトルはクレイジー・キャッツの「これが男の生きる道」を意識していたのは笑わせどころで、またタイトルの漢字を合わせるとCMを依頼した「私生道(しせいどう)」になるなど、1曲で何曲も楽しめる仕掛けがたまらない。
 そんなPuffyですが、私は彼女たちのファンになったことで、大きな勘違いをしてあるグループに夢中になったことがあります。それは「2008.Rock In Japan」の中継で、「Puffy」を録画したつもりが、留守録されていた「Perfume」。仕方なく見たパフォーマンスが私の琴線にふれ、Perfumeにはまっている。

  その当時のPerfumeはメンバー全員が10代で、前年リリースの<ポリリズム>でブレイク直後の最も勢いがあった時期。 このフェスでの登場は2番目に大きなステージ(当時;現在は3番目)Lake Stageで8:00スタートというポジションながら、開始1時間前に1万人以上が詰めかけ入場規制がかかる。当時のPerfumeの主戦場はライヴ・ハウスだったので一番驚いたのはメンバーだったと。その人気ぶりに翌年からは60000人収容の最大キャパ「Grass Stage」に昇格、出場6年目の2013年には最終日の大トリを務めるまでに。私はさすがにフェスまでには遠征していないが、2009年から2014年まで全てのツアーに参戦。

 と私のPerfume遍歴はこれくらいにして、次はサザンオールスターズのネタ。彼らは私が大学4年だった41年前に<勝手にシンドバッド>でデビュー、当時は「コミック・バンド」とみなされていた。それは彼らを有名にした曲<女呼んでブギ>は、「女呼んでもんで抱いていい気持ち~」でしたから。またそれを耳にしたドリフのいかりや長介さんが桑田さんをメンバーに狙っていたという話もあったほど。それが今や彼らの解散報道で所属事務所の株価を揺るがすほどの「国民的バンド」に。

  そんな桑田さんが初めて作ったオリジナルは<茅ヶ崎に背を向けて>(『熱い胸さわぎ』収録)で、この曲は1976年に『Frampton Comes Alive』が大ブレイクしたPeter Framptonの<Show Me The Way>をお手本に書き上げた曲。そして、この曲はEagles初の全米1位<Best Of My Love(我が愛の至上)>がベースに。そのEaglesはこれを機にトップ・バンドへの道を邁進。ただ、この曲は<If>のヒットで知られるBreadの1970年全米1位<Make It With You(二人の架け橋)>のコード違い(CとD)といった感じ。このBreadは1960年代に裏方で大活躍したスタジオ・ミュージシャンによって1969年に結成、ヒットを連発するもメンバーのソロ活動のため1973年活動を停止。一説にはEaglesが全米を制覇できたのは、Breadが活動を休止したからとも言われている。Richard Carpentersは「BeatlesやBeach BoysそしてBacharach並みにリスペクトする」と公言するほどの存在。

 ということで、次は1970年代以降日本の音楽をリードした巨匠筒美京平先生。まず日本初のアイドル歌手とも言われる南沙織さんのヒット曲から、その1971年のデビュー曲<17歳>はLynn Andersonの<Rose Garden>(1970年)、セカンド・シングル<潮風のメロディー>はThe Seekersの代表曲<Georgy Girl>(1966年)そのもの。 私が初めて意識したのは1972年6月の第4作<純潔>。この曲を始めて聴いたのは私が高校生の頃でロック調ナンバー。ある時、友人から借りたレコードに収録のVan Morrisonの<Wild Night>(1971年、全米28位)にそっくりで唖然。メロディー自体は日本で大ヒットしたThe Messengers<That’s A Way A Woman Is(気になる女の子)>風で、見事なミクスチュアぶりに感心。

 ところが1972年に全米5位を記録したAlbert Hammondの<It Never Rains In California(カリフォルニアの青い空)>は、彼が1971年に書いた堺正章さんの<さらば恋人>によく似ていることに気が付いた。実際にネタにされたかは不明だが、雰囲気はよく似ていてそれまでにも増して彼の追っかけに。 

 ただ、私のように意識しないでも、自然にネタを当てる人もいた。それはある飲み屋で、有線から流れてきたNeil Sedakaの<The Dairy(恋の日記)>に、一緒に飲んでいた友人がその曲にあわせて細川たかしさんの<心のこり>を歌いだし、それがすんなりはまっていた。なお最初のタイトルは<私バカよね>だった。ただ、このタイトルでは挨拶周りで「この度、<私バカよね>でデビューしました~」と言わざる得なく、あまりに間抜けと感じて、この<心のこり>というタイトルに変更したという。

 続いては、洋楽でネタの宝庫にされた曲The Doobie Brothersの<What A Fool Believes>から。この曲は1979年に全米1位となり、1980年に開催された第22回グラミー賞の“ソング・オブ・イヤー(Song Of The Year)”を受賞した彼らの代表作とも言われているナンバー。ただ古くからのDoobieファンからは、「????」と戸惑わせる曲だった。それは元々このバンドの魅力は豪快で男性的な野性味あふれるサウンドだったから。そんな彼らはこの曲を発表した直後に初来日しており、この曲も披露しているも、いまいち盛り上がらなかった印象がある。それはこの曲の特徴である「変拍子」がそれまでに聴いたことのない革命的なリズムだったから。ところがその後続々とこのリズムをネタにした曲が登場し、この曲の影響のすさまじさを思い知らされた。

 まずはRobbie Dupreeで<Steal Away(ふたりだけの夜)>、この曲は全米6位を記録した彼のデビュー曲で日本でも大ヒット。とても良い曲だが、雰囲気は元ネタそのもので、当時作者から訴訟を起こされている。
 そして日本でも大量発生、私自身が最初に感じた曲は竹内まりやさんの<二人のバカンス>。この曲は1980年7月にリリースした5作目のシングルで、彼女の詞が初めてシングルに採用された曲。なお、最近デビュー40周年としてリリースされた『Turntable』にも収録。そんな彼女はデビュー40周年を記念したファン・ミーティングを来年東京と大阪で開催予定。参加するには、このアルバムとニュー・シングル<旅のつづき>に封印されている応募券で抽選。これらの曲はほんのさわりで、1980年代には山ほど登場しており、例をあげたらきりがない。

  続いては、“BOSS”ことBruce Springsteenが1975年に発表した代表作<明日なき暴走(Born To Run)>。この曲はBrouceにとって5作目のシングルで全米23位にとどまるものの、これ以降彼は全米において“カリスマ”として扱われるように。Bruceはこの曲でブレイクした後のライヴではこの曲をトップで歌うという「アンコールをトップにしたセット・リスト」で、「この曲目当ての奴は、もう帰ってもいいぜ!」と言わんばかり。この姿勢は多くのミュージシャンが取り入れるようになり、Eaglesは<Hotel Calfornia>をオープニング・ナンバーで演奏。日本でも、さだまさしさんや松山千春さんがこの手法でライヴをやっていた時期があったほど。 

 このナンバーは日本でも後に“カリスマ”となったシンガーたちに衝撃を与えた。まずは佐野元春さんは1980年3月にリリースのデビュー曲<アンジェリーナ>。印象的なイントロからしてそのままだが、彼の持つ「言葉」の魅力に引き込まれた人は多かったはず。そんな彼に魅せられたひとりが沢田研二さん。彼はこの年に発表した16作アルバム『G.S. I LOVE YOU』に曲を依頼(3曲)したほど。なお佐野さんの言葉には印象的なものが多く、同年発表の<ガラスのジェネレーション>に登場する、「つまんない大人にはなりたくない!」はその代表。この歌詞は昨年放送のNHK連ドラ『半分、青い。』で「ボクテ」を演じる志尊淳さんのセリフにも登場。

 そして二人目はハマショーこと浜田省吾さんが1980年7月に発表した<明日なき世代>。「ロック・シンガー」に変貌した記念碑的作品『Home Bound』からの先行シングル。このタイトルを見た瞬間にBruceの曲を連想し、聴いてみるとまさにそのままでした。なお彼はこの時期以降、大したヒット曲もないのにもかかわらず、「スタジアム級」のシンガーに躍進。 

 三人目は今の50代世代には圧倒的支持を誇る尾崎豊さんの<十七歳の地図>。この曲は1983年12月に発表のデビュー・アルバムのタイトル曲で、その生々しい言葉は同世代に大きな衝撃を与えた。この曲以外でも彼の書き下ろした「盗んだバイクで走りだす、行く先もわからぬまま~」(「15の夜」)や「夜の校舎、窓ガラス壊して回った」(「卒業」)という歌詞は実際に行動を起こす事件が多々発生し、社会問題にもなったほど。



 ラストは「ブーメラン現象」を起こした曲からElton Johnで<Bennie And The Jets(ベニーとジェッツ(やつらの演奏は最高))>。この曲はEltonの全盛期1973年に発表した第7作『Goodbye Yellow Brick Road』の収録曲で全米1位。 
 まずこの曲をお手本にしたのが、ユーミンの<まぶしい草野球>。この曲は1980年12月に発表した第10作『SURF & SNOW』の収録曲。 さらにこのリズムのアレンジで原田知世さんが松田聖子さんの<秘密の花園>をカヴァー。この曲は彼女が2016年5月に発表した4作目のカヴァー・アルバム『恋愛小説 2 』の収録曲で、アレンジを担当したのは伊藤ゴローさん。

 このアレンジのベースになっているのは、Eltonのみならず清水ミチコさんのある曲のアイデアも加わっていたのでさらにびっくり。それは「時計」の音で始まる清水ミチコさんの<イェル・ケ・クク>。この曲は彼女が2005年に発表した第 6作『歌のアルバム』の収録曲で、1968年にFrançoise Hardyが歌った<Comment Te Dire Adieu (It hurts to say good bye)(さよならを教えて)>のカヴァー。清水さんはこの曲をそのポイントはパーカッションの音が時計の秒針が奏でるカチカチ音に聞こえるところタイトルを「九九」のデタラメ・フランス語風に仕上げている。デタラメ・フランス語は例えば「麻布十番」を「アザブジュボ~ン」と発音するような「遊び」。それをフランス語で「九九」に当てはめた清水さんには脱帽。 

 と、2曲のカヴァーを聴き較べた時、私はこの<秘密の花園>がお気に入りだったが、「良い曲なんだけど、どこかで聴いたことのあるような気がする」という謎が解明

 ただこの曲は元々財津和夫さんが担当することになっていたが、彼の曲をプロデューサーが納得せず降板。その非常事態に作詞担当の松本隆さんが当時ツアー中のユーミンを拝み倒して3日で完成させた曲。 元々財津さんが書く予定だった余韻は、B面の<レンガの小径>が財津作品のままというところ。それは第8作の<赤いスイートピー>以降のシングルはAB面共に同じライターが担当していたから。なおこのお蔵入りした未発表の財津版<秘密の花園>は、松田聖子コピー・バンド“Sweet Dreams”が<“誰も知らない”秘密の花園>として演奏している動画あり。 


1. これが私の生きる道/ Puffy 
~B.G: Doc / Earl Klugh 

2. 茅ヶ崎に背を向けて/ サザンオールスターズ (『熱い胸さわぎ』収録)
3. Show Me The Way / Peter Frampton 
4. Best Of My Love(我が愛の至上) / Eagles 
5. Make It With You(二人の架け橋) / Bread 
~B.G: Lahaina Luna / Dan Fogelberg & Tim Weisberg 

6. 純潔 / 南沙織 
7. That’s A Way A Woman Is(気になる女の子)/ The Messengers 
8. Wild Night / Van Morrison 
~B.G: SENTIMENTAL AVENUE/ CASIOPEA 
 9. さらば恋人 / 堺正章 
10. It Never Rains In California(カリフォルニアの青い空)/ Albert Hammond 
~B.G: Catherine / Earl Klugh 

11. The Dairy(恋の日記)/ Neil Sedaka 
12. 心のこり / 細川たかし 
~B.G: Guitar Etude No. 3 / Dan Fogelberg & Tim Weisberg 

13. What A Fool Believes / The Doobie Brothers 
14. Steal Away(ふたりだけの夜) / Robbie Dupree 
15.二人のバカンス / 竹内まりや
 ~B.G: Brighton By The Sea(ブライトンの海辺) / Bob James 

16. Born To Run(明日なき暴走) / Bruce Springsteen 
17.アンジェリーナ / 佐野元春 
18.明日なき世代 / 浜田省吾 
19.十七歳の地図 / 尾崎豊 
~B.G: SWEAR / CASIOPEA 

20. Bennie And The Jets(ベニーとジェッツ(やつらの演奏は最高)) / Elton John 
21. まぶしい草野球 / 松任谷由実 (『SURF & SNOW』収録
22.秘密の花園 / 原田知世 (『恋愛小説 2』収録)
21.イェル・ケ・クク / 清水ミチコ (『歌のアルバム』収録)
22.秘密の花園 / 松田聖子 
~B.G: Midnight Motion / Kenny G 

次回11月号は「ジャニーズ特集」をお届けします。

本放送:第四土曜日10/26(土)15:30~18:00 
再放送:第四日曜日10/27(日)8:00~10:30 

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/                          (鈴木英之)

VA:『Natale ai mirtilli』(*blue-very label* / blvd-006)

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クリスマスを前に素敵なコンピレーション・アルバムの音源を入手したので紹介したい。
弊サイトで紹介している多くのアーティスト達も度々プロモーションで訪れる杉並区高円寺のDISQUES BLUE-VERY(ディスクブルーベリー)。このレコード・ショップの中村慶店長が立ち上げたレーベル【*blue-very label*】から11月13日にクリスマス・コンピレーション・アルバム『Natale ai mirtilli』がリリースされる。


楽曲を提供しているアーティストは、昨年弊サイトでも高評価した小林しのの「人魚の夜」を手掛けた元melting holidaysのササキアツシのポプリをはじめ、元BRIDGE(ブリッジ)のイケミズマユミ(キーボーディスト)のソロプロジェクトThree Berry Icecream、ドイツのミュージシャンBrent Kenji(ブレント・ケンジ)によるTime Between。


元ARCHの中村大を中心としたvacation Three(ヴァケーション・スリー)、マルチ・プレイヤーの小園兼一郎のソロ・ユニットsmall garden(スモールガーデン)、女性シンガー・ソングライターsugar meと作曲家エンドウシンゴとのコラボレーション、The Laundriesの木村孝之とネオアコ・ユニットalvysingerによるデュオ・ユニットDiogenes Club(ディオゲネス・クラブ)。


フランス人ミュージシャンのジェローム・ディドゥロによるOrwell(オーウェル)、そのOrwellと交流のあるanoneのキーボーディスト松岡奈津紀によるソロ・ユニットSweet Port.、そして9月25日に13年振りの新曲を配信リリースしたthe Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)という多彩な10組である。 
ジャケットの写真には元Dream Academyのリーダーであるニック・ライアード・クロウズ!の作品が使用されているというから、嘗ての英国ギターポップ・ファンも気になるところだろう。

 

では弊サイトでも過去取り上げたアーティストを中心に、気になった収録曲を解説していこう。
冒頭の「初雪が降った日」はポプリの曲でササキによるソングライティングだ。melting holidays時代を思わせる生楽器と打ち込みによる「Up, Up and Away」(The 5th Dimension)系ソフトロックで、ヴォーカルのreinaの個性的な声質とマッチしている。reinaはコンピの最終曲のソングライティングも手掛けている。 
続く「christmas snow dome」はイケミズの作曲センスが滲み出ているThree Berry Icecreamの曲で、パート毎に異なるアレンジが配置され凝っていて聴き飽きない。この曲にはCM音楽でも知られるSucretsの奥田英貴がギターとプログラミングで参加しており、作詞はRed Go-Cartのmiki hiroseが手掛けているなど、交友の幅広さはイケミズの人徳ゆえといえる。

vacation Threeの「christmas time again」はこれまでの彼等のカラーとは異なる凝ったアレンジで、トット・テイラー経由のブライアン・ウィルソンと言うべきスケールの大きい曲調でティンパニー以外にパンデイロやクイッカがアクセントになっていて新鮮だ。 続く「blue very x’mas!!」はsmall gardenの新曲で、The Bookmarcsの「雲の柱」(2018年)に通じるR&B系のシャッフル・リズムが心地よく、唐突に入る三連符のアクセントも違和感なく聴ける。弊サイトの「名手達のベストプレイ」シリーズでも執筆参加してくれている小園の巧みなベースのプレイも細かく聴いて欲しい。なお彼はコンピ全体のマスタリングも手掛けているというから貢献度は大きい。

そしてこのコンピの中でも出色なのが、diogenes clubによるNRBQカバーの「christmas wish」だろう。オリジナルはアコースティック・スイングのアレンジだが、ここではThe Laundries木村のヴォーカルをフューチャーしたアカペラ・ヴァージョンで、alvysingerこと小野剛志の多重コーラスとの絡みがとにかく素晴らしい。両者ともインディーズ・シーンにおける歌唱力はトップに位置する実力を持っているのが理解出来る。
またバーバーショップ・スタイルのアカペラなので、出だしを聴いて、嘗てのThe Housemartinsの「Caravan Of Love」(86年/ Isley-Jasper-Isleyのカバー)を想起するギターポップ・ファンもいるだろう。筆者的にはこの曲をコンピのベストとして挙げたい。
the Sweet Onionsの「a place of love」も触れぬ訳にはいかない名曲だ。
近藤健太郎によるポール・マッカートニー系譜の新曲で、バースにはダン・フォーゲルバーグの匂いもする、まさしくこの時期にピッタリのウィンター・バラードなのである。近藤のギターとヴォーカルに、マルチ・プレイヤーの高口大輔が残りの全パートをプレイしている。

楽曲提供アーティストのカラーの違いを楽しみながら、一足先にクリスマス気分を味わいたい読者や音楽ファンは是非チェックしてほしい。 
(ウチタカヒデ)


『11月のフィリアパーティVol.3』のご紹介

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9月に13年振りの新曲『夏のシンフォニー』を配信リリースしたthe Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)の近藤健太郎と高口大輔が主宰するインディーズ・レーベルphilia records(フィリア・レコード)が、今月16日にライヴ・イベントを開催するので紹介したい。
今回で3回目ということで出演はスウィート・オニオンズをはじめ、レーベルメイトで9月に配信リリースした「SUNSET」が好評のKNIT RED RUM。
先日紹介したクリスマス・コンピレーション・アルバム『Natale ai mirtilli』に収録でイケミズマユミのThree Berry Icecreamの楽曲に参加した奥田英貴が率いる京都を中心に活動する男女ユニットSucrette、ヴォーカル兼ヴァイオリニストの梶山織江を配するガール・ギターポップのswiss cameraMiki NishidaとKoichi Nishidaによるユニットthe vegetablesとバラエティーな面々である。
11月のアフタヌーンを有意義に過ごしたい音楽ファンは是非足を運んでみては。


【11月のフィリアパーティVol.3】 
11/16(土)開場 12:45 開演 13:15
 @早稲田RiNen
https://waseda-rinen.com/ 

前売 2500円+1drink / 当日 3000円+1drink
 (小学生迄のお子様入場無料)
出演 : the Sweet Onions / KNIT RED RUM / Sucrette /
swiss camera / the vegetables
DJ : tarai(Happy Day,Happy Time!)
お菓子 : milky pop.

the Sweet Onions

KNIT RED RUM

milky pop.によるスイーツ

興味を持った読者はphilia recordsの下記サイトからチケットを予約してほしい。
(テキスト:ウチタカヒデ)


山下達郎 ライブ・クロニクル Part-1(1975~77)

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 今、山下達郎さんが開催しているツアー『Performance 2019』のパンフレットには、彼がツアーを開始した2008年からの回想が掲載されている。そこで、古くからのファンである私も1977年の初ソロ・コンサートから、ブレイクする1980年までのライヴを回想しようと思い立った。私がライヴを初体験した時期は大学生で、ブレイク時には社会人になっていた。そこで今回は、Part-1として学生時代の体験をまとめてみた。


 まず山下達郎さんが日本の音楽シーンに登場したのは1975年4月25日発売の『Songs』だった。当時の私はレコードと音楽雑誌に囲まれた日々を送り、そのほとんどは洋楽といった状態で、和物で聴くのはチューリップとオフコース程度だった。
 その頃の私の日課は輸入盤・中古レコード屋巡回と、パチンコ屋で景品にお目当てのレコードが並んでいないかをチェックすることだった。 そんな私の通った学校は駿河台に校舎のあった時代の中央大学で、授業の合間にはお茶の水や神保町界隈をうろつくことが常だった。
 そして神保町でよく覗く店のひとつが「ササキレコード社」、そこで衝撃のサウンドに遭遇した。それは店内にBGMで流れていた日本語には聞こえないような歌を耳にしたのだった。気になって店の視聴盤コーナーを除くと、その正体はSuger Babeなるグループだった。気になりはしたが、その日のお目当てであるStevie Wonderの『Innervisions』をゲットし、次の機会にとその場を後にした。


 その直後にFM東京の「週刊FMサウンドスペシャル」なるプログラムに登場したSuger Babeの演奏を聴き、完全にノック・アウトされてしまった。さらに、ユーミンの『MISSLIM』『COBALT HOUR』で最高のコーラスを聴かせているのも彼らだと知り、興味は深まるばかりだった。
 そして“ぴあ”でライヴ・スケジュールをチェックし始める。しかし、海外の来日公演(2/7:Eagles、3/11:Neil Youngなど)に行く友人はいても、和物ライヴに付き合ってくれる知り合いはなく、一人で行く勇気もななかった。しばらくして『Songs』は廃盤となったことを知り、入手困難となってしまった。


 そして1976年3月にFMから『Niagara Triangle Vol.1』の告知CMで<Dreaming Day>を聴き、その素晴らしさに即購入した。そのジャケット画像も気に入ったので、Tシャツに絵の具書きしてそれを着て見せびらかしていた。その後やっと一人でもライヴに行く気になるも、その直後に「Suger Babe3月31日で解散」の報道を聞く。だだ会場の「荻窪ロフト」の場所もわからず、結局Suger Babeの生ライヴ体験ははかなくも消えた。とはいえこの解散コンサートは、1978年にFM東京のスペシャル番組でオンエアされており、追体験だが(「佐渡おけさ」の掛け声ではじまる)感動のステージを聴くことができた。


 またこの年10月には週刊FM読者欄に『Songs』の交換希望者を発見、即座に連絡を取り私所有の『Live Full House/The J.Geils Band』と交換が成立、入手後は盤がすり減るほど聴きまくった。そんな達郎さんの歌を全ておぼえた私は、ゼミの合宿の親睦会で勢い余って<Ⅾown Town>をアカペラを手拍子付きで歌っている。また翌年には友人の大学学園祭で、友人の率いるバンドのギタリストがSuger Babeのファンという縁で、リハーサルの場で<Ⅾown Town>をバンド演奏付きで歌わせてもらうという最高の気分を味わっている。

 そして1977年には達郎さんのデビュー作『Circus Town』が発売され、このレコードもよく聴いた。そんなある日、音楽雑誌で「山下達郎のニュー・アルバムは全編アカペラ・アルバムになる」(実際にはB面の一部だった)という記事を目にする。

 その直後にバイトで通っていた渋谷西武A館の休憩中に、電信柱に「山下達郎Sings!」というビラが貼ってあった。それを見た私は、B館地下のCISCOプレイガイドに飛び込み、同行するパートナーのあてはなかったがチケットを2枚ゲット。そして身近にいるメンバーをかたっぱしから打診し始めた。すると「中島みゆき命」を自認するバイト先の同僚女子が「絶対行きたい!」という意外な(?)反応で、いざヤクルト・ホールへ。


◎1977年5月27日(金) 『Sings! From Circus Town To Spacy』 新橋ヤクルトホール

 18時開場ながら1時間前に到着すると、既に相当数の行列ができていた。初参戦の私は 会場のキャパ(574人)も知らず「山下達郎って人気あるんだ!」と改めて驚き。開場時間となり入場すると、近隣の席にはバード・ウォッチングでもするかのようなステレオ・マイクをセットしてSONYのデンスケで収録を準備する来場者もいた。他人事ながらここまで堂々と録音しても大丈夫?と思わずにはいられなかった。
 ざわついているなか、照明が落ち<Love Space>でコンサートがスタートした。ただ、新譜を手に入れてなかった私には何を歌っているのかさっぱり解らなかった(-_-;)ところがこの曲の間奏で「キーボード、坂本龍一!」と達郎さんが叫び、ダイナミックで力強いグランド・ピアノが響き渡ると、その迫力あるプレイを聞かせている人物が、少し前に道玄坂のヤマハ店頭で見た「大貫妙子ミニ・ライヴ」でバックを務めていたピアニストだとわかった。
  なおこのコンサートのセット・リストは、ソロ二作と<God Only Knows><Ooh Baby Baby>という構成だった。曲間のトークではアメリカでの『Circus Town』のレコーディング時の話があり、「向こうのスタッフに「T.V.Trackはいらなのか?」と聞かれたんです。要するに「カラオケ」のことで、「お前、日本に戻ってT.V.に出るとき必要だろ?」と言われ、せっかくなので作ってきました。」(会場内大爆笑)、「ただ録音したものの使う当てがないので、ここで披露します。」と<Minnie>を歌っている。
 そんな中、この日一番の盛り上がりは、「では皆さんにお馴染みの」といってアカペラが流れ、<サイダー’76>を披露、これには割れんばかりの拍手と大喝采が起こった。そして当初のアカペラ・アルバムにするという名残は、続いて披露した<朝のような夕暮れ>で聴かれる重厚感ある多重録音のコーラスだった。
 また私の席周辺では、その後で歌った<Candy>について「あのオルゴールはどこで作ったんだろうね?」という小声が飛び交っていた。<Circus Town>で本編が終わり、アンコールでは坂本龍一さんとともに登場。その際、ファンの一人が坂本さんにプレゼント!その光景に達郎さんは「龍一、人気あるね!」。そして愛用のテレキャスターで、Lovin’ Spoonful<Daydream>風の弾き語りで<Last Step>(後に『JOY』収録のアレンジ)を披露して幕は下りた。

 これが私の達郎さんの初体験ライヴだった。そして翌日、佐々木レコード社に駆け込み、発売されたばかりの『Spacy』を手に入れた。その日から朝昼晩と毎日昼夜を問わず、狂ったように聴きまくっていた。当然のことながら、達郎さんのライヴ情報もチェックしていた。すると翌月18日の中野公会堂でのSentimental City Romance(以下、センチ)「Sentimental Party Vol.2」に、ゲスト参加するという記事を発見した。ただ、このライヴは急な発見だったので、パートナーを見つけられず、一人で参戦することになった。



◎1977年6月18日(土)  『Sentimental Party Vol.2』 中野公会堂
 
 センチはデビュー時から“名古屋のEagles”と音楽雑誌で話題となっており、以前からレコードは聴いていたが、ライヴはこの日が初めてだった。 まずオープニングはアコースティックでのコーラスを活かしたセット・リストだった。ただ、私は前年2月に本物のEaglesの初来日公演で、完璧なコーラスを聴いており、それから比べればやや物足りなかった。
 そしていよいよ達郎さんの出番となる。さっそうというより、飄々と登場してファースト・コンサートのアンコールで披露した<Last Step>が始まった。演奏が終わるとピアノに向かい、いきなり「とぉ~~びちるぅ~あいのぉ~つぶてぇ~~は、きぃ~みにもすぐにぃ~とどくぅ~はず♪♪な~んて曲を収録したアルバムを先月発表しました!」とコメント。一瞬唖然としたが、彼のファンもかなりいたようで会場内は大拍手が起こる。
  ところがその後は「なにやろうかな~」とつぶやく達郎さん。そこに、会場から「Down Town!」というリクエストがあり、会場中拍手喝采で大興奮。それを受けた達郎さんは「Down Town?そんなのピアノで出来るわけないだろ!」と切り返すも、ギターに持ち替え「な、ないろのぉ~」と歌いだす。するとステージ袖から、当時センチに加入していたSuger Babeのオリジナル・ドラマー野口明彦さんが加わり、会場は興奮のるつぼに。Suger未体験の私にとっては夢の共演であり、この光景が見れただけでも来たかいがあったというもの。
 続いて達郎さんが披露した曲は、ヤクルト・ホールでもコメントした「T.V.Track」の話題にふれ、ここでは<Circus Town>を披露。歌い終わると、「ちっとも歌った気がしないのでもう1曲やります。」と、ピアノに向かいドゥーワップ・ナンバーを熱唱。演奏後は大きな拍手に送られて舞台袖に消えていった。
 こんな興奮気味の後に、再びセンチが登場。この時期は名盤『City Magic』のリリースをひかえ、SONY時代よりはかなりソリッドな演奏をきかせてくれた。またゲスト・プレーヤーには後に吉田拓郎さんのバックにも加入する青山徹さん(元愛奴)が飛び入り。そこで聴かせたハードな<ポテトチップスかじるすりる>などは、これまでの印象を一新とさせる新鮮な驚きがあった。それは当時の “めんたんぴん”をもしのぐような迫力があった。  
 
 と2ヶ月連続で達郎さんのライヴに接することができ、ますます夢中になっていった。3ヶ月目は千葉県南房国定公園内で開催されるフェスのメンバーにラインナップされていた。さすがにこんな遠隔地まで一人でいくのはたまらないと、中学時代からの親友を説得して向かった。ちなみに彼は1972年の幻のRolling Stonesコンサート・チケットを求め、学校をエスケイプして静岡から2泊3日野宿で並んだ仲間で、Keith Richardを崇拝する悪友だった。そんな彼の趣味はStonesのブートレックを手に入れてKeithのフレーズを研究するマニアで、説得には「美乃屋の土屋君や、四人囃子に新加入したギタリストは、Keith好きなら絶対に見ておくべき!」という恩義せがましいトークを使って引っ張り込んだ。


 ◎1977年7月29日(金) 『FM東京開局7周年 グリーン・グリーン・ポップ・フェスティヴァル』千葉マザー牧場
出演:四人囃子、山下達郎、吉田美奈子、来生たかお+深町純グループ、 大橋純子&美乃屋セントラルステーション(出演順)

 抜けるように晴れ上がった解放感に満ちた郊外牧場でのフェスだ。最初に登場した四人囃子は中心メンバーだった森園勝敏さん脱退後の初披露ということで話題となっていた。オープニングはリリース直前の新作『PRINTED JELLY』から<ハレソラ>。新メンバーの佐藤ミツルさんはギターもヴォーカルもフレッシュな感じだった。このお披露目公演では<空飛ぶ円盤にお弟が乗ったよ>や<カーニバルがやってくるぞ>といった森園さん在籍時のナンバーもそつなくこなしていて、ライティングの効果が得られない昼のステージだったのがもったいない気がした。

 そして次に登場したのが達郎さんだった。オープニングにはウォーミング・アップのように弾き語りで<Surfer Girl>を披露した後に、ファースト・コンサート同様に<Love Space>からスタートした。バック・コーラスは次の出番になっている吉田美奈子さんで、演奏も達郎さんのヴォーカルも絶好調で、ヤクルトホールでのライヴとほぼ同様に<素敵な午後は>や<Solid Slider>といったレパートリーで進行。半ばにファルセットで歌った<Ooh Baby Baby>では、「裏声で歌うとよだれが出すんですよ」とのコメントに会場の笑いを誘う。そんな彼のステージは<Circus Town>にて約一時間のパフォーマンスは終わった。 フェスなのでアンコールはなしだった。

 続いては当日達郎さんのコーラスを担当していた吉田美奈子さん。彼女のライヴは初めてだったが、この年にリリースした『TWILIGHT ZONE』は達郎さんが共同プロデューサーで、かつ演奏メンバーも達郎さんのバックそのままだったので、興味深く見ていた。そのステージの袖には達郎さんが残っていたので、「どこかで加わってくれるのではないか?」とほのかに期待したが、それは当てが外れた。とはいえ、聴きたかった<恋は流星>も演奏され充実した内容だった。とはいえ、ただ『FLAPPER』的なポップな世界観を予想していたファンには少々ヘビーだったかもしれない。
 この3組のステージが終わったところでセットの入れ替えで小休止となり、夕暮れが近づいてきた。

 そして登場したのは、<赤毛の隣人>で気になる存在だった来生たかおさん。Gilbert O’sullivanを崇拝している彼らしいポップなナンバーで心地く聴くことができた。同行してくれた友人からも「俺は好みじゃないけど、ヒデが好きそうな感じだね!」と、図星だった。そのステージで一番気になったのが、バックでギターを演奏するメンバーにMoonridersを脱退したばかりの椎名和夫さんがいたことだった。

  そして日も暮れ、このフェスのトリを取ったのが、<Simple Love>のヒットで一番勢いのあった大橋純子&美乃屋セントラルステーション。大橋純子さんのパワフルなヴォーカルとともにギタリスト土屋昌己さんのプレイも冴えわたっていた。そんな土屋さんはCharさんを意識したような白できめたスーツやハットがかなり目立っていた。なおこの日最大の収穫は、後に私が制作のオファーを受けることになる林哲司さん作の<Rainy Saturday & Coffee Break>に魅了されたことだった。


 私は達郎さんがブレイクする1980年までかなり熱心に彼のコンサートに足を運んでいた一人だと思う。この「Part-1」では私が『Song』を聴いてSuger Babeのファンとなり、達郎さんがソロ活動を始めた時期に通った学生時代のライヴ体験をまとめてみた。
 次回のPart-2では、社会人となった1978年から彼がブレイクする1980年までのライヴ体験を、今ではお約束となっている<Let’s Dance Baby>の「クラッカー」初登場なども交えてまとめる予定だ。当時、一緒に聴いていたのは静岡にいた弟だけで、東京には仲間はいなかった。この時期はある面、「達郎ライヴ暗黒の自分史」なのかもしれない。ただ、私がリアルで記憶している達郎さんのトークも、ファンにとってはセット・リスト以上に興味深いはずなので私がボケて忘れてしまう前に披露しておきたいと思う。
(鈴木英之)

The Bookmarcs:『君の気配』

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The Bookmarcs(ザ・ブックマークス)が、11月28日に新曲「君の気配」を配信リリースする。
 7月末にリリースした「Let' Get Away〜かりそめの夏〜」に続いて今年2曲目となるこの曲は、実力派女性シンガー・ソングライターの青野りえがゲスト参加しているのが注目に値する。
昨年11月28日のセカンド・アルバム『BOOKMARC MELODY』(VSCF-1769/FRCD-061)に続くサード・アルバムのリリースに期待しつつ、この新曲を紹介したい。


弊サイト読者は既にご存じの通りだが、彼等The Bookmarcsは作編曲家、ギタリストとして活躍する洞澤徹と、13年振りの新曲「夏のシンフォニー」を9月にリリースしたばかりのSweet Onionsのヴォーカリスト近藤健太郎が2011年にタッグを組んだ男性2人組ユニットである。
これまでに2枚のオリジナル・アルバムをリリースしており、ソフトロックとシティポップの良さを融合しながら大人が聴けるポップスをクリエイトしている。
今回ゲスト・ボーカリストとして参加した青野りえは、ゴスペルグループThe Voices Of Japanのメンバーとして東芝EMIよりリリースされた2枚のアルバムをリリースしている。また和田アキ子をはじめメジャー・アーティストとも共演している実力派で、その後シティポップ・ユニットaoyamaや現TWEEDEESの沖井礼二のソロ・プロジェクトFROGにもゲスト・ボーカリストとして参加しており、現在はCM音楽やライブ、レコーディングでのセッションなどその活動は多岐に渡っている。

君の気配/The Bookmarcs

ではこの新曲「君の気配」について解説しよう。

洞澤がプレイするマルチ・トラックのギターとプログラミングされたドラム・トラックに、セッション・ベーシストの北村規夫が加わった16ビートのR&B系サウンドはAOR~シティポップの枠を超えたセンスを強く感じさせ、デイヴィッド・T・ウォーカーを彷彿とさせるハンマリング&プリング・ハープ奏法など洞澤のフレーズが随所で光っている。
またサビの転回はウワノソラの「Umbrella Walking」(『陽だまり』収録 17年にも通じる、スタッカートで跳ねるメロディが実にプリティーだ。
近藤の高域で響く甘くソフティな声質と、レンジが広くテクニックを備えた青野の声質のブレンドは絶妙にマッチしており、この曲の歌詞が持つ不毛の恋愛観を引き出している。二人によるコーラス・ワークも合わせてじっくり聴いて欲しい。
とにかく秋から冬へと繋がるこの季節にぴったりのレイジーな曲なのである。 
最後にThe Bookmarcsの二人からのコメントも紹介しておこう。

いつか叶えたいと想っていたシンガーソングライター青野りえさんとのコラボレーション。そのために温めていた自信作をようやく発表できて幸せな気分です。
洞澤徹

「青野りえさんのソロアルバム「PASTORAL」がお気に入りで、今でも度々聴いています。そんな青野さんとデュエットできて大変光栄です。

寒い冬の訪れにぴったりな曲です。せつなさやあたたかさを感じていただけたら嬉しいです。」
近藤健太郎


配信リンク(amazonは下記画像からリンク)
Apple Music
Spotify 

(ウチタカヒデ)



FMおおつ 音楽の館/Music Note 2019年11月号「ジャニーズ特集 昭和編」

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 8回目の11月号は今年7月9日に逝去された「ジャニーズ帝国の総帥/ ジャニー喜多川」を偲び、氏に追悼をこめた「ジャニーズ特集」。彼の長い歴史は一回の特集では無理があり、前後半の二部に分け、今回は「昭和年間」。
 トップは「昭和」を代表する「たのきんトリオ」の「マッチ」こと近藤真彦さんのデビュー曲<スニーカーぶる~す> <スニーカーぶる~す> この曲は新人としてオリコン初の初登場1位、ミリオンセラー(104.7万枚)を記録、1981年のセールスで年間3位の驚異的ヒット。この年この曲の上位は、寺尾聰さん<ルビーの指輪>(132.7万枚)、竜鉄也さん<奥飛騨慕情/>(128万枚)の2曲、なんと松山千春さん<長い夜>(86.6万枚)よりも大きくセールスを伸ばしている。
 
  最初のBGMはABC-Zの<Never My Love>、後で触れますがこの曲はジャニーさんにとって残念な歴史を物語る曲。まず彼の芸能界参入は1962年6月、当時所属タレントはジャニーズ。彼らは同年8月にNHK『夢であいましょう』で田辺靖雄さんのバックが初仕事。 その年12月の<若い涙>で歌手デビュー、そして1966年には渡米してワーナーブラザーズと契約し、レコーディングを行うも、その音源は未発表となっている。その1曲が<Never My Love>で、同じワーナー所属のThe Associationがリリースし、全米2位のミリオンセラーとなり、ジャニーさんにとっては遺恨を残す出来事になった。この事実はジャニーズのメンバーだったあおい輝彦さんが1977年リリースの『あおい輝彦 オンステージ』でトークしている。

 その翌年に帰国したジャニーズは、GSブームにのってテレビ・ドラマの主題歌<太陽のあいつ>などをヒットで人気グループに。なおこの曲は少年隊が平成4年の「NHK紅白歌合戦」でカヴァーした「ジャニーズ・クラッシック」としても長く引き継がれている。そんなジャニーズは、1967年11月にわずか5年で解散。 そんな彼らの後継者はバックダンサーを務めたフォーリーブス。この当時から次世代には先輩格のバックを務める形態は始まっている。
 そのフォーリーブスはこの年10月にスタートの『プラチナ・ゴールデンショー』のレギュラーを務め、翌年9月にCBSソニー国内契約1号として<オリビアの調べ>でレコード・デビュー。 そのフォーリーブスのメンバー一番人気は「こーちゃん」こと北公次さん。このグループは元々彼をデビューさせるために結成され、彼はアイドルで初めてバク転パフォーマンスを演じている。一般に名前が通っていたのは、特撮番組「マグマ大使」で村上マモル役を演じていた「トシ坊」こと江木俊夫さん。そして「こーちゃん」と人気を二分し音楽面を支えた「ター坊」こと青山孝さん、「マー坊」ことおりも政夫さんの4人。この「坊」というニックネームはいかにも“昭和的”。
  そんな彼らは「歌って踊れる」スタイルで、1970年にはNHK紅白歌合戦にも出場するトップ・アイドルになって、人気は全国区に。実は私、著書の「よみがえれ!昭和40年代」の掲載用に、江木さんにお会いする機会を持っている。彼から当時のことを伺うと「僕たち人気はあったけど、大ヒットはなかったんだよね。」とコメントされた。その言葉通り彼らの代表的なヒット曲といえば、1971年に渡米して<Season Of The Sun>のタイトルで録音した<夏の誘惑>や、江木さんの「だって地球は丸いんだもん!」のセリフで知られる<地球はひとつ>のトップ10が最高だった。 

 そんなジャニーさんのアイドル発掘手腕を決定的にしたのは、間違いなく郷ひろみさんを見出したこと。彼は1971年にスカウトされ、他のアイドルの卵たち同様に、先輩であるフォーリーブスのバックダンサーとしてスタート。そんな彼のユニ・セックス的で抜群のルックスは、デビュー前にファンクラブが結成されるほどだった。 そして1972年1月にはNHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優デビュー、8月には<男の子女の子>で歌手デビュー、8位のヒットを記録。なおこの曲はGSオックスの<ダンシング・セブンティーン>の作者である筒美京平さんが改編したもの。 
 そして1973年には野口五郎さん、西城秀樹さんと共に「新御三家」と呼ばれ、あっという間にトップ・アイドルに。個人的にはひろみさんのお父さんが私の父と同じく「国鉄職員」だったということに親近感を覚えた。
  その後2作目の<ちいさな体験>がベスト5(4位)入り、<愛への出発(スタート)><裸のビーナス><魅力のマーチ><モナリザの秘密>と4作連続2位となり、フォーリーブスに変わり事務所のトップスターになった。当時私のお気に入りは8作目の<花とみつばち>。それはThe Doorsの全米1位曲<Hello I Love You>風で、その元ネタKinksの第4作<All Day And All Of The Night>にもよく似ていた。 なお郷さんが1位を獲得したのは1974年の10作目<よろしく哀愁>のみ。個人的には<ブルーシャトー>風の歌謡曲ど真ん中風のアレンジはあまり好みではない。 


 郷さんをトップ・アイドルに押し上げ、先輩格のフォーリーブスには『見上げてごらん夜の星を』のようなミュージカルを中心の活動をさせている。そして1974年になると「ジャニーズJr.第1期生」を「フォーリーブス」と「郷ひろみさん」のバックダンサーにチーム分け、翌1975年にフォーリーブス組から「JOHNNYS’ジュニア・スペシャル」として<ベルサイユのばら>でデビューさせた。ただこの方針は、「郷ひろみ」側の主力メンバーたちの不満をあおり、彼らは事務所を脱退し脱退組でメッツなるグループを結成。これが引き金となって彼らと親密だった郷さんまでが移籍するという騒動に。とはいえ、ジャニーさんはその後もアイドル最高傑作は郷ひろみであると断言されている。

  このように、郷ひろみという看板タレントを失った事務所は、引き続きジャニーズJr.からスター候補を輩出。その中には、「孤児院出の捨て子」という豊川誕さんを「不幸キャラ」を売りに<星めぐり>等のヒットで人気者に。そして1977年には郷さんの系譜の美少年川崎麻世さんを発掘。彼はジャニーズJr.だけでなく、NHKの「レッツゴー・ヤング」のサンデーズの主力メンバーで、後輩たちから「麻世先輩」と慕われていた。そんな彼はピンクレディーが元祖の日清食品「焼きそばUFO」のCMにも起用されるも、デビュー曲の<ラブ・ショック>以降16枚のシングルは全てトップ40圏外。 そしてフォーリーブスは1977年に<ブルドック>で起死回生をはかるも、トップ40入りがやっとで、翌1978年には全国ラストツアーを行い解散。 
 
 このように1970年代後半は潜伏期間のジャニーズ事務所は、1979年に始まった武田鉄矢さん主演の『3年B組金八先生』に生徒役で出演した所属タレントたちで1980年代以降は再び快進撃が始まる。そのトップバッターは、川崎麻世さんのバックダンサーを務めた経験のあるトシちゃんこと田原俊彦さん。なおこの番組で共演したマッチ(近藤真彦さん)とよっちゃん(野村義男さん)の三人で「たのきんトリオ」として人気を博した。 
 「郷ひろみ~川崎麻世」に続く美少年系譜のアイドル、トシちゃんは1980年6月にLeif Garrettの<New York City Nights>をカヴァーした<哀愁デート>で鮮烈なデビューを飾った。ただこのデビュー曲は、特大ヒット<ダンシング・オールナイト>に阻まれ1位を逃した。とはいえ2曲目の<ハッとして!Good>3曲目<恋=Do!>は連続1位、その後デビュー曲から37作連続トップ10入り(通算38曲、12曲は.1位)を獲得、「新御三家」からトップ・アイドルの座を奪い取った。

  また彼はMicheal Jacksonを彷彿させるダンス・パフォーマンスでも存在感を際出たせ、久保田利伸さんがデビュー前に書下ろした<It’s Bad>(1985.11.28. 24th.4位)や、『教師びんびん物語』の主題歌<抱きしめてTONIGHT>(1988.4.21. 32th.3位)などで見せたパフォーマンスはその代表。そしていかにもトシちゃんらしいナンバーといえば、ゴージャスな雰囲気に仕上がった<ラブ・シュプール>(1982.12.18. 12th.3位)。この曲は、たのきんトリオ出演映画『ウィーン物語 ジェミニYとS』の主題歌だったが、30万枚限定発売のためにファンが必死で探し回った。

  続いては「たのきんトリオ」で最もデビューが待たれていたマッチ。彼はジャニーズ事務所に初のミリオン・セールスをもたらす。そんなマッチは16曲が1位を獲得、1987年の22作<愚か者>でジャニーズ事務所出身者初の(第29回)日本レコード大賞受賞者。 山下達郎ファンとしては彼の書き下ろし<ハイティーン・ブギ>(1982.6.30. 7th.1位)<永遠に秘密さ>(1984.9.13. 15th.1位)がイチオシ。コーラスを竹内まりやさんとEpoさんが担当した前者は、今も達郎さんのライヴのセット・リスト。また「ちびまる子ちゃん」でお馴染み<おどるポンポコリン>のヒット・メーカー織田哲郎さんのカヴァー<Baby Rose>も。とはいえマッチを代表するヒットと言えば、やはり<ギンギラギンにさりげなく>(1981.9.30. 4th 1位)。

 トシちゃんとマッチの次に送り出したのは、1981年4月にスタートしたさとう宗幸さん主演の『2年B組仙八先生』に生徒役の出演者「シブがき隊」。メンバーはフックンこと布川敏和さん、モックンこと本木雅弘さん、ヤックンこと薬丸裕英さんの三人。 彼らは1982.年5月に<NAI・NAI 16>でデビュー、実績としては28作中に1位獲得は9作目の<喝!(カツ)>のみ。そんな彼らを代表するナンバーは「NHKみんなのうた」で大反響をよび、発売前に1985年『第36回NHK紅白歌合戦』で披露された<スシ食いねェ!>、英語版の<OH!SUSHI>まで発売されたほど。 個人的には1983年の7作<挑発∞ (MUGENDAI)>を推す。この曲作者井上大輔さんが自身の番組「音楽ってなんだ」で、自らが録音したデモの英語版の出来は秀免だった。

 そして1983年によっちゃんはTHE GOOD-BYEでバンド・デビュー。メンバーはリーダーでギター担当の通称ヤッチン曽我泰久、ドラムスのこーちゃん江藤浩一、ベースにはハチこと故加賀八郎の4人。彼はバンドで「レコード大賞最優秀新人賞」を獲得し、ジャニーズ事務所の4年連覇。通称「よっちゃんバンド」と呼ばれるも、ワンマン・バンドではなく四人対等。彼らは1989年までにリリースしたシングル15枚中トップ10ヒットが2曲のみながら、よっちゃんは作曲家としてキョンキョンに提供した1987年<キスを止めないで>で1位を獲得。この曲は翌1988年に発表した第8作 8th『Album』に<Don't Stop Kiss>のタイトルでセルフ・カヴァー。
  このバンドはユニークな活動でマニアックなファンを獲得している。例えばアルバム・タイトルで、デビュー作『Hello! The Good-Bye』はThe Beatlesの<Hello Goodbye>、6作『#6 DREAM』はJohn Lennonの<#9Dream>、9作『Revolution No.9』はThe Beatlesのアルバム収録曲と遊び心満載。シングル12作<マージービートで抱きしめたい>はThe Beatles<抱きしめたい>のジャケットをパロッた大傑作。また<のぞいてFeel Me, Touch Me>はThe Whoの『Tommy』収録<See Me Feel Me>を連想させる改心のナンバー。 

 ジャニーズではANKHに次ぐ二番目のバンド活動で、ジャニーズにバンドというカテゴリーを定着させた。そんな彼らに続いたのが1988年に<DAYBREAK>でデビューした男闘呼組。メンバーはリーダーでキーボード担当の前田耕陽、リード・ギターの成田昭次、リズム・ギターの岡本健一、ベースの高橋一也の4人編成。彼らはデビュー作から4作連続1位を獲得し、ジャニーズのバンドで『NHK紅白歌合戦』(第39回、40回)に初出場。そんな彼らは最初の2作のアルバムにはシングルを未収録と、The BeatlesやRolling Stonesがデビュー時にイギリスで実践した戦略を敢行。これはアルバムとシングルを明確に分け、ファンに二度買いをさせない姿勢だった。

 次は本来の「歌って踊れる」スタイルの集大成少年隊。メンバーはリーダー「ニッキ」こと錦織一清さん、「カッチャン」こと植草克秀さん、そして「ヒガシ」こと東山紀之さんの三人。彼らはトシちゃんやマッチのバックダンサーとして人気を集め、歌唱力もパフォーマンスも精度が高く、全員バク転ができる本格派。1985年12月12日のデビュー曲<仮面舞踏会>は、マッチに続き「初登場1位」。当時それを間あたりにしたシブがき隊に自ら解散を決意させたほど。なお嵐<a Day in Our Life>は少年隊の<ABC>をサンプリングしたナンバー。個人的には『俺たちひょうきん族』の「ひょうきんベストテン」に登場し、<STRIPE BLUE>を歌ったことが印象深い。このコーナーは仮装の偽物や、懐かしの有名人の溜り場で、そこに本物のトップ・アイドルが登場するのは前代未聞の出来事だった。
 
 今回の最後は、1987年にデビューした「最後のスーパーアイドル」光GENJI。そのメンバーは、「GENJI」を組んでいた諸星和己さん、佐藤寛之さん、山本淳一さん、赤坂晃さん、佐藤敦啓さんに、「光」を組んでいた内海光司さん、大沢樹生さんが合体した大所帯の7人編成。平成に入り結成された大所帯のグループの起源は彼ら。そのパフォーマンスはローラースケートを駆使したもので、爆発的なブームとなり一躍スターダムに上り詰めた。 デビュー曲は、1986年の<モーニング・ムーン>以降に上昇機運にあったチャゲ&飛鳥。この二組のタッグはまさにケミストリーで、デビュー曲<STAR LIGHT>は1位を獲得、以後8作連続1位。1988年には1978年のピンクレディー(1.UFO、2.サウスポー、3.モンスター)以来年間売り上げのトップ3を独占(1.パラダイス銀河、2.ガラスの十代、3.Diamondハリケーン)する快挙を達成。さらに7位には<剣の舞>まで送り込んでいてベスト10に4曲、これも1977年のピンクレディーの記録(6位透明人間)に並ぶもの。 この驚異の実績に<パラダイス銀河>で「日本レコード大賞」を受賞、ジャニーズ事務所はマッチに次ぎ二連覇。

 今回の最後は「忍たま乱太郎」の主題歌<勇気100%>。この曲は平成年間でも多くのジャニーズにカヴァーされている<平成編>につながるナンバーで、本家は光GENJIだった。 

1. スニーカーぶるーす/近藤真彦 
~B.G: Never My Love / ABC-Z 

2. 太陽のあいつ/ ジャニーズ 
3. 夏の誘惑/フォーリーブス 
~B.G: ダンシング・セブンティーン / オックス

4. 男の子女の子/ 郷ひろみ 
5. 花とみつばち/郷ひろみ 
6. よろしく哀愁 /郷ひろみ 
~B.G: 見上げてごらん夜の星を / フォーリーブス 

7. ベルサイユのばら/ Johnnys'ジュニア・スペシャル 
8. 星めぐり / 豊川誕 
9. ラブ・ショック/川崎麻世 
10.ブルドック/ フォーリーブス 
~B.G: New York City Nights / Leif Garrett 

11. ラブ・シュプール/ 田原俊彦 
12. It's BAD / 田原俊彦 
13. 抱きしめてTONIGHT /田原俊彦 
~B.G: 夢であいましょう/田原俊彦 

14. ギンギラギンにさりげなく / 近藤正義 
15.ハイティーン・ブギ/近藤正義 
16. 愚か者 /近藤正義 
~B.G: スシ食いねェ! /シブがき隊 

17. Nai・Nai 16(シックスティーン)(Live) /シブがき隊 
18. 挑発∞(Live) /シブがき隊 
~B.G: キスを止めないで/ 小泉今日子 

19. のぞいてFeel Me, Touch Me / THE GOOD-BYE 
20. マージービートで抱きしめたい/ THE GOOD-BYE 
21. DAYBREAK / 男闘呼組 

~B.G: a Day in Our Life / 嵐 
22. 仮面舞踏会 / 少年隊 
23. STRIPE BLUE / 少年隊 
~B.G: 君だけに / 少年隊 

24. 剣の舞 / 光GENJI 
25. 太陽がいっぱい / 光GENJI 
26. パラダイス銀河/ 光GENJI 
~B.G: 勇気100% / 光GENJI 

次回12月号は「ジャニーズ特集(平成編)」です。 

本放送:第四土曜日11/23(土)15:30~18:00 
再放送:第四日曜日11/24(日)8:00~10:30 

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/
                          (鈴木英之)

NOTO:『NOTO』(考槃堂商店/KHDR-002)桶田知道インタビュー

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NOTOは昨年5月にセカンド・ソロアルバム『秉燭譚(ヘイショクタン)』(KHDR-001)をリリースした桶田知道の企画的プロジェクトである。
桶田はプロデュースの他、ソングライティングとアレンジ、エンジニアリングまでを手掛けている。このプロジェクトには、ヴォーカリスト(Voiceと表記)にYUKI SHIGA、もう一人のソングライター(一部アコースティック・ギターもプレイ)として眞鍋剛基が参加している。
 これまでの桶田のソロアルバム『丁酉目録』(UWAN-002)や『秉燭譚』とコンセプトやサウンドとは明らかに違い、このプロジェクトの在り方も不明な点が多い。
筆者個人のフェイヴァリット・ナンバーはドラマティックな展開を持つプログレ・テクノというべき「緑の心臓」(某プロサッカークラブの公式ファンクラブとは関係ない)だが、ムーンライダーズ・ミーツ・大貫妙子的な「野辺のカレード」にはロシア民謡的コーラスが入り、80年代テクノ歌謡風の「浮かれ気分」はタイトルそのままにデビュー時の快活な頃の飯島真理の匂いもしたりと、いちいちマニア心をくすぐる。とにかく掴み所が無く一筋縄ではいかないのが、この”NOTO”というプロジェクトなのだ。
ここではリリース前で多忙な桶田にこのアルバムについて聞いたインタビューをお送りしよう。

桶田知道

●まず、このプロジェクト“NOTO"で音楽制作しようとしたきっかけを教えて下さい。

桶田:ソロ転向の際に立ち上げた「考槃堂(コウハンドウ)」という自主レーベルの、一応主宰者という観点から、桶田名義作品じゃない物もあっていいのでは?と、ふと思ったのが事の発端であったと記憶しています。あとは流れるまま、というような感じです。タイミングよく今作参加の2名と知り合った事もあり、大きく振り切った企画盤にしてみようと考えました。

●プロジェクトに参加したメンバーはどういった方々ですか? 

桶田:今回参加していただいた2名とも共通の友人を介して知り合いました。 ”Voice”をお願いしたYUKI SHIGAさんは某コンペ提出用音源の仮歌でお願いしたのが出会いです。歌メロのレンジが広めの編曲、且つ少し特殊な歌唱法をお願いしたのですが割とすぐ対応していただき、各音域それぞれに違った魅力があり、それでいてフラットな印象でした。
後日オファーの際「かなり変な加工もしますが大丈夫ですか?」との確認にも快く応じていただき参加が決まりました。

楽曲提供・アートディレクションと多岐にわたって協力いただいた眞鍋剛基氏とは偶然にも音楽趣味が似ており色々話は盛り上がったのですが、同じ音楽の話をしているにも関わらず、どうも切り口が特殊だなと感じました。手法や背景に焦点を当てるような彼独自の深層的な観点が面白く、何か一緒にやるべきだと思ってオファーしました。
『秉燭譚』で作詞参加の岩本孝太氏にも言えることですが、そういった一種の特殊性を持った身近な人を放っておけない性分なんだと思います。


YUKI SHIGA

眞鍋剛基

 ●「特殊性を持った身近な人を放っておけない性分」というのが桶田さんらしいですね(笑)。
ではこのプロジェクトに欠かせないお二人の良さが出ている点を挙げて下さい。

桶田:YUKI SHIGAさんは言わずもがな声の良さだと思っています。個人的な感想ですが。彼女の嗜好性はよく存じませんが、今回の”NOTO”は非常に異質なものだったと思いますし、ゆえに飾らないスタイルというのがすんなり引き出せたように思います。
非常に魅力的でした。 眞鍋氏の曲はメロディも詞も”NOTO”の内面性が出ている印象で、当たり前の話ではありますが、僕の曲とは毛色が違うのでアルバムトータルの抑揚がつきましたしソロでは出せない面白さが出せたと思います。アートディレクションにおいても彼の感性が色濃く出ていると思います。

●作曲やレコーディングはいつ頃から着手しましたか?またその期間は?

桶田:『秉燭譚』の時もやりましたが、僕は制作前に簡単な企画書、覚書のようなものを作ります。 特に今回は完全な企画モノなのでその作業は必須で、それを作ったのが3月頃、まずは眞鍋氏に共有してもらい、4月末に数曲上がったという感じです。
眞鍋氏作の「暮らし」の編曲を先行し、同時期に作った「NEO CORPSE」と合わせた2曲によって全体のテーマがうっすらと見えました。
歌のレコーディングの開始は5月末日からです。当初は夏季リリース前提のミニアルバム規模のものを想定しており、録音日程も数日間を予定していました。しかし、この2曲へ帰結するような落とし所を模索しているうちに規模が膨れ上がり、結果として全作業を並行しながら録音を進め、全て終了したのは10月初頭でした。


●アルバム制作前に企画書を作るというのは几帳面です。漠然と進めていくミュージシャンが多い中、偉いと思いますよ。
またラスト曲の「暮らし」がアルバムの着地点というかキー曲になっているということは、企画書を共有した眞鍋氏にも桶田さんが目論んだアルバムの方向性が伝わったんでしょうね。
またYUKI SHIGA氏のヴォーカル、眞鍋氏のアコースティック・ギターのプレイについては、どの様なディレクションをしていきましたか?

桶田:企画書は指標にはなりましたが事細かな指定事項などは一切なかったので、眞鍋氏が「暮らし」に落とし込んだ彼の解釈と、僕が「暮らし」に抱いている解釈には未だ相違点はあると思います。
眞鍋氏自身は企画書に忠実なプロセスを心がけていたかは不明ですが、僕としては「何か違うな」という印象もありました。その齟齬が本作の面白い部分かなと思っています。「自分は一体誰の、何を作っているんだろうか」という思いは今回携わった僕を含む全員が思っていました。

ヴォーカルのディレクションは終始手探りでした。
以前もそうですが、キー策定の時のデモ録音が一番良かったりして、何回も録った挙句デモテイク採用というのが何曲かありました。病み上がりのYUKIさんのテイクが良かったり、ソファに寝転がったところや俯き加減で声を張れないところにマイキングしたりというような事はしました。

眞鍋氏楽曲のディレクションは彼が主導していましたが、初めてとは思えない指示が多くあったり、土壇場でキーを変えるようなちゃぶ台返しもありました。僕はエンジニアに徹する場面も多くありましたね。
ギターは眞鍋氏が送ってきたデモを割とそのまま再現してほしいとお願いしたので、僕があれこれ言う場面はなかったです。


NOTO【Trailer】

●昨年5月にリリースした、ソロ・セカンド・アルバム『秉燭譚』とはコンセプトやサウンドは当然異なりますが、意識的に変えた点を挙げて下さい。

桶田:『秉燭譚』と明らかに違う部分として、サウンド面のリファレンスがかなり明快だと思います。具体的には、ヤマハDX7やLinn Drum LM-2といったような、特定の音色を軸として編曲するという意識は初めてで、ここ数年の趣味をやっと前面に出せたかなという感じです。
あと、今回は”NOTO”という一種の媒体そのものをテーマにしていますので、楽曲自体を「架空性」に満ちたものにしたいという思いから、当初はクレジット表記もしないという、”読み人知らず”案もありました。
結果諸々の関係上表記はしましたが、その段階である意味「自分の作品ではない」という意識が生まれました。
制作中にも関わらず自分の手中から”NOTO”が薄れていく現象によって自ずと「架空性」は達成されてしまい、その後はむしろ逃すまいと「実在性」を織り込む意識に変化、当初から割と明確だったサウンドテーマがより一層狭域なものに絞られ、架空は架空でも「別次元」寄り、”NOTO”の実在性を否定出来ないような、限りなく生々しいものへ仕立てようと努力したと思います。
このような、ある意味「コンセプト放棄」のような考えは『秉燭譚』とは真逆のものだと思います。自発的に放棄した記憶はないのですが。 

●DX7やLinn Drumは80年代初期に登場して隆盛を誇ったデジタル・シンセサイザーとドラムマシーンで、ジャンルを超えて無数に使用され日常的に耳にしたサウンドです。 90年代生まれの桶田さんには新鮮に響いたと思いますが、そういったサウンドの時代性を意識したりしますか?

桶田:「浮かれ気分」の編曲はかなり意識した内容だと思います。むしろ真っ当に80sっぽさを意識しているのはあの曲だけかもしれないです。個人的にDX7やLinn Drumといった「80年代のあの音」に抱いているイメージが少し特殊なんです。
60年代や70年代、また別軸で流行した80年代の音楽を楽しむ懐古趣味的な興味とは少し違うというか。タイムパラドックスによって形成された別世界の中の一つで、未だに変わらず地続きで鳴ってそうな音という(笑) 勿論リファレンスは当時の音楽になるのですが、手法の踏襲みたいな部分にまではそこまで踏み込まず、割と自由に使った感じです。
音色だけじゃなく、音の組み方にも時代性はあると思うので。

●前の質問と重複しますが、可能な範囲で使用した機材について教えて下さい。

DX27

桶田:しがない宅録マンですのでほぼソフトウェア音源、しかもフリー音源満載ですが、DX7の後継機であるDX27をお借りして差し替える等、一部実機使用はしました。
Linn Drum LM-2はソフト音源ですが数種類試した上全て使っています。もちろんフリー音源も含みます。こういうこと書くとアレですが、アナログシンセ音源に付随するプリセット音源っていうのは非常に助かります。アレは辞書みたいなものですから。
しかし、シミュレート音源のモデル機は唯一のはずなのに何故こんなに差が出るのか。それは有料無料の違いはおろか音質・再現度の優劣含め甲乙つけ難いという印象で、無料のほうが良いことなんてザラです。
DAWで制作している方達にとっては周知の事実だと思います。
絶対的指標は存在しつつも、優先して追求するのはあくまで「好みの音」なので、そうなるとソフト音源は非常に使い勝手がよく、同様の手法を実機で行うと著しく性能を損なうような「禁忌」に手を染めることもしばしばです。何せ壊れない。
唯一生音が前面的な「羽虫」のギターは眞鍋氏の演奏です。彼の新築住居の空き部屋がまるでエコーチェンバー的な響きだったので、持ち込んだスピーカー2基からドローン風なパッド音を鳴らしつつ眞鍋氏がギター演奏、それをZOOMのH4nで録音しました。
閑静な住宅街の程よい環境音も相まって、良い意味で実に「酷い」録音が出来たなと思います。

●桶田さん世代のミュージシャンは、ソフトウェア音源の恩恵をかなり受けていると思うけど、ディスクトップで再現出来て合理的な反面、実機との音色や音圧の差に拘ることはないでしょうか? 

桶田:音色の差は本当に「拘り」の枠に収まると思います。僕らの世代は「実機を大々的に用いる事」自体が大きなテーマとなり得ると思いますし、その中であくまで再現性に焦点を当てると「実機」は大きな保証になります。
今後そういう取り組みをするならば間違いなく実機使用に拘ると思います。利便性というよりかは手法の問題です。
今回使用したDX27も当初は差し替えマストではありませんでした。たまたま使える機会があったのでお願いして貸していただき、結果的にとても良い「雑味」が出たのでベース音源は差し替わりましたが、その他のパートはソフトウェア音源のほうが良かった、というか「合って」ました。
音圧をも念頭に実機を扱うには録音機材・環境を抜本的に変える必要性もあると思います。 あくまで手段問わず、というのが信条です。

●このアルバムを製作中によく聴いていた曲を10曲挙げて下さい。

   

◎Oh Fields My Fields / Alexandrov Ensemble
(レフ・クニッペル作曲 初演1934年)

◎ゴリウォーグのケークウォーク / 冨田勲
(『Snowflakes Are Dancing』1974年)

◎BODY SNATCHERS / 細野晴臣
(『S・F・X』 1984年)

◎旅の極北 / 坂本龍一 
(『音楽図鑑』1984年)

◎天使の絵の具 / 飯島真理
(『愛・おぼえていますか』1984年)

◎Naufrage En Hiver(邦題:冬のノフラージュ) / Mikado
(『Mikado』 1985年)

◎techno pop / KRAFTWERK
(『Electric Cafe』 1986年)

◎記憶 / 小川美潮
(『4 to 3』 1991年)

◎赤い戦車 / ヤプーズ
(『ダイヤルYを廻せ!』1991年)

◎Nurse Cafe / 平沢進
(『SIREN』 1996年)



桶田:かなり厳選したつもりですが、結果自分でもびっくりするぐらいここ数年聴いているものが変わっていません。

●最後にこのアルバムをピーアールして下さい。

桶田:個人的には面白いアルバムになったなと思っています。 いちポップス音楽の枠には収まっていると思いますので、ご自由に楽しんでいただければ嬉しいです。 多分”NOTO”もそう思っていると思います。



【考槃堂商店】特設ページ:https://www.kouhando.com/noto 

(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)

【ガレージバンドの探索・第七回】The You Know Who Group

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【ガレージバンドの探索・第二回】 バミューダ諸島のガレージバンドの記事を書いていた時、The Savegesがカバーしている「Roses Are Red My Love」の原曲を調べてみるとThe You Know Who Groupというバンドで、得体が知れなくて気になっていた。


The You Know Who Group『First Album』
【International Allied Records Ltd. IA 420】

The You Know Who Group はニューヨークのプロデューサーBob Gallo が生み出したグループだそうだ。1964年、ビートルマニア最盛期に多くのレコードレーベルがThe Beatlesの曲を演奏するバンドと契約する中、Bob Galloは別のアプローチを試みる。雇ったメンバー達をイギリスの著名なバンドが覆面リリースしたように見せかける為にマージービートを真似て、誇張したイギリスのアクセントで歌わせ、LPのカバーでは人物が特定できないようなマスクとマントをさせた。このアルバム、『First Album』と書かれているけれど、タイトルがないのか、これがタイトルなのかもしれない。


当初メンバー達はこの覆面プロジェクトのアイデアにあまり乗り気ではなかったようだけれど、例えばThe Beatlesの別名義だと人々が勘違いすれば大きく宣伝されるかもしれないとも考え承諾したようだ。それ程の大きな反響とはいかないまでも「Roses Are Red My Love」はマイナーヒットし、この戦略に効果はあったそうだ。


Roses Are Red My Love / The You Know Who Group

音源はマンハッタンのスタジオTalent Mastersで録音されたらしい。The You Know Who Group のメンバーが誰だったかについては諸説あるようでイタリア人だったという説や、ブルックリン出身のBob Esposito 、もしくはRobert Esposito 、Vincent Polimeni らだという説、1961年に結成されたリバプールのバンドThe Undertakersのメンバーが含まれているとも言われている。


I Fell In Love(For The Very First Time)
 / The Undertakers

LPは1枚リリースしたのみで続かず広く世に知れ渡ることはなかったものの、一部の人々にはその後も影響を与えたようだ。The Phantom Surfersが1991年にリリースしたファーストLP『18 Deadly Ones!!!』のカバーはThe You Know Who Groupのオマージュになっている。

The Phantom Surfers『18 Deadly Ones!!!』
【Norton Records ‎– ED-218】

参考・参照サイト


https://ukinvasion.wordpress.com/tag/the-you-know-who-group/


https://www.popsike.com/THE-YOU-KNOW-WHO-GROUP-1st-Album-64-UK-Merseybeat-Psych-Pop-LP-BEATLES-BOB-GALLO/270872634872.html




WebVANDA管理人が選ぶ2019年の邦楽ベストソング

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今年もWebVANDA管理人=筆者が選ぶ、邦楽の年間ベストソングを発表したい。
選出した楽曲は年間を通して好んで聴いていたアルバムの中で最もリピートした収録曲であり、筆者目線ではアルバムを象徴する存在とも言える。
昨年に比べて、レジェンドも含めメジャー作品がやや多いが、本サイトで筆者が紹介するアルバムは主にインディーズ作品が多い。そういった知られざるミュージシャンを紹介することで、読者に新たな音楽的出会いを常に提供したいと考えているのだ。その意味でも来年はインディーズ・ミュージシャンに更に期待している。
選出趣旨からコンピレーション・アルバムと配信楽曲は除外とした。
また惜しくも次点となった曲として、connieの「赤い涙」Minuanoの「終わりのない季節」を挙げておく。
昨年同様、順不同のリリース順で紹介する。




☆薔薇と野獣 / 細野晴臣 (『HOCHONO HOUSE』収録)
筆者も37年以上愛聴している名作ファーストを大胆にリメイクしたアルバムから。日本音楽界の至宝且つ、雄一無二のイノベーターが再構築したマジカルな箱庭ファンクの傑作。


☆ユートピア / コントラリーパレード (『CONTRARY』収録) 
曲が持つ磁力が鬼才・佐藤望の独創的なアレンジを引き出した好例。「深い森で 誰も僕を 見付けられないよ…」という歌詞のパンチラインと天然系ソプラノの歌声にもやられた。



☆ザ・クレーター / 集団行動 (『SUPER MUSIC』収録)
某アニメ映画に通じる終末観と理論時代から連なる真部脩一ならではのナンセンスな歌詞のコントラストを、ブリティッシュビート系の疾走感で繰り広げる3分32秒のショートフィルムのようだ。


☆ブラザー、シスター / 宮田ロウ (『ブラザー、シスター』収録)
普遍的なソングライティングと同志たちに向けた慈愛に満ちた歌詞、イノセントな歌声とゴスペル・フィールのコーラス。バリー・マンのソロを聴いている様な崇高な気持ちになってしまう。



☆隕石のラブソング / ウワノソラ (『夜霧』収録) 
モチーフは集団行動と同じだが、こちらはマージナルな視線によるシリアスな歌詞にアトランティック・ソウル系の弦とコーラスのアレンジが絡む。シティポップとは陳腐に呼ばせたくない。



☆銀河 / Guiro (『A MEZZANINE』収録)
問題作「ABBAU」未収録の悲しみを一掃した白眉曲。新主流派マナーのモーダルなヴァースが徐々に熱を帯び、スルドが響きパンディエロが舞うサンバ・ジャズへとモディファイして魂を揺さぶるのだ。



☆夜行列車 / 鈴木恵TRIO (『come here my dear』収録)
中期XTCに通じるライトメタリックなギター・アンサンブルで構築されたサウンドに、60年末期のエバーグリーンな歌声とコーラスが漂う。隔世型温故知新派のレイルロード・ソング。



☆愛のナンバー / RYUTist (『きっと、はじまりの季節』収録)
今年この曲ほどブロークンハートを綴ったハーモニー・ポップスはあっただろか。ジョージ・ハリスン及びビートルマニアは必聴であり、オリジネイターであるSSWの℃-want you!も高く評価したい。



☆高い塔 / 小沢健二 (『So kakkoii 宇宙』収録)
平成のビッグアイコンの17年振りのアルバムから。東京のバビロン・タワーに住む大王と社会をシニカルに描いた、弦とホーン入りのギル・スコット・ヘロンに通じるジャズ・ファンクだ。



☆雑務 / KIRINJI (『Cherish』収録)
バンド構造が変わって早4作目だが、そのフォーマットに縛られず実験性を内包しつつ高水準サウンドを聴かせ続けている。この曲の繊細で絶妙なグルーヴの完成度に酔いしれる。




※プレイリストはSpotify 登録曲のみ

(選者:ウチタカヒデ)

FMおおつ 音楽の館/Music Note 2019年12月号「ジャニーズ特集 平成編」

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  9回目の12月号は前回に引き続き「ジャニーズ特集」。今回は日本を代表する国民的アイドル達を次々に送り出し、その存在感をさらに強固にした「平成編」。
なお今回の特集では、季節に合わせ「X’mas Song」も挟み進行。

  トップはWham!の<Last Christmas>。Wham!は2016年12月に亡くなった天才シンガーGeorge Michealのグループ。この曲は1984年で全英2位を記録、日本でも50万枚以上セールスの大ヒット、近年ではこの曲をExileが日本語でカヴァーしている。
  この「平成年間」に結成されたアイドルの中では国民的年末行事NHKの紅白歌合戦でトリを務めるSMAPや嵐のように、時代を象徴する存在となったグループもいる。
  そんな「嵐」は、11月9日に行われた「令和」の「天皇陛下のご即位を祝う国民祭典」で、奉祝曲<Ray Of Water>を歌唱する栄誉を務めるほど。また11月13日にはメンバーの「ニノ」こと二宮和也さんの結婚報道が、NHK7時のニュースで報道され、日本だけでなく世界的な「ニノロス」となった。そんな彼らは来年2020年で「活動休止」を宣言。1曲目は1999年のデビュー曲<A・R・A・S・H・I>!

 まずは平成初めてデビューさせたグループ「忍者」のデビュー曲<お祭り忍者>。この曲は1989年に逝去された“昭和の歌姫”「お嬢」こと美空ひばりさんの<お祭りマンボ>のリメイク作で3位を記録。その忍者はデビュー4ヶ月でNHK紅白歌合戦に出場。
 彼らは1985年デビューの中村繁之さんのバック・ダンサーとして結成、結成当初のメンバーには欽ちゃんプロデュースの「CHA-CHA」で活躍する中村亘利さんや、「光GENJI」に移籍する内海光司さんも在籍。

 続いては国民的グループSMAP。結成は1988年、当初は「光GENJI」のバック「スケートボーイズ」のメンバー。彼らは1991年1月1日に日本武道館でお披露目、9月8日に所沢「西部ゆうえんち」にて94年にデビューするTOKIOをバックに従えデビュー・イベント、翌日に<Can’t Stop LOVING->でデビュー。
 この曲リリース時の1位には驚異のヒットCHAGE&ASKA<Say Yes>(282万枚)が君臨し2位止まり。彼らも忍者同様にデビューした1991年のNHK紅白歌合戦に出場。そして彼らは15年後(2003年)に最高の栄誉「大トリ」を務める。
 SMAPデビューの1991年には彼らの最大ヒット<世界に一つだけの花>を書く槇原敬之さんが<どんなときも。>でブレイク。


 そんなSMAPのブレイクのきっかけは、キムタクこと木村拓哉さんが出演した「あすなろ白書」(1993年10~12月)の「取手治」役で、「園田なるみ」役の石田ひかりさんを背後から抱きしめる「あすなろ抱き」の演技。同時期にリリースの林田健司さんのカヴァー10作目<$10>が、30万枚というクリーン・ヒット。この曲は森且行さんのお気に入りで、これ以降林田作品と共に人気に火がつく。そのキムタク人気の象徴はTOYOTAが1994年に発売した「RAV4」のCM起用で、本来RVに興味のない若い女性層にも浸透。
   私がSMAPをまともに聴いたのは、オートレーサーを目指し脱退する森君をメンバーが送る1996年5月27日の『SMAP×SMAP』から。この日は進行役の中居君が号泣、それをたキムタクが引き継ぎ、全員で森君に声を掛けた有名なシーン。

 この別れは両者とも「WIN×WIN」に。SMAPはこの森君の脱退直後の22作<青いイナズマ>で大ブレイク、カラオケではキムタクの「ゲッチュ!」の争奪戦。また赤鉛筆で「指を赤らめたおじさん」のたまり場オートレース場には、森君目当ての「頬を赤らめた女の子」が大挙押し寄せた。

 続く23作<SHAKE>はミリオンセラーを記録、これ以降は小森田実作品とともに不動の地位を築く。個人的にもっともSMAPらしいと言える曲といえば、小森田作品で作詞を宮藤官九郎さんが担当した37作<BANG!BANG!バカンス>。なにせ、「あたりまえだよ前田さん、前田さんなんてうちにはいぃなぃ~」ですからね。また個人的に「スーツで海に飛び込んで」に近い体験をしていたので。
 そして私にとって「SMAPで一番のお勧めナンバーは」2002年4月から中学2 - 3年生の音楽の教科書に掲載された1998年の27作<夜空ノムコウ>。

 BGMはSMAPの50作<Joy!!>。この曲は2013年に「祝50作」として大はしゃぎしていた。その1年前にNHK朝ドラ「梅ちゃん先生」主題歌<さかさまの空>を担当、堂々たる国民的人気のSMAP。その4年後に終焉が待っているとは。
 続いては男闘呼組以来のバンド・デビューのTOKIO。1994年に9月21日に城島茂さんをリーダーに<LOVE YOU ONLY>でデビュー、その年の「第45回NHK紅白歌合戦」に史上最速記録で初出場、2017年まで24回連続出場でジャニーズ事務所々属で歴代最多。
 そんなTOKIOと言えば、ヴォーカルの長瀬智也さんとカリスマ歌姫浜崎あゆみさんとのロマンス。彼女は2001~2003年にかけて「レコード大賞3連覇」という偉業を達成するも、2003年はSMAPが「世界で~」のノミネートを辞退ゆえ、受賞曲<No way to say>とは売り上げが1桁違い。

 TOKIOは2003年10月にリリースしたJR東海とのタイアップ曲28作<AMBITIOUS JAPAN!>。この曲は巨匠筒美京平さん作、彼はこの曲の1位で、「1960年代から2000年代」の5年世代に渡る1位獲得という偉業を達成。そして2006年8月リリース35作<宙船(そらふね)>。この曲は元々作者中島みゆきさんの34作『ララバイSINGER』(2006年)の準備曲で、TOKIOにとって62週チャート・インという最長を記録。

 TOKIOに続くデビューはV6。このグループは坂本・長野・井ノ原で構成される年長組20th Century(通称トニセン)と、森田・三宅・岡田で構成される年少組Coming Century(通称カミセン)から構成の6人組。デビューは1995年11月1日『バレーボール・ワールドカップ』のイメージソング<MUSIC FOR THE PEOPLE>。
 私はメンバーの長野博さんが出演の『ウルトラマンティガ』のテーマソング<TAKE ME HIGHER>から注目。当時、長男が夢中になり放送中の1996年9月から翌年8月までは、ソフビや戦闘グッズを山ほど買わされ、ヒーローショーを見に「甲子園」まで遠征。また角松敏生さんが「長万部太郎」名義で書き上げた1998年の長野オリンピック閉会式の公式テーマソング<WAになっておどろう>も、V6には欠かせない。

 とはいえ当時の「NHK紅白歌合戦」には「同一事務所からの選出は2組」という取り決めで、V6は出場を阻まれる。ただ1999年にはゲスト登場し、初出場は2014年の第65回。これはメンバーの「イノッチ」こと井ノ原快彦さんが、NHK総合「あさイチ」で全国区に、また岡田准一さんがNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』主演という効果によるもの。

 BGMはV6の次にデビューしたKinki Kidsの<シンデレラ・クリスマス>(1998年12月9日第5作)。そのKinki Kidsは堂本光一さんと堂本剛さんの二人で結成されたジャニーズ初の関西出身のデュオ・グループ。
 二人は「1992年12月31日第43回NHK紅白歌合戦」のSMAPのバック・ダンサーを務め、翌年「Kinki Kids」と命名。そして1994年12月31日に日本武道館お披露目。そんな二人は吉田拓郎さんの初レギュラー「LOVE LOVE あいしてる」(CX:1996.10.5.~2001.3.31.)で注目される。1996年12月31日「第47回NHK紅白歌合戦」でマッチの<ミッドナイト・シャッフル>の冒頭のサビを応援ゲストで歌唱。

 彼らは1997年7月21日に<硝子の少年>でデビュー、累計178万枚という堂々のミリオンセラー。これはアイドル歌手のデビュー曲として、小柳ルミ子さんの<わたしの城下町>(1971年134万枚)の記録を26年ぶりに更新。
 この曲は剛君のヴォーカリストとしての資質を高く評価する山下達郎さんの書下ろし。達郎さんは今年のツアーでも「ジャニーさんに捧げます!」と披露している。

 その後2002年1月1日に<Hey!みんな元気かい?>で「デビュー以来13曲連続1位」でギネス記録に認定、昨年12月19日にリリースした<会いたい、会いたい、会えない。>まで全40作が全て1位を記録し、ギネス記録を更新中。
 また出荷では11作目の<ボクの背中には羽根がある>まで連続100万枚越え、また<硝子の少年><愛されるより愛したい><全部抱きしめて><フラワー>の4作はミリオンセラー。そんな彼らも「NHK紅白歌合戦」にはV6同様「1事務所出場枠2」で、1999年ゲスト登場するも、正式出場はデビュー19年目の「2016年12月31日第67回NHK紅白歌合戦」のみ。

 BGMは嵐のクリスマス・ソング<WISH>。この曲は2005年10月に松本潤さんの主演で大ブームとなった「花男」、「花より男子」テーマソング。詞が元The東南西北の久保田洋司さん、曲は嵐に一番お似合いと思う楽曲<とまどいながら>のオオヤギヒロオさん。
 私はこの「花男」で「F4」にキャスティングされた小栗旬さん、松田翔太さん、阿部力んが「嵐」のメンバーだと思っていた。これ以降幅広い世代の人気を獲得した嵐は1月の『花より男子2(リターンズ)』の主題歌<Love so sweet>で大ブレイク、翌2008年には五大ドーム・ツアーと国立競技場でのコンサートを開催。

 2009年には、<Believe><明日の記憶><マイガール>が、光GENJI(1.パラダイス銀河、2.ガラスの十代、3.Diamondハリケーン)以来の年間ベスト3を独占。さらに<Everything>は5位とリリース全シングルがトップ5入り。この人気ぶりにNHKも、「1事務所出場枠2」を撤廃し、「2009年第60回NHK紅白歌合戦」に正式出場、以後昨年まで10回出場。そして、2010年からは司会も務め、2014年には初のトリを任され、2016・2018・2019年には大トリを務める。ニノの結婚を祝し、2010年彼が主演のテレビドラマ『フリーター、家を買う。』の主題歌<果てない空>。

 BGMは山下達郎さんの<クリスマス・イブ>。この曲は1983年に発表、1988年にJR東海のCM起用以来、発売以来昨年まで150週ランクイン。

 次はジャニーさんの後継者タッキーこと滝沢秀明さんと今井翼さんのデュオ・グループ、タッキー&翼。彼らは2002年5月にはCDデビュー前、海外公演を行う。デビュー曲は2003年2月26日の<To be,To be,Ten made To be>で、2曲目の<夢物語>で1位を獲得。
 2014年に翼が「メニエール病」を発症、回復の見込みが立たず2018年9月10日には解散。そんなタッキーは1998年1月に鈴木保奈美さんと共演の『ニュースの女』で注目され、1999年4月8日の松嶋菜々子さんと共演した『魔女の条件』で大ブレイク。彼の最後の主演作品2019年1月WOWOWドラマ『孤高のメス』まで、俳優の資質が光っていた。

 もう一組NEWS、このグループには、現在ONE OK ROCKのヴォーカリストTakaとしてワールドワイドな活動を展開している森内貴寛さんが、3ヶ月ほどの在籍。彼は森進一さんと森昌子さんのご子息。

 NEWSは2003年10月に「バレーボール・ワールドカップ」のイメージキャラクターとして、山Pこと山下智久さんを中心に9人でスタート。ただTakaをはじめ、2006年にもメンバー二人が脱退、2011年11月にはNEWSの顔山Pと、関ジャニ∞兼任の錦戸亮さんも脱退。この出来事は2007年の広島カープから絶対的エース黒田博樹投手がメジャーリーグのLAドジャースへ、そして不動の四番バッター新井貴浩内野手がFAで阪神タイガースへ移籍という、飛車角抜きという状況を連想した。

 残された小山・加藤・増田・手越は存続も危ぶまれるも、小山をリーダーに活動継続を宣言。そんな彼らが注目されたのは、「霊長類最強女子」と呼ばれた女子レスリング55Kg級オリンピック代表吉田沙保里さんの一言。2012年のロンドン・オリンピック8月10日に3大会連続金メダル獲得したインタビューで、「NEWSのコンサートに行きたい!」。
 それは4人体制での初シングル<チャンパカパーナ>の発売直後、8月14日から『NEWS LIVE TOUR 2012~美しい恋にするよ~』のスタート直前でNEWSは完全復活、2018年には15周年記念公演が「味の素スタジアム」と「京セラドーム大阪」で開催。

 BGMは関ジャニ∞が2009年に3日連続でリリースしたクリスマス・ソング「GIFT<白・赤・緑>」の<赤>に収録された<I wish>。その関ジャニ∞はメンバー全員が関西出身とKink Kids以来二組目の8人組。Tokio以来のバンドで2004年8月25日に<浪花いろは節>でデビュー。

 彼らのブレイクは、NEWS兼任の錦戸亮さんが関ジャニ∞に専念した2011年、この年には『24時間テレビ「愛は地球を救う」』のメインパーソナリティーに。そして、「クレヨンしんちゃん」の主題歌や、錦戸亮さんや大倉忠義さんが出演する番組の主題歌を担当など、露出の機会が飛躍的に増加。
 そして、翌2012年には錦戸さんが本人役で主演『パパドル』にメンバー全員が本人役で出演、さらにコンサートで披露した『関ジャニ戦隊∞レンジャー』を『エイトレンジャー』として映画化、その人気は決定的になり、『第63回NHK紅白歌合戦』にも選出。
 近年は2017年に野外ロックフェスにも参戦。ただ2018年にリード・ヴォーカルの渋谷すばるさん、翌2019年には人気者錦戸亮さんが脱退。現在は5人体制で精力的にツアー中。

 次のKAT-TUNは既成アイドル像に反し、「ギラギラとした危険な匂い」を持つ異端児的な存在。結成は2001年、ブレイクのきっかけは2005年1月放映の『ごくせん』に出演した亀梨和也さんと赤西仁さんに人気が集まり、グループの知名度がアップ。そして10月には山Pと亀梨さん主演『野ブタ。をプロデュース』の期間限定ユニット「修二と彰」の主題歌<青春アミーゴ>がミリオンセラー、デビュー前に絶大な人気を獲得。

 そしてKAT-TUNは直前の2006年3月17日に東京ドームでコンサート、3月22日にB’zの松本孝弘さん書下ろしによる<Real Face>で華々しくデビュー。この曲は初週売上75万枚超(75.4)で3週1位をキープ、デビュー・シングルの最大セールスと年間セールスで堂々の1位。以降2007年11月の第5作<Keep the faith>まで、連続30万枚越えというKink Kids以来9年ぶりの記録を樹立。 その人気ぶりは、当時彼らがCMを担当した「Suzuki/ソリオ」はKAT-TUNファンの御用達車として売れに売れまくった。

 翌2008年に東京ドーム4日連続、2009年には8日公演という日本人ミュージシャン史上初の記録も樹立。そんなKAT-TUNだが2010年に赤西さんが脱退、絶大的な人気にも陰りが漂う。また2013年にはグループのラッパー田中聖さんが事務所から解雇、以後4人で活動し2016年には10周年を迎える。ただ2016年3月の田口淳之介さんが脱退、3人体制での10周年ツアー後、約半年間の充電とソロ活動に専念、そして2018年には3人体制での活動を再開。

 BGMはKAT-TUNの第8作<White X'mas>。この曲は事実上6人体制でのラスト作『Break the Records -by you & for you-』の収録曲。

 次は全員が平成生まれで結成のHey! Say! JUMP。元男闘呼組の岡本健一さん二世岡本圭人さんがメンバーで親子二代のデビュー曲が1位獲得。彼等は2007年11月に「ワールドカップバレーボール2007」のスペシャル・サポーターを担当し、12月22日に東京ドームでデビュー・コンサートを開催。これは平均年齢15歳7か月という最年少記録を更新。
 2017年にはデビュー10周年を飾り、NHK紅白歌合戦にも初出場、現在のジャニーズ事務所で一番勢いを感じさせるグループ。彼らを代表するナンバーは2013年にハウス・バーモント・カレーのCMソング<Come On A My House>。

 次は2019年NHK紅白歌合戦に初出場するKis-My-Ft2。結成は2005年で、グループ名はメンバーのイニシャルから1文字ずつ取ったもの。タッキー&翼、嵐、KAT-TUNなどのバックをローラースケートでパフォーマンス。デビューは2011年8月10日に<Everybody Go>、その後最速の18日で東京ドーム公演、2年11か月で4大ドームツアーを開催し、5周年で観客動員数200万人突破というジャニーズ史上最速記録を達成。
 彼らはフロントを務める玉森・藤ヶ谷・北山の3人と横尾・宮田・二階堂・千賀の4人とのルックスの差で、いまいち爆発な人気を獲得できなかった。その状況を打ち破ったのはSMAPの中井君で、彼がイケていない4人を「舞祭組」という別ユニットで売り出し、不動の人気を得ることに成功。

 続いてはSexy Zone。彼らは2011年9月29日に結成を宣言し『ワールドカップバレーボール2011』のスペシャル・サポーターに就任、そして11月16日には<Sexy Zone>でデビューを飾る。その翌年には<Lady ダイヤモンド><Sexy Summerに雪が降る>と三作連続・馬飼野康二作品でNo.1を獲得、2013年にも2作で1位を獲得し、「第64回NHK紅白歌合戦」に出場し、2018年の第69回まで常連のメンバーに。

 そして彼らの次にデビューを飾ったのが、堂本光一君やタッキーのバックでアクロバット的なダンスを披露していたユニット。2015年9月30日に<Moonlight walker>でデビューしたA.B.C.-Z。そんな彼らは、ジャニーさんにとって最も思い入れのある楽曲<Never My Love>を2013.11.20.に2nd DVDと2014.3.12.にリリースしている。

 さて「平成編」のラストは、昨年2018年に鳴り物入りでデビューしたKing & Prince。彼らは2015年にKing とPrinceなる別々のユニットとして結成され個別に活動。2017年に両者が合体、2018年1月にジャニーズ事務所とユニバーサルミュージックが組んだ初レーベル「Johnnys’Universe」の第一弾として5月23日に<シンデレラガール>でデビュー。この曲は初週売り上げが約60万枚(57.7)というKAT-TUNの<Real Face>に次ぐ歴代2位。この人気ゆえにTokio以来のデビュー年に「第69回NHK紅白歌合戦」出場。

 最後はジャニーズ史上最大ヒット<世界で一つだけの花>。「ジャニーズ」は作家の部分で「昭和」は「筒美京平さん」、そして「平成」は「Mark Davis, Jimmy Johnson名義も含めた、馬飼野康二さん」がキーポイント。

 SMAPのデビュー曲<Can’t Stop LOVING->はCHAGE&ASKAの<Say Yes>に阻まれて1位を逃すも、その25年後の2016年に<世界で一つだけの花>の販売累計が289万枚を突破し「21世紀」の邦楽シングル1位に。
 その経緯は発売2週でミリオン、21週目でダブル・ミリオン、そして2016年の解散報道でセールスが伸び、12月にはトリプル・ミリオンとなり2000年以降に発売されたシングルでは、サザンオールスターズの<TSUNAMI>の293(293.6)万枚を抜いて1位となり、「ナンバーワンにならなくていい」という曲でSMAPは「真のナンバーワン」になった。

 2019年9月20日現在、歴代シングルセールスとしては、1位およげ!たいやきくん/子門真人:457.7(1975年)、2位女のみち/宮史郎とぴんからトリオ:325.6(1972年)に次ぐ313(313.2)万枚で第3位にランク。第2位をも抜き去る可能性もあるほど。
 また「歴代シングル・ロングセールス」では中島みゆきさんの<地上の星>が持つ「183週」を上回る「184週」を記録、「13年6ヵ月」ぶりに記録を更新。(3位涙そうそう:夏川りみ(2001年:157週)、4位クリスマス・イブ:山下達郎(1983年:150週)、5位すきま風:杉良太郎(1976年:147週))

~B.G: Last Christmas(Puding Mix)/ Wham!
1. A・R・A・S・H・I / 嵐
~B.G:お祭り忍者/ 忍者
2.青いイナズマ/ SMAP
3.夜空ノムコウ/ SMAP
~B.G:Joy!! / SMAP
4. AMBITIOUS JAPAN! / TOKIO
5.宙船(そらふね)/ TOKIO 
6.TAKE ME HIGHER/ V6
7. WAになっておどろう/ V6
~B.G:シンデレラ・クリスマス/ Kinki Kids
8.硝子の少年/ Kinki Kids
9.フラワー/ Kinki Kids 
~B.G: WISH / 嵐
10. Love So Sweet / 嵐
11. 果てない空/ 嵐
~B.G:クリスマス・イブ/ 山下達郎
12. Venus/ タッキー&翼
13. 希望~Yell~ / NEWS
14. チャンカパーナ/ NEWS
~B.G: I wish / 関ジャニ∞
15. 愛でした/ 関ジャニ∞  
16. 青春アミーゴ / 修二と彰
17. Real Face / KAT-TUN
~B.G: White X'mas / KAT-TUN
18. Come On A My House / Hey! Say! JUMP
19. Everybody Go / Kis-My-Ft2
20. Lady ダイヤモンド/ Sexy Zone
21. シンデレラガール/ King & Prince
~B.G: 世界で一つだけの花/ SMAP

本放送:第四土曜日12/28(土)15:30~18:00
再放送:第四日曜日12/29(日)8:00~10:30

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/
                          (鈴木英之)

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