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RYUTist 『センシティブサイン』(PENGUIN DISC / PGDC-0010)

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4人組アルドル・ヴォーカル・グループのRYUTist(リューティスト)が、4月23日に通算7作目となるニュー・シングル『センシティブサイン』をリリースする。
メンバーは五十嵐夢羽、宇野友恵、佐藤乃々子、横山実郁のハイティーンから20代前半の4名から構成され、所謂アイドルとは一線を画すヴォーカル・ワークを誇り、提供される楽曲も音楽通を唸らせるソングライティングとサウンドを持った、拘り抜かれたプロダクションで活動しているのだ。
筆者も昨年5月にリリースされた『青空シグナル』(PGDC-0007)収録「無重力ファンタジア」を、昨年の年間ベストソングに選出したほど彼女達の作品には注目している。


さて本作のタイトル曲「センシティブサイン」は、若干21歳のシンガー・ソングライターのシンリズムの提供曲である。
またカップリングには、サード・アルバム『柳都芸妓(りゅうとげいぎ)』(PGDC-0005)のリード・トラック「夢見る花小路」を提供した佐藤望による「素敵にあこがれて」と、microstar(マイクロスターWack Wack Rhythm Bandのメンバーがタッグを組んだ「バ・バ・バカンス!」の2曲が収録されている。
今月頭に音源を入手してから聴き込んでいるが、このシングル収録曲について解説していこう。


センシティブサイン / RYUTist

タイトル曲の「センシティブサイン」は、イントロのエレキギター・アルペジオから始まるホーン・セクション入りの溌剌としたポップスで、アレンジ的にはファンキーなベースとコンガのポリリズムが利いている。シンリズムならではの個性は薄いが、ブリッジからサビのメロディの美しさなど、RYUTistのハーモニーを活かした楽曲の良さは光っている。

続くカップリングの「素敵にあこがれて」は、先月レビューしたコントラリーパレードの『CONTRARY』収録「ユートピア」のアレンジで手腕を発揮していた佐藤望(Orangeade他)のソングライティングとアレンジによる楽曲だ。前出の「夢見る花小路」を一聴した時からその才能には注目していたが、この曲でも極めて独創的なサウンドを展開していて裏切らない。
右チャンネルのラウドなエレキ・ギター(Orangeade黒澤鷹輔のプレイ)のフレーズと、センター及び左チャンネルで展開するピッコロ、フルート、ファゴット等木管楽器のコントラストがとにかく素晴らしく、縦横無尽に発されるアックの強いシンセのオブリガートもいいアクセントになっている。
アルドル・ヴォーカル・グループへの提供曲としては異端ではあるが、80年代初頭にテクノ少年だった筆者にとっては全く違和感がなく、むしろ歓迎すべきで、早くも本年度ベストソング候補に入る。

カップリングのもう1曲は、 microstar(飯泉裕子・佐藤清喜)のソングライティングに、Wack Wack Rhythm Band(以降ワック)のホーン・セクションとパーカッションがコラボレーションしたハウス系ダンス・ナンバーで、Beats Internationalの「For Spacious Lies」(『Beats International』収録90年)を彷彿とさせる。ホーン・アレンジは佐藤清喜とワックの三橋俊哉が担当し、サルソウル・フレイバーを醸し出している。
このシングル収録3曲は、アイドル・ファン層を超えた音楽通にもお勧めする出来る内容であるので興味をもった是非入手して聴くべきだ。
(ウチタカヒデ)



POPS IN JAPAN VOL.4 ~ 西岡利恵出演ライヴイベントのご紹介 

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弊誌でコラム『ガレージバンドの探索』を連載している、 The Pen Friend Club (ザ・ペンフレンドクラブ)の西岡利恵が臨時編成で組んでいるバンドSchultz(シュルツ)が、4月29日に下記のライヴ・イベントに出演する。


POPS IN JAPAN VOL.4  

4/29(月)
東高円寺U.F.O. CLUB

open 18:30
start 19:00
前売¥2500(+D)
当日¥2800(+D)

◾︎LIVE:
鈴木やすしエクスペリエンス
モンド・ダイアモンド(高松)
フランク小林とジ・エックス
Schültz
girl age

◾︎DJ:鈴木やすし
zuma(ザ・ゲッコウズ)

Schültz
 
ペンフレンドクラブではベーシストだが、自ら率いるこのシュルツではボーカルとギターを担当して拘りの60年代ガレージロックやブリティシュ・ビートに影響されたサウンドを展開している。
ここのコラムで興味を持った読者は是非、シュルツのサウンドを生で体験して欲しい。


Schültz
西岡利恵による臨時編成バンドとしてライブ活動を行う。
ガレージロックやブリティッシュビートなどの影響の強い楽曲を、60年代前半の米国ティーンガレージを思わせるチープな質感のサウンドで表現する。
(テキスト:ウチタカヒデ)

FMおおつ Music Note 4月号

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2019.4.27. 15:30~  再放送 2019.4.28. 8:00~

 今回はアニメーションにまつわる音源の特集です。まず最近のアニメの話題としては、昨年発表された細田守監督の『未来のミライ』が、第19回アカデミー賞の長編アニメーションにノミネートされました。残念ながら受賞はかないませんでしたが、この作品の主題歌<ミライのテーマ>を担当したのは私の長年のファンである山下達郎さんでした。
その達郎さんには日本初のテレビ・アニメ「鉄腕アトム」の作者漫画の神様手塚治虫先生をリスペクトしたのが<アトムの子>です。

この<アトムの子>ですが、手塚先生がお亡くなりになったとき、達郎さんはわずか10日間で完成させたそうです。完璧主義者ゆえ納得いくまでレコーディングに時間をかけることで有名な達郎さんにしては本当に珍しいことでした。それ故、達郎さんの手塚先生への並々ならぬリスペクトの想いが伝わってきます。


私も「鉄腕アトム」をはじめとする手塚作品の大ファンで、その憧れから漫画家を目指したこともありました。とはいえ、その当時は「漫画は悪書時代」で、「私が担任のうちは教え子には絶対漫画話読ません!」とPTAに宣言する教師もいたほどでした。何せ、神様手塚先生でさえ、教育委員会から呼び出しを受けて喚問されたという「漫画暗黒時代」でした。ただ私の学校には「価値ある漫画もある!」と図書室に漫画を蔵書にしてくれる金八先生のような理解者黒田昭八先生がいました。ちなみに彼の推薦本は、白土三平先生の「忍者武芸帳」。

では私が漫画やテレビ・アニメなどに夢中になっていた小中学生のころの、ヒーローものから「エイトマン/ 克美しげる」「スーパージェッター/ 上高田少年合唱団

まず「8マン(アニメは、カタカナ書きで「エイトマン」)」は、少年マガジンに連載されていたSF作家平井和正さん原作のSF漫画です。そのストーリーは殉職した刑事がロボットに生まれ変わって私立探偵として活躍するというものでした。そんな8マンのエネルギー補給はシガレット・タイプの吸引式(まるで「アイコス」か「ブルームテック」?)で、今のような「禁煙」が常識となった現在では信じられない設定でした。なお主人公の名前は東八郎(漫才のトリオスカイライン)、そうあの東MAXさんのお父さんと同姓同名!ついでながら、彼の一番弟子は何と「欽ちゃん(萩本欽一さん)」。

ちなみにこの主題歌の作詞は、大橋巨泉さんと共に昭和を代表する司会者の一人マエタケ(前田武彦)さん。
そして「スーパージェッター」ですが、未来からタイムマシン「流星号」に乗って来たタイムパトロール隊員が大活躍するSFアニメでした。私はジェッターの愛車流星号の大ファンで、プラモデルもスケール違いが発売されるほどでした。

中学のころには「流星号」を連想させるようなデザイン(と私は思っていた)の「HONDAクーペ9」に憧れ思っていました。

では「サイボーグ009の歌 / 東京マイスタージンガー」W3(ワンダー・スリー)/ ボーカル・ショップ, 白石冬美, 近石真介(ちかいししんすけフグ田マスオ), 小島康男」


まず「サイボーグ009」から、この漫画は手塚先生にも迫る早熟の天才/ 石ノ森章太郎(当時は、石森章太郎)先生の作品です。私同様、この作品で「サイボーグ」を知った方も多かったかのではないでしょうか?ストーリーはご存知の方も多いかと思いますが、001から009まで9人(性別年齢・国籍も別)のそれぞれ特殊な能力を持つサイボーグ戦士の戦いを描いたものでした。

とはいえ、その革新的な発想が先を行き過ぎていたためか、当時出版社からは受け入れてもらえず、やっと少年キングでスタートにこぎつけたそうです。ところがここでは未完に終わり、後に少年マガジンに引き継がれて完結しています。

ただここでのエンディングは、任務を果たした009002と宇宙空間から大気圏に突入して燃え尽きるという悲劇的なものでした。この設定は読者から抗議が舞い込み、その後先生は逝去される1998年まで出版社を変えて多くのストーリーを発表されていますが、ほとんどが未完でした。

その後、石ノ森先生は数多くの傑作を発表していますが、その中で最も有名なヒーローといえば、現在もその末裔ドラマが放映される「仮面ライダー」ではないでしょうか。余談になりますが、数年前に会社の旅行で石巻(宮城県)に行きました。そこで石ノ森萬画館に寄る機会を持ち、年甲斐もなく「009」や「仮面ライダー」の前で大はしゃぎ!

冒頭で「私は「漫画家志望」だった」とふれましたが、その頃の私は少年週刊誌を全て(サンデー、マガジン、キング、ジャンプ、チャンピオン)購入していました。また漫画家を目指したころには、石ノ森先生の著書『マンガ家入門』をバイブルに投稿を始めました。この本の読者からは数多くの漫画家が誕生したといわれています。

そして「W3(ワンダー・スリー)」。これは手塚先生の「ジャングル大帝」に続く3つ目のアニメ作品で、アメリカでも「The Amazing 3」として放映されています。この作品は当初少年マガジンでスタートしていますが、手塚先生を激怒させる「W3事件」と呼ばれるトラブルがあり、少年サンデーに移籍して別の設定で発表されています。ただ当時の私は全く知らず大人になってその事実を知り、国会図書館で当時の「少年マガジン」を閲覧し、噂どおりとある号で突然終了しており唖然としました。とはいえSF的な発想によるストーリーに夢中になり、中でもW3の愛車一輪駆動カーは憧れでした。
またこの作品でのもう一つの魅力は手塚先生の描く「動物キャラクター」でした。特にW3のリーダー、ボッコ隊長が姿を変えたウサギはとても愛らしかったです。なお先生の動物キャラといえば、大傑作「ジャングル大帝」で確立されていたので、この程度はおてのものだったと思います。補足ながら、個人的に私の好きな「動物ドラマ」は、月刊誌「少年ブック」に連載されていた三匹の犬が主人公の「フライング・ベン」です。

ここまでSFアニメについてお話しましたが、山下達郎さんも大のSFファンで、SFをモチーフにした曲がいくつかあります。その中から「夏への扉」「メリーゴーランド」

今聴いていただいた2曲、まず「夏への扉」はアメリカの作家ロバートAハインラインの同名小説がベースになっています。この曲は現在のライヴでも彼をバック・アップしているキーボード奏者難波弘之さんの1stアルバムへの提供曲でした。この曲を初めて聴いたのは、私が社会人になった197812月の渋谷公会堂のライヴで、その時に一目(耳?)惚れしました。なお達郎さんのヴァージョンは彼がブレイクした1980年のアルバム『Ride On Time』に収録されています。
そして「メリー・ゴー・ランド」は、彼のお気に入りの作家レイ・ブラドベリィの作風をイメージした曲で、名曲「クリスマス・イヴ」が収録され1983年の『Melodies』に収録されています。

SFに関する話はここまで、ここからは女の子向けアニメに移り、まずは「魔法使いサリー/スリー・グレイセス&薗田憲一」「ひみつのアッコちゃん/岡田恭子」

まず「サリーちゃん」ですが、「鉄人28号」や「伊賀の影丸」で知られる横山光輝先生が19667月から月刊誌「りぼん」に掲載開始した「魔法使いサニー」でした。この作品は後に数多く登場する魔法少女物の元祖で、女の子向けテレビ・アニメ第1号でした。ただアニメ化(NET/テレビ朝日:1966.12.)に際し、「サニー」の商標を持っていた家電メーカーSonyから許諾が取れず、「サリー」になったという話は有名です。

とはいうものの、この名前は19664月にニッサンが発売した小型乗用車(1965.12. 公募/800万の応募から1966.2.「サニー」に決定)の名前になっており、時期的にタイミングが悪かったのでは?と思っています。

タイトルが変更になったとはいえ、このアニメは女の子たちだけでなく、多くのアニメ・ファンに評判となっています。それは山田邦子さんによるアニメ最終回のサリーと親友よし子ちゃんの会話のモノマネ、「よっちゃん、本当は私魔法使いだったの」「え、ちっとも知らなかったわ!」が大うけしたことでもわかります
そのよし子ちゃんのセリフ「おやつあげないわよ!」が飛び出すエンディング・テーマ「いたずらのうた」や、初期のエンディング「魔法のマンボ」も主題歌以上に人気がありました。なおこのアニメに使われていた曲の作者は全て「寺内貫太郎役」で有名な小林亜星さん。
次に「ひみつのアッコちゃん」はギャグ・マンガの大家・赤塚不二夫先生が1962年「りぼん」に連載を始めた作品です。私はこのアッコちゃんを見たとき、「<おそ松くん>の彼女<トト子ちゃん>だ!」と思いました。とはいえ赤塚先生も手塚先生のように作品によってキャラが変わる、ディズニーの<スター・システム>(人気キャラが役を演じる)を採用?とも感じました(実際には違った)。

アニメの放映は、「サリー」が終了した翌月の1969年1月で、「サリー」以上に大評判となり、続編や劇場版さらには綾瀬はるかさんで実写化もされたほどの人気作品です。ちなみにこの主題歌の作曲も「サリー」同様小林亜星さんで、第一作アニメのエンディング・テーマでお馴染み<すきすきソング>(歌:水森亜土さん)も亜星さんです。

なおこのアニメは、何回もリニューアルされていると紹介しましたが、その度にパパとママの職業が変わっています。まず第一作では「船長と専業主婦」、二作目では「ニュースキャスターとイラストレーター」、そして三作になると「カメラマンと芸術家」になっていました。これは当時の女の子たちの憧れだったと言われています。あなたのリアタイ「アッコちゃん」は?

アニメから始まった、変身するときと戻るときの呪文,「テキマクマヤコン○○になぁれ」(テクニカル・マジック・マイ・コンパクト)と「ラミパスラミパス・ルルル」(スーパーミラーの逆さ読み)、これはアニメ化に際して考案されたものです。

では女の子向けアニメをもうひとつ、19674月に始まった「リボンの騎士」。この作品はあの『ベルサイユのばら』にも大きな影響を与えたともいわれたストーリー少女漫画の先駆けといわれる金字塔で、<モーニング娘>のキャストでミュージカル化もされています。なお主人公サファイヤのモデルは元タカラジェンヌの淡島千景さんです。
なおこの作品は4編あり、第一作は1953年「少女クラブ」、1958年にはサファイヤの子供たち(男女の双子)が主人公の続編(双子の騎士)が発表されました。その後1963年には第一作を大幅にリニューアルした物語が「なかよし」に連載され、アニメ化された67年には「少女フレンド」で、先生の原案で別の作家による書下ろし新作が発表されています。私は小学校の頃床屋にあった単行本「双子の騎士」を見たのが最初で、数年後に「手塚治虫大全集シリーズ」で「リニューアル版」が単行本となり、その重厚なストーリーにはまりました。ただ、ラスト作は手塚先生自身が<失敗作>と公言し、未だ単行本化されていません。これも「W3」同様に国会図書館で、発表当時の「少女フレンド」を閲覧し、確かに6話で終わらせてしまったのがわかるような無理な設定でした。

ちなみに主題歌には<インスト>、主語<僕>、主語<私>と3パターンあり、<私>ヴァージョンのみアレンジが違っています。エンディグの「リボンのマーチ」も含め、アニメのサントラはシンセサイザーの大御所冨田勲さんによるものです。彼は手塚先生のアニメ音楽を数多く手掛けており、代表作の一つに「ジャングル大帝」があります。

さて、最後はこの当時にお馴染みだったCMソングを聴いていただきます。まずは、「ジャングル大帝」のスポンサーだった(今は亡き)サンヨー電機のカラー・テレビ「サン・カラーの歌」、歌っているのはエノケンこと榎本健一さん。当時、サンヨー電機はカラー・テレビの販売推進のために、日本初のカラー・アニメーション番組のスポンサーになったと言われています。カラー・テレビの普及率が低かったころ、新聞のテレビ欄に「カラー放送」と印字、カラー放送番組にはブラウン管の隅に「カラー」とテロップが映っていました。

次はNHK連ドラの影響で「チキンラーメン」が発売以来最高の売れ行きとなっている「チキンラーメン」、同時期に発売された「エースコック・ワンタンメン」。この袋麺のCMも「ぶたぶたこぶた~」のフレーズでお馴染みでした。なお1980年頃には関西限定販売で、関西出身の後輩に土産を頼んでいたこともありました。
そして商品よりも「きん、ぎん、パぁ~る」のフレーズが有名だったライオンの洗濯洗剤「ブルーダイヤ」。このプレゼント・フェアは洗剤が発売された1965年から(1973年のオイル・ショックで一次中断)2008年まで、約40年も続いていたというから驚きです。ちなみに、景品は現物直接封印ではなく、「当選引換券」が入れてあったということです。この曲を書いたのはCMの達人、小林亜星さんで稀に彼本人の歌うヴァージョンが流れたこともあったようでした。

そしてCMのトリは「鉄腕アトム」のスポンサーだった明治製菓から、「ブルー・ダイヤ」と同じく亜星さん作のCMで「明治チェルシー」。この曲は「コカ・コーラ」のCM同様にいろいろな人たちが歌っていますが、きわめけつけといえば「こぉ~いびともいなぁ~いのにぃ~♪」のシモンズですね。

本日の「アニメ特集」のラストは、アコースティックギターの名手、押尾コータローさんのセカンド『Love Strings』に収録されていた「リボンの騎士主題歌」です。

ということで、今月から始まりました「Music Note」、来月は昨年516日に亡くなられた西城秀樹さんを一周忌に偲んで追悼特集をお届けする予定です。なおWOWOWではこの命日に秀樹のライブ映像を含む大特集が放映されます。
(鈴木英之)

藤本有華、Vacation Three出演ライヴイベントのご紹介

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弊サイトで紹介したバンドの6月開催のライヴでお勧めのものを紹介したい。
まずはThe Pen Friend Club (ザ・ペンフレンドクラブ)のメインボーカリスト藤本有華が、バンド活動と平行して、ソロ・ライヴを続けているのはペンクラ・ファンの間にも知られていると思う。
昨年から彼女はJAZZにも挑戦しており、船橋市にあるJAZZ BAR "COQUELICOT"に不定期で出演し、来月3回目となるライヴを予定している。JAZZ・スタンダード・ナンバーの他、ペンクラブのオリジナル・ソングもその美声で披露する予定だ。
JAZZアレンジされたペンクラ・ソングも聴いてみたいファンは是非駆けつけて欲しい。


藤本有華がJAZZを歌う*第3弾
●JAZZ live @ COQUELICOT
●日時:6月8日土曜日19:30〜
3ステージ
●出演者・ボーカル:藤本有華
ピアノ:青方均
●チャージ:2500円

藤本有華プロフィール:
2009年、T-time.というアコースティックバンドを結成し、音楽活動を開始。2011年〜マイスペ(バンド)、2015年〜ピアノの弾き語り(ソロ)を経て、2016年よりザ・ペンフレンドクラブのメインボーカルとなる。同時にソロ・ヴォーカリストとしての活動も続けている。



続いて中村大率いるアコースティック・トリオの Vacation Threeは、昨年11月7日にファースト・アルバム『One』をリリースしたばかり。中村の類い稀なソングライティング・センスと歌声、サックスの仲本興一郎、女性パーカッション奏者おきょんのプレイは一聴の価値ありだ。
またこのライヴでは、弊サイトでもデビュー時から評価が高いシンガー・ソングライターのSaigenjiとのジョイントというベスト・マッチで言うことは無い。
前売りチケットは今月16日から発売なので下記URLからチェックして欲しい。




『DOMINGO』
●銀座・月光荘 月のはなれ
●日時:6月16日日曜日13:00〜
●出演者:Saigenji , Vacation Three
●チケット:2,500円 
(別途ドリンク・オーダー)
※ 5/16よりチケット予約を承ります。


Vacation Threeプロフィール:
ネオ・アコ、フェイク・ジャズ、ボッサ等の影響をシンプルに表現する、掻き鳴らさないシティ・フォーク・サウンド。東京拠点のアコースティック・トリオ Vacation Three。米NCのFM局「WXYC」で1位を獲得したニューウェーブ~ディスコ・バンドBANKのフロント・マン中村大と、90年代から活動する元祖・渋谷系パーティー・バンドWack Wack Rhythm Band に参加するサックス奏者・仲本興一郎、同じくパーカッション奏者おきょんによる3人組。
(テキスト:ウチタカヒデ)



【ガレージバンドの探索・第五回】 The Barbarians

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出典元: Music Museum of New England http://mmone.org/ 

The Barbariansは昔買ったコンピ『Garage Beat '66 2: Chicks Are for Kids』( Sundazed Music ‎/ SC 11140)に「Hey Little Bird」という曲が入っていて、朴訥な歌い方やかわいらしいメロディが好きだった。
オールデイズレコードのリイシューシリーズで、アルバム『THE BARBARIANS』(ODR6440)が出ていたので他の曲も聴いてみたくなって購入してみた。
唯一作のアルバムに、ボーナストラックとしてシングルの3曲が追加されている。いかにもガレージという曲が多いかなと思っていたのだけれど、アルバムを通して聴くと、「Mr. Tambourine Man」や「House Of The Rising Sun」、
メキシコの作曲家Lorenzo Barcelataの「Marie Elena」のカバーまで含まれていて意外な印象だった。



1964年マサチューセッツ州ケープコッド、プロヴィンスタウンで、Victor "Moulty" Moulton(Drummer  and  Singer)、Bruce  Benson(Guitarist)、Ronnie Enos(Lead Guitarist / 65年にJeff Morrisに交代)、Jerry Causi(Bassist and  Singer)によって結成されたThe Barbariansは、ニューヨークのJoy Recordsと
契約を結び「You’ve Got To Understand」「Hey Little Bird」を録音する。
「You’ve Got To Understand」は、George Goehring(「Lipstick On Your Collar」などの作曲家)とJohn Kuntzの作。個人的にはこの曲が一番気に入っている。


   


Moulty は14歳の頃爆竹で遊んでいて左手を吹き飛ばしてしまった為、義手のドラマーだった。マネージャーはメンバー達に海賊に見せかけるようなラフでワイルドなファッションをさせ、アメリカ初の長髪のバンドとして売り出した。この宣伝効果で、曲自体はヒットしなかったにも関わらずChuck Berry、James Brown、The Beach Boys、The Rolling Stonesなどの豪華な顔ぶれと共にAmerican International PicturesのコンサートフィルムThe T.A.M.I. Showに出演している。

1965年、新たにLaurie Recordsと契約し、プロデューサーDoug Morrisのもとで「Are You A Boy Or Are You A Girl」「Take It Or Leave It」を録音。Doug Morris、Ron Morris作の「Are You A Boy Or Are You A Girl」は当時の長髪に対しての世間の反応を表したThe Barbariansに相応しい歌詞だった。
年の終わりにアルバムと、シングル「What The New Breed Say」「Susie Q」をリリースした後、バンドはMercury labelへの移籍を考えていた。その時期、Doug Morrisは左手を失ったMoultyのメロドラマ風自伝ソング「Moulty」を提案。録音まではしたものの、Moultyはこの曲のリリースを断った。
しかし1966年、Laurie RecordsはBob DylanのバックバンドThe Hawksを雇って録音したものにMoultyのボーカルを入れて無断でリリース。
激怒したMoultyがLaurieの社長を追いまわし、シングルのコピーを叩き割って投げつける騒動となったらしい。当然ながらバンドはレーベルを離れ、その後もMercuryへの移籍は叶わず解散。

   

大きなヒットもなく有名とは言えないかもしれないThe Barbariansだけれど、Moultyはガレージ・シーンに強烈な印象を残した。
The Ramonesの「DO YOU REMEMBER ROCK‘N' ROLL RADIO」の中では 

Will you remember Jerry Lee, 
John Lennon, T.Rex and OI Moulty?  

と歌われ、Moultyがロックンロール・アイコンとして愛されたことが窺える。  
【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)/編集:ウチタカヒデ】




ヨシンバ:『ツヨクヨハク』(Happiness Records/HRBR-014)

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喫茶ロック・シーンの流れからフォーキーなロック・バンドとしてデビューしたヨシンバが、5月15日に13年振りとなる5枚目のオリジナル・アルバム『ツヨクヨハク』をリリースする。
彼等は武蔵野美術大学の学生だった吉井(b)、荘田(a.g)、中澤(e.g)が中心となり結成され、98 年8 月にテイチク・レコードよりファースト・シングル「これを恋と云えましょうか」(TECN-11385)でメジャーデビューする。この曲は某テレビ局の深夜アニメ番組のエンディング・テーマに抜擢されたことで、アニメ・ファンからも熱烈に支持されたという。
同年11月にはマキシシングルの「くもの糸」(TECN-12470)と、翌99年4月にはファースト・アルバム『042』(TECN-28548)をリリースし、フォークやソウルからソフトロックに至るまで様々なエッセンスを内包したサウンドで高く評価された。
一時活動を休止した後、2001年に新たに、佐治(ds) 、鈴木(b)そして西村(key)を加えて活動を再開しマグネットレコードに移籍する。同年9月には、著名イラストレーターの矢吹申彦氏がジャケットを手掛けたセカンド・アルバム『ハズムリズム』(MAGL-3004)をリリースした。
その直後佐治が脱退するも新たに朝倉をドラマーに迎え、02年10月にはサード・アルバム『足りないもの』(MAGL-3005)を発表する。
しかしバンドの苦難は続き、翌03年9月今度はオリジナル・メンバーの荘田と中澤が脱退してしまう。残った吉井に西村、鈴木、朝倉の4 人で再始動することになりMIDI Creative へ移籍。06年6 月にフォース・アルバム『4』(CXCA-1187)をリリース後、マイペースに活動を続けてきた。
現在のメンバーは、ヴォーカルとギターの吉井功に、キーボード兼コーラスの西村純とドラム兼コーラスの朝倉真司の3名となっている。 彼等の魅力はこの様なバンドの歴史が刻まれた、ペーソス溢れる吉井の個性
的なヴォーカルではないだろうか。


本作『ツヨクヨハク』には長年の交流で培ったゲスト・ミュージシャンも多く、09年からサポート・ベーシストを務めてきた隅倉弘至(初恋の嵐)は全曲参加し、ギタリストには、玉川裕高(元コモンビル~赤い夕陽)、鳥羽修(元カーネーション)、中森泰弘(HICSVILL、SOLEIL)が各曲で素晴らしいプレイを披露している。 レコーディングはスタジオ・ハピネスで録られており、エンジニアは同スタジオの主でヨシンバのメンバーとも旧知の平野栄二が担当している。
では筆者が気になった主要曲を解説していこう。

   
冒頭の「だんだん」はイントロのアコースティック・ギターの刻みと、サイケデリックなキーボードのフレーズから曲の魅力に引き込まれていく不思議なムードを持っており、シド・バレット参加時の初期ピンクフロイドやトラフィックのファンにもお勧めである。アコギは中森、クラリネットには佐藤綾音が参加している。
続く「朝焼けの空に」はフォーク・ロック調のアレンジで、ロジャー・マッギンを思わせるフレーズのエレキ・ギターは玉川によるものだ。メンバー3名によるコーラスの重ね方も見事である。
「冬の果実」はサウンド的に異なるのだが、ヴァースのコード進行が80年代英のエレポップ・デュオであるネイキッド・アイズの「When The Lights Go Out」(『Burning Bridges』収録/83年)に通じて好きにならずにいられない。吉井の声質もピート・バーンのそれを彷彿とさせて非常にいい。印象的なエレキ・シタールは中森のプレイだ。


そして先月初頭に音源入手後一聴して筆者がベストトラックと感じたのは、5曲目の「アイラブユーすら言えず」である。キーボード主体の空間が狭いサウンドではあるが、吉井の存在感のあるヴォーカルで音像が広がっていくのは見事である。佐藤による多重録音のクラリネットのフレーズもこの曲のキーデバイスとなっていて耳に残る。個人的にも今年のベストソング候補になるだろう。
鳥羽のヘヴィーなスライドギターが利いている「東京も君もいつも」は、はっぴいえんどに影響を与えたことで知られるバッファロー・スプリングフィールド(66~68年)の匂いがして、東京に対するアイロニーな歌詞と相まって完成度が高い。「I Am the Walrus」(ビートルズ/67年)を彷彿とさせる展開を持ったチェロは上田晴子のプレイだ。
ラストの「君が僕」はイントロ無しで始まるシンプルなバラードで、サビのドラマチックな展開が非常に美しく、朝倉と隅倉のリズム隊のコンビネーションと表現力も随一で、アルバムの着地点として相応しい曲といえる。ストリングス・アレンジはメンバーの西村で、ヴァイオリンは秋久ともみのプレイである。

アルバムを通して吉井のソングライティングとヴォーカルの個性が光り、それを支えるメンバーとゲスト・ミュージシャンが織りなす良質なサウンドは、従来のファンから弊誌読者の音楽通にも強くアピールするので、興味を持った方は是非入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)

名手達のベストプレイ第3回~ジム・ゴードン

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ジム・ゴードンほど波瀾に満ちた人生を歩んだドラマーはいないだろう。
60年代半ばからThe Wrecking Crew(レッキングクルー)のレコーディング・セッションに参加し、先輩格のハル・ブレインと共にそのボトムを支えてきた。
70年代になると更にその活動範囲を広げ、ロサンゼルスのスワンプ・シーンに加わり、Delaney & Bonnie & Friendsのメンバーとしてイギリス・ツアーに参加する。そこではエリック・クラプトンとの出会いから稀代の名盤『Layla And Other Assorted Love』(70年)に参加し、Derek & The Dominosのメンバーとなる。
このクラプトンとの蜜月時期にはビートルズ解散後ソロに転じたジョージ・ハリスンの『All Things Must Pass』(70年)やジョン・レノンの『Imagine』(71年)にも参加、その名はブリティッシュ・ミュージック・シーンでも高名な存在となり、アメリカ本国とイギリスを股に掛けた一流ドラマーとして活躍していくことになる。
しかしその後70年代後半に統合失調症による自殺未遂、83年には母親を殺害するという事件を起こし音楽業界から退いてしまった。2019年現在もその罪でカリフォルニアの医療刑務所にて服役中である。
ここではハル・ブレイン氏ジョー・オズボーン氏に続き、ジム・ゴードン氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返り、いつの日か適うと信じて氏の復帰を心から願いたい。
また今回からサブスクリプションに登録された全楽曲をプレイリスト化し、試聴出来るようにしたので興味を持った方は是非フルレングスで聴きながら読んで頂きたい。


【ジム・ゴードンのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


 【角谷博栄(ウワノソラ)
今回はファースト・アルバム『ウワノソラ』ウワノソラ'67の『Portrait in Rock'n'Roll』に参加しているドラマーのナルハシタイチ君に一部選曲してもらいました。
https://uwanosora-official.themedia.jp/


●What Is Life / George Harrison
(7”『What Is Life』/ 71年)
◎Phillip Spectorのプロデュース。George Harrisonの大好きなアルバム『All Things Must Pass』にも収録。もう本当にかっこいいです。
こんなドラムの音、令和では聴けないのかなぁ。(角谷)

●Why Does Love Got To Be So Sad? / Derek & The Dominos 
(『Derek & The Dominos ‎– In Concert』 / 73年) 
◎スタジオワークでのタイトさとは一線を画す、ライヴならではのパッション全開の一曲。 バンドの熱気と共にインプロで展開される約9分半の中、異様な執着を感じる程に叩きまくっているライドシンバルが癖になります。個人的に彼といえばこの曲。
オリジナル音源よりも断然ライヴです。(ナルハシ)

●Apache / Michael Viner's Incredible Bongo Band ‎
(『Bongo Rock』/ 73) 
◎レアグルーブでも有名な架空で作られたこのバンドでもゴードンがプレイしています。 パンクさもあってかっこいいです。(角谷)

●Apostrophe’ / Frank Zappa 
(『Apostrophe’』/ 74年)
◎60’~70’のセッションマンの中でも、ゴリっとしたサウンドと肉厚なグルーヴが彼の持ち味(だと思っています)ですが、その真骨頂とも言えるプレイに満ちた一曲。小気味良いシンバルワーク、それでいて重厚なドラムサウンドが◎。ひたすらヘヴィに畳み掛けていくプレイがカッコいいです。(ナルハシ)

●Parker's Band / Steely Dan
(『Pretzel Logic』 / 74年) 
◎ポーカロとゴードンのツインドラム。最高な組み合わせ。ツインドラムだけでも高揚してしまいますが、曲もカッコイイ!(角谷)

 
What Is Life / George Harrison


西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】 
集団行動HP https://www.syudan.com/
ツイッターアカウント @tikanakangana 
 

●I Don't Want to Discuss It / Delaney & Bonnie & Friends 
(『On Tour With Eric Clapton』/1970年) 
後のデレク・アンド・ザ・ドミノスメンバーが全員参加のこの曲(というかこのアルバム)、ジムのドラムがパワフルでキレッキレです。
演奏陣を牽引しています。

● Power To The People / John Lennon
 (7”『Power To The People』/1971年) 
◎曲構成が超シンプルだからこそパワフルなドラムが光ります。「Power To The People」と歌っていない箇所のバスドラムのベタ打ちが、メッセージ性の強いこの曲の推進力を強調していてすんばらしいです。

●Charlie Freak / Steely Dan
 (『Pretzel Logic』/1974年) 
◎物憂げなピアノが印象的ですが、同じメロディのループなのに全く退屈しないのはジムの力強いシャッフルとセクションごとのスネアのゴーストの変化が効いているなと。シンプルですがえらい難しいと思います。

● Fallin' In Love / The Souther-Hillman-Furay Band
 (『The Souther-Hillman-Furay Band』/1974年) 
ウエストコーストの才能が集まったスーパーグループ。爽やかでポップなこの曲ではタムを絡めた多めの手数のジムのドラムが堪能できます。

●Rich Girl / Daryl Hall & John Oates
 (『Bigger Than Both of Us』/1976年)
◎この曲大好きなのですが、ジムが叩いていたとはつゆ知らず。改めて聴くと付点のバスドラムの位置が本当絶妙でして、粘っこいドラミング内ですごく良いアクセントになっています。
 
Fallin' In Love / The Souther-Hillman-Furay Band 



平田 徳(shinowa)
http://www.shinowaweb.com


 ●Smell Of Incense / The West Coast Pop Art Experimental Band
(『Volume 2』 / 67年)
◎サイケ好きにはよく知られる米西海岸の有名バンドで、後にプロデューサー諸々で大成功するマイケル・ロイドが在籍。Reprise からの67年のアルバム ”Volume 2” にゴードンが参加しており、サイケクラシックとして名高い ”Smell Of Incense”は Jim Gordon のプレイと思われます。

●Wasn't Born To Follow / The Byrds 
(『The Notorious Byrd Brothers』/ 68年) 
◎映画 ”イージーライダー” で二人が荒野をバイクが疾走する場面に流れる曲で、多くの人が憧れる名シーンだと思う。軽快なドラミングが心地よく、ドライブミュージックの最高峰のひとつ。なおアルバム自体も30年来愛聴しております。

●California Home / Mark Eric 
(『A Midsummer's Day Dream』 / 69年) 
◎鼻にかかった脱力ヴォーカルに完璧な演奏というギャップも見事なアルバム。オブスキュアに点で存在するかのようなソフトロックのアルバムも、プロダクトとしてはきちんと確かな一流ミュージシャンが参加していたという、線でつながることが理解できた一枚。
その中から冒頭を飾る一曲。

● I Looked away / Derek & Dominos 
(『Layla And Other Assorted Love Songs』/ 70年) ◎高校生の頃、クリーム以降のクラプトンは親父が聴く音楽と思っていましたが、ちょっと大人になりかけた19才の冬に聴いたレイラの一曲目、ギターよりも歌よりも、音は素朴だけど異常にたくましく力強く、気持ち良すぎるエイトビートに心奪われました。いまだにレイラのアルバムは何よりもドラムを聴きたくて聴いています。 

● The Incredible Bongo Band
(『Bongo Rock』/ 72年) 
◎全編にボンゴがフィーチャーされるバックにて、ゴードンが出しゃばらず、まさに職人としてグルーヴの壁を作っています。それにしても上手いです。音の粒立ちがよく本当にビートが美しいんです。これこそがセッションドラマーとしてまさに求められた技だったんだろうな。あえてこれ1曲は選びませんが、ゴードンのプレイが堪能できる一枚。


California Home / Mark Eric 



The Bookmarcs(洞澤徹 & 近藤健太郎)】 
https://www.thebookmarcs.net/


 ●Only You Know & I Know / Dave Mason
(『Alone Together』/70年)
◎トラフィックのメンバーだったデイブ・メイスンのファースト・ソロアルバム冒頭を飾るナンバー。軽快なアコースティックギターカッティングのイントロでは、シンバルを使わず、スネアのみのリズムキープが面白い。アウトロのドラミングも最高。(近藤)

●Midnight At The Oasis / Maria Muldaur 
(『Maria Muldaur』/73年)
◎マリア・マルダーのソロ・デビュー作収録のヒット曲。エイモス・ギャレットの名演が有名だが、安定のリズムと、ブラシをオーバー・ダヴィングしたと思われるプレイが心地よい、永遠の名曲。(近藤)

 ●Feelin' That Your Feelin's Right / Minnie Riperton 
(『Adventures In paradise』75年) 
◎ジャケの良さも含めてのミニーリパートンの傑作アルバム『Adventures In paradise』 からの1曲。官能的なまでのキープに絶妙なタイム感のフィルは、ドラムを聴いているだけでご飯何杯でもいけます。(洞澤)

●Rock And Roll Slave / Stephen Bishop 
(『Careless』76年)
◎ Stephen Bishopの大好きなアルバムから。控えめながらも、曲の後半頻繁に出てくるタム回しは”泣きのギター”ならぬ”泣きのドラム”といったところでしょうか。 まさにドラムが歌っていますね。(洞澤)

●Lie To Me / Bill LaBounty
(『This Night Won't Last Forever』78年)
◎Bill LaBountyといえば「Livin' It Up」が有名ですが、このアルバムもAOR史の中でかなりの良曲揃いだと思います。特にこの曲はゴードンのハイハットの刻みの息遣いが、歌とうまく溶け合ってなんとも心地よいグルーヴを生み出しています。(洞澤)


  
Feelin' That Your Feelin's Right / Minnie Riperton 





増村和彦(GONNO × MASUMURA etc)
http://www.ele-king.net/writters/masumura_kazuhiko/


●Now That Everything's Been Said / City 
(『Now That Everything's Been Said』/ 68年)
◎ジム・ゴードンの推進力とタンバリン・シェイカーの絡みがナイス。 よくよく聴くとピアノのタイムがすごくよい。

●Marrakesh Express / Crosby,Stills&Nash (『Crosby,Stills&Nash』/ 69年)
◎お願いだからダラス・テイラーに叩いていて欲しかった名盤中の名曲。

●Some of Shelley's Blues / Nitty Gritty Dirt Band 
(『Uncle Charlie & His Dog Teddy』/70年)
◎Michael Nesmithのカバー。 数多あるジム・ゴードンのプレイの中で最もリラックスしていて楽しそう。 その分所々少しだけおらついていて、それがまたかっこいい。

●Love Song / Lani Hall 
(『Sun Down Lady』/72年)
 ◎ミッドナイト・ランブル・ショー(http://www.midnightrambleshow.com/)からの推薦。
ブラシ8ビートの最高峰!

●Do You Know / Joey Stec
(『Joey Stec』/76年)
◎MillenniumのメンバーでもあるJoey Stecのソロ。空間豊かなリズムの中で、低いチューニングのドラムと高いチューニングのコンガのアンサンブルが心地よい。ジム・ゴードンらしくベードラ、スネアでしっかりビートを進めながら、ハイハットとシェイカーの絡みも気持ちいいし、ハイハットのアクセントのダイナミクスがかっこいい。


Do You Know / Joey Stec 



 【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
http://blog.livedoor.jp/soulbass77/ 


●Grazing In The Grass / The Friends Of Distinction
(『Grazin'』/ 69年)
◎アールパーマー、ポールハンフリーの系譜に位置する「ソウルドラマー」としてのジム・ゴードン。美しさと安定感では両者を凌ぐのだから超一流である。ドラムソロも嬉しい。

●Somebody Found Her (Before I Lost Her) / Dennis Lambert
(『Bags & Things』/ 72年) 
プリAORとして究極の1曲。強拍でハットがオープンがちになるのがゴードンらしい。間奏以降の怒涛の流れにはただただ聴き惚れるのみ。
最高!
●Song For Paula / Bobby Whitlock  
(『Bobby Whitlock』/ 72年)
◎圧倒的な実力で『レイラ』を支えた男の傑作ソロ。こんなに熱く激しく、長いフィルも多いのに、ゴードンの安定感たるや流石は職人!何度聴いても感動的。

●American City Suite-All Around The Town / Cashman & West
(『A Song Or Two』/ 72年) 
◎アルバム全編がポップス歌伴ドラムの完成形。中でもこの曲のカッコよさは筆舌に尽くしがたい。本当にうまいなぁ…!

●American Lovers / Thomas Jefferson Kaye
 (『First Grade』/ 74年) 
◎フェイゲン&ベッカー作で知られるこの曲。あらゆる技を盛り込んでシンプルなメロディを盛り上げる。この素晴らしい構成力! 
名演、名盤は枚挙に暇がないゴードン。どうしてももう一枚『The Souther-Hillman-Furay Band』(74年)を次点として挙げさせてください。


American Lovers / Thomas Jefferson Kaye 



Masked Flopper(BB5数寄者)

●Dream Weaver/ Rick Nelson 
(『Another Side Of Rick』/ 68年)
◎Everly Brothers同様にBritish Invasion後にセールス的に伸び悩み人気低迷時の ソフトロック風佳作。Rickの歌唱にうまくからむナチュラルなドラミング。

●California Dreamin'/ Brotherhood 
(『Brotherhood』/ 69年)
◎Paul Rever & The Raiders脱退メンバーが結成したバンドで、Raiders時代から Jimはセッションで参加することが多かった。重厚なサウンドを支えるドラミングは秀逸。

●Hound Dog/ Anna Black 
(『Thinking About My Man』/ 69年)
◎ブルージーな歌唱にからむ演奏を見事に支えるドラムにパーカッションの構成は見事。

●Marrakesh Express/ Crosby, Stills & Nash 
(『Crosby, Stills & Nash』/ 69年)
◎The Holliesから却下され米国西海岸で日の目を見た、という喜びと軽快なJimのリズムと 異国情緒が重なる不思議な曲。

●Sandcastles at Sunset / The Surf Symphony 
(『Song Of Summer』/ 69年)
◎インスト企画もので浜辺の情景にちなむ曲を集めた快作。いわゆるイージーリスニングの 範疇ではあるが時々聴きたくなる魅力がある。


Marrakesh Express/ Crosby, Stills & Nash 



 【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)

●Hurt So Bad / Bobby And I 
(『Bobby And I』/ 68年)
◎マイナーからメジャーへのコード・チェンジが繰り返されるテディ・ランダッツォ作曲らしい陰影のあるバラードがオリジナルだが、この男女ヴォーカル・デュオのカバー・ヴァージョンではハイテンポなジャズ・アレンジで演奏される。ゴードンのドラミングがその原動力となっているのは言うまでも無い。

 ●Paxton Quigley's Had The Course / Chad And Jeremy 
(『The Ark』 / 68年)
◎ゲイリー・アッシャーが手掛けた英フォークロック・デュオのラストアルバム収録でシングルカットもされたソフトサイケの隠れ名曲。時代的に早すぎたオペラ・プログレ・ポップであり、職人ゴードンは各パートに的確にその能力を駆使したプレイをしている。断末魔的なコーダをノリノリのシェイクで攻める様が極めてクールだ。

●Gimme Some Lovin' / Traffic
(『Welcome To The Canteen』/ 71年)
◎スティーヴ・ウィンウッド配するスペンサー・デイヴィス・グループ、66年のメンフィス・ソウル系譜のモッズ・アンセムがオリジナルだが、ウィンウッドが次に組んだトラフィックの71年のライヴ盤では、ゴードンが叩くスワンプ・リズム・パターンを核にして3倍の尺で演奏され、会場を興奮の坩堝と化す。

●Rikki Don't Lose That Number / Steely Dan 
(『Pretzel Logic』/ 74年)
◎スティーリーダン史上最高位のシングル曲を取り上げるのは躊躇するが、業界屈指の一期一会セッション故に生まれた名作ではないだろうか。ハイハット・ワークの絶妙な揺れ、フェイゲンのヴォーカルに呼応するオブリガートのようなラテン・フィールのタム転がしなど聴き込むほどに、その非凡な技巧を思い知るのだ。

●Please Call Me, Baby / Tom Waits 
(『The Heart Of Saturday Night』/ 74年)
◎酔いどれ詩人(実際は下戸)として日本にも信奉者が多いトム・ウェイツのセカンドは、プロデューサーのボーンズ・ハウのコネクションとしてゴードンが全面的に参加している。語るような独特なテンポで歌うウェイツの「世界観=タイム感」を崩さないプレイは、一流の職人ドラマーとしての真骨頂である。
 
  
Gimme Some Lovin' / Traffic 



 (企画 / 編集:ウチタカヒデ)

WOWOW一周忌追悼番組 西城秀樹「YOUNG MANよ永遠に」

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 平成から令和に年号が変わり、昭和が生んだ不世出のシンガー西城秀樹さんが亡くなった一周忌当日(516日)、彼の死を惜しむファンがフィルム・コンサートに詰めかけたと聞く。また命日の当日1830からWOWOWでヒデキのスペシャル・プログラムがオンエアされている。





 その放映プログラムは『ブロウアップ ヒデキ』『西城秀樹ライブ~バイラモス2000~』『傷だらけの勲章』の3本立てだった。『傷だらけ~』以外の2本は、ヒデキの最大の魅力であるライヴ映像だ。



昨年の追悼記事でも紹介したが、その一本『ブロウアップ ヒデキ』からふれていく。このライヴ映像は19757月より敢行されたヒデキ初の全国ツアー「全国縦断サマーフェスティヴァル」を収録したドキュメント作品だ。ここには以後ヒデキのライヴには欠くことのできない存在となる吉野藤丸バンド(メンバー紹介では吉野藤丸&U.F.O.)の初お披露目でもあった。その初日となったのは720日、富士山麓に設営された巨大な特設野外ステージでのパフォーマンスだった。


この作品は、同年10月には一般劇場公開されており、19853月にはビデオ化され、さらに20157月に発売された9枚組DVD BoxThe Stages Of Legend –栄光の軌跡―Hideki Saijo And More』にも収録されている。なお昨年のヒデキの訃報に際し、この作品は717日から全国3ヶ所のライヴ・ハウス(Zepp)での再上映会が実施され、ほぼ即日完売という人気ぶりだった。





そして、もう一本『西城秀樹ライブ~バイラモス2000~』は彼の9作目で、ラストの映像作品でもある。これは彼の通算80作目のシングル<Bailamos>の発売を記念して2000331日に新宿厚生年金会館で行われた一夜限りのスペシャル・ライヴだ。今回はこの2本のライヴ映像について、参考資料を加え詳細データをまとめてみた。なおカヴァーには(オリジナル・アーティスト:発表年)を表記した。





『ブロウアップ ヒデキ』(19751010日 松竹系劇場公開作品)


富士山麓特設ステージ~オープニング、Get Dancin’ (ディスコ・テック&セックス・オー・レターズ1974)、悲しみのアンジー(Angie)(ローリング・ストーンズ:1973)、恋の暴走、情熱の嵐、グッド・バイ・ガールズ札幌~愛の十字架、傷だらけのローラ(フランス語)この愛のときめき、旅は気ままに、大阪球場~激しい恋、青春に賭けよう、至上の愛、グッド・バイ・ガールズ、エンディング




(サポート・メンバー)


演奏:藤丸バンド、永尾公弘とザ・ダーツ、コーラス:クルクル、指揮:惣領泰則



このライヴの初日は1975720日で富士山麓に設営されたステージでスタートした。そこに全国から3万人を集客するというビッグ・イベントだった。その移動に使われたバスの車中では、ファンの大合唱<青春に賭けよう>がおこり、既に臨戦態勢だ。そのオープニングはクレーンに乗って降臨という派手な演出でファンを興奮のるつぼに引き込んでいる。巨大スクリーンもない当時では破格の来場者サービスだったはずだ。またヒデキは常にヘッド・フォンをモニターとして装着しているが、そのルーツをたどれば、ドラマーだった彼が1971年に初来日したシカゴの(ドラマー)ダニエル・セラフィンに影響されたものではないかと思える。


また大阪球場のラストでの倒れても倒れても起き上がるその様は、「ジェームス・ブラウンのマント・ショー」を彷彿させるほどだ。


この映像作品での収録曲は15曲だが、全20曲収録のライヴ・アルバム『ヒデキ・オン・ツアー』も発表されている。とはいえ映像の③⑩⑬はアルバム未収録で、ファンであればどちらも聞き逃せないはずだ。なおは前年に発表した第3作のライヴ・アルバム『リサイタル/新しい愛への出発』(197525日)に収録されている。

 余談になるが、このライヴは当時テレビのスペシャル番組で放映されていたと記憶する。私はヒデキが歌う、フランキー・ヴァリの<瞳の面影My Eyes Adored You)>を日本語訳詞(「もう一度~」で始まるヴァージョン)が目に焼き付いている。このヒデキの選曲センスが光る全米1位ナンバーは残念ながら映像化されていない。




参考:カヴァー収録曲について


Get Dancing



フォーシーズンズなどのプロデューサーとして知られるボブ・クリューが手がけた覆面グループ、ディスコ・テック&ザ・セックス・オー・レターズのデビュー曲であり代表曲(全米10位)。この曲はこのグループのセッションにも加わっているケニー・ノーランとクリューの書下ろし。このコンビはパティ・ラベル率いるラベルに<Lady Marmalade>、フランキー・ヴァリの<瞳の面影>で全米1位を獲得。またノーランはソロでも<夢のバラード(I Like Dreamin’)>を全米1位に送り込んでいる。

悲しみのアンジー


ザ・ローリング・ストーンズ幻の来日となってしまった1973年に発売された第14作『羊の頭のスープ(Goats Head Soup)』からの先行シングルとなった彼らの傑作バラードの1つ。7作目(バラードとしては2作目)の全米1位(全英5位)を記録。当時、このタイトルがデヴィット・ボウィーの前妻アンジェラのことではないかということで話題になった。









Bailamos 200020001122日 / Polydor : UPBH-1012JRX-8017~8

IntroductionUpside Down(Vamos A Bailar)(ジプシー・キングス:1987)、Sunshine Day(オシビサ:1976)、Black Magic Woman(フリートウッド・マック:1969)、BailamosRemix Ver.エンリケ・リグエシアス:1999)、MakingLive Rehersalヤングマン(Y.M.C.A.) (ヴィレッジ・ピープル:1978)~情熱の嵐~ヤングマン(Y.M.C.A.)ジェラシー、悲しき友情、ジプシー、決起大会模様最後の愛、ラストシーン、眠れぬ夜(オフコース:1975)、愛の十字架、サンタマリアの祈り、MakingLove Torture★⑭ギャランドゥ(Remix Ver.)、激しい恋、ブーメランストリート、傷だらけのローラ、いくつもの星が流れMakingLove Torture~-Part2~Bailamos(Encor)Rain of Dream~夢の罪、㉑ナイトゲーム(グラハム・ボネット:1981Ending


(サポート・メンバー)

Gt.:吉野藤丸、黒田英雄、B.:長岡道夫、Key.:塩入俊哉、Dr.:鎌田清、Per.:木村誠、
Sax:竹上良成、Cho.:Milk(宮島律子、永井理絵)



 この作品は2000331日に開催されたヒデキ80枚目のシングル<Bailamos>の発売記念を兼ねた、東京・新宿厚生金会館におけるスペシャル・ライヴだ。


派手な演出で沸かせるのではなく、実力派ミュージシャンを揃えじっくり歌を聴かせるスタイルに、ヒデキのパフォーマンスにかける意気込みが伝わってくる。
ここでのセット・リストは彼にとって思い入れの深いナンバーや、エスニック系のカヴァーが並び、これまでのライヴの集大成的な雰囲気が漂ってくる。



参考:カヴァー収録曲について

 
Vamos A Bailar

 キリンビール淡麗CMに起用された<Volare>でお馴染みのフランスのラテン・ロック・グループ、ジプシー・キングス。彼らが1989年に発表した第6作シングルで全米ラテン・チャート3位を記録。第4作『Mosaique』に収録されている。


Sunshine Day


1969年にガーナ出身のテディ・オセイを中心にアフリカ系ミュージシャンで結成されたアフロ・ロック・バンド、オシビサ。彼らが1975年に発表した第6作『Welcome Home』に収録された通算10作目のシングル。全英でスマッシュ・ヒットを記録した代表曲のひとつ。1997年にはファンカラティーナを代表するユニット、マット・ビアンコが第7作『World Go Round』でカヴァー。彼ら20作目のシングルとして全米ダンス・チャートを賑わしている。


Black Magic Woman


ピーター・グリーンが率いたブルース・ロック・バンド時代のフリートウッド・マックがサード・シングルとして発表。その後、1970年にサンタナがセカンド・アルバム『天の守護神(Abraxas)』でカヴァー。カルロス・サンタナの官能的なギターを前面に打ち出したこのヴァージョンは、シングル・カットされ全米4位の大ヒットを記録。バンドの人気を世界的レベルに押し上げた。


Bailamos


フリオ・イグレシアスの次男エンリケ・イグレシアスの第14作シングルで代表作。本国スペインチャートを制覇し、全米1位、全英4位を記録。彼が世界に飛躍するきっかけとなった第4作『Enrque』に収録されている。





 補足になるが、この『Bailamos 2000』は6142100からWOWOWで再放送されるので、このデータを参考にしていただければ幸いだ。なお今回放映された作品を含め、彼には9作の映像作品がある。またこれら以外にもスペシャル番組でのライヴも何回となく放映されている。WOWOWでも1990年代に一度彼のライヴが放映されたことがあった。そこでは<青春に賭けよう>をアカペラで歌っていたと記憶する。それは1996年に発表された盟友吉野藤丸がアレンジを担当したセルフカヴァー・アルバム『LIFE WORK』に収録されたヴァージョンのようだった。可能であれば、これらについても再放映を期待してやまない。
(鈴木英之)

ソフトロックの最高峰Piper、CDリリース記念サマー・コンサート

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 今から21年前の2000年12月25日に発売された『Soft Rock In Japan(以下、In Jp.)』を憶えているだろうか。
 
 この本は日本人によるソフトロック系アーティストの再考察をコンセプトにしたもので、長年リアルで日本のミュージシャンを聴き続けてきた私や松生さんが中心となって、VANDA周辺と私の友人の音楽愛好家仲間でまとめあげた本だった。
 そこには故佐野邦彦さん同様に、これまで見過ごされてきたアーティストを一人(一組)でも多く伝えたいという強い信念があった。
 そこでとりあげられていたPiper関連のCDが、この夏に復刻されることになった。またそれを記念してリーダーである山本圭佑さんがPiperとして、1年ぶりのライヴを開催するというニュースが飛び込んできた。



 まずはこの本が発売に至った経緯について触れておく。VANDAの単行本第1号『Soft Rock A to Z』が発売になったのは1996年だった。
 この本は亡き佐野さんがそれまで「アニメ専門誌」だった「VANDA」を「音楽誌」へ脱皮をはかるべく、発表した特集記事<Soft Rock A to Z>を掲載した「VANDA 18」が始まりだった。この号は品切れが続出し、彼の手元にも数冊しか残らないという大反響を呼んだ。さらに探求を重ねてまとめたバイブル本だった。当然のようにこの本も大評判となり、重版を重ねるベストセラーとなった。そして2年後の1998年12月10日にはそれまで見逃されていた新たな才能を追加して28P増幅させ、改訂版が発売されている。
 
 その後、次に彼が取り組んだものが、ビーチ・ボーズを筆頭にハーモニーを売りにしているミュージシャンを取り上げた『Harmony Pop(以下、H.P.)』だった。この本は2000年3月2日に発売されている。そしてこれに続く第3弾として佐野さんから発案されたものが、「日本人アーティストによるSoft Rock ガイド」だった。ただこの企画については佐野さん自身は一歩引いた立場をとり、『H.P.』で日本人アーティストを数多く取り上げ和物の扉コメントをまとめた経緯から、私や松生さんを中心に委ねられることになった。

 そこでアーティストをピック・アップする際、「山下達郎」「大瀧詠一」等ありきたりな名前があげられる中、私が絶対に掲載したかったのが「村田和人」と「Piper」だった。そして彼らについては、リアルの熱心なファンである後輩の音楽ライター近藤正義氏に任せるつもりだった。それは昔から両者のライヴに何回もふれている彼が適任と思っていたからだ。ただ、「村田和人」については松生さんが強く希望していたため、「Piper」と「東芝~Victor時代」の村田さんを彼にまかせることにした。

 そもそもPiperの存在を知ったのは近藤氏からの情報だった。それは彼が村田さんのセカンド『ひとかけらの夏』発表に伴うライヴ(1983年)へ行った時期まで遡る。そのライヴの途中で村田さんの紹介で「佳右コーナー」が始まりPiperの曲が演奏された。熱狂的な村田さんのファンを自認する近藤氏だったが、そのサウンドに一発でやられてしまった。彼は即PiperのLPを探しまわりゲットすると、すぐさま興奮気味に連絡が入り、私もPiperの存在を知った。とはいえ、山本圭右さんは村田さんがブレイクした<一本の音楽>で印象的なリード・ギターを鳴らしていた人物という認識はあったものの、彼が村田さんより先にレコード・デビューしていた事実は後に知った。


 

 日本のポップスを語る上で絶対外せないアーティスト山下達郎さんが、所属のMoonから自信を持って送り出したのが村田和人さんだった。そして村田さんの活動を語る上で欠くことのできない存在だったのが、ギタリストの山本圭佑さんである。そんな圭佑さんのデビューは村田さんよりも早く、1980年にスカンクとしてシングル・デビュー、1981年にはユピテルよりPiperとして、LP『I’m Not In Love』を発表している。 



 そんな圭佑さんの存在は、1983年に村田バンドのギタリストとしてクローズ・アップされた。それはこの年に発表したギター・インストを前面に打ち出したリゾートBGM風の『Summer Breeze』が好評を博したからだった。そして半年後には同じコンセプトで、タモリ和義氏のジャケットで知られる『Gentle Breeze』をリリースしている。近藤氏はこの時期のPiperが最高だったと常々語っている。



 なお圭佑さんは村田さんのデビュー前後のライヴから村田バンドの一員として行動を共にしており、時折レコーディングにも参加している。そして、初めて村田バンド演奏主体のレコーディングとなったサード・アルバム『My Crew』以降は、スタジオでも村田サウンドの要として活躍している。
 また、二枚のアルバムで自信を付けたPiperでは、歌物アルバム『Sunshine Kiz』をリリース、アルバム・タイトル曲は久々にシングル・リリースされた。なおこの曲は「サンデー・ソング・ブック」でも達郎さんの推薦コメント付きで紹介されている。ところが、この直後に所属するユピテルが不渡りを出し、会社はそのまま存続するも音楽部門はリストラ対象となり、バンドの先行きに暗雲が立ち込めてしまう。 



そんなPiperだったが、これまで圭佑さんと共に活動を続けていた村田さんの尽力でMoonに移籍。1985年には彼らの最高傑作『Lovers Logic』を発表する。ただその新譜はMoonからのプロモーションも得られず、ライヴ活動を行う機会も無かった。唯一の例外としては、企画ものとしてシングル<あなたのとりこ>が発売されたにとどまった。その後、1987年に村田さんと若手二人(平松愛理、西司)の4人で組んだユニットHoney & B-Boys『Back to Frisco』で話題を集めたが、Piperは自然消滅してしまった。



それ以後は、村田さんをはじめ多くのアーティストのレコーディングやライヴ活動のサポートで活躍している。とはいえ、Piperの人気は衰えることなく、中古レコード市場ではかなり高騰化していたようで、特にファースト『I’m Not In Love』に至っては万単位の価格で取引されていたらしい。 そんななか冒頭で紹介した『In Jp.』でPiperがとりあげられた。それを見たPiperのファンが出版社を通じ、近藤正義氏にコンタクトを取り、彼は憧れの山本圭佑さんに面会する機会を持っている。そこでは、「本でのスペースの取り上げられ方が、あの達郎さんと同じ」ということで圭佑さんは感激されていたという。それがきっかけだったのかは不明だが、翌2001年8月25日に「@赤坂LOVE」で久々にPiperの復活ライヴが開催されている。そのパフォーマンスは、何回もPiperの生ステージを見ている近藤氏も大感激するほどの素晴らしいものだったと聞く。 

 そして2006年には、Moon時代の「村田和人・紙ジャケ+ボーナストラック」シリーズが発売された。そこにはPiperのラスト作『Lovers Logic』もボーナストラック付でリリースとなり、Piper信者近藤氏はじめファンを歓喜させた。その後、一向に進まないユピテル時代のアルバム復刻に向け、近藤正義氏は2016年にSNSの書き込みを始めた。そんな彼の意気込みに多くの人脈が合流するも、復刻にはかなり高いハードルがたちはだかっていた。何故なら、ユピテルの音楽部門消滅によりマスター・テープは不明、また権利関係も複雑ということだった。 


 その後、偶然にもユピテル音楽部門の関係者に繋がることができ、紆余曲折しながらも2018年3月21日ついにユピテル4作品が待望の初CD化の運びとなった。この復刻は近藤正義氏の再発にかける情熱で実現したと言っても過言ではないと言えるだろう。その発売に併せ、「西荻窪Terra」にて久々のPiperライヴが開催されている。 また、多くのトリビュート・バンドを経験している近藤氏は、現在村田さんの声を彷彿させるヴォーカルを擁する「村田和人トリビュート・バンド~Ready September」を率い、憧れの圭佑さんになりきりギターを奏でている。その想いが通じたのか、来る7月14日(日)には目黒のブルースアレイで、Piper一年ぶりのライヴの前座を受け持つことになった。圭佑さんと近藤氏のツイン・ギター・バトルも予想されるこのライヴは、今から期待に胸が躍る。


 

 なお今回のライヴは、2006年にリイシューされた『Lovers Logic』、1987年のユニットHoney & B-Boys『Back to Frisco』(待望のボートラ付き初再発!)に併せたものになっている。さらには村田和人さんのVictor/Roux時代のコピレーションも同時発売されることが決まっている。ちなみにこのコンピは近藤氏が、この時代のポジティヴな雰囲気をイメージしたセレクションを曲順もそのままにまとめたものだ。ジャケットも今回のために用意された初出スナップなどを織り交ぜた仕様になる予定と聞いている。今回発売となる3枚は、この夏の定番になること間違いなしのグッド・ミュージック集で、ファンならずともお求め逃がしの無いように願いたい。


 最後になるが、私がFMおおつで担当している「音楽の館~Music Note」(第4土曜15:30~;再放送第4日曜8:00~)7月号で「村田和人&Piper特集」を放送する予定になっている。
 この放送はアプリ「FMプラプラ」でも受信可能なので、是非彼らの夏サウンドを堪能いただきたい。 
【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/
(鈴木英之)

Cowboy ~ Scott Boyer, Tommy Taltonの活動

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いつもは「ガレージバンドの探索」というコラムを書かせていただいているのだけれど、今回は最近気に入ってよく聴いていたサザンロックバンドのCowboyについて調べてみることにした。
1969年にScott BoyerとTommy Taltonを主要メンバーとして結成されたバンドで、The Allman Brothers Bandとの繋がりが深い。
二人はセッション・ミュージシャンとしての活動も多かったようだ。


【主要メンバー】
Scott Boyer(Acoustic guitar, electric guitar, vocals, violin) 
Tommy Talton(Electric guitar, acoustic guitar, vocals)

1966年
Scott Boyerはフロリダ州立大学を卒業後、大学で知り合ったButch Trucks(The Allman Brothers Band)らとフォーク・ロック・グループ、The Bitter Indを結成。ここから始まった活動が後にCowboyの結成に繋がっていく。

Tommy Talton の方はこの頃、意外にもフロリダ州オーランドでWe The Peopleというガレージバンドをやっていた。シングルも7枚リリースしている。


ニューヨークのフォーク・クラブ、The Bitter Endに商標権を主張された為The Bitter Indはバンド名をThe Tiffany Systemに改名。

1967年
The Tiffany Systemでシングル「Let's Get Together」(MIN-128)をリリース。

1968年

新たにバンド名をThe 31st Of Februaryに改名し、Vanguard Recordsと契約。この時のメンバーはScott Boyer、David Brown、Butch Trucks。セルフタイトルのアルバム『The 31st Of February』(VSD-6503)をリリースする。

その後Steve Alaimoプロデュースで、2ndアルバムの為のデモが録音される。この録音にはDuane AllmanとGregg Allman兄弟(The Allman Brothers Band)が参加していて、後にThe Allman Brothers Bandの代表曲のひとつとなる「Melissa」の初録音が含まれていた。

このデモ音源をVanguard Recordsに送ったものの断られてしまったそうでThe 31st Of February名義で世に出ることはなく、The Allman Brothers Band が有名になった1972年になって『Duane and Greg Allman』というタイトルでBold Recordsからリリースされた。(Bold Records‎–33-301)

今月の6月12日に、この『Duane and Greg Allman』の世界初オフィシャルCD化された国内盤が、SOLID/T.K.RECORDSから発売される。(CDSOL-5678)

We The Peopleを脱退したTommy Talton、ロサンゼルスで活動していたHour Glassを解散してフロリダに戻っていたDuane AllmanとGregg Allman兄弟がThe 31st Of Februaryに加わったものの、2ndアルバムのリリースが上手くいかなかったこともあってかその後に解散してしまう。


1969年
The 31st Of February解散後、Duane AllmanとGregg AllmanはThe Allman Brothers Bandの結成に繋がる活動を始め、Scott BoyerはTommy Taltonと新バンドを結成することにした。こうして、ジャクソンビルでScott Boyer 、Tommy Taltonを中心にピアニスト/ギタリストのBill Pillmore、ベーシストのGeorge Clark、ギタリストのPete Kowalke、ドラマーのTom WynnによってCowboyが結成される。

結成して間もなく、Capricorn Recordsと契約していたThe Allman Brothers BandのDuane Allmanが、レーベルオーナーのPhil Waldenに薦めてくれたおかげでCowboyもCapricorn Recordsと契約することになる。

1970年

Capricorn Recordsのあったジョージア州メイコンに拠点を移し、Johnny Sandlinプロデュースで1stアルバム『Reach for the Sky』(SD 33-351)をリリース。全体的にアコースティックな雰囲気のアルバム。味のある歌声とコーラス、温かい空気感が心地いい。





このアルバムの収録曲「It’s Time」は1974年のBonnie Bramlettのソロアルバム『It’s Time』でカバーされていて、Scott Boyer、Tommy Talton、Capricornのミュージシャンがバックバンドに参加している。(CP 0148)

1971年
2ndアルバム『5'll Getcha Ten』(SD 864)をリリース。 The Allman Brothers Band のDuane Allman、Chuck Leavellも参加している。
収録曲「Please Be With Me」のスライド・ドブロ・ギターはDuane Allman。この曲はEric Claptonの1974年のアルバム『461 Ocean Boulevard』でカバーされた。(SO 4801)

1stアルバムと2ndアルバムはカップリングされ、『Why Quit When You're Losing』(2CX 0121)として1973年にも発売されている。

2ndアルバムのリリース後、バンドは休止状態となる。
Scott Boyer 、Tommy TaltonはCapricorn RecordsのセッションミュージシャンとしてAlex Taylor、The Allman Brothers Bandなどのバックに参加していた。

1974年
この年、Gregg Allmanの『Laid Back』ツアーに同行したScott Boyer 、Tommy TaltonはデュオとしてCowboyの名前で演奏を行い、その2曲がGregg Allmanのライブアルバム『The Gregg Allman Tour』(2C 0141)に収録されている。




3rdアルバム『Cowboy~Boyer&Talton』(CP 0127)をリリース。このアルバム、CowboyとBoyer&Taltonどちらがタイトルの扱いなのかはっきり分からなかった。1st、2ndと比べ少しロック色が強まった印象。
Cowboyに興味をもったのは最初にこのアルバムを聴いたのがきっかけだった。Johnny Sandlinはプロデュースだけでなくプレイヤーとしても参加。その他Chuck Leavell 、Bill StewartなどThe Allman Brothers BandのメンバーやCapricorn Recordsのミュージシャンが参加している。

2018年にCD化された『Cowboy~Boyer&Talton』(RGM-0709)には、上述の『The Gregg Allman Tour』で演奏した2曲がボーナストラックとして収録されている。

3rdアルバムリリース後も、二人はCapricornでセッションミュージシャンとして活動。

1976年
T. Talton / B. Stewart / J. Sandlin名義のアルバム『Happy to Be Alive』(CP 0167)がリリースされる。これは事実上Tommy Taltonのソロアルバムのようだ。

1977年
Scott Boyer、Tommy Taltonは新たにTopper Price、Chip Millerなどを加えてCowboyを復活させ、4thアルバム『Cowboy』(CPN 0194)をリリース。

1970年代末
Capricorn Recordsが倒産し、Cowboyも正式な発表はしなかったものの解散状態となる。

2011年
2010年12月17日にジョージア州メイコンにあるキャピトル・シアターで再結成ライブを行っていて、そのライブCD 『Cowboy, Boyer & Talton Reunion 2010』(RS110516-01)が2011年にリリースされている。Scott Boyer、Tommy Taltonの他、3rdアルバム期のメンバーRandall Bramblett、Bill Stewartなどが参加。

2018年
最後の新作アルバム『10'LL GETCHA TWENTY』(CCR008)がリリースされた。収録曲は2007年以降に録音されていたもので、トラックの半分にはオリジナルメンバー全員が参加している他、3rdアルバム期のメンバーRandall Bramblett、Bill Stewart、Chuck Leavell なども参加している。

Cowboyが解散状態となった1980年代以降、Scott Boyerはいくつかのバンドで活動後、1988年からマッスル・ショールズに住み、Johnny SandlinがスタートさせたThe Decoysで活動。(Johnny Sandlinは途中で脱退。)2018年の2月に亡くなるまでThe Decoysで活動を続けた。息子のScott Boyer IIIもギタリスト、ボーカルとして、マッスル・ショールズで音楽活動を行っている。

Tommy Taltonは1994年にルクセンブルクに移りMatt Dawsonのバックバンドに参加。新バンド、The Rebelizersを組みヨーロッパで活動し、2005年以降はソロ作品をリリースし活動を続けている。

【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)/編集:ウチタカヒデ】 

 

宮田ロウ:『ブラザー、シスター』(ORANGE RECORDS/ORGR-55)

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宮田ロウは神戸市出身のシンガーソングライターだ。十代の学生時代よりバンド活動を始めて、高校一年生の頃にはオリジナル曲をライブで披露するまでになっていたという。
関西をベースにワールプール、magictaxi等のインディーズ・バンドを経て、現在はソロ・アーティストとして活動している。2014年には自主製作でファースト・ソロアルバム『ゴリラ』をリリースし、音楽マニアの間では話題となっていた。その後18年11月にはUNCHANTABLE RECORDSより「悲しみはさざ波のように」の7インチ・シングルを枚数完全限定で発売するが、これは小西康陽氏の熱望により同レーベル主宰のグルーヴあんちゃんの尽力で実現したという。
 

そして満を持して、今年5月29日に同曲を収録したセカンド・アルバム『ブラザー、シスター』をORANGE RECORDSからリリースした。
全10曲中9曲は宮田のオリジナル曲で、残る1曲は彼が敬愛する小西氏が嘗てピチカート・ファイヴ時代に書いた「メッセージ・ソング」(シングル/96年)をカバーしている。
レコーディングには、ワールプール時代の同僚である杉本徹がキーボーディストとプログラミングで全面的に参加し、関西のインディーズ・バンド、ロマンチップスのベースの光浩司とドラムの藤井秋平がリズム隊を務める2曲も収録されている。
では筆者が気になった主な収録曲を解説していこう。

   
冒頭の「悲しみはさざ波のように」は、前出の通り昨年11月に7インチ・シングルで先行リリースしたミディアム・テンポの詩情溢れるトーチソングである。
杉本による繊細なピアノとヒューマンなプログラミングによるバックトラック、宮田自身のアコースティックギターという編成だが、このシンプルなサウンドゆえに時代を超越しており、近年のシンガーソングライター系の楽曲としては、白眉の完成度と言えるだろう。ジェームス・テイラーの「Music」(『Gorilla』収録/75年)を彷彿とさせて、じわりじわりと静かに心に浸透してくるサウンドと歌声は多くの音楽ファンに聴いて欲しい。
続く「旅人たち」は、カワムラユウスケ&フレンチソニックスのメンバー、落合悠によるペダルスティールと、シンガーソングライターの酒井ヒロキのマンドリンが利いたカントリー・タッチのフォーク・サウンドで、この曲でも恋人との別離を綴っている。
シャッフルの「こうしちゃいられない」は曲調、コーラス・アレンジ共にソフトロック・テイストのサウンドで、弊サイト読者にもアピールするだろう。ソングライティング的にはローラ・ニーロの匂いがする。


ピチカート・ファイヴのカバーである「メッセージ・ソング」は、アレンジ的には後年小西氏が『わたくしの二十世紀』(15年)でクリエイトしたサウンドに通じるシンプルな編成で、宮田のアコースティックギターの弾き語りに京都在住のテナーサックスプレイヤー、篠崎雅史のプレイをフューチャーしている。
酒井がエレキギターで参加した「やけを起こすなよ」も興味深いサウンドで、西海岸ロックの系譜になるのだが、サビのリフレインするコード感がビーチ・ボーイズの「Sail On Sailor」(『Holland』収録/73年)に通じて好きにならずにいられない。酒井のブルージーなギターソロも効果的である。

そして本アルバム後半のハイライトとなるのは、タイトル曲の「ブラザー、シスター」だろう。 杉本のピアノとハモンドオルガン、ロマンチップス組のリズム・セクションにゴスペル・フィールなコーラスが加わった感動的なポップスで、メッセージ性のある歌詞もじっくり聴いて欲しい。
また60年代ポップス・マニアは気付くと思うが、この曲はバリー・マンの作風をオマージュしているのは間違いないだろう。音楽マニアを自認している弊サイトの読者は必ず入手して聴くべき曲である。筆者も一聴して今年のベストソングにも入れるべきと確信した。

アルバム全体を通して、高品質のソングライティングとイノセントな歌声、それを際立たせている引き算の美学に満ちたアレンジは見事と言うしか無い。
(ウチタカヒデ)


The Pen Friend Club『THE EARLY YEARS』シリーズ リリース・インタビュー

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昨年2作のオリジナル・アルバムをリリースしたThe Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、ファーストからフォースまでの初期アルバム4枚を一挙にリミックスとリマスターを施し、新装盤として6月19日にリリースする。
筆者は3月末にはその音源を入手して聴き始めていたが、リミックス&リマスター効果よるサウンド向上は大きく、これまでに同アルバム群を聴き込んだ音楽ファンにも新鮮に聴ける筈だ。
ここでは弊サイトでもお馴染みのペンフレンドクラブのリーダーで、今回のリミックス&リマスターを一人で成し遂げた平川雄一氏におこなったインタビューをおおくりする。

●今回の初期4タイトルのリイシューですが、以前『Best Of The Pen Friend Club 2012-2017』(SZDW1040 / 17年)リリース時のインタビューでも、「ベスト盤に入らなかった曲もいつか全部やり直したい」と語っていましたね。
こんなに早く、4タイトルの全曲をリミックス、リマスターした理由を聞かせて下さい。

平川:なんとなく昨年にクリスマスアルバム(『Merry Christmas From The Pen Friend Club』/PPRD0004)を出して、ペンフレンドクラブの「初期」が終わった気がしました。何となくですけどね。
その内容も往年のクリスマスソングとこれまでのペンクラ曲とのマッシュアップ=これまで活動の「総括」的な意味合いもありました。 次に進むためにはやり残したことがある。それが今回の4作の見直しだったわけです。

●昨年11月リリースの『Merry Christmas From・・・』までがペンクラの初期だと感じていたんですね。今後も続くバンド活動を考えれば一区切りと捉えるのも頷けますが、『Best Of ・・・』の17年9月のインタビューでは、今回リミックス&リマスターした4作までを「初期のペンクラ」と語っていました。
このベスト以降5作目『Garden Of The Pen Friend Club』(PPRD-0003)でサウンド的にも飛躍したと思いますがいかがでしょうか?  

平川:5作目『Garden Of・・・』ではオーケストラも導入しましたしね。
ミックス的にもやり残したことはないです。『Garden Of・・・』からはボーカルの藤本有華が前作から引き続き在籍しボーカルをとった作品で、バンドとしてやっと「2枚目」を作れた作品でもあります。(それまでが1アルバム1ボーカルだったので) 4作目までのベスト盤もその時期ですし、そう考えると1st~4thまでが「初期」って感じもしますね。


●ミックスとリマスターをする上で、アルバム毎にカラーがあり、気を付けた点も異なると思いますので、主軸となる主要曲を中心に具体的に教えて下さい。



『Sound Of The Pen Friend Club』(SZDW1067)

 平川:一番、初出時と音が変わったんじゃないでしょうか。ハッキリクッキリ。 今回のシリーズ全体に言えることですが、各パートをしっかり聴こえさせたかったのです。 「Do I Love You」の出だしから全く違いますからね。こういう音にしたかったんです。

●明らかに今回のリミックス&リマスターでメリハリが出ていますね。 リマスター盤とオリジナル盤を比較して聴くと一目瞭然というか一聴瞭然で、全体的に低かったオケ、特にリズム隊の音がきちんと出ているから躍動感がありますね。 曲によっては別物というくらい違いますよ。


『Spirit Of The Pen Friend Club』(SZDW1068) 

平川:このアルバムは初出時にもいいところはあったんですが、やり直してみるとやはりいいですね。現在のメンバーでもある祥雲貴行や中川ユミが加入し、演奏も大きく変わった時期です。その最初の録音もハッキリクッキリ出すことが出来ました。「Guess I’m Dumb」、「Dusty」が気に入っています。

●「Guess I’m Dumb」、「Dusty」に限らず、今回のリミックス&リマスターでアルバム全体にベースのハイが出ていて印象が変わりますね。「Please Let Me Wonder」のにおけるコーラスも広がったように思います。
また改めて聴くとこのアルバムは、カバー曲のチョイスが秀逸で個人的にも凄く好みでした。「Wichita Lineman」のコーダのドラム・フィルなんて、平川君のリクエストで祥雲君がジム・ゴードンのプレイをよく研究していますよ。


 『Season Of The Pen Friend Club』(SZDW1069)

平川:これはリミックスして本当によくなりました。 一番やり直したかったアルバムです。 これまで聴くのも嫌だったんですが、やっと好きなアルバムになりました。
「Poor Boy」、「Long Way To Be Happy」がいいですね。 中でも「Summertime Girl」が本当に気に入っています。 

●聴くのも嫌って。(笑) ボーナスのオケとコーラスのみのトラックで聴くとより分かり易いですが、「Poor Boy」はギターとオルガンの煌びやかさが引き立っていますね。ピアノのグリッサンドの響きも凄くいい。
「Long Way To Be Happy」や「Summertime Girl」もオケではオルガンのハイが改善されているのが聴いて分かります。


 『Wonderful World Of The Pen Friend Club』(SZDW1070)

 平川:初出時はミックスに満足していたんですが、すぐに嫌になってきましたね。(笑) もう何もかも後悔ばかりですよ、音楽活動なんて。
それでCDの後に出したアナログLPで早速全曲リミックスしました。このバージョンがなかなか良くて、今回のリマスターにも数曲その音源を採用しています。 「ソーダ水の空」、「8月の雨の日」、「Wonderful World~」、「Sherry She Needs Me」がそれです。
これらも新たにリミックスしようと試みたんですがLPバージョンに勝てなかったのです。(笑)なのでそのまま入れました。 あと、今回の4作すべてにコーラス+インストゥルメンタルのカラオケ音源がボーナストラックとして入っています。それらは全て新たにミックスしたものです。

●すぐに嫌になる(笑)ってのは、自己完結型ミュージシャンにありがちなんでしょうね。レコーディングからミックスまで長時間聴いていると、もう何がベストなのか、自分一人では判断つかないんだと思います。
嘗てピンクフロイドがあの『狂気(The Dark Side of the Moon)』(73年)の最終トラックダウンで、メンバーとエンジニアのアラン・パーソンズは長期間音を聴き過ぎて、正常な判断が出来なり、アランの兄弟子筋のクリス・トーマス(当時から一流プロデューサー)に判断を仰いだという。
以前も質問したけど、俯瞰的な耳で自分達のサウンドに合ったミックスをしてもらおうと、本職のエンジニアに任せたいと思いませんか?バジェット(予算)的にクリアすればの話になりますが。

平川:ミキシングを他人に譲ることなど、もっての外ですね。一番楽しい作業ですから。お金をもらったとしても誰にも任せたくないですね。少なくともペンフレンドクラブの音作りに関しては。  


月見ル君想フ 2019年6月15日

●リリース前の6月15日には『月見ル君想フ』でライヴ・イベントをしましたが、この『THE EARLY YEARS』シリーズに関連したレコ発的なイベントは予定していませんか?

平川:オルガンのヨーコがその6月15日で脱退するというのもあり、レコ初的なものは行いません。
活動は続くのですが、それ以降は「中期ペンフレンドクラブ」が始まる気がしています。 何となくですけどね。まあ活動開始から7年目に入ることですし、そろそろ「中期」ですよ。(笑)

●そうでしたか。ヨーコさんはペンクラ・サウンドへの貢献度が大きかっただけに残念です。新たな鍵盤奏者も加入されるとのことで、今後の活動も応援していきます。

平川:ありがとうございます。

●最後にこの『THE EARLY YEARS』シリーズのピーアールをお願いします。

平川:やっと自信を持って「初期ペンフレンドクラブ」をお聴かせすることが出来て本当にうれしい限りです。
こういうことがやりたかったんです、僕は。是非お耳をかっぽじられて、じっくりお聴きになってください。
あとディスクユニオン限定の特典になるんですが、4作まとめ買いでボックスが付きます。これもやりたかったことの一つです。憧れていたんですよね、ボックスセット。
ディスクユニオン
The Pen Friend Club『THE EARLY YEARS』4タイトルまとめ買いセット:https://diskunion.net/portal/ct/detail/1007898394


(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)

ウワノソラ:『夜霧』(UWAN-004)リリース・インタビュー前編

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2017年のセカンド・アルバム『陽だまり』(UWAN-003)と翌年の同アナログ盤(Kissing Fish Records/KMKN13)が記憶に新しい、ウワノソラが待望のサード・アルバム『夜霧(よぎり)』を6月26日にリリースする。 
17年8月以降ギターとソングライティング、プロデューサーでもある角谷博栄と、ヴォーカリストのいえもとめぐみの2人組となって本作で2作目になるが、14年のアルバム・デビュー以来、シティ・ポップからスタートし様々なジャンルのエッセンスを内包しながら成長してきたそのサウンドは、拘り派の音楽ファンにとって、特別な存在になったと言える。
ここでは本作の制作経緯について、メンバー二人におこなったインタビューを前編と後編に分けて掲載する。


●サード・アルバムのリリースおめでとうございます。 当初はセカンド・アルバム『陽だまり』と2枚組で発表する予定だったらしいですが、どういった経緯でそのようなリリースを計画し、また分割することになったのでしょうか? 

角谷:有難うございます。学生時代に作っていた曲が複数ありまして、それをリリース出来たらとずっと考えておりました。
曲数が多いため、それを詞の中の時間軸で分け、分割する事となりました。
2枚組ではなく『陽だまり』と『夜霧』という2部作になった事に関しましては、予算が作れないので全てをレコーディング出来なかった、という理由です。 

●成る程、歌詞の内容で時間軸を分けるという発想はいいアイディアですね。学生時代に作っていた曲のストック数が気になるので教えて下さい。

角谷:ストック数は、ウワノソラ’67、陽だまり、夜霧でほぼほぼ全てです。やっと学生時代の構想の縛りが終わりました。

●前作に比べて、70年代ニューソウルやブルーアイドソウル~AOR色が濃いですね。 アルバムのコンセプトやトータリティーを考えての判断でしょうか?

角谷:「夜霧」という漠然としたコンセプトの元、そのような雰囲気になったように感じております。AOR(特に80年代のAOR)とは別物で、強いて言えばプレAORでしょうか。
ただ、ニューソウルもブルーアイドソウルにもなっていない歪な物(過去にも現在にも属せない良くも悪くもウワノソラのサウンド) がまた出来てしまった、というのが完成した後の僕の印象です。

●「歪な物」って表現は、日本人ならではの解釈でオリジナルとは異なるテイストになってしまったということでしょうか?

角谷:演奏面では勿論そういった事もありますし、70’s、80’sはそれがメインカルチャーとしてあったので、売れるものをやる、というその資本主義的な音楽を作る動機や思想からも逸脱しているという話です。
勿論録音環境も違いますので、サウンド面でも大きく違う。
そして現在のポップスカルチャーともあまり交わっていないという、浮遊している感じで。ポップスっぽいとしか言えないといいますか。
精神構造でも、音響面でも理想としているものと比べた場合、歪ということです。
結局自分が表現したいことしか出来ないし、やる意味も感じないので、しょうがないのですけど。

●ソングライティングの時期について、ファースト・アルバム以前の学生時代に作った曲が含まれているとか。曲作りのエピソードを聞かせ下さい。 

 「Sweet Serenade」
角谷:この曲は僕が大学2年生の春。1か月ぐらい病気で入院することがありました。早稲田の国立国際医療センターの十何階。周りの友人達は大阪で映画とかを楽しそうに制作しているのに、自分は東京に帰り、何もできない。作れないことが悔しくて、ですね。
そしてその病室からの夜景が非日常的に美しくて。そんなものに感化されながら、真夜中に小さな中古のMIDIキーボードを、病院食を置く小さなテーブルに乗せて、点滴を腕からぶら下げたまま、メロを作っていき制作をしていました。デモではスネアは2拍目と4拍目についていましたが、2拍目だけにしたりと他にも諸々変更をしました。 

●昨年7月に某飲み会で仮ミックスを聴かせてもらいましたが、大学2年生の頃作った曲とは思えない完成度でしたよ。一聴してマーヴィン・ゲイがレオン・ウェアのプロデュースで作った「I Want You」へのオマージュと分かりましたが、演奏力、表現力が伴わないとこのグルーヴにならないからレコーディングでは苦労したんではないですか?

角谷:あまり苦労はしていません。9割はプリプロで出来ていましたので。ただ上物が凄く多いので、リズム隊がシンプルになった分、スッキリ具合は出たかな、といった印象です。
この曲は2015年に実はMVを撮ってもらっていまして、一度だけ2016年に韓国の映像祭に招待され上映されているのです。
そのMVを公開できない事が監督へ申し訳ない気持ちです。

「ロキシーについて」
角谷:この曲は2014年、ファーストをリリースする前に作っていた曲です。スティーリーダン(以下SD)が好きで。その感情に任せ作った記憶があります。
僕の中でSDは特に鶴橋の飲み屋街にマッチしていて、飲み歩いた後に聴くと最高でした。2015年のライブでも演奏しています。
それを伊豆在住の頃に家に遊びに来てくれたブルーペパーズの福田君に聴いてもらいまして。彼はDoctor Wu!Doctor Wu !と言って、ニヤニヤと。 彼自身もSDの影響を感じられる楽曲がありまして。それから福田君ならどんなハーモ二―を付けるだろうか、という思いになりました。そして去年リハーモナイズをお願いし、今年コーラスでも参加してもらいました。
SAXソロは2014年のデモ録音をそのまま使用しております。 ドラマーの越智さんはレック後、ボソッと、“俺、パーディ・シャッフルを今年世界一練習した人だと思う”、と仰っておりました。


●今回のマスタリング音源を聴いて、そのスティーリーダン趣味に唸りました。イントロは「Doctor Wu」(『Katy Lied』収録 75年)だけど、本編は「Home At Last」(『Aja』収録 77年)へのオマージュという。
ドラマーの方のコメント通り、この曲ではバーナード・パーディが叩いていて、その貢献度から作曲クレジットまで要求したという。(笑)
アレンジした当初からこの重たいシャッフルのリズムで着想していた訳ですね? 

角谷:アレンジに関してはそうです。当時の想いのままです。こういう事はもうしない気がしています。

「夜霧の恋人たち-Interlude-」
角谷:かなり転調を繰り返し、調がずっと浮遊して定まらないような曲です。 去年18年の冬から19年の2月まで、2か月間。コーラス、弦管共同アレンジの深町君とアレンジ&レコーディング合宿をしておりました。
かなり音楽思考的に寄り添えていたつもりでおりました。しかし、コーラスレックの際“もう二度とこんな曲作ってこられてもコーラスしない”とまで言われてしまった曲です。キーが変動していくので、コーラスの際、譜面があれけど物凄く難しいのです。この和声を含めて表現したかったものだったので、すまなかった、という思いです。
おかげで良い感じになったと思っています。サックスの横山さんも最高なプレイをして下さいました。着想は、Lampの染谷さんが”これね、人生を変えてしまう俺のセレクト曲集(^^♪”と、曲を複数送って下さった事があり、その中に入っていたNivaldo Ornelasという人に感銘を受けまして。早速アルバムを購入したところ他にも沢山グッとくるものがあり、そこから着想を得ました。

●3分少しの曲だけど難解なコード・プログレッションが印象的ですね。キー・チェンジしているのに流れるようにコーラスするのは非常に難しいでしょう。
着想元のNivaldo Ornelas(ニヴァルド・オルネイラス)は、エルメート・パスコアルのバンド・メンバーとして知られ、ミナス派のサックス奏者でもありますね。僕は70年代中期のエドゥ・ロボやエグベルト・ジスモンチ、トニーニョ・オルタのセカンドでそのプレイは耳にしていましたが、ソロ作は聴いていないのでお勧めのアルバムを紹介して下さい。


角谷:『A tarde』(SY 33101/82年) 『Viagem atraves de um sonho』(LPVR 017/80年)です。
僕の持っているものは2イン1でした。

「隕石のラブソング」 
角谷:この曲と、「蝶の刺青」、「マーヴィンかけて」が僕の中で去年制作した新作というような感覚です。
「ピクニックは嵐の中で」(『ウワノソラ』収録 2014年)のようなSFチックなものが好きで、これもそんな雰囲気の物をと制作しておりました。 作詞に関しまして、曲調はハッピーなのに詞は悲しい、という対比が好きで、これは黒沢明さん他、映画における対位法から影響を受けました。
一昨年から東京に戻り、東京で仕事をしていまして、そうするとやっぱりどうしても相いれない人には出会います。そういうのも含め仕事なんだ、と割り切れる一方で、思う事も多々ありまして。
そんな小さなことから、現在のネット社会で、傷つけあう様を多く目にしたり。毎日流れてくる悲惨なニュース。もちろん終わらない戦争も。どうすればいいのか分からないまま受け入れるしかないのですが。
そこで、地球に隕石を落としちゃえ、となりまして。自分の詞の中でだけでも、全人類が隕石を見つめる、一瞬でも平和な空間を作ってみたかったのです。
しかし、MV制作時、監督の菅野君に“隕石が降ってきてジョークをかます感覚は心に余裕がある人のみで、もっと醜い何かが起きるよ”と言われハッとさせられました。確かにそんな甘くもないなぁと。彼は僕なんかよりずっと大人で、ちゃんと世界を観ているんだなぁと感じさせられたりしておりました。

 ●歌詞を創作する上のエピソードが実に深いですね。 初めてラフミックス音源を聴かせてもらった時からこの曲がアルバム中で最も惹かれました。
“予報通り地球に衝突する 生き物はみんな消えてしまうらしい”という冒頭のいきなり衝撃的且つシュールなラインと、甘美な旋律のコントラストがなんとも言えないですよ。嘗ての「ピクニックは嵐の中で」を聴いた時も同じ様なイメージを受けましたが、このスタイルは元々角谷君も好んでいた着想だったんですね?

角谷:友人でこの類の詞が好きな人が何人かいまして。 他の詞の重苦しかったり、詞の中の2人の世界のストーリーテリング系では、ふーん、となってしまうのにSFだけ反応を示す数人の友人の影響が動機の一つかもしれません。 
「ピクニックは嵐の中で」もそうですが、最初インパクトはないものの、後々、よく聴く曲だなと思ったりしたことがありまして。何というか分かりませんがこの詞風の感じは好きです。無欲な感じがしまして。
詞の登場人物も奥のコンポーズの自分自身も。 それが同世代の感じなのかも、とも少し感じでおります。
しかし、「キールのグラスを頬に充てて、ホンキ?と笑ったマーメイド」のバブリーな感じだったりとか、ユーミンや隆(松本 隆)さんもそうですし、CMのキャッチコピーだと、オリンパス OM10「好きだと言うかわりに、シャッターを押した」的なものは相変わらずキュンキュンきてしまい、ずっと大好きです。
その感覚を同世代、上の世代でも分かり合えたことは残念ながらほぼ無いです。友達募集中です。 



隕石のラブソング


●本アルバム制作中に、イメージ作りで聴いていた曲をお二人各5曲選んで下さい。



角谷博栄 
○ I Want You / Marvin Gaye 
○ Do What Comes Natural / Gene Chandler 
○ ジェニーMy Love / 井上陽水 
 これは恋ではない / Pizzicato Five
○ Quiet Storm / Smokey Robinson

いえもとめぐみ
○ Wish Upon A Star / Franne Golde
○ Lord We Believe / Kristle Murden
○ Here We Go / Minnie Riperton
○ Blush / Mr Twin Sister
○ 影になって / 松任谷由実 



◎ウワノソラ・オンラインストア・リンク https://uwanosoraofficial.stores.jp/items/5ce79e9a0b9211098e15afaf

以下後編に続く。
(インタビュー設問作成/編集:ウチタカヒデ)



ウワノソラ:『夜霧』(UWAN-004)リリース・インタビュー後編

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前編に続いて、サード・アルバム『夜霧(よぎり)』を6月26日にリリースする、ウワノソラのメンバーにおこなったインタビューの後編をおおくりする。

●レコーディングの時期と今回参加したミュージシャンの紹介と各自のエピソードを聞かせて下さい。

角谷:レコーディング時期は18年の9月から19年の3月末まででした。 各参加ミュージシャンの方と共にエピソードに触れていきます。
(回答:角谷博栄、いえもとめぐみ) 



深町仰君
ファーストからずっとコーラスや管弦アレンジ面で手伝ってもらっています。共同生活では基本僕が夕飯を作っていまして、いつも割と量を多く作っていたので見事に太らせることに成功しました。
彼が買っていた“うまかっちゃん”というソウルフード的インスタントラーメンを僕が食べてしまった時は、すごく悲しそうにしていました。

熊代崇人君 
ファーストからずっとベースを弾いてもらっています。関西で引っ張りだこのプレイヤーです。
大晦日、一人で作業していまして、年が明けたあとすぐに車で駆けつけてくれまして、年越しそばと称する“ペヤングGIGAマックス”をくれました。一年に3回ぐらいしかスラップはしないというベーシストです。

玉田和平君 
パーカッションとエンジニアをやってもらっております。ボンゴを買って、録音したいから叩いて、と元旦から録音を手伝ってもらったりしておりました。
ミックス作業は2か月間ほぼ毎日電話やメールをしながら遠隔で基本、夜12時から朝6時まで行い、細かい微細なものまですべて対応してもらい感謝しております。”今まで1000バンド以上録音してるけど、キツい仕事ランキングベスト3に『陽だまり』と『夜霧』が見事に入っているよ”と言っておりました。

越智祐介さん
ファーストでドラムを数曲担当して頂いておりまして、今回全ての楽曲でお願いすることになりました。 楠瀬誠志郎さんのバンドをはじめ、いろいろなサポート活動などでご活躍されております。東京在住なので、遥々大阪までレコーディングをしに同伴して下さいました。素晴らしい演奏をして下さいました。

杉山悟史さん
今回ほぼ全てで鍵盤を担当してくださいました。関西若手ではNo1プレイヤーでは、と思っております。
情熱的で、深夜まで続いたレコーディングでも素晴らしい演奏を連発して下さいました。録音させてもらった後に、 “大量の資料や楽譜が送られてきて、これはガチだと思った”と仰っておりました(笑)。

宮脇翔平君
ファーストから鍵盤を担当してもらっております。現在は小坂忠さんのアルバム参加をはじめ、東京にてサポートや自身のプロジェクトで活躍しております。
今回は鍵盤では1曲のみの参加でしたが、曲の相談をしたりとちょいちょい助けられておりました。

難波大介君
大学の後輩のギタリストで現在は講師や演奏中心に活躍しております。 ラインと天才的なタイム感に大学の頃から惚れ込み、何かあるとお願いしております。
「ホテル70」のソロは彼が22歳の時にデモの音源で演奏していたソロをそのまま使っております。

横山貴生さん
67’以降サックスソロやフルートソロは横山さんにお願いしております。 プレイも毎回感動させて頂いております。関西の大御所で、演奏活動や、レコーディング、NHKなどでの演奏など幅広く活躍されております。僕の周りのミュージシャンたちは“GOD”と呼んでおります。
お人柄も全てにおいて尊敬しております。今回、録音の合間に、音楽を辞めようと思った事はないのですか。との僕の問に、 “そんなのはいつだって思っている”と仰られていて、こんな凄いミュージシャンでもそれを考えるんだと、少し親近感といいますか安心したり、演奏において“僕は後ろを向いている人が振り向くような演奏したいといつも思っている”、”全ての音楽から勉強できるし僕はまだまだ勉強途中なんだ”、などすごく考えさせられるような、もちろんそれが普通かもしれませんが、僕にとって沢山の有り難い事を仰ってくれる師匠的な存在です。
それでいて”ビール一杯で僕は何でもやります”的な事を仰られる気さくで腰の低い方で、粋さに毎回惚れ惚れしてしまっています。そうでなければ名もないギャラもちゃんと支払われるかも分からないようなウワノソラ’67からなんて参加してくれていません。
ウワノソラはそういう方の音楽愛に支えられ表現をする事が出来たバンドなのです。和光堂人。僕の中では”実るほど頭を垂れる稲穂かな”ということわざがお似合いすぎる人生の先輩です。



杉野幹起君
関西で活躍中のサックスプレーヤーです。2015年のウワノソラのライブで「ロキシーについて」のソロが杉野の人生のMAXだったとの声が未だに周りからあります(笑)。今回録音ではソロを取ってはいませんが彼のソロが好きなのです。
今年の8月のライブでも彼がサポートしてくれるのでソロを楽しみにしております。

横尾昌二郎さん
関西若手トランペットではNo.1プレイヤーではないでしょうか。演奏活動や自身のプロジェクト、今年なにわJAZZ大賞を受賞していたりと大活躍されております。
録音においても、事前にブラス隊のみで集まり練習して下さるなど、グッときた事がありました。
『陽だまり』の「パールブリッジを渡ったら」では横尾さんのかっこいいソロが聴けます。横尾さん主催のビッグバンド“YOKOO BB”は動画もYOUTUBEで見られますね。今年、250名~500名のビックバンドの指揮をされる予定で、それでギネス記録に挑戦する、という面白い事もやられていて、都合よく関西にいたらそのステージ絶対見たいと思っております。

磯野展輝君
今回最年少のトロンボーンのサポートプレーヤーです。ブラスの合同練習はまさかの彼の自宅スタジオで行いました。
楽曲でもかなりハイノートがありますが見事に演奏して頂けました。「陽だまり」でも参加して頂いております。
まだ彼のライブにはいったことが無いので、いつか行きたいです。


蝶の刺青
福神陽香さん
大学の後輩のホルン奏者で、卒業してから存在を知り『陽だまり』制作に参加して頂いております。
現在和歌山在住で、わざわざ1曲の為に大阪まで来てくれました。ライブよりレコーディングの方が緊張すると、スタジオでストレッチを入念にしていたのが印象的でした。「蝶の刺青」ではトロンボーンとホルンのユニゾンで理想の音像が作ることが出来ました。

松本尚子さん
今回初めて制作に参加して頂きました。数々の賞を受賞されている大阪で活躍されているバイオリニストで、難しい譜面も難なく演奏して頂けました。
容姿端麗にしてバイオリンを弾いている姿と出音の良さが相まって、ずっとソワソワ、クラクラ、ドキドキしておりました。

中塚哲司さん
ファーストからすべてのアルバムでビオラ演奏をサポートして下さっている先輩です。頼り続けています。
生涯現役を胸に掲げ、音楽と猫に果てしない愛情を注ぎながら、ロシア民謡をベースとする自身のバンドや講師などでご活躍されております。
録音の後、セッションに行く際、「隕石のラブソング」のフレーズが気に入ったから今日はこのフレーズをソロでやりまくるわ!と仰られていて、後日お話を聞くと本当にずっとソロで演奏されていたようです(笑)。車の中がめちゃくちゃ汚いことで僕の中で有名です。

玉木俊太君
『陽だまり』からチェリストとして参加して頂いています。現在は関西フィルハーモニー管弦楽団で活躍しております。
普段はフットサルとサッカーの事をほぼ考え、移動中はサッカーゲームとの徹底ぶりで、感心させられました。 ピッチの良さに毎度救われています。

福田直木君
AOR界の愛の伝道師。バンド、ブルーペパーズやラジオDJなどでも活躍中です。
「ロキシーについて」でコーラスとリハモを担当してくれました。録音ではコーラスラインをあっという間に紙にメモし、1時間もかからず終わりました。録音後はいつものお薦め曲の紹介のし合い。楽しかったです。



桶田知道君
元ウワノソラ、現在は“陸の孤島の電子歌謡”を掲げ、アルバムや楽曲制作をし、ソロで活躍しております。
今回は「夜の白鳥」のコンポーズで参加。2015年に彼が『夜霧』の為に作曲してあった曲をやっと今回レコーディングいたしました。独特のメロディラインと歌詞の世界観、本当に桶田だけのものなんだなぁと改めて思いました。

宇都宮泰さん
音楽家として音楽プロデューサーとして1970年代より活動されていて、プロジェクト毎に独自の音楽理論を展開し音楽表現に直結した音響システムを開発・導入されるなど、音響の鬼才と称される方です。
67’からマスタリングアドバイザーとして教えをご教授して頂いております。毎度、新たなる課題を提示して頂き、いつも自分はまだまだ未熟だと感じさせて頂いております。

角谷:ご参加して下さったミュージシャンの方々には毎回本当に感謝させて頂いております。 何十年間も音楽や楽器、演奏に人生をかけ、考えてこられた方の一音には物凄い重みがあります。
そんな方々の音が絡み合い、今作のサウンドになっている事。本当に光栄でなりません。勿論僕は宅禄で作られた音楽も好きで、その音を否定しているつもりは毛頭ありません。いずれやってみたいとも思っておりますし。 “有難うございました。それじゃまた何かありましたら宜しくお願いします”といってミュージシャンの背中を見送りサヨナラをするのですが、内心、もしかすると、これが最後になってしまうんだなぁ、なんてことを毎回思っております。
大資本に支えられているわけでもなく、インディーレーベルでもなく、ウワノソラは自主制作なので、そんな時、一瞬のセンチメンタルに苛まれていたりもしておりました。

●参加ミュージシャンの方、一人一人に対する感謝の気持ちが強く伝わりました。 今後もこの方々とクリエイティヴなサウンドを作り続けて下さい。

角谷:まだまだ表現したい事が沢山あるので、僕もいえもとさんも限りゆくまで頑張りたいと思っています!宜しくお願いします。

●このリリースに関係したレコ発ライブをご紹介下さい。

角谷:7月7日に渋谷のタワーレコードでインストア、トークショウがあります。 8月3日に青山、”月見ル君想フ”にて、初のワンマンライブがあります。

◎Pied Piper House presents ウワノソラ『夜霧』
 発売記念トーク+ミニライヴ+サイン会
開催日時:2019年 7月 7日(日) 15:00
場所:渋谷店 タワーレコード渋谷店6F Pied Piper House https://tower.jp/store/event/2019/07/003033

◎ウワノソラ – 7YEARS LIVE –
開催日時:2019年 8月 3日(土) 開場17:30分 開演 18:30分
場所:青山 月見ル君想フ
http://www.moonromantic.com/?p=40562


●最後に本作『夜霧』の魅力を挙げてアピールして下さい。

角谷:午前二時。田舎に近い郊外。アスファルトの表層1cmから薄っすらと立ち込めた夜霧が一瞬、艶っと光る。
それを密閉した感じのアルバム、でしょうか...。魅力は、完全なリスナーの方の聴いて頂いた主観が全てなので。良いでも悪いでもあると。 やっぱりちゃんと試聴しないと損する方もおられると思います。楽しめる方も。

いえもと:今回はテーマが「夜」に統一されていますが、色気や清らかさなど様々な「夜」を楽しんでいただけるかと思います。
数年前に制作されていた曲もようやく皆さんに聴いていただけることになり嬉しいです。
今までとはまた違った作品になっているので、是非聴いてみてください。

◎ウワノソラ・オンラインストア・リンク 
【オンラインストアでご購入の方で希望者にはサインをお入れします】https://uwanosoraofficial.stores.jp/items/5ce79e9a0b9211098e15afaf

◎アルバム扱い店舗リスト
パイドパイパーハウス(東京)
ペットサウンズレコード(東京)
CD屋(沖縄)
ジャンゴレコード(奈良)
ディスクブルーベリー(東京)
六本松蔦屋書店(福岡)
タワーレコード各店舗
デシネ・ショップ (dessinee shop)
今井書店(鳥取)
他各店舗

(インタビュー設問作成/編集:ウチタカヒデ)


The Pen Friend Club新メンバー・ミニインタビュー

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中央が新メンバーの”そい”

6月19日にファーストからフォースまでの初期アルバム4枚のリミックス&リマスターを新装リリースしたばかりのThe Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)に、新しいキーボーディストの”そい”が加入した。正式加入は7月1日付で、オルガンとピアノにコーラスを担当するということだ。
弊サイトでは独占ミニインタビューをおおくりする。

●まずはペンフレンドクラブに新加入したきっかけをお聞かせ下さい。

そい:一昨年の8月にボーカルの藤本さんとソロのライブ・イベントでご一緒し、その時にお客さんでいらしていた平川さんや、ペンフレンドクラブのファンの方々と交流したのが出会いの始まりです。
そのあと昨年11月3日のレコードの日イベントにおじゃましたり、ライブを見に行ったりして遊んでもらっているうちに、ちゃっかり仲間入りしてました!


● ペンフレンドクラブの曲でお好きな曲を挙げて下さい。またその理由を教えて下さい。

そい:聴くほど、あれもこれも良いってなるんですが・・・オリジナルから厳選して2曲。

「微笑んで」『Wonderful World Of The Pen Friend Club』収録 17年)
ペンフレンドクラブの中で初めて聴いた曲で、しばらく脳内のBGMになっていた曲です。ラジオから流れてきそうな良い具合に湿った感じのイントロとか、微笑んでろうそくの火を消しちゃうような歌詞もお気に入りです!

「まばたき」『Garden Of The Pen Friend Club』収録 18年)
RYUTist版(わたしのこみち)も可愛くて好きなんですが、キラキラした情景の中で小さな男の子が走り抜けてるような軽やかなメロディと音の輝きと歌詞が大好きです。自分も走り出したくなります!(笑)


● ペンフレンドクラブ以外で、個人的によく聴くアーティストの曲を挙げて下さい。

そい:90年代ビーイング系アーティストが大好きで、特にZARDさんやGARNETCROWさん、小松未歩さんなどを聴いて育ちました。
最近はペンフレンドクラブの影響で、ずっとビーチボーイズさんを聴いており夏気分真っ盛りです〜♬



●最後にペンフレンドクラブに新加入しての意気込みをお聞かせ下さい。

そい:大好きな人達と、大好きな音楽を、楽しみながら、がんばります!!!!!

※彼女を新メンバーに加えた新生ペンフレンドクラブのお披露目ライブは、下記のライヴイベントになるので、気になった読者は是非足を運んで欲しい。



【Add Some Music To Your Day Vol.23】
日時:8/10(土) Open/Start・18:00
開場:吉祥寺ichibee
Charge:1500円+1d (ご予約不要)

出演
The Pen Friend Club
SMART SOUL CONNECTION
THE MOUSE
Seeek Me Darling
The Arts

DJ
Morrie Morissette

(テキスト:ウチタカヒデ)


SOLEIL:『LOLLIPOP SIXTEEN』(VICL-65209)リリース ☆フレネシ・インタビュー

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60’モッズ・サウンドをベースに若干15歳の美少女ボーカリスト“それいゆ”を擁するバンド、SOLEIL(ソレイユ)がサード・アルバム『LOLLIPOP SIXTEEN』を7月17日にリリースする。
このバンドは元ザ・ファントムギフトのベーシスト、サリー久保田を中心に結成され、それいゆのルックスとコケティッシュなボーカルで、多くのガールポップ・ファンを魅了している。
現正式メンバーは、それいゆとサリー久保田の2名になったが、弊サイトではお馴染みのザ・ペンフレンドクラブを率いる平川雄一がサポート・ギタリストとしてツアーに同行しているのは注目したい。

アルバム毎に参加している作家陣も実に多彩なのだが、本作にも筆者が高く評価しているガール・グループRYUTistの『青空シグナル』(18年5月)や『黄昏のダイアリー』(18年11月)を手掛けたTWEEDEESの沖井礼二と清浦夏実をはじめ、カーネーションの直枝政広、森若香織、高浪慶太郎、マイクロスターの佐藤清喜と飯泉裕子、のん(能年玲奈)、そしてフレネシらが楽曲を提供しており人選も非常に興味深い。全12曲中2曲はカバー曲で、フランス・ギャルの「Zozoi」(70年)、イモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」(81年/作詞:松本隆、作曲:細野晴臣)を収録している。

冒頭からTWEEDEES組による「ファズる心」(フランス・ギャルの「ジャズる心」のもじりか?)は、Cymbals時代の沖井の作風が色濃く出たハイブリッドなモッズ・ポップで、SOLEILの魅力を引き出している。

メロトロンガール

7インチ・シングルカットされたリード・トラックで作編曲家の岡田ユミがソングライティングを手掛けた「メロトロンガール」は、サイケデリックな上物にモータウン・ビート(まるでH=D=H風だ)をぶつけて完成度の高いガール・ポップに仕上げている。

アルバム中VANDA的にチェックすべき曲は、マイクロスター組が手掛けた「Red Balloon」ではないだろうか。サウンドやアレンジは中期ビートルズのサイケデリック風味だが、メロディ・センスにはトニー・マコウレイに通じる。
歌詞と共に『microstar album』(08年)収録の「東京の空から」を彷彿とさせて好きにならずにいられない。

さてここでは、このアルバムに楽曲提供し筆者が監修したインディーズ・コンピ『Easy Living Vol.1』(06年)以来交流がある、女性シンガー・ソングライターのフレネシに、本作についてのインタビューをおおくりしよう。


フレネシ

●まずは今回SOLEIL(ソレイユ)のサード・アルバムとなる本作に楽曲提供した経緯を教えて下さい。
やはりボーカルのそれいゆさんがフレネシさんのファンを公言していたことが、大きなきっかけでしょうか?

フレネシ:ありがたいことに、そのようで…。全然存じずインタビュー記事を何気なく読んでいたら、突然「フレネシさんの…」と出てきて、思いっきり茶を噴きました。

それから、これはあんまり関係ないかもしれませんが、それいゆちゃんのお母様が私の母校の先輩と伺って、大変な親近感を覚えました。「学校近くのアイスもなか屋さん、閉店したんですってね」など…音楽と無関係な話をするなど。

●これまでも朝ドラ女優で一躍有名になり現在はミュージシャン活動もして、このアルバムにも楽曲提供している、のんさんがファンであることを公言されていましたが、こういうリスペクトに対してどう思われますか? 

最近では、ウワノソラの角谷君シンリズム君も学生時代にフレネシさんのアルバムを愛聴していたことが判明しましたね。

フレネシ:「全部夢じゃないだろうか?」と思うくらい、会う方に認知されていて、そういうことがあるたび驚いています。

私のアーティスト性には、ずば抜けてうまかったり、ずば抜けてキャッチーだったり、といった、ずば抜けている要素がこれといってあるわけではないので…数ある好きな音楽の1つに入れてもらえているだけでも、光栄なことですね。

●楽曲提供する以前からSOLEILのアルバムは聴いていましたか? 


フレネシ:PVは見ていました。「魔法を信じる」を聴いたとき、これはTEDDY RANDAZZOの「Trick or Treat」(66年)だ!とすぐにピンときて。サリーさんとお会いした際、真っ先にその話をしました。


●「魔法を信じる」は18年のファースト・アルバムのリード・トラックですね。サリー久保田さんらしいアレンジは、モッズ経由モータウンの所謂ジェームス・ジェマーソンの三連ベースラインで、TEDDY RANDAZZO & ALL 6のオリジナル・サウンドと異なるから気付く人は少ないかもしれませんね。

ではメジャー・デビュー時からご存じだったということですか?

フレネシ:すみません、デビュー当時は存じず…。後追いでMVを視聴しました。

この時代感と世界観がこんなにハマっていて、この若さ?と衝撃でした。


●続いてフレネシさんが今回提供された「アナクロ少女」のソングライティングについて聞かせ下さい。

それいゆさん側からはどのようなリクエストがありましたか?

フレネシ:ファーストの『キュプラ』(09年)の「仮想過去」のような曲が良いと具体的にリクエストをいただいたので、とても作りやすかったです。

「なんでもいい」と言われると逆に困ってしまいますね。アウトのラインが分からなくて。

●「仮想過去」のオリジナルは、古くはConnie Francisの「Lipstick On Your Collar(カラーに口紅)」(59年)に通じる50年代ロックンロール・ベースのポップスで、『キュプラ』の収録曲の中では、比較的ストレートなアレンジのサウンドですが、この曲に注目した、それいゆさんの趣向が垣間見られて面白いですね。


フレネシ:そうですね。MVがあるわけでもない、ちょっと異端なこの曲をあえて選んでくださったのは、私としては意外でした。


●デモ制作中のエピソードがあればお聞かせ下さい。  


フレネシ:育児・復職中でとにかく時間がなくて…詞が思い浮かんだ時点で作曲も並行して行い、およそ1日で完成させました。

ちょっと前に種村季弘の「アナクロニズム」を再読していて、引用などはないですが、今作のテーマになっています。

●ストック曲ではなさそうですが、約1日で完成させたのはさすがです。

サビのメロディ・センスが、セルジュ・ゲンスブールが手掛けていた頃のフランス・ギャルを彷彿とさせていい曲です。
サリー久保田さんのアレンジは、デモの時点からどのようにモディファイされていますか?

フレネシ:基本のビートのループにコード、メロディ、歌詞と符割までが私の仕事で、アレンジは全面的にお任せでした。イントロには驚かされました。


 ●ご自分の提供曲以外で気になった楽曲はありますか?


フレネシ:「ハイスクールララバイ」と「Zozoi」のカバー、最高ですね!カバーのチョイスって重要ですよね。アルバムの振れ幅を示す指標の一つだと思っています。


 
ハイスクールララバイ

●ギャルの「zozoi」カバーは、アルバム音源入手後一聴して注目しました。それいゆさんの声質や発声がこの曲とサウンドにかなりハマっていました。本当に素晴らしいカバー・センスだと思います。7インチ・シングルで欲しいですよ(笑)。
フレネシさん提供の「アナクロ少女」のメロディ・センスも含め、60’Sフレンチ・ポップ路線の成果が今後の活動の試金石ともなりそうですね。

フレネシ:そうですね。このラインから大きく逸脱したそれいゆちゃんも見てみたかったりします、個人的には。


●最後にフレンシさんが感じた、本作『LOLLIPOP SIXTEEN』の魅力を語って下さい。

フレネシ:豪華すぎる作家陣に加えていただいて本当に光栄です。これほど多様な楽曲が集まっていながら、アレンジの力か、SOLEILカラーにまとまっているのがすごいですね。 それいゆちゃんの天然なのか計算なのか分からない表現力の素晴らしさにも驚かされました。
(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)


名手達のベストプレイ第4回~チャック・レイニー

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70年代を中心にジャンルを超えて、その巧みなベース・プレイでミュージシャンズ・ミュージシャンとして知られるチャック・レイニー。 
チャックは40年6月17日オハイオ州のクリーブランドで生まれた。クラシックのヴァイオリン、ピアノ、トランぺットの教育を受けたが、バリトンホーン奏者としてテネシー州のレイン大学に奨学生として入学する。
軍事兵役時代にはギターをマスターし、大学卒業と兵役終了後にはクリーブランドに戻り、地元のバンドでギタリストとしてミュージシャンとしての活動をスタートしたが、後にベーシストへと転向した。
このように様々な楽器奏者として経験が、彼特有のベース・プレイにフィードバックされていったのではないだろうか。

その後ニューヨークでセッション・ベーシストとして活動を始め、キング・カーティス、アレサ・フランクリンなどアトランティック・レコードの主要レコーディングを皮切りに、クインシー・ジョーンズ、サム・クック、エタ・ジェイムズなどの著名ジャズ・クリエイター、ソウル・シンガーのレコーディングに参加する。
評判になったそのベース・プレイはジャンルを超え、アル・クーパー、ローラ・ニーロなど黒人音楽に影響されたシンガーソングライターのレコーディングでもオファーされ、72年のロサンゼルス移住後には、スティーリー・ダンの多くのレコーディング・セッションで重要な役割を果たしたのは読者にはご存じの通りだ。
これまでにチャックが参加したアルバムは数百以上と言われており、81年にはその功績が認められ、オハイオ州芸術評議会から、厳選された数少ないミュージック・サイドマンとして認可を受けている。

ここではそんなチャック・レイニー氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。
因みに今回の参加者8組中6名がベーシストなので、その選曲も玄人好みになったといえるだろう。
サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。



【チャック・レイニーのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント 

【invisible manners(平山大介、福山整)】 
平山大介、福山整からなる音楽作家ユニット。 黒人音楽をベースにしながらも独自のアレンジやメロディメイクで様々なアーティストへの楽曲提供を手掛ける。https://invisiblemanners.tumblr.com/


●Get on top / Tim Buckley 
(『Greetings from L.A.』/ 72年)
◎Tim Bucklyがソウルに歩み寄ったアルバム。60’sのロックバンドの残り香も強く感じさせる質感に加えられた独自のファンクネスはDr.Feelgood同様にパンクの出現を予言している感じもするが、Chuck Raineyまでもがそれに応じたフィーリングに溶け込んでいる。
Get on topの遺伝子はGang of fourなどによって受け継がれ現代まで生き続ける。

●Street Walking Woman / Marlena Shaw
(『Who Is This Bitch, Anyway?』/ 74年) 
◎『Who Is This Bitch, Anyway?』を初めて聴く方へ。 冒頭よく分からない会話が続いて曲をスキップしたくなると思うが、3分だけ待とう。
唐突な曲入り、高速ファンクからスウィングビートへのリズム変化、随所に施されたギミックの数々に圧倒される筈。プログレッシブなだけでなくプレイヤーの個性が溢れ出ていて有機的なサウンドに仕上がっているのもこの楽曲の魅力。

●He is the One / Peggy Lee 
(『Let's Love』/ 74年)
◎当時のシンガーソングライター的な叙情性冴える70’sらしいゴスペル曲。 アルバムタイトル曲はThe歌心ベーシスト・ポールマッカートニーだが今回は控え目。代わりとばかりにこの曲でチャックが低音からハイフレットまでベースという楽器を知り尽くした滑らかな歌心を聴かせてくれる。

●PEG / Steely Dan
(『Aja』/ 77年) 
◎スクウェアなボーカルに対し主役級におしゃべりなベース。小節前半のギターとキーボードのユニゾンバッキングに呼応するように小節後半を台詞で埋める。Rick Marottaの裏打ちアクセントハイハット等、隙間なく敷き詰められたリズムの骨子の中で軽快に喋り歌うことが出来るのは正に匠の技。

●I Don't Know / Syreeta
(『One To One』/ 77年)
◎後半に行くにつれボルテージがブチ上がる演奏陣の妙技を堪能出来る楽曲。本アルバムではSyreetaの2番目の夫でベーシストのCurtis Robertson Jr.もベーシストとしてクレジットされているので正確なプレイヤーは定かではないが、Leon WareとSyreeta共作のこの楽曲のソウルマナーはチャックの手によるものと推測。 


I Don't Know / Syreeta 


https://groove-unchant.jimdo.com/


●Woman's Blues / Laura Nyro
(『Eli and the Thirteenth Confessio』/ 68年) 
◎Laura Nyroの高い音楽性を表現するのにChuck Raineyも必要だったと改めて 認識させられた曲。

●A Ray of Hope / The Rascals 
(『Freedom Suite』/ 69年)
◎ベースのグルーヴがこの曲のブルーアイドソウル感を出す一翼を担ってますよね。

●Lansana's Priestess / Donald Byrd
(『Street Lady』/ 73年)
◎Sky High Productionでもいい仕事しています。 ループでず~っと聴いていても飽きません。

●Green Earrings / Steely Dan 
(『The Royal Scam』 / 76年) 
◎Steely Danの曲の中で個人的にベスト5に入る曲。派手な動きは特にないけど、一番影響受けたベースラインかも。

●It's So Obvious That I Love You / Sergio Mendes & Brasil '77
(『Home Cooking』 / 76年)
◎ポップスの中でもChuck Raineyのベースは生き生きしていて、最高のグルーヴを聴かせてくれます。 

It's So Obvious That I Love You / Sergio Mendes & Brasil '77 


小園兼一郎(small garden)
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 



●You've Got a Friend / Roberta Flack 
(『Roberta Flack & Donny Hathaway』 / 72年) 
◎音数の少ないレイドバック気味の前半から後半の16分アプローチの変化が とても自然で心地良く、盛り上げ過ぎない好演です。
チャック参加の全ての曲に言えますが音価の調節に関して右に出るものは いないと思います。

●The Fez / Steely Dan
(『The Royal Scam』 / 76年) 
◎ほぼ固定フレーズの繰り返しであるが「レイドバッカー」としてのチャックの ジャストの演奏が聴けるのはSteely Danだけ(でも絶対に前には出ない)。曲は前半と後半でドラム、ベースの位置がなぜか違うという変わったミックスです。

●Shine Like You Should / Melissa Manchester
(『Don't Cry Out Loud』 / 78年)
◎ジャストビートとシャッフルの中間、絶妙なハネ具合のオブリが満載。 バスドラと合わせる基本形の演奏ながら玄人好みのビート。 チャックのミュート術。

●Green Flower Street / Donald Fagen
(『The Nightfly』/ 82年) 
◎チャックである必要があるのかというビートの曲だが天然のもたり具合を 最大限にソリッドに持っていった曲として有りだと思っています。 オブリやハンマリングは健在なのですがドラムが打ち込みのせいもあって 冷たい印象のチャックということでそれも有りです。

●君がいない / SMAP 
(『SMAP 007 ~ Gold Singer』 / 95年) 
◎バーナード・パーディとJ-popへのアプローチ。音の歯切れ具合は最高です。 要所のフレーズを聴く限り、かなり自由に演奏していると思われるので チャックの魅力が生かされた名演に入れて良いと思います。


Shine Like You Should / Melissa Manchester


【TOMMY (VIVIAN BOYS)】 
オフィシャルサイト: https://twitter.com/VIVIAN_BOYS 



 ●Spanish Twist / The Isley Brothers
 (7”『Twist And Shout』B面/ 62年)
◎Phil Spectorによる「Twist And Shout」初出版を嫌った作者版、のオケ流用。スペクターのスパニッシュ嗜好との因果な曲名。演奏は、後年メロウグルーヴを多産するKing Curtis組やTrade Martinら。

●God Only Knows / Gary McFarland & Co. 
(『Does The Sun Really Shine On The Moon?』/ 68年) 
◎早逝の作・編曲家/ヴィブラフォン奏者のリーダー作、冒頭のThe Beach Boysの屈指曲。自身のSkye Recordsより。収録のチャック作「Three Years Ago」にも注目。

●Most Of All / The Arbors 
(『Featuring: I Can't Quit Her - The Letter』/ 69年) 
◎「Mas Que Nada」で人気だが、チャック参加の本作にもハーモニー・ソフト・サイケの名曲が。1分43秒〜のベースが導く怒涛の昇天ハーモニー。Moonglowsのドゥーワップ曲(55年)が、新たな美しさで再誕。

●He Ain't Heavy,He's My Brother / Donny Hathaway 
(『Donny Hathaway』/ 71年) 
◎拍最後尾を狙う打点、悠久の白玉、曲想を担うダブルストップ。ダニー絡みならPhil Upchurch『Darkness,Darkness』(Tommy LiPuma、Nick De Caro参加)の「What We Call The Blues」も名演。

●Eloise(First Love)/ The Chuck Rainey Coalition 
(『The Chuck Rainey Coalition』/ 72年) 
◎上述Skye Recordsでのリーダー作より。チャック作曲。69年録音、ニューソウルを遥かに先取る。P-Vine版CDには自ら歌うSteely Dan「Josie」のカヴァー(82年録音)も。 


Most Of All / The Arbors 




【hajimepop】
https://www.hajimepop.com/ 


●Away Away / The Rascals 
(『See』/ 69年)
◎チャックのワン・フィンガー奏法での細かいフレーズは、ラスカルズの作品でも随所で堪能できる。他のセッションより硬質でロック的な音(しかもこの曲はサイケ!)が実に新鮮。

●Until You Come Back to Me /Aretha Franklin
(『Let Me In Your Life』/ 74年)
◎作曲者のスティーヴィー・ワンダー版も素晴らしいけれど、個人的には胸キュンなアレサ版の方が好き。チャックの"語るベース"の不在が大きいのだ。

●I Got Love for You, Ruby / Frankie Valli 
(『Closeup』/ 75年)
◎最近ではあまり聞かれない、美しいメロディをどこまでも展開していくポップスの名曲。歌ものベースのお手本のような素晴らしい演奏だ。

●Wouldn't Matter Where You Are / Minnie Riperton
(『Stay In Love』/ 77年)
◎国内外で盛り上がりを見せる、シティポップの雛形のようなサウンド。チャックをはじめ、各々のパートの圧倒的な演奏で、音楽の魔法が真空パックされたようなトラックだ。

●Bad Weather / Melissa Manchester 
(『Don't Cry Out Loud』78年)
◎大部分のベースをチャックが弾いている、メリサの大傑作から。これはスティーヴィー節全開のシュープリームスのカヴァーだが、管楽器やコーラスなど、本作の特徴であるゴージャスな編曲が堪らない。


Wouldn't Matter Where You Are / Minnie Riperton 


洞澤徹(The Bookmarcs)
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa 



●Where is the Love / Roberta Flac & Donny Hathaway 
(『Roberta Flack & Donny Hathaway』 / 72年)
◎軽やかなのに重心がある感じ。2人のソフトな歌い方に寄り添うようなベースのフレー ジングと音色。

●Summer in the City / Quincy Jones
(『You've Got It Bad Girl』 / 73 年)
◎柔らかな音色で朗々と歌い上げるベース。完全に楽曲の中で主役。

●Stick Together / Minnie Riperton
(『Stay in Love』/ 77年)
◎Chuck Rainey の中ではゴリゴリ感が強い。らしい独特なラインがクセになるダンスナ ンバー。

●Dream On / Bill LaBounty
(『Bill LaBounty』/ 82年)
◎このテンポ、切ないコード感とマッチして数あるAORの良曲の中でもすこぶる気持ち良 いタイム感。Jeff PorcaroとChuck Raineyのコンビネーションが、何を上にのっけても 気持ちよくなるくらいに素晴らしいからだろう。

●I Want You / Chuck Rainey/David T. Walker Band
(『Chuck Rainey / David T. Walker Band』/ 94年)
◎Chuck Raineyのベースに呼応するかのようなDavid.Tのギターのオブリガードがいちい ちグッとくる。このベースがなかったら生まれないであろうフレーズの数々。 


I Want You / Chuck Rainey/David T. Walker Band


【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】
http://blog.livedoor.jp/soulbass77/


● Len Novy / Think About It 
(『No Explanations』/1969年) 
◎まず自分内ルールでソウル/ジャズ系を選外としたことをお断りしておきます。これは一発目のボン!という重たい響きから、全体をコード弾きで彩った浮遊感ある演奏へ。 60年代フォークシンガーの作品とは思えない先進性に舌を巻く。

●Hirth Martinez / Djinji 
(『Hirth From Earth』/1975年) 
◎ミュートの効いた音色にワンフィンガーピッキングのニュアンス。3度へのアプローチや繊細なヴィブラート。ソウルベースの何たるかを語り尽くす。

●Leo Sayer / You Make Me Feel Like Dancing
(『Endless Flight』/1976年) 
◎ここにチャックを連れてきた人選の妙。シンプルだが、まさに踊るかのような演奏。楽曲を表現した演奏というより、まるでチャック・レイニー讃歌のようにも聴こえる。堂々の全米No.1ヒット。

●Laura Allan / Yes I Do
 (『 Laura Allan 』/1978年) 
◎シンプルな楽曲と編成だからこそ、メロディやビートに対するチャックのアプローチの基本形がしっかりと残されているという、実は貴重なテイク。教科書のように完璧なラインだが、そのサウンドは決して真似できない。

●Marc Jordan / Marina Del Rey
(『Mannequin』/1978年) 
◎ツボを心得た演奏…と言うとありきたり過ぎるが、まさにツボと言うツボをひたすら押してくるような演奏。歌うようなラインに、音の切り方、ゴーストノート。スチールパンの音色と相俟って夢心地に誘う。


Marc Jordan / Marina Del Rey 


ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】 

●See / The Rascals 
(『See』/ 69年)
◎ヤング・ラスカルズ時代からセッションマンとしてレコーディングに参加していたが、この曲はフェリックス・キャヴァリエのワンマン・バンド化した末期アルバムのサイケデリック・ソウルな先行シングルだ。手数が多いながらもハーモニーを邪魔しないチャックらしいプレイが聴ける。

●Now Is The Time / The Free Design
(『Heaven/Earth』/ 69年)
◎高度で複雑なコーラス・ワークでソフトロック・ファンには特別な存在である、クリス率いるデドリック兄弟のグループのサード・アルバムを代表する1曲。東海岸の技巧派ジャズ・プレイヤーが多く参加した中で、チャックの有機的なベース・プレイはサウンドの中で素晴らしく機能している。

●Kid Charlemagne / Steely Dan
(『The Royal Scam』/ 76年)
◎チャックの名を上げた説明不要な名演中の一曲。グルーヴのトリガーはバーナード・パーディのラテンファンク・スタイルのドラミングだが、トニック~5度~トニックを繰り返すチャックのベースラインが、えも言えぬ快感を生んでいる。このアルバムでのパーディとのリズム隊はいずれも国宝級の名演だ。

●Sweet Sadie The Savior / Patti Austin
(『End Of A Rainbow』/ 76年)
◎スティーヴ・ガッド、エリック・ゲイル、リチャード・ティーというスタッフのメンバー達にチャックが加わったリズム・セクションの名演。特に3分08秒の所謂スタッフ・スイングするパートからは、ゴードン・エドワーズには出せない緻密なグルーヴの核となっている。

●Some People Can Do What They Like / Robert Palmer
(『Some People Can Do What They Like』/ 76年)
◎ミーターズやリトル・フィートにバッキングをオファーし独自のファンク・サウンドを追求した英国ブルーアイドソウル・シンガーの3作目のタイトル曲。ハイハット・ワークからジェフ・ポーカロのドラミングだが、それに呼応し激しくシンコペートするチャックのプレイがとにかく白眉である。


Sweet Sadie The Savior / Patti Austin



(企画 / 編集:ウチタカヒデ)

シンリズム:『赤いタワーまで / Moon River Lady』(production dessinee / PDSP-022)

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若干22歳のシンガー・ソングライターのシンリズムが7インチ・シングル『赤いタワーまで / Moon River Lady』を8月7日にリリースする。 
出身地の神戸で高校在学中の15年にシングル「心理の森」とアルバム『NEW RHYTHM』でデビューした彼は、続くセカンド・アルバム『HAVE FUN』(17年)でも高い評価を得てきた。
音楽大学進学後は活動拠点を東京に移し、ソングライター&アレンジャーとして今年4月にガール・グループRYUTistのシングル『センシティブサイン』のタイトル曲を手掛けるなどその才能を広いフィールドで発揮している。



ソロ作品として2年程のブランクを経て発表する本作は、ソングライティングとアレンジは勿論のこと全てリズム・セクションを自ら演奏しており、そのマルチな才能には敬服するばかりだ。では収録曲を解説していこう。
 「赤いタワーまで」はダブルトラックのフルート・リフから導かれるメロウなシティポップ・ナンバーで、フェンダー・ローズ系のエレピを中心に構築されたサウンドである。 かつて松任谷由実の「タワー・サイド・メモリー」(『昨晩お会いしましょう』収録 81年)でも歌われた“神戸ポートタワー”をモチーフにした歌詞には、故郷に思いを馳せる彼の心象風景が滲み出ている。またコーラスでゲスト参加した“月の満ちかけ”の熊谷あすみの無垢な歌声とブレンドされたハーモニーが美しい。 

Official Teaser

カップリングの「Moon River Lady」は、イントロにはRah Bandの「Clouds Across The Moon」(85年)の匂いがして心憎い演出だが、アコースティック・ピアノ中心にしたシンプルな編成のファースト&セカンド・バースからサビに入ると、2拍子のカリプソ~中南米系リズムにシフトしてバックビートで3管のホーンが入ってくるという。 一聴して音楽的引き出しが多い彼の才能が伺える曲である。 

なお本シングルはリリース元の『プロダクション・デシネ』製のカンパニースリーブ付属で、初回300枚プレス(非限定)らしいので興味を持った読者は、下記URLから早期に入手して欲しい。
dessinee shop (デシネ・ショップ): http://www.dessineeshop.com/shopdetail/000000023764/ct11/page1/order/
(ウチタカヒデ)

◎PIPER:2019summer live(Piper、村田和人、Honey & B-Boysレコ発ライブ!) 2019.07.14.(Sun)@目黒ブルースアレイ・ジャパン

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 このところ残念なライヴばかりでやりきれない気分になっていた。まずは4月18日「Eric Clapton武道館公演」、初日の13日には久々にオリジナルのエレクトリック<Lala>を演奏したというSNSの情報に期待して40年ぶり(1979年Earth,Wind & Fire初来日公演)の武道館へ出かけた。が、公演時間はわずか2時間弱で<Lala>はアコースティック版、アンコールのヴォーカルはPaul Carrackがとるというズッコケぶり(-_-;)、「これで15,000円!」なんて愚痴もたたきたくなるほど。

  そして7月12日には開催予定だった「山下達郎/中野サンプラザ公演」が、「本人体調不良」を理由に「開催前日ドタキャン、順延公演無し」という告知(酷知)!一方的にe-plusより「払い戻し方法」の連絡が届くのみという、完全に「無かったものとして諦めて」なる一方的で理不尽な扱い。「前日移動で上京」していた私にとってはあまりに無残な週末となってしまった。 

 しかもご当人の体調回復後に出演した<サンソン>でも、本人から正式な謝罪もなく、すでに終わったこととして悪びれもせず「風邪ひいちゃいました。」などと笑って済ませる始末。本人にしてみれば、過去のことよりも次の公演来場者の方が気になってしょうがない様子。中野公演以外のファンにとっては「元気になって良かったです!」かもしれないが、一方的に潰された中野サンプラザ公演を楽しみにしていた私のようなファンにとっては、その対応と態度は本当に腹立たしい気分にさせられた。 今にして思えば(サンプラ公演を優先して見送りにした)この公演の2日後に予定されていたブルース・アレイに行けば良かったと、悔やんでも悔やみきれない心境だった。

 ということで、冒頭から愚痴ってしまったが、6月5日に投稿したように7月14日の東京目黒ブルースアレイ・ジャパンではPIPERのライヴが予定通り開催されている。この会場にはあふれんばかりのファンが駆けつけ、超満員となり大盛況だったと聞く。 

 では、遅ればせにはなるが、当日の詳細を会場のスナップも含め紹介しておく。まずオープニング・アクトで登場したのは、村田和人さんとPIPERのコアなファンを自認する音楽評論家近藤正義氏率いる“村田和人トリビュート・バンド/Ready September”。前回の投稿でも紹介したが、このバンドは彼が村田さんにそっくりな声を持つヴォーカリストとの出会いから結成された。なお当日はこれまでの編成をパワー・アップさせたツイン・ドラムという布陣でのステージだった。また村田ファンには、このバンド名を見ただけで、ニヤリとする気の利いたネーミングだということがおわかりいただけるだろう。

  では彼らのセット・リストを紹介しておく。なお( )は収録アルバムになっている。

①Ready September 
 ~近藤正義(Gt.) 、井原正史(Gt.,Vo.)、 山田繁毅(B.)、志間貴志(Kyd.)、池田幸範(Per., Cho.)、小倉睦子(Kyd.)、館野順子(Vo.,Cho.)、堀江誠巳 (Ds.) 

1. 134号ストーリー(1989年7作『太陽の季節』) 
2. Lady September(1982年1作 『また明日』) 
3. Summer Vacation(1984年3作『My Crew』) 
4. April shadow(1985年二名敦子2作『“WINDY”ISLAND』) 
5. Love Has Just Begun(1983年2作『ひとかけらの夏』) 
6. リアルは夏の中(1989年7作『太陽の季節』) 
7. マリンブルーの恋人たち(1986年児島未知瑠2作『MICHILLE』)with児島未散 
8. Lady Typhoon(1993年 9作『HELLO AGAIN』)
9. Travrlin’ Band(1983年2作『ひとかけらの夏』) 


 という他者への提供曲も含め9曲を披露した。そして7.の<マリンブルーの恋人たち>には、オリジナル・シンガーである児島未散(こじまみちる)さんがサプライズで登場している。この曲は彼女が児島未知瑠名義でリリースした1986年セカンド・アルバム『MICHILLE』への村田さん提供曲で、村田さんは2013年に発表した16作となるセルフ・カヴァー・アルバム『Treasures in the Box』に収録されている。



 なお、彼女のライヴ出演は数日前に決まったものだったらしいが、未散さんにあわせ彼女のヴァージョンで演奏され気持ちの良いジョイントとなった。かなりコアな村田ファンであっても、彼女の生歌を聴くのは初めてだったのではないだろうか。この映像は既に動画でもアップされているので、ファンは要チェック!また当日参加できなかったファンには彼女が開催する10月12日に中目黒の「THE楽屋」でのソロ・コンサートをお忘れなく。補足ながら、彼女は俳優宝田明さんのお嬢さんとしても有名で、あの人気ドラマ『3年B組金八先生』にも出演歴のある女優というプロフィールを加えておく。 


 このようにオープニングから大喝采の中、いよいよ当日の主役である山本佳右さん率いるPIPERが登場。サポートには元村田バンドの小板橋博司さんをはじめとする強者が整揃い。そのステージは、<Ⅰ部><Ⅱ部>に加え<Encor>も含め、既発アルバム(1981年ファースト『I'm Not In Love』除く)からまんべんなく16曲を聴かせてくれた。

②PIPER  
~山本佳右(Gt.,Vo.)、山本耕右(B.)、志間貴志(Kyd.)   
 With 小板橋博司(Per., Cho.)、樋口達也(Gt.)、今瀬真朗太(Ds.) 

<Ⅰ部> 
1. Angel Smile(1983年2作『Summer Breeze』) 
2. Starlight Ballet(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
3. 僕のLove Song(1984年4作『Sunshine Kids』) 
4. 夏はどこかへ(1984年4作『Sunshine Kids』) 
5. Photograph(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
6. New York, Paris, London, Tokyo(1983年3作『Gentle Breeze』) 
7. Ride On Seaside(1983年3作『Gentle Breeze』) 

<Ⅱ部> 
1. 酒とバラ(1987年Honey & B-Boys『Back To Frisco』) 
2. ふいうちのまなざし(1984年4作『Sunshine Kids』) 
3. ACT3(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
4. Trade Wind(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
5. New York Review(1985年 5作『LOVERS LOGIC』) 
6. Time & Tide(1983年3作『Gentle Breeze』) 
7. Ride On Seaside(1983年3作『Gentle Breeze』) 

<Encor> 
1. デイドリーム ビリーヴァー(1984年4作『Sunshine Kids』) 
2. Breezing(1983年3作『Gentle Breeze』) 

 そしてこのライヴのトリとなる<More Encor>では、Ready Septemberに山本佳右さん小板橋博司さんが加わり、村田和人ナンバーを3曲披露している。 


 

③Ready September With 山本佳右、小板橋博司 
<More Encor> 
1. Brand New Day Brand New Song(2014年17作『ピーカン』) 
2. 一本の音楽(1983年村田和人2作『ひとかけらの夏』) 
3. We Love You(1984年村田和人3作『My Crew』) 



 このラスト・ステージでは2016年に村田和人さんが亡くなられた際に、彼の師匠山下達郎さんがこの年のツアーのアンコールで、ギター1本で歌い上げた追悼曲<一本の音楽>がハイライトとなった。この曲を本家である山本佳右さんと、彼をこよなく愛する近藤正義氏がツイン・ギター・ソロを響かせ、会場のファンにはたまらないプレゼントとなった。ただこの瞬間を一番楽しみにしていたのは、近藤氏だったのは言うまでもない。 

 また、オーラスとなった<We Love You>は、発表当時「オロナミンC」のCMソングとして一般にもヘビロテ状態のナンバーであり、この共演に最もふさわしい締めくくりのナンバーだった。 この共演は多くのファンを楽しませていたが、何よりも永年のPIPERファンだった近藤正義氏には永年の夢が叶った瞬間として一生忘れられないステージになったことと思う。「近藤君、お疲れ様でした。共演おめでとう!」長年の友人として、遠方より祝辞を送らせていただく。そして、近藤正義氏の初コンピ企画『村田和人/エヴァーグリーン・ワークス~永遠に続く輝く~』の発売にも拍手を送りたい。



 なおこのライヴのリポートは、「レコードコレクターズ」9月発売号に掲載予定で、8月発売号には近藤正義氏によるPIPER特集記事等がかなりの枠で掲載される予定だ。 僭越ながら、私も後方支援としてFMおおつ「音楽の館~Music Note」の6月号ラストで、概要告知をさせていただいた。



 そして、7月27日に放送された7月号では「村田和人さん」と「PIPER」の特集を放送している。当日のプログラムは、村田さんのナンバーも佳右さんのギターにこだわって選曲した。以下はその放送でオンエアされたリストだ。 


1. Morning Selection /Honey & B-Boys (1987.『Back to Frisco』) 
2. 部屋とYシャツと私 /平松愛理(1992.Single;1990.3rd『My Dear』) 
3. 電話しても/村田和人(1983. Single;1st『また明日』) 
4. ファーラ・ウェイ/ PIPER(1982. Single;1st『I’m Not In Love』) 
5. 高気圧ガール/山下達郎(1983.Single;8th『Merodies』) 
6. So Long Mrs. /村田和人(1984. 2nd『ひとかけらの夏』) 
7. Summer Vacation /村田和人(1985. 3rd『My Crew』) 
8. Shine On/ PIPER(1984.2nd『Summer Breeze』) 
9. Ride On Seaside/ PIPER(1984.3rd『Gentle Breeze』) 
10. Sunshine Kiz/ PIPER(1985. Single;4th『Sunshine Kiz』) 
11. We Love You/村田和人(1985. 3rd『My Crew』) 
12. Gimme Rain/村田和人(1985. 3rd『My Crew』) 
13. Boy’ s Life/村田和人(1987. 5th『Boy’s Life』) 
14. 電話しなくても/村田和人(1990. 8th『空を泳ぐ日』) 
15.Imaginaly Lover/村田和人(1993. 9th『Hell Again』) 
16. 太陽の恋人/村田和人(1995. 11th『Sweet Vibration』) 
17. マリンブルーの恋人たち/村田和人(2013. 15th『Treasures In The BOX』) 
18. STARLIGHT BALLET/ PIPER(1985.4th『Lovers Logic』) 
19. 一本の音楽/村田和人(1984. Single;2nd『ひとかけらの夏』) 
20. 夏を忘れた瞳に/村田和人(1994. 10th『evergreen』) 

 このなかで最もメジャーな曲といえば、ブルースアレイ・ジャパンのライブ・レヴューでもふれた<11. We Love You>になるだろう。それはこの曲が1984~5年にかけて読売ジャイアンツの人気選手が登場する大塚製薬「オロナミンC」CMに起用されていたからだ。    

 その映像に出演していたメンバーが全員思い出せなかったので、大塚製薬のカスタマーサービスに問い合わせをしてみた。さすがに即答とはいかなかったが、同世代と思われる担当者に調査していただき、以下の6名が判明した。 まず当時、江川卓(えがわすぐる)投手と並び巨人軍投手三本柱として活躍した定岡正二(さだおかしょうじ)投手と西本聖(にしもとたかし)投手。そして「絶好調!」の連発でお馴染み、数年前までDeNAベイスターズの監督だった中畑清(なかはたきよし)選手。さらに「意外性男」山倉和博(やまくらかずひろ)捕手、河埜和正(こうのかずまさ)内野手、松本匡史(まつもとただし)内野手だった。補足になるが、このCMには「5月編」「ファンレターA・B」「クリケット」の4パターンがあったようだが、さすがの私もそこまで詳しく記憶してはいなかった。


 

 そして最後にFMおおつの告知となるが、「音楽の館~Music Note」8月号のプログラムは、2001年に映画化されその後テレビ・ドラマ化もされた「ウォーターボーイズ」の演技シーンに使用された音源の特集をお届けする予定だ。このシリーズは4作あるが、微妙に選曲を変えており、すべて把握している方はよほどのマニアだけのはずだ。 選曲はかなりベタなナンバーばかりにはなるものの、私の肩書である「レトロカルチャー」に相応しい内容を盛り込んだプログラムでお届けするのでこちらもご期待いただきたい。放送は第4土曜日15:30~、再放送は翌日曜8:00~。 

【FMおおつ公式アプリ】https://fmplapla.com/fmotsu/ 

(鈴木英之)

Minuano:『蝶になる夢を見た』(Botanical House / BHRD-012)☆尾方伯郎インタビュー

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パーカッショニスト尾方伯郎のソロ・ユニットMinuano(ミヌアノ)が、2010年のセカンド・アルバム『ある春の恋人』以来9年振りに、サード・アルバム『蝶になる夢を見た』を8月11日にリリースする。
ファーストの『Love logic』(09年)と『ある春の恋人』の2枚のアルバムでは、70~80年代のブラジリアン・ミュージックやジャズのエッセンスをちりばめつつポップスとして昇華していたが、本作では尾方のパーソナリティとイマジネーションをより活かした、一種コンセプチュアルなトータル感に耳を奪われた。
昨年8thアルバム『彼女の時計』をリリースしたLampのヴォーカリスト、榊原香保里をフューチャーしていることで彼等の熱心なファンも本作を待ちわびていたことだろう。
ブラジリアン・ミュージックをはじめジャンルレスなスタンスでポップ・ミュージックをクリエイトしていく姿勢は、 先月全国流通されたがレビューのタイミングを逃してしまったGUIROの 『A MEZZANINE』にも通じており、そのサウンドを構成する数々の音楽的エレメントに興味が尽きないのだ。
ここでは前作から実に9年振りにおこなった、尾方氏へのインタビューをお送りしよう。

●先ずはサード・アルバム『蝶になる夢を見た』のリリースおめでとうございます。 前作『ある春の恋人』から9年が経ちましたが、この期間はどのような活動をされていましたか?
また本作の曲作りやプリプロはいつ頃から始めましたか?

尾方伯郎(以下尾方):ありがとうございます。プリプロですが、セカンド発表後の2011年頃から始めています。ただ、思うように作れなかったり、作っても納得できなかったりで半分ほどボツにしたので、一部を除いたほとんどの収録曲は2015年以降に作ったものかと思います。
この間、Lampのライブやツアーがあったり、別の企画に没頭していたりした時期もありましたが、実感としては9年間、寝ても覚めても本作のことを考えていたという歪んだ記憶しかありません。とにかく時間の流れが早過ぎました。

●ご自分で納得がいかない曲をボツにされるのは理解出来ますが、それが半分ほどになるというとのころに尾方さんの強い拘りを感じました。
収録中11年のプリプロ時に作った曲はどの曲でしょうか?ソフトロック系の「流星綺譚」は前作までのテイストが残っていますよね。
またアルバムの軸となるリード・トラックの「終わりのない季節」はいつ頃作られた曲ですか?

尾方:2011年当時、曲として基本的な形ができていたのは「蜃気楼」、「真夜中のラウンジ」、「夏の幻影」の3曲。また、「機械仕掛けのハートのための不完全な戯曲」は、原型となる曲を2013年頃に作っているので、これら数曲が比較的早い時期の楽曲ということになります。
「終わりのない季節」が出来たのは確か2016〜17年頃、「流星綺譚」はその少し前くらいだったかと思います。

【アルバム・ダイジェスト】  

●音源を聴いたファースト・インプレッションは、前二作に比べて非常にコンセプチュアルで、複雑な展開とアレンジが施されているなと感じました。組曲のように構成されていて、アルバム全体で一つの作品になっていうような印象を受けました。
この様なアルバム・コンセプトは当初からプランしていて、曲作りをしていったのでしょうか?  

尾方:つまらない返しで申し訳ないのですが、一曲一曲を完成させるだけで精一杯でした。その繰り返しと積み重ねの結果としてこの形になったというのが実情で、何らかのコンセプトを狙うような余裕はなかったです。狙って作ってこれだったらもう少し格好もついたのですが、壁に向かって無作為にペンキをぶちまけたら偶然にも自画像になりましたと、それくらい強烈な意外性を私自身も感じています。

強いていえば、曲の並びには工夫を凝らしたと言っていいのかもしれませんが、この曲はこの配置しかありえないという場所に収まるべくして収まった感も強いので、あれこれ腐心した末の成果だと自分の口で言うのもちょっと違う気がします。この辺の感覚は言葉にするのが難しいです。

●成る程、アクション・ペインティング的な偶然性から生まれたトータル感なんでしょうね。でもそれは後で考えると必然だったのかも知れませんよ。曲順に関してはジグソーパズルのピースの当てはめていくような作業だったように感じますが、実はそれもアルバム作りでは非常で大事でもあり、悩みながら楽しめる作業ではないかと思うのですがいかがですか?  

尾方:悩みながら楽しんだという言い方も出来ますし、時間をかけて自然にそうなっていったという意味では、逆にほとんど悩んでいないとも言えます。ただ、普通に考えればこの曲がオープナーだろう、といったような定石からは外れたオーダーになったので、果たしてこれがベストか?という迷いは最後の最後までありました。それでも最終的には、常識的な判断より事の成り行きを優先して現状の配置に落ち着いた次第です。

●このユニットは尾方さんがサポート・メンバーとして参加されているLampの榊原香保里さんをヴォーカリストとしてフューチャーリングして、レコーディングにもサポート・ミュージシャンの方がこれまで同様に参加しています。
ソングライターとアレンジャーが異なるとはいえ、Lampサウンドと区別をつけるためのポイントはなんでしょうか?

尾方:違いを打ちだそう、区別をつけよう、そういった感覚はまったくなくて、彼らのスピリッツに少しでも肉薄したいという思いがむしろ強かったくらいです。録音物を聴くだけでは掴めなかったLampの真髄を、ライブやツアーで実際に演奏する度に体感しているわけですから。
しかし、そういった一種の精神論は脇に置いて純粋に技術的な部分で言えば、誰が何を作ったとしても、その人自身のフィルターを通した独自の作品にしかなり得ないので、そこは人為的にコントロールのできない部分ではないかと思います。

いずれにしても、Lampのサポートで演奏機会のある人間は現時点で世界に数人しかいないので、たまたまその一人として刺激を享受できる立場にいるのは、とても恵まれたことです。双方の共通点も相違点も呑み込んで今回やっと実った果実、それが甘いか渋いかは聴く人それぞれでしょうけれど、その実りの萌芽は、やはり自分の置かれている立場、つまりごく当たり前のようにインスピレーションを得られるこの稀有なポジションに、深く根差していると思っています。

『Love logic』     『ある春の恋人』

●『ある春の恋人』から本作『蝶になる夢を見た』までの間にLampは、『八月の詩情』(10年)、『東京ユウトピア通信』(11年)、『ゆめ』(14年)、『彼女の時計』(18年)と4作品をリリースしていますが、尾方さんが受けたインスピレーションのポイントを強いて挙げたらなんでしょうか?

尾方:挙げて頂いたアルバム個別の影響というよりも、あくまでも全体的な傾向の話になりますが、どの作品も当たり前に「ポップス」なわけです。
聴き手をときめかせるポップさを兼ね備えながら自由で複雑な表現を存分に盛り込んで、でも難解とは感じさせない。そういった印象は、時系列でみれば一定の変遷を辿りつつも、巨視的には初期から現在に至るまで一貫しています。表現の濃密さとポップさをいかに両立させるかというこのテーマは、この9年間に限らず終始、私の中で通奏低音のように鳴り続けていた。そういう言い方が一番しっくり来るように思います。

●尾方さんは90年初頭のクラブ・シーンでSpiritual Vibes(スピリチュアル・バイブス)のメンバーとして、近未来を見据えたかのようにラテン・ジャズやブラジリアン・ミュージックとポップスの融合をされていた訳ですが、昨今のネオ・シティポップ・ムーブメントからジャンルレスで多様な音楽性を持ったバンドが活動している昨今のミュージック・シーンをどう見られていますか?  

尾方:Spiritual Vibesは演奏面での参加のみで、制作プロセスの核心に直接タッチしたわけではないのですが、クラブ文脈で多少デフォルメされているとはいえ、ジャズやブラジル音楽がある種のポリュラリティを得た。そういう時代や現場に立ち会えたのは貴重な体験でしたし、この時に得られた感覚が今の自分の出発点にもなっています。ただ、その流れが後のシーンにどう繋がったかという大局的な視点は持ち合わせておらず、あくまでも私的な経験として非常に重要だったと、そういう話でしかありません。

それくらいの個人的なスタンスで音楽に接しているので、現在のシーンについても、自分が直に体験すること以外はまったく把握できていないのが実状です。勉強不足とは思いますが、世間の動きやシーンの動向よりも、置かれた環境で自分がいま何を感じているかという、そこにしか関心がないのかもしれません。
その対象は、昨日観た映画でも今日の車窓風景でも、あるいは過去への悔恨でも未来への不安でも何でもいいのであって、つまり必ずしも音楽でなくても構わないわけです。

そういう意味では、ミュージックシーンも含めた社会全般と一定の心理的距離があり、自分の中で勝手に作られた並行宇宙でただ一人暮らしているようなものです。一般的にはあまり好ましい状況として映らないかもしれませんが、そういうプライベートな架空世界から今回の作品が生まれてきているという側面は、少なからずあると思います。



●レコーディング中のエピソードをお聞かせ下さい。 

尾方:優等生っぽい答になりますが、参加ミュージシャンやエンジニアの方々との触れ合いは楽しかったです。とはいっても、レコーディング当日は時間の縛りもあって何かと慌ただしく、ゆっくり話をするような余裕はないのですが、そこは音楽関係者同士ですから、こちらの問いかけに音で答えてもらう非言語コミュニケーション中心で。

奏者さんの中にはちょくちょく顔をあわせる人もいれば、お久しぶりの人もいる。昔から知っているのにこれまでお願いする機会のなかった人もいれば、紹介を受けて初めてご一緒した方もいる。皆さん例外なく優秀なので、放っておいても勝手に良いパフォーマンスをして曲を膨らませてくれるし、こちらの至らないところはこっそり補ってくれたりもします。いやミュージシャンやエンジニアって本当にすごいなと、他人事のように実感しました。

特にクラシック系の楽器奏者さんは、いわゆるバンドマンとは異なる文脈で音を出す機会も多いはずで毎回軽く緊張するのですが、皆さん申し合わせたかのように親身で解釈も的確、もちろん演奏も全力投球です。こういった異ジャンル間の接近遭遇は、私の場合レコーディング以外では滅多に起こらないので、振り返ってみれば豊かな時間だったと、懐かしむというと大袈裟ですが、そんな気持ちが今も残っています。

●本作制作中に聴いていた楽曲を10曲挙げて下さい。

尾方:なにしろ長期に渡ったので、聴く音楽も次々に入れ替わりました。取りあえず、この9年間のある時期に繰り返し聴いていた曲、印象に残っている曲を挙げてみます。 ポップス以外のジャンルが多く、今回の新作に直接の影響は見出せないかもしれません。尚、制作期間以前から継続的に親しんでいる定番曲は外しました。

1. Fred Hersch 「At The Close Of The Day」
  『In Amsterdam: Live At The Bimhuis』 (2006) より
 (spotify試聴プレイリストでは別ver)

2. Dani Gurgel 「Depois」
  『Agora - Dani Gurgel E Novos Compositores』 (2009) より

3. Fabian Almazan & Rhizome 「Alcanza Suite: I. Vida Absurda y Bella」
 『Alcanza』 (2017) より

4. Jon Hopkins 「Candles」
 『Monsters (Original Motion Picture Soundtrack)』 (2010) より

5. Michael Franks 「When The Cookie Jar Is Empty」
 『Burchfield Nines』 (1978) より

6. Francis Hime 「Atrás Da Porta」
 『Francis Hime』 (1973) より
 (spotify試聴プレイリストでは別ver)

7. Kurt Rosenwinkel 「Gamma Band」
 『Star of Jupiter』 (2012) より

8. Brian Eno & Harold Budd 「First Light」
 『Ambient 2 The Plateaux Of Mirror』 (1980) より

9. Allan Holdsworth 「Tokyo Dream」 
 『Road Games』 (1983) より 

10. Jóhann Jóhannsson 「Heptapod B」
 『Arrival (Original Motion Picture Soundtrack)』(2016) より





●最後に本作『蝶になる夢を見た』の魅力を挙げてアピールして下さい。  

尾方:アルバム全体にコンセプチュアルな印象があるというお話を頂きました。それは偶然の産物という話もしましたが、成り行きはどうあれ、アルバムトータルで聴いた時にこそ何かが伝わる作品になったという思いは確かにあります。

アルバム単位で聴く習慣が薄れている昨今の時代性とは相反しますが、今回のアルバムをまるまる通して聴いて頂ければ、一周回って逆に新しい体験になるのではないか。
そういうところに、この音楽の持ち味があるのではないか。そんな気がします。本作は化学反応の主体ではなくあくまでも触媒であり、聴いてくださる方それぞれが主人公になって、無自覚に胸に秘めた何かを感じ取る。そんな風景や物語を、私は漠然と思い描いています。 

(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)


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