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☆The Beach Boys:『The Beach Boys’ Christmas Album(Mono & Stereo)』(Download Only)

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ふと気づいたら、一度もCD化されていない『The Beach Boys’ Christmas Album』のモノラル盤がダウンロード販売していたので、退院までの間に購入し、帰宅後チェックをしたところ。確かにこれは「真正モノ」であり、後のCD化で編集され長くなった「偽モノ」は混じっていない。音像の好みなどは除外する。もともと私はモノ派ではなくステレオ派、モノの方がいいかなと思う曲があるのは一般的には1963年と1964年くらいまでの音源だ。購入はiTunesMono&Stereo1900円版。現在では疑似ステレオしかない『Surfin’ Safari』『Wild Honey』のステレオ、まったく違いが無い『Beach Boys Concert』のモノラル(予想通りこれだけモノラルリリースなし)を除くとモノラルが無くなった『Friends』までは、全てステレオ、モノラルの両仕様が出て、以降のアルバムは『The Beach Boys(1985)』までステレオの「ハイレゾ版」が出ているのだ!さらにAnalogue Productionsからのステレオ、モノラル別々にハイブリッドSACD200gアナログLPの発売、ここも前述したように『Holland』を皮切りにブラザー時代以降も網羅するだろうから、いったい全部揃えたら幾らかかるのか!私のように3年半に渡る病人、もう定年まで2年なのにこれからゼロからリハビリして1年後に奇跡が起きて再復職という非現実的は諦め、もう勧奨退職して社会保険は妻の扶養に入り、退職金で住宅ローンを完済して残りの治療費に…という人間に、そんな高額商品を揃える余裕はなくなった。一騎当千のビーチ・ボーイズ・ファンの方、これらの全音源の違いがあれば是非教えて欲しい。楽しみにお待ちしています。

それではようやく、『The Beach Boys’ Christmas Album(Mono & Stereo)』の違いについて紹介しよう。

  1. Little Saint Nick(Album Version)」…鈴と鉄琴が入っていないステレオのアルバム・ヴァージョンは『Ultimate Christmas』や、90年代にリリースされたボーナス・トラック付『The Beach Boys’ Christmas Album』で聴けたが 初CD化のモノ・ヴァージョンは最後のリフレインがステレオの3(159)に比べて2(152)でフェイドアウトしてしまう。
  2. The Man With All The Toys」…ステレオのエンディングは2回目のリフレインの最後の高い「オ!」のあとのギターで終わってしまうが、初CD化のモノラルはさらに2秒長く、3回目のリフレインの「オ!」を2回聴くことができる。90年代の『The Beach Boys’ Christmas Album』や、『U.S. Singles Collection Capitol Years 1962-1965』はモノで入っているが、ステレオと同じく短く「悪い偽モノ」編集されていた。
  3. Santa’s Beard」…ステレオはモノラルより3秒長く、最後のア・カペラ風のHe’s Just Helpin’ Santa Clausの歌の部分を聴くことができる。この点はLPCDと扱いは変わらず、以前より変わらない。
  4. Merry Christmas Baby」…モノ・アルバムのヴァージョンは初CD化だが、これは悲しいシロモノ。というのは間奏のハミングの後の歌が始まってすぐにフェイドアウトしてしまって、続きの歌とリフレインがまったくカットされてしまっているからだ。だからステレオに比べ18秒も短い。なお、この音源には注意点があり、90年代にリリースされたボーナス・トラック付『The Beach Boys’ Christmas Album』では、そのボーナス・トラックを除くと、「Little Saint Nick(Album Version)」のみステレオで、他のオリジナル曲はモノラルで作られていた。しかしここでの「Merry Christmas BabyCD化の際に、最後のリフレインがステレオは4回で終わっていたが、このCDのモノラルは6回目の頭で終わり、ステレオよりさらに5秒長くした。よってLPのモノラルよりも23秒も長いという新編集のCD用のモノラル(冒頭で「偽モノ」と書いたがいい偽モノだ)なので持っていない人は入手しておこう。
  5. Christmas Day」…初CD化の「真正モノラル」は、ステレオ(CDLP)に比べ6秒長く、最後のAnd I'll Never Outgrow The Thrill Of Christmas Dayまで聴くことができる。それまでのCDのモノラル(前述のCD)はステレオよりは長いがAnd I'll Never Outgrow Thrill…で終わる「偽モノ」だった
  6. We Three Kings Of Orient Are」…ステレオ、モノ共、LPCDもエンディングをフェイドアウト気味に絞っていくので最後のコーラス非常に小さい。なお、この音源にも注意事項があり、90年代にリリースされた『The Beach Boys’ Christmas Album』のCDのモノはフェイドアウトしない編集に変えた「いい偽モノ」なので最後のハーモニーまでしっかり聴くことができる。

※その他のアルバム曲は、完奏するので、CDLPも含め、ステレオとモノラルとで差はない。最後に同時期のシングルオンリー&別テイクのステレオとモノを紹介しておこう。

Little Saint NickSingle Version)」…ステレオは3ヴァージョンあり、まず『Ultimate Christmas』のヴァージョンは26秒と最長で、他では聴けない4回目のリフレインでブライアンの上昇するアドリブヴォーカルを楽しめる。鈴と鉄琴の音は分離よく聴こえ適度の大きさ。日本独自編集で現在リイシュー中の『ビーチ・ボーイズUSシングル・コレクション』のヴァージョンは鈴と鉄琴の音がかなり大きくミックスされ長さは22秒。『U.S. Singles Collection Capitol Years 1962-1965』収録の2008 Stereo Mixは、モノラルのシングル・ヴァージョンに似せていて、ヴォーカルが大きく、鈴と鉄琴の音は小さくミックスされ長さもモノラルと同じ157秒である。多くの『The Beach Boys’ Christmas Album』や『Christmas Harmony』など「Little Saint Nick」が1テイクしか入っていないCDはアルバム・ヴァージョンではなく、モノ・シングル・ヴァージョンが収録されている。

The Lord’s Prayer」…1963年の「Little Saint Nick」のシングルB面曲で、アルバム未収録。元はモノラルで『U.S. Singles Collection Capitol Years 1962-1965』や前述の日本終版『ビーチ・ボーイズUSシングル・コレクション』、『The Capitol Years』、『Rarities』等に入っているがなぜか『Ultimate Christmas』には収録されなかった。ステレオは90年代の『The Beach Boys’ Christmas Album』のボーナス・トラックに、ステレオ・リミックスは『U.S. Singles Collection Capitol Years 1962-1965』『Hawthorne CA』で登場したが、特に違いは無い。ステレオとステレオ・リミックスの違いもほとんどない。

Auld Lang SyneA Cappella)」…デニスのナレーション抜きのこの素晴らしいア・カペラはモノラルで90年代の『The Beach Boys' Christmas Album』のボーナス・トラック、『The Capitol Years』、『Rarities』で聴くことができる。後に冒頭にカウントが入ったステレオ・ヴァージョンが『Ultimate Christmas』で登場した。

Little Saint Nick(Alternate Version)」…「Little Saint Nick」というより「Drive-In」の歌詞を変えただけといっていいボツヴァージョン。モノラルは90年代の『The Beach Boys’ Christmas Album』、ステレオは『Ultimate Christmas』で登場。ダウンロード販売のみの『Keep An Eye On Summer』では歌の途中までの練習後に本番テイクが入っている「Little Saint NickDrive-In(Vocal Session Highlights And New Stereo Mix)」が収録された。

その他ではその『Keep An Eye On Summer』に、ビーチ・ボーイズの演奏ではないがクリスマス・アルバムのためにディック・レイノルズが録音していた「Christmas Eve」と「Jingle Bells」のオケがあって驚かされた。アルバム用にまだ用意されていたのか。(佐野邦彦)

 


☆Crosby Stills Nash & Young:『Roosevelt Raceway-Live 1974』(Air Cuts/ACCD8027)

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2014年に、ライブツアーだけでスタジオ・レコーディングは行われなかった1974年のCSN&Y再結成のライブ音源集『CSNY 1974』がリリースされ、多くのファンを狂喜させてくれたのは記憶に新しい。そのライブはCD3枚組40曲というボリュームだったが、本盤は16曲というコンパクトなもの。それは197498日のニューヨークのロング・アイランドでのライブで、FMで高品質なライブを流すことで有名なKing Biscuit Flower Hourの音源をそのままCDにしたものだ。曲は16曲中、グラハム・ナッシュ6曲、ニール・ヤング4曲、デビッド・クロスビー3曲、ステファン・スティルス2曲、スティルス&クロスビーの1曲だ。例によってサウンドがヘヴィなスティルス&クロスビーは、例えば『Love The One You’re With』などパーカッションがさらに強化され、もう原曲のイメージは無い。その点、私はアコースティック・セットでハーモニーを重視するCSN&Yが好みなので、ニール・ヤングとグラハム・ナッシュの曲が多いのは嬉しい。『CSNY 1974』では収録されていない初登場曲はニール・ヤングの「Walk On」とグラハム・ナッシュの「Southbound Train」「Another Sleep Song」だ。この中でもNash &Crosbyのアルバムを買って、最も好きだった「Southbound Train」が最高の贈り物だ。後半のコーラス・ワークがいい。ただこのCD、作曲のクレジットを入れないのはどうなのか?ハーフ・オフィシャルなのかな。(佐野邦彦)









The Pen Friend Club:『Season Of The Pen Friend Club』(Penpal/PPRD-0001) 平川雄一インタビュー

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The Pen Friend Clubがサード・アルバム『Season Of The Pen Friend Club』を今月20日にリリースする。
The Pen Friend Clubは漫画家の平川雄一により2012年に結成され、これまでにリリースした2枚のアルバムと2枚の7インチ・アナログシングルが、60sポップス・ファンや音楽マニアの間で常に話題となっていた。平川自身も2014年末に紙ジャケCDリイシューされた、ビーチ・ボーイズの『Today!』と『Summer Days(And Summer Nights!!)』のライナーノーツを担当するなど、一級のBB5マニアとして知られている。
また昨年来日したゾンビーズ(コリン・ブランストーンとロッド・アージェントを中心とした現メンバーによる)や現ブライアン・ウイルソン・バンドのバンマスでビーチ・ボーイズのメンバーでもあるジェフリー・フォスケットとライヴ共演したりと、音楽マニアを地で行くバンドとしては黄金の歩みを見せており、今後の活動からも目が離せないのだ。
アルバムの詳しい解説については弊誌佐野編集長のレビューを読んで頂くとして、ここでは筆者と交流のある平川氏にインタビューをおこなったので掲載したい。

ウチ(以下U):まずはサード・アルバムのリリース、おめでとうございます。
セカンドから約1年と、コンスタントにアルバムを発表できる現状をどう思いますか?

平川(以下H):ありがとうございます。
まずメンバーに感謝です。ヴォーカルが変わってライヴのレパートリーのキーが変わったり、いろいろライヴも忙しく大変な状況の中でのレコーディングでした。でもみんなそれぞれの役割を完璧にこなしてくれました。彼らの存在抜きには考えられません。
それと応援してくれるファンの皆さんにも本当に感謝です。前作、前々作が好評だったので今回からは自分のレーベル(ペンパル・レコード)から発表することにしました。
買ってくれた皆さんのおかげです。

U:自分達のレーベルを設立したことで、今後活動の幅も広がるんじゃないですか?

H:まだ始めたばかりなので今後どうなるかはわからないんですが、他のバンドやミュージシャンの作品をリリースする予定は今のところないです。やっぱり「売る」って大変な作業ですからね。
売る側(自分)が本気を出せるようなバンドやブツじゃないと難しいと思います。
今、僕が本気で取り組めるのはペンフレンドクラブ以外ないので。 ...まあ、しがない個人事業主ですしね(笑)。

U:メンバー的にはヴォーカリストが向井はるかさんから高野ジュンさんへと 変わったことでバンド・サウンドに何か新しい変化はありましたか?

H:高野ジュンは日本語詞の歌を歌った時の情感がいい感じなので、そこは今回のサードで活かされたなあと思います。「土曜日の恋人」でのキュートな歌いっぷりや「Poor Boy」のエレガントな感じとか、高野にハマったかなと。
全体的なコンセプト、趣向は以前から変わらないんですが、僕のミックスの腕がちょっとづつ向上してきているので、サウンドの変化があるとしたら原因の多くはそこだと思います。
ライヴではヴォーカル変更の影響がかなりあります。キーも変わりますしね。

U:なるほどミックスの向上ですね。平川さんはソングライティングとアレンジからミックスやマスタリング、はたまたジャケット・デザインまでお一人でやっている訳ですが、プロデューサーとしての立場からそれらを外部に任せようと考えたことはないですか?
特にミックスやマスタリングはインディーズでも専門家にオファーする場合が多々あるんですが。

H:編集作業を外部に任せたいと思ったことは一度もありません。
だって一番楽しい作業じゃないですか。何が何でも自分がやりたいです。絶対に誰にも渡しません(笑)。
毎回、必ずミックス中に身も心もボロボロになるんですけど...それだから楽しいんです。
演奏や歌は僕以外でもいいと思います。
ジャケのデザインも自分でやりたいですね。やっぱり好きなんで。

U:それは究極の音楽オタクだよ(笑)、テクノ・ユニットのメンバーみたいな。
でも分かる気はします。盆栽というか箱庭作りにも似た密室作業ってハマりますからね。
ところで話は新しいヴォーカルの高野ジュンさんに戻りますが、誤解を恐れずに言うと、声質がバンドのシンガーってより70年代MOR系のソロ・シンガーっぽいナチュナルな感触で凄く面白いことが出来るじゃないかと思いますね。
例えば「みんなのうた」やアニメソングとか、子供にも好かれる声質というのかな。

H:まさにおっしゃるとおりで、高野ジュンは元々シンガー志望で、これまでピアノやギター1本をバックに活動していまして、バンドでのリードボーカルはほぼ初めての経験なんです。
加入してまだ半年なのでこれからもっとバンドに馴染んでいくでしょうね。
今後オリジナルに関しては僕が作詞する曲が多くなりそうなので日本語詞の曲が増えていくと思います。
高野の良さが映えればいいなと思っています。





U:ではアルバムの収録曲についてなんですがオリジナル曲の比率が増えましたよね。バンドの活動方針とか平川さんの中で心境の変化がありましたか?

H:オリジナルとカバーの比率が5:5くらいがちょうど良いかなと。
これまでが少なすぎましたし、オリジナルがもっと聞きたいという声もありましたので。
いずれは全部オリジナルとかもあるかもしれませんね。
そのときはカバーのネタが尽きた時かなあ(笑)。

U:カバーネタが尽きた時って(笑)。確かにいずれは収録曲全てをオリジナルでまかなうのが理想かも知れませんが、カバーの選曲における審美眼って大事だと思うんです。
私なんかはそれが評価する目安になっております。

H:カバーは次回作を作りたくなる原動力なので、そう言っていただけると凄く嬉しいです。
次のカバー曲、なにやろうかと妄想するのが好きです(笑)。

U:VANDA的にも今回もそのカバー曲の選曲が非常に気になります。
ファーストやセカンドに比べても、バンドの顔だったビーチ・ボーイズ関連の曲が無くなりましたが、意図的にそうしたのかな?
前回からのジミー・ウェッブやフィレス関連の他にスペクターの弟子筋であるアンダース&ポンシア、またテディ・ランダッツォ&ボビィ・ワインスタインなんてマニア心をくすぐる選曲は平川さんの趣味ですか?

H:そうそう今回ビーチ・ボーイズ、というかブライアン・ウィルソン作品をやってないんですよね。ホントたまたまなんです。カバー曲を選んでいくうちに入れるスペースが無くなった感じです。
なので今ブライアン作品をやりたい欲がかなり沸いてきているので次回作は何かやると思います。
アンダース&ポンシア作は3作連続で取り上げていますね。ちなみに次回作の4thアルバムにも入れるつもりです。もうアンダース&ポンシアバンドと呼ばれても構いません(笑)。
ジミー・ウェッブにランダッツォ、山下達郎さんの「土曜日の恋日」なら先日亡くなったスナッフ・ギャレットですかね。
やっぱり作家やプロデューサーで聴いていく傾向は強いですね。

U:次回作ではブライアン作品のカバーを収録予定とのことですが、本作でその不在を感じさせないところは、平川さんのオリジナル曲にそのエレメントが息づいているからだと思うのね。それって恩返しみたいなものですよ。
それとアンダース&ポンシア作に至っては、これまでのアルバムで取り上げていて、解説で竹内修さんも書かれていますが、そんなバンドは他にいないですよ(笑)。
作家性とか作品主義ってやはり音楽の本質だと思うんですけど、先人の大瀧詠一氏や山下達郎氏の志を受け継いでいるという点で、平川さんやウワノソラ'67の角谷君にはかなり期待しております。

H:ありがとうございます。僕はただ自分の好きなことだけを、自分の実現可能な範囲内で、自己満足のためにやっている一介のケチなアマチュア・ミュージシャンに過ぎないので...
期待は失望のなんとやらと言いますしね。
というわけで、これからもアンダース&ポンシアバンドとして邁進してゆく所存です(笑)。

U:そんなバンドはこの平成の世に凄いよ(笑)。
でもアンダース&ポンシアやスナッフ・ギャレットが手掛けたゲイリー・ルイスのサウンドへのオマージュ(「土曜日の恋日」)は予想出来ましたが、テディ・ランダッツォの曲までとは想像がつきませんでしたよ。ロイヤレッツの後にローラ・ニーロもカバーしてよく知られる「It's Gonna Take A Miracle」じゃなくて、「Poor Boy」っていうのが渋いよね。
他のランダッツォ作品では「Going Out Of My Head」(リトル・アンソニー&インペリアルズ)なんか高野さんの声質にハマると思います。僕の個人的希望としては「Hurt So Bad」をBPM上げたガレージバンド・アレンジでカバーして欲しいけどね(笑)。

H:「Going Out Of My Head」いいですね〜。そういえばゾンビーズもやっていましたしね。
いずれにせよランダッツォ作品はこれからも取り上げたいと思っています。

U:昨年はそのゾンビーズや現ブライアン・ウイルソン・バンドのバンマスであるジェフリー・フォスケットとライヴ共演してかなり充実したバンド活動を送りましたね。
そんな自分達が敬愛するミュージシャン達と共演した率直な感想をお聞かせ下さい。
また今年2016年の抱負も聞かせて下さい。

H:ゾンビーズとの共演は貴重でしたし、グッとくるものがありましたね。舞台袖から見る彼らのステージも格別でした。
やっぱり曲がよくて演奏がうまかったら、もうそれ以外何もいらないなと改めて思いましたね。
楽屋でも本当にいい人たちで優しく接してもらいました。

昨年末のジェフリーとの共演も素晴らしかったです。
ジェフリーは1980初頭以降のビーチ・ボーイズ達を支えてきた僕の憧れの人です。
僕の20代は2000年代なんですが、ブライアン・ウイルソン・バンドがとても精力的に活動していた頃です。その頃ずっとブライアンの傍らにいた人と一緒にやれるなんて夢のようでした。
共演の当日、ペンフレンドクラブのサウンドチェックも見てくれて、「How Does It Feel」、「Don't Run Away」、「Newyork's A Lonely Town」とかやったんですが、拍手して褒めてくれるのが嬉しくて。
ジェフリーボーカルでのステージでは「Darlin'」、「Don't Worry Baby」、「Little Saint Nick」、「Guess I'm Dumb」、「Fun, Fun, Fun」を僕たちがバックでやりました。この選曲だけで感無量です。
楽屋ではジェフリーからいっぱいピックを貰ったり、お返しにVOXのカールコードをプレゼントしたり、スマホの中のお互いのギターコレクションの写真を見せ合って驚いたり(笑)、趣味のすごく合う友達ができてよかったです(笑)。

U:もうジェフリーとダチじゃないですか(笑)。音楽によって世代や立場を超えて繋がるって美しいことだと思いますよ。今後共演したい国内外のバンドやミュージシャンはいますか?また今年初頭の決定しているライヴ情報を教えてください。

H:もちろんジェフリーのことは尊敬しておりますよ。共演した後に僕がジェフリーにインタビューしたんです。その模様が2016年2月発売のレコードコレクターズ誌に掲載されます。
あんまり大したことは聞けなかったんですけどね(笑)。是非ご覧くださいませ。
1/24(日)高円寺HIGHでジューシィフルーツさんと対バンします。
2/7(日)タワレコ新宿店、2/28(日)HMV record shop 渋谷でインストアLIVEをやります。
3/20(日)東京倶楽部 目黒店でサード・アルバムのレコ発ワンマンLIVEをやります。
こんな感じですかね。どなた様も是非是非。
...今後共演したいミュージシャンですか?うーん...あんまり高望みはしないようにしておきます(笑)。 とりあえず日常会話くらいの英語を喋れるようにしたいですね。
(インタビュー設問作成:ウチタカヒデ)



☆Who:『The Who Sell Out(Stereo)(ハイレゾ版)』(Universal)※Download Only

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遅い紹介でちょうど一年前にハイレゾ版がリリースされたフーの名盤『The Who Sell Out(Stereo)』には2曲の違いがあった。この情報は、ブリティッシュ・ロックの伝道師として右に出るものなどいない犬伏巧さんに教えていただいたものだ。いつも貴重な情報、ありがとうございます!まずボーナストラックの「Odorono(Stereo Version)」、従来216秒で曲が終わりストリングスへ移行するが、このヴァージョンはOdoronoのコーラスが入って歌のサビを239秒まで新たに聴くことができる。あと「Rael - Naive (Stereo Version)」だがDeluxe Editionでは51秒で曲が終わり、その後数秒のセリフで59秒だったが、こちらでは52秒から133秒まで、クラシカルなオルガンの演奏が入っていた。(セリフは無くなったがどうでもよい)その他の細かな違いは「JaguarStereo Version)」はDeluxe Editionに入っていた曲の終了後の短いWonderful Radio Londonのジングルは切られていた。そしてラストの「RealPt. 1 & 2/ Remake Stereo Version)」もDeluxe Editionに入っていた曲の終了後の口だけのジングルはカット。ただしどちらもどうでもいい、気にする必要のない代物である。ボーナスも含め全30曲だ。同じくMonoもハイレゾでリリースされたが、こちらに新登場はない。(佐野邦彦)
The Who Sell Out(Stereo Version)/The Who

小林しの:『Looking for a key』(philia records/PHA-13)

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ギターポップ系バンドharmony hatchの元メンバーで、女性シンガー・ソングライターの小林しのが、初のソロアルバム『Looking for a key』を2月24日にリリースする。 筆者が06年に共同プロデュースしたコンピレーション・アルバム『Easy living Vol.1』にも楽曲を提供していたが、10年に活動を休止しておりその動向が注目されていた。 今回のリリースを機に音楽活動を再開することは非常に喜ばしい。 アルバムにはWebVANDA読者にもアプローチする、ソフトロック系の曲も収録されているのでここで紹介したい。

 小林しのは99年にharmony hatchのヴォーカリストとしてデビューし、ソングライティングも手掛けるなど中心メンバーであった。空気公団が所属したことで知られるcoa recordsより『ケーキケーキケーキ』と『苺苺苺苺』の2枚のアルバムをリリースし、02年にバンドは解散する。 その後ソロへと転身し、多くのコンピレーション・アルバムに楽曲提供するなどそのキャリアは順調であったが10年に活動を休止していた。
それから約6年を経て、初のソロアルバムとしてリリースされたのが本作『Looking for a key』である。『~心の鍵を探して~ すべてのファンタジーポップファンに贈る14枚の地図』という副題を持つこのアルバム、思春期の少女が抱く夢想性をバックグランドにした世界観が遺憾なく発揮されている。

トータルサウンドプロデューサー(アレンジや主な演奏含む)にthe Sweet Onionsの高口大輔を迎え、共同ソングライターには同じくthe Sweet OnionsやThe Bookmarcsで活動する近藤健太郎(アレンジ含む)をはじめ、元harmony hatchの宮腰智子、職業作詞家として多くの楽曲を手掛けている磯谷佳江などが参加している。またmelting holidaysのササキアツシがアレンジャーとして2曲に参加しているのにも注目したい。

   

アルバムはアコーディオンをフューチャーしたシャッフルの「雨をひとさじ」からはじまる。リズム・セクションの全てを高口が演奏しており、先月リリースされたThe Pen Friend Clubのサード・アルバム収録の「街のアンサンブル」にも似たサンシャインポップが心地よく冒頭のナンバーとして相応しい仕上がりである。 続く「解放区」はVOXコンチネンタル・オルガン風の音色が象徴するブリティッシュ・ビート系のポップスだ。初期のエルビス・コステロにも通じる親しみのある曲調も好感が持てる。
そして筆者がアルバム中ベスト・トラックと挙げたいのが4曲目の「Yes, my lord」だ。イノセントな歌詞に呼応するエヴァーグリーンなサウンド、打ち込みで構築させたソフトロックの理想的な姿がここにある。アレンジと全インストルメンツはササキアツシということで納得のクオリティーだ。08年にWebVANDAで絶賛したmicrostar(マイクロスター)の「東京の空から」の世界観にも近い、一聴して心を鷲掴みにされる名曲であり、ソングライターとしての小林の高い才能を感じさせる。
共作では宮腰が曲を提供したサイケデリックなムード「幻の森」、近藤が提供したラストの「記憶のプリズム」が出色だ。前者は中期ビートルズ、後者には大滝詠一のエッセンス(「幸せな結末」etc)が見え隠れして面白い。両曲ともサウンドプロデューサーである高口のアレンジ・センスが光っている。
小林の声質は飯島真理(このアルバムで「夢色のスプーン」をカバーしている)にも通じる、幼さの中に艶を持ったスウィートなものでアルバムを通して幸福感に満ち溢れている。
(ウチタカヒデ)


amazonのみ発売のBeach Boys: 『Live At The Fillmore East 1971』(Iconography/ICONO54)はブートなので注意

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昨年末、amazonのみのダウンロード販売商品としてビーチ・ボーイズのライブ4種を紹介したが、どれも音質がブートレグと書いたばかり。グループの許諾など得ていないのは明白だが、あろうものかダウンロード販売の時『Fillmore East, New York, June 27th, 1971』(Doxy)のタイトルで出していたもとと同一の思われるこのCDを購入してみた。ダウンロード版では特に最後の「It’s About Time」が、ほぼリード・ヴォーカルが聴こえないという致命的なミキシング状況だったので、CD版では少しは改善したかと淡い期待をかけたが、まったく同じ音質だった。来月には1985年のライブを『Ringing The Liberty Bell』のタイトルで出すようで、これもまったくダウンロード版をただCDにしただけのブート、注意しよう。(佐野邦彦)
Live At The Fillmore East 1971

☆Brian Wilson etc:『George Fest』(Sony/30028-30)CD+Blu-ray

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2001年にジョージ・ハリスンが亡くなり、翌年にはエリック・クラプトンが中心に、ポール、リンゴなどの超豪華メンバーによって追悼コンサート『Concert For George』が行われ、ソフト化された。そしてそれから12年。今度はジョージの息子のダニーが中心となり、2014928日にロサンゼルスのフォンダ―・シアターで追悼ライブ『George Fest』が行われた。この日はジョージのワークスの残る総決算ともいうべき『The Apple Years 1968-1975』のボックスのリリース日であり、前回ほどの派手さがない中、ダニーが一生懸命、タイアップを行った。そうしてコンサートから15か月後に、ようやくCD+Blu-ray(DVD)に仕様でリリースにこぎつけた。選曲はダニーが担当、『Concert For George』では半数がビートルズ・ナンバーで、ポール、リンゴ、クラプトンによる「While My Guitar Gently Weeps」が目玉だったが、ダニーはあえてこの名曲を外し、ビートルズ・ナンバーは9曲、ソロ・ナンバーを17曲に配分を変えた。ただし超名盤『All Things Must Pass』から12曲セレクトしたので、多くのジョージ・ファンに馴染み深いコンサートになっている。まずはブライアン・ウィルソンが歌う「My Sweet Lord」で、アル・ジャーディンやダリアン、スコット・ベネットを始め多くのメンバーに囲まれ、ほぼ忠実なカバーだった。スピリチュアルなものへ傾注するブライアンにとって、ジョージのこの曲は衝撃だったようで、心底好きなようだ。最後はア・カペラになってエンディング。歓声の中、すぐに退出していくのはいかにもブライアン…。歌はノラ・ジョーンズの「Something」「Behind The Locked Door」がさすがに素晴らしい。そしてアン・ウィルソンの「Beware Of Darkness」に心を捕らわれた。ジョージのソロ曲でもコード進行の見事さはこの名曲で止めを刺すだろう。この繊細な曲をパワフルなヴォーカルで彩った。その他「Ballad Of Sir Frankie Crisp」「Wah-Wah」「Let It Down」「What Is Life」「Isn’t It A Pity」「I’d Have You Anytime」がいい出来で、ほぼ『All Things Must Pass』の曲ばかりだ。1970年にこのアルバムがリリースされた時にあまりに素晴らしい曲で埋め尽くされていたので、みなビートルズ解散後はジョージが最高なんじゃないかと大きな話題になったものだ。1970年当時はジョンとポールは期待値が高すぎたので、『ジョンの魂』に今ほどの高い評価はなく、ポールに至っては「Another Day」から『McCartney』『Ram』とまあ酷評の嵐だった。どうして「Every Night」や「The Back Seat Of My Car」に気付かないんだろうと当時から思っていたが、ジョンでも「Love」くらいしか評価されていない時代が、今では考えられないだろうが確かにあったのだ。そしてジョージの次作の『Living In The Material World』は「Don’t Let Me Wait Too Long」という個人的な超名曲を始め、美しい曲が多く好きなアルバムだが評価は一気に下がり、ジョンは『Imagine』で一気に回復、ポールも少し遅れて『Band On The Run』で天才の評価が戻って、ジョージはやはり3番手のいう位置に戻っていくのだが、アルバムには必ず光る曲があったので、それを聴くのが楽しみだった。そんなジョージだが、ガンには勝てず、私の今の歳と同じ58歳にこの世を去っている。自分も部位は違っても同じ病気で同じ歳。このアルバムを聴きながら、自分にはズシンと応えた。来週はまた抗がん剤で34日入院。ベッド上だけの毎日であまりに時間があるので、個人番号カードを作ろうと妻に介護用ベッドに寄りかかった状態で写真を撮ってもらって申請した。しかし写真をみて衝撃。なんとも精気に乏しく老けた感じなのだ。そうだよなあ。髪の毛も細くなって毛量がない。でも逆転の発想で35回も抗がん剤やってまだちゃんと髪の毛があるんだから感謝くらいしておくか。食欲はあるので、体重が増えていて、訪問医の先生には「体重を増やさないように管理してという患者は佐野さんだけ」と言われる始末(笑)「先のことを考えない」ことが私の生きる極意なので、好きなものを食べて、好きな事をして、ストレスを出来るだけ減少して過ごそうっと。1日中ベッドの上なんだからそれしかないよね。(佐野邦彦)
GEORGE FEST:ジョージ・ハリスン・トリビュート・コンサート(完全生産限定盤)(Blu-ray Disc付)

『Chocolat & Akito meets The Mattson 2』(Rallye Label / RYECD237)

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12年の『GREAT3』から活動を再開し14年の『愛の関係』も好評であるGREAT3の片寄明人と、女性シンガーソングライターのショコラによる夫婦デュオ Chocolat & Akitoが、12年の『Duet』に続く4枚目になるアルバムを3月2日にリリースする。
本作はそんな彼らと8年の交流を持つ、カルフォルニア在住の若き双子デュオ The Mattson 2(ザ・マットソン2)とのコラボレーションという形態を全面に出しており、双方が持つ音楽センスの化学反応も楽しめる好盤となったのだ。

前作までのChocolat & Akitoのサウンドは、大人のためのMOR&ソフトロックと二人のヴォーカルが醸し出す美しいハーモニーが最大の魅力であったが、本作ではThe Mattson 2が持つ60's西海岸ポップやジャズや後のNew Waveからの要素をうまく内包した新たなサウンドをクリエイトしている。
The Mattson 2について紹介しておこう、カリフォルニア州サンディエゴ出身の20代の双子デュオで、ギター担当のジャレットとドラムスのジョナサンからなる。ローティーンの頃にパンク・バンドを手始めに音楽活動を始めるが、父親の影響もありジャズ・プレイヤーとして目覚める。
その後00年代の西海岸カルチャーの重要人物とされた映像作家でレコード・レーベル、"Galaxia"のオーナーでもあるトーマス・キャンベルに認められ、同レーベルで既に活動していたSSWのレイ・バービーとのコラボで07年に『Ray Barbee Meets The Mattson 2』、09年には1stアルバム『Introducing』をそれぞれリリースしている。
ジャズ・ピープル・マナーと西海岸のストリート・カルチャーをうまく融合させたサウンドは本国の他日本でも注目され、精力的に来日公演もおこなって耳の早い音楽通にも知られた存在なのだ。
因みに本作の主なバックトラックのプレイはThe Mattson 2の2人によるもので、一部の曲でショコラがキーボードとパーカッションを担当しているが、Chocolat & Akitoとしてはヴォーカル&コーラスに徹しており、合理的に分担しているのが海外レコーディングらしい。
エンジニアリングとミキシングには片寄と『HEY MISTER GIRL!』(00年)からの付き合いになる、トータス及びザ・シー&ケイクのジョン・マッケンタイアが参加し、ジャケット・アートは同じくトータスのメンバーであるジョン・ハーンドンによるものだ。
では主な収録曲を解説していこう。
冒頭から4ADサウンド(コクトー・ツインズ等)をジョン・マッケンタイアが音響処理し結晶させたような「Graveyard Has No Color」から始まる。続く「Nothing to Fear」は80年代英国ネオ・アコースティック・シーンにも通じる、ギターのマルチ・トラックで構築されたサウンドが懐かしくも新しい。
「Sakura」もサウンドの中心はジャレットのスリリンングなギターのであるが、この曲では一級のジャズ・ピープルがバックを務めていた頃のジョニ・ミッチェルの匂いもして興味深い。
従来のChocolat & Akitoサウンドに最も近いのが「Everlasting Mind」かも知れない。とにかく曲の完成度が高く、ジャレットのギターは元スミスのジョニー・マーを彷彿とさせる。筆者的には以上の2曲をベスト・トラック候補として挙げたい。



インスト・ナンバーの「Earland」は、The Mattson 2の演奏にショコラがキーボードで加わっている。リードメロを取るシンセサイザーが彼女のプレイなのかも知れないが、ジャズ・ロック風という意外性があって面白い。
「Velvet in Room」はGREAT3における片寄のカラーが色濃く出ている曲で、『愛の関係』に収録されても違和感がない独特な世界観が美しい。二人のコーラスと音響の処理も非常に効果的で、欲を言えば尺がもう少し長ければと思うばかり。



文化の異なる若いアメリカンとのコラボレーションながら、アルバム全体的にセンシティブ且つプログレッシヴなサウンドを構築しているのは、世代を超えた2組が持つ美意識へのシンパシーの賜物だろう。
(ウチタカヒデ)





新Web VANDAのホームページを公開しました。1996年からの20年分が一気に見られます。

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Web VANDA1996年にテストサイトをスタート、1998年より本格公開しましたが、2008年にサーバの大クラッシュで一時期全データが消えてしまいました。後で2005年以前のバックアップを見つけたのでその分は「旧サイト」としてHPのコーナーの隅に置き、クラッシュの2008年以降のものが、今まで公開していたWeb VANDAでした。そこで今回のリニューアルに合わせて、バックアップもない消えた20052008年のデータは、私のパソコンの送信履歴から復元し、初めて1996年のスタートから20年分の更新データが一気に見られるようになりました。

ジャンル別の「ラベル」を作りましたので、音楽は更新日別とは別に、ご興味のあるジャンル別にも見らえます。例えばアーティスト別の細かい別テイクやアルバム未収録曲等を調べたければ「コレクティング・ガイド」で常に最新版を見ることができます。更新日は当初日のままですが、リストはリリースの度に更新しているので常に最新版、Beach BoysBeatlesKinksWhoRolling StonesFour SeasonsSmall Facesを始め、洋楽で38アーティスト、邦楽では山下達郎、大滝詠一、ヒロト&マーシー関係など14アーティストで計52アーティストを追っています。一瞬でも声が聴こえる参加作品までリストに入れていますので、是非ご参考に。

その他、年代順で見る方法、ラベルでUKUSのロック、ポップやソフトロックA to Z掲載のアーティストなどのカテゴライズ別、さらにBlu-rayDVDなどは「映像」で、インタビューものは「インタビュー」でまとめています。音楽にご興味の無い方は、「旅行記」に過去15回の沖縄の八重山&宮古諸島・有人全19島の来島記などを中心に、南大東島や与論島、対馬などなかなか行かない島や、一般公開したばかりの軍艦島などを紹介しています。その他の読み物はサブカルで。さらに私どものVANDAで出した出版物の全てを掲載しました。

Web VANDAをはじめた頃はダイアルアップ回線の時代で、文字はメールで送れるものの、画像は1枚送るだけで10分以上かかりさらに途中でフリーズしてしまうことが多かったので、管理人の岩井さんにジャケットのカラーコピーを郵送、HPhtmlで更新していました。非常に手間がかかるため、セレクトして掲載していた記憶があります。今から考えるとウソのような話ですが。

そして今回の移行ではhtmlでのバックアップの件もあって全てコピペでしか移行できず、画像もとても小さいものばかりだったので、多くを新しく探し出して貼り付けました。ところが前のHPの画像を残したものもあったのですが、ドメインを移したら前のHPからの画像は全て消えてしまい、さらに画像を探し出す手間が一気に増え、ここ一か月半はこの作業に忙殺されました。

文字のフォントや、行間の調整など、うまく出来ていないものも多いですが、後に見やすく修正をかければいいやと諦め、まずは公開を優先します。


までアクセスよろしくお願いいたします。(佐野邦彦)

☆吾妻ひでお:『ワンダーAZUMA HIDEOランド2』(復刊ドットコム)

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出版の計画を立ててから約一年、ようやく待望の続編が出版された。この一冊で吾妻ひでおの単行本未収録作品の9割以上がカバーされたことになり、またここに収録された雑誌や同人誌、業界誌などの原本を集めるのはほぼ不可能に近いので、本のコスト・パフォーマンスの高さは比類なきものがある。高校時代の投稿カットまで入れた徹底ぶりだ。本の構成順だとレア度が分かりづらいので、発表年順にポイントを押さえておこう。まず初期作品だが、高校時代の投稿カット、アシスタント自体のカットまで入れた徹底ぶり。デビューの1969年から1973年までのショートショート10本が『デビューの頃』に入っている。ギャグマンガとしては非常に素朴だが、「ベトナム和平」「沖縄問題」(返還こと)「国電」などネームに時代を感じられる。続く作品は『青年マンガ』のコーナーの方が早い。そのコーナーの中では1974年のカラーや2色が入った作品も入れた4編、19751本、19771本が初期。そして『少年マンガ』のコーナーとも重なり1972年の「おーマイパック第3話」、197476年の「ふたりと5人」番外編4編はどれもエロ・グロ・ナンセンスで、初期吾妻ワールドを感じさせてくれる。ちなみに青年マンガコーナーの「ゴタゴタマンション」は他に3編単行本未収録があるが、「アニマル・カンパニー」の1編と含めて吾妻先生の方で余りに下品とNGが出てしまった(笑)さて、ここから紹介する部分が、多くの吾妻ひでおフリークの目玉となる、一番絵柄も内容もいい、「アズマニア発生」の部分である。やはりこれは同人誌作品が核となっていて、主なものは『ワンダー1』などに収録済みのだが、ここでは『無気力プロのころ』と題して77年の「吾妻ひでお伝!」、78年の「無気力日記」、84年の「良いファン悪いファンとんでもないファン」といったコマを割った作品は貴重だし、当時のコミケでスターダムにいた「はーどしゅーる新聞」などへのカットの数々、あの伝説の吾妻先生本人が売り子をやっていた「シベール」の番外編の「プチ・シベール」に描いたイラスト2点、さらに「少年マンガ」コーナーにページ合わせで入れられた77年「吾妻ひでお不滅のキャラクター特集!」(注:奥様のカット付き。黒マクさんのこと)の同人誌17Pは激レアである。さらに巻末の吾妻先生と高橋葉介先生の対談に入っている「葉介先生ご結婚おめでとう」のカットは1983年に高橋葉介先生のファンクラブに描いたものでレア度はさらに上がるのでここにも注目。諸事情で入れられなかったイラストやマンガがあるのが残念だが、これだけ入れられればまずは十分だろう。あと『青年マンガ』に入れられてしまった78年に「高2コース」に連載された「いちヌケくん」計3回12Pは、貴重度はマックスだ。学年誌がまずレア、そして78年という発表年だ。同時期に「パラレル狂室」を描き「やどりぎくん」を連載していた。翌年にはあの「不条理日記」を描くなどSFマインドも爆発を初めていた。この作品はギャグだが、最も単行本収録を望んでいた作品のひとつである。以降は『近作と友人たち』『近作と美少女』と題されたコーナーに収録されているがこのコーナー立てにはあまり意味がなく、古いものでは83年の作品から、90年代、2000年年代の激レア作品が揃う。特に予告編的な、96年にCD-ROM本を出した時の予告マンガや、青年誌での「うつうつひでお日記」の予告編4コマ3編とか「コスプレ奥様」を出した時の雑誌の予告4コマなんて、まあ普通の人は気づくこともないディープなものだ。そして2005年にあの名作「失踪日記」を出した時に、新宿の「まんがの森」で配った内容予告の宣伝マンガ「失踪日記のこと」など、知ることすらなかった非売品。(当初、先生は掲載NGにしていましたが…。特に問題ない内容でしたから。)その2回目の失踪時代はガス工事屋になっていた事は有名だが、その業界誌に1Pマンガ「ガス屋のガス公」を書き、本名・写真付で掲載されていたものがあるのだが、さすがに作業着姿の写真をカットして掲載している。93年のことだった。そしてこの「ガス屋のガス公」は2011年に8Pマンガとなって。吾妻ひでおマニアックス展」の展示として公開され、この本に収録された。先生は定期的に「癒しとしての自己表現展」「心のアート展」に描き下ろしマンガを展示しているが、こういうアート展の収録はまさに超マニアック。その中でも「ガス屋のガス公」は「失踪日記」のエネルギーを内包する、この本のハイライトの作品だった。その他、親交があり共作本も出している新井素子との単行本未収録3編(ひとつは抜粋版)や、コミケの創始者で親交があった故・米沢嘉博への追悼同人誌3冊への3編も貴重だ。自分自身の想い出だが、80年代に「漫画の手帖」という同人誌をコミケに出していた時に、米沢さんは毎回必ず挨拶に来られていて、律義でとても好印象を与える方だった事を思い出す。本書は本当に落ち穂ひろい。そのため非常にバラエティに富んだ内容になったが、コンプリートを目指す人にはマスト・バイ・アイテムだ。この本はセレクションだけ済ませたところで諸事情から離れて完成したものだが、各扉のカットなど気が効いていて良い出来である。まだこの『ワンダー2』だけでは単行本1冊分の抜け原稿があるので、いつか最終版『ワンダーAZUMA HIDEOランド3』が出ることを待つことにしよう。(佐野邦彦)

☆大滝詠一:『DEBUT AGAIN(初回限定盤)』(ソニー/SRCL8714~5)

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大滝詠一が他アーティストに提供した曲のデモ等を集めたセルフ・カバー集に、オマケとして1997年の再活動開始期にソニーでのリハビリ・セッションを初回限定でプラスしたアルバムだ。ライナーがあるので枝葉末節な細かい情報を入れながら紹介しておこう。やはり男性に書いた曲はキーがドンピシャ、冒頭の1985年に小林旭のために書いた「熱き心に」がまずこの盤のハイライトの1曲。大滝の歌声は本当に魅力的で、日本のナンバー1ヴォーカリストだなと改めて思う。ソフトで癖が無く、誰でもうっとりとさせてしまう魔法の声だ。1994年に渡辺満里奈が歌ったというより、「ちびまる子」のテーマソングの「うれしい予感」は、キーがオリジナルなので非常に低い。よくこんな低音でもきれいに歌えるものだ。ミニアルバムでは222秒から35秒に登場する大サビの入っていない、短いシングル・ヴァージョンを使っている。1998年の「怪盗ルビイ」は2002年リリースの『Kyon3』に、小泉今日子と大滝の細かいつなぎ合わせのデュエット・ヴァージョンが収録されていたが、こちらは初登場の大滝のソロ・ヴァージョン。ラッツ&スターに提供した「星空のサーカス」と「Tシャツと口紅」はさすが男性用、キーが合うのでバックコーラスも完璧、自家薬篭中の出来でやはり“提供先”より魅力的に仕上がった。薬師丸ひろ子に提供した1983年の「探偵物語」「すこしだけやさしく」は、大滝が同年724日に西武球場で行ったコンサート「オールナイトニッポン・スーパーフェス’83」用に作ったオケで録音したソロで、アレンジから全く違う。前者は、ほぼオーケストラをバックにした薬師丸に比べ大滝はピアノのイントロからオーケストラが入りビートも感じられるアレンジで仕上げている。ただ大滝のソロ作品として見ると歌謡曲っぽさが強い曲想だ。後者の大滝ヴァージョンはカスタネットが加わりより大滝らしいサウンドになっていた。このコンサートでは大滝はなんと嬉しい「オリーブの午后」からスタート、「ハートじかけのオレンジ」「白い港」「雨のウェンズデイ」と続きその後がこの2曲の登場、そして「夏のリビエラ」「恋するカレン」「FUN×4」「Cider’83~君は天然色」で「夢で逢えたら」のインストがラインナップだった。そしてこの本編CDでもこのライブと同じ流れで次は『Snow Time』で既に披露済みの「夏のリビエラ」だったのは偶然か。そして曲の魅力度ではこのアルバムの目玉である「風立ちぬ」の大滝ヴァージョンが登場する。使用したのは松田聖子に提供した1981年の123日に渋谷公会堂で行われた観客は与えられたFMWalkmanに各自のヘッドフォンをつないでライブを聴くという「ヘッドフォンコンサート」のライブ音源だった。キーを変えバッキングは新しく作られたが、基本的なアレンジは松田聖子ヴァージョンで、「探偵物語」ほどの違いはない。やはりソロだと歌声にはつらつさが欠け、なにやら照れくさそうな感もある。この音源にはブートで一部に出回っている松田聖子と同じキーで歌うデモヴァージョンがあり、そちらが収録されると思っていたが、よりキーが低く、歌声が地味だったので使われなかったのか。このブートには大滝本人が歌う「冬の妖精」のデモも入っていたがこれも収録されていない。ちなみにこのライブは第1部が「FUN×」「Pa-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語Velvet Motel」「スピーチ・バルーン」「外はいい天気だよ」「青空のように」「カナリア諸島にて」「指切り」「雨のウェンズデイ」「恋するカレン」「ナイアガラ・ムーンがまた輝けば」の11曲、第2部が「恋はメレンゲ」「想い出は霧の中」「Confidential」「Blue Velvet」と続き16曲目にこの「風立ちぬ」が登場した。その後は杉真理の「街で見かけた君」、佐野元春の「Someday」となり、Niagara TriangleVol.23人による「A面で恋をして」(アンコールも同じ)、「君は天然色」「さらばシベリア鉄道というラインナップだった。最後は『Best Always』『Niagara Song Book2』を買って応募した人300人にもらえたシングルに入っていた「夢で逢えたら(Strings Mix)」が収録された。ハープシコードからスタート、その後はストリングスのバッキングなのでドリーミーな仕上がりでラストに相応しい。そしてオマケのディスク2。1997年に大滝がソロ活動再開をするためにソニーのスタジオで2ヶ月に渡って続いた「リハビリ・セッション」からの音源が続く。1928年のジミー・オースティンのカバー“My Blue Heaven”のカバー「私の天竺」で、中間に“Home On The Range”を入れるセンス、まさにナイアガラだ。楽しいカバーでディスク2では一番好きかも。続く「陽気に行こうぜ~恋にしびれて」(2015松村2世登場!version)は、ご存じエルヴィス・プレスリーのカバー・メドレーで、昨年リリースされた『佐橋佳幸の仕事1983-2015』に収録されたものから冒頭の30秒のスタジオでのやり取りをカットしたものだ。その後はカントリーのロジャー・ミラーとジョージ・ジョーンズのカバーのメドレー「Tall Tall TreesNothing Can Stop Me」と軽快なカバーが続いた。このリハビリ・セッションは、その後に大ヒットとなる「幸せの結末」が生み出され、曲のタイトルのとおりとなる。最後はディスク1の「うれしい予感」のB(扱い)で、植木等が歌った「針切じいさんのロケン・ロール」の大滝によるセルフ・カバー。このディスク2に回されたのは、オリジナルが1958年のノヴェルティ曲でそこにさくらももこが歌詞を付けたものだから。大滝が歌うとまさにナイアガラ。ロンバケ以前の未発表曲と言われればすぐに信じちゃうね。(佐野邦彦)

中塚武 『EYE』(Delicatessen Recordings / P.S.C. / UVCA-3035)

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シンガー・ソングライターの中塚武が13年の『Lyrics』から3年振り、通算7作目のオリジナル・アルバムを3月16日にリリースした。
98年にQYPTHONEでデビュー後ソロに転じ、CM音楽、テレビドラマや映画のサウンド・トラック制作のクリエイターとしてのめざましい活躍をしている彼であるが、その真骨頂はシンガー・ソングライターとしての姿にあると筆者は考えている。
本作もソングライティングから編曲、オーケストレーションをはじめ、キーボードの演奏とプログラミングやヴォーカル、コーラスまで担当するというマルチ振りで、その独特な世界観を構築してジャンルの壁を軽々と飛び越えているのだ。

13年の『Lyrics』リリース後同年7月に新鋭のビックバンド、イガバンBBとタッグとのコラボレーションで『Big Band Back Beat』をリリースと、この年の活動は目まぐるしく忙しかったに違いない。
翌14年にも10周年を記念したオールタイム・ベスト『SWINGER SONG WRITER』を発表しており、シンガー・ソングライターとしてのソロ活動に一区切りをつけ、本作『EYE』で新たな中塚サウンドを模索していたのだろう。 今月初頭に入手した音源を一聴して期待を上回るそのクオリティーに舌を巻いたのだが、例えるとベニー・シングスが手掛けたウーター・ヘメルの『Hamel』(07年)のサウンドを更にテクニカルに先鋭にしたといえばいいだろか。
ゲスト・ミュージシャンとして、パーカッションに松岡 "matzz"高廣(tres-men/quasimode)、ストリングスにNAOTO、ブラスセ・クションには本田雅人(sax)、佐々木史郎(trumpet)、エリック・ミヤシロ(trumpet)、Luis Valle(trumpet)、中川英二郎(trombone)、五十嵐誠(trom­bone)等々、現在の日本のジャズ界の実力派ミュージシャン達が集結している。

   

アルバムは本作を象徴するリード・トラックの「JAPANESE BOY」から始まる。
アタックの強いシンセとホーンのリフ、スキャット、ストリングスが目まぐるしくり乱れ、ハイブリッドなビックバンド・サウンドを展開する。中塚のヴォーカルも生歌とオートチューン?でエディットされたコーラスが見事に構成されており、とにかく圧倒される最先端のジャズ・ポップというべきだろう。
続く「プリズム」は新主流派的な和声感にムーディーなラテン・ジャズのリズムを融合させて、90年代のアシッド・ジャズのテイストにも通じるクールなナンバーである。 
弦楽四重奏のイントロから軽快に転回する「あの日、あのとき」のアレンジも面白い。途中ジミー・ウェッブが手掛けたフィフス・ディメンションの「Up, Up And Away(ビートでジャンプ)」(68年)風の短いフレーズが引用されていて唸ってしまった。 
他にもビックバンド・サウンドを全面に出した「〇の∞ (album version)」、フュチャー・サウンド的なトラックに無垢なメロディと歌声をぶつけた「ふれる」等聴きどころは多い。 
アルバム中最もソング・オリエンテッドな「ひとしずく」にも触れておこう。スローなニュージャックスイング調のバックトラックに感動的なホーンとストリングスが重なっていく。本作のハイライトと呼べるかも知れない。 
(ウチタカヒデ)



ビーチ・ボーイズの初来日コンサートは1966年ではなく、その2年前の1964年に米軍キャンプで行われていた!

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 皆さんご存じのとおり、ビーチ・ボーイズの初来日公演は1966年、ブライアン・ウィルソンの代わりにブルース・ジョンストンが参加して行われましたが、実は、今まで誰も言及していないので知られていませんが、1964年(※1963年説もあり。後述)に米軍キャンプに慰問で訪れ、コンサートをしていました。その模様を基地内で見ていた日本の方がいましたので、貴重な証言を伺ってみましょう。私の先輩である田中幸男さんが、その羨ましい体験をされた「証人」です。

Q:いつ、どこで行われたのでしょうか?

A:福岡の板付空軍基地の白木原ベースです。日本では「Surfin’ USA」のヒットで知られてきた頃です。あの事はベトナム戦争が激しくなってきた頃で、来日する多くのミュージシャンが米軍基地で慰問公演をしていました。場所はAirmens Clubです。米軍ベースには将校用のOfficers Clubと下士官用のNCO Clubもあるのですが、ビーチ・ボーイズと年齢が近いということで一般兵隊用のAirmens Clubになったのだと思います。

Q:どうやって見ることができたのですか?

A:当時高校生だった僕は、アメリカ人の友人に誘われてAirmens Clubのライブに見に行けました。もちろん慰問だからフリーです。

Q:公演の記憶はいかがですか。

A:当時の日本では曲が流行ってもバンドやメンバーに関する詳しい情報が手に入らなかったので、そのライブに誰がいたのかよく覚えていませんが、大きな男がギターを弾いていたのとボーカルが帽子を被っていたのを覚えています。後から思うとあの大男がブライアンで、帽子頭がマイクだったのでしょう。その他にも2~3人いたような。

Q:なるほど。まだビーチ・ボーイズのレコードが1964年まではリアルタイムでリリースされてもいないし、ヒット曲も分からない時でしたよね。その中で覚えていらっしゃるのは?

A:その時歌った曲で記憶しているのは大ヒットした「Surfin’ USA」の他には、アメリカで流行っていても日本では全然知られていない曲が多数あったはずで、僕で曲名が分かった曲は少ない。デル・シャノンの「Runaway」、チャック・ベリーの「Johnny B.Goode」、レイ・チャールズの「What’d I Say」まで歌っていました。

Q:公演時間とか服装はどうでしたか

A:3040分程度で曲数は覚えていません。ストライブのシャツだったような気もしますが、レコードのジャケットで見た後付けの知識かもしれません。

Q:ライブの印象はどうでしたか?

A:ライブで聴くとギターが思ったより下手だったり、PAが悪いのかボーカルの声が全然通らなかったり、レコードで聴くよりは出来が悪かったけど、それなりに楽しめました。

 

注:マイク・ラブのビルボード・ジャパンでのインタビューで、「1964年に来た時にホテルのロビーで日本の児童にひながなをおしえてもらったことを鮮明に覚えているよ」と言っていたので1964年としましたが、田中さんの当初の記憶は1963年でした。そしてマイクの「日本に初めて来た時の僕たちのジャンルは「エレキ・ギター」だった」という言葉、このAirmens Clubの曲目から推測されるのは、音楽的には1963年の方が有力かなと言う感じです。ちなみに「ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー」に1963年、1964年に米軍慰問で日本に行ったという記述はなく、1964年はスケジュールがぎっしり書かれていたので、隙間のある1963年の可能性が強い気がします。(佐野邦彦)

Beach BoysのStudio Version「We Got Love」入りの『Holland』は、LPが5月、CDが6月に発売延期

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以前紹介したアメリカのAcoustic Soundsによるビーチ・ボーイズのスタジオ・ヴァージョンの「We Got Love」入り『Holland』のSACD及び200gLP216日発売ということで待っていたのだが、いつまで経っても連絡がこないのでネット上で調べてみると、LP5月、CD6月発売に延期されていた。CD$30LP$40(「We Got Love」はEPの最後に収録)で、送料は2つ一緒だと$31で計$101と安くはない。バラバラで注文すると送料がかさむだけなので、6月まで待つしかなさそうだ。(日本のユニヴァーサルから4月にリリースされる『Holland』のCDには「We Got Love」は入っていないので、間違えて注文しないように)このAcoustic SoundsSACD180~200gLP及びハイレゾのパターンで、『Surfin’ Safari』から1985年の『The Beach Boys』までリリースされているが、まだこれから発売のものも本盤のように数点存在している。『Holland』のハイレゾは発売済で、「We Got Love」のスタジオ・ヴァージョンが最後のリフレインが多く50秒以上長い初登場ヴァージョンだったのは、既に紹介したとおりでマスト・バイ。このAcoustic SoundsLPにはMono盤とStereo(新規作成Stereo含む)盤があるのが売りで、『Holland』以外のLP$23(180g)$35(200g)で、EPがプラスされた『Holland』だけが$40になっている。ただこのAcoustic Sounds、日本ではamazon、タワー(売ったような痕跡はあるが発売前の相当前の日付で、さらに取扱終了とあるので販売していないと推測される)HMV、ディスクユニオンのどこも予約を取っていない。下記のURLから直接購入した方が良さそうだ。


なおこの中にSACD6月発売予定に『Sunflower(Stereo & Mono)』があるが、モノ盤は作られていないので、ここは気になるところ。まさかステレオを無理矢理モノミックス…じゃあないよね。(『Yellow Submarine』のモノLPがそうだった)。こういう限定販売のようなものは、日本の大手が取り扱ってくれてもとんでもない値段を付ける場合があるので要注意だ。例えばモンキーズのRhino Handmadeで今でも購入できる3枚組の『The Monkees(Super Deluxe Edition)』があるが、直でRhinoから買えば送料込$68.478000円で買える。ところがこれがHMVでは31741円、タワーで28933円と4倍近いぼったくり状態。輸入盤で高いものは、海外からの輸入価格と比較することが必須なので気を付けよう。話は変わって、ペットサウンズ50周年記念の2エディションが610日にリリースされるのは既にご承知だと思う。セコイ商売で、大元の『The Pet Sounds Sessions』の大半を使って、4CD+Blu-ray Audioの『Pet Sounds(50th Anniversary Collector’s Edition)』と2CDの『Pet Sounds(Deluxe Edition)』の2セットを作り、それぞれにライブ音源のディスクをプラスするなど、どちらも買わせようという魂胆だ。このライブは11曲ダブっているのに後者には68年アイオワでの「Sloop John B」、76年アナハイムの「Wouldn't It Be Nice」、2012年ロイヤル・アルバート・ホールの「Pet Sounds」「I Just Wasn’t Made For There Times」「Good Vibrations」のライブがプラスアルファされていて買わないといけないようにしてある。また前者のボックスには「I Know There’s An Answer(Vocal Session)」「Good Vibrations(Master Track With Partial Vocal)」の2トラックだけだが初登場で、うーんじゃあ買わないと。さらにこれは編集面だが元となる『The Pet Sounds Sessions』からヴォーカルオンリーは前者、オケは後者に振り分けるなど工夫していた。結局はどちらも自分のようなコレクターは入手しないといけない仕組みだ。(佐野邦彦)

ウワノソラ'67:『シェリーに首ったけ』(JET SET/JS7S119)

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昨年6月にナイアガラ及びその背景となっている60、70年代サウンドへのオマージュを結晶させた自主制作アルバム『Portrait in Rock'n'Roll』を発表したウワノソラ'67が、4月1日に同アルバムから「シェリーに首ったけ」(カップリンングは「雨降る部屋で」)をアナログ7インチでシングルカット・リリースした。 『Portrait in Rock'n'Roll』は多くの音楽マニアから絶賛され、自主制作アルバムとしては異例のヒットとなったことは記憶に新しい。
そもそもウワノソラ'67はシティポップ・バンドのウワノソラのいえもとめぐみと角谷博栄の二人によるユニットで、全てのソングライティングを手掛けている角谷により大滝詠一氏を追悼するというコンセプト元にアルバムが制作されている。 詳しくは彼らのオフィシャルサイトにて筆者がおこなったインタビューを参照してほしい。
ウワノソラ'67:『Portrait in Rock'n'Roll』リリース・インタビュー 

今回アナログ7インチでリリースされた意義は極めて高い。
その裏付けとも言えるエピソードがあるのだが、筆者が『Portrait in Rock'n'Roll』のリリース直前、現ナイアガラ・エンタープライズ代表取締役の坂口修氏に本作をお勧めしたところ、何と既に予約されており、逆にアナログ盤でのリリースの可能性を聞かれたほど強く望んでいらしたのである。
ナイアガラ・サウンドの神髄を継承されている氏も、彼らのサウンドがアナログ盤にて生かされるということを真に理解されていた証拠なのだ。 

さて「シェリーに首ったけ」をアナログ7インチで聴いたファースト・インプレンションだが、まずその音圧に圧倒される。
5管のホーン・アンサンブル(特にバリトン・サックスのブロウ)やドラムのキックなど低域の迫力はCDでは聴けなかった。大編成によるサウンドの醍醐味はアナログならではということだろう。
カップリングでハチロク・バラードの「雨降る部屋で」では、ストリングスのトップ・ノートの空気感はCDよりも明らかに豊かに広がり、このオブリガートがいえもとの麗しいヴォーカルを引き立ているのが理解出来るだろう。
リッキー・リー・ジョーンズの「Company」(『Rickie Lee Jones』収録・79年)のストリングス・アレンジもかくやと言うべき美しさである。
昨年のレビューから各曲の解説も以下に引用するが、CDでは味わえないアロナグ7インチのサウンドを是非堪能して欲しい。

リードトラックの「シェリーに首ったけ」は、ずばり「君は天然色」(つまりフィレス・サウンドからThe Pixies Threeの「Cold Cold Winter」やロイ・ウッド(ウィザード)の「See My Baby Jive」等)を意識したアップテンポのシャッフルだが、バックビートにアクセントを持つバースのベースラインは「青空のように」(『NIAGARA CALENDAR』収録・77年)からの影響を感じさせる。
いえもとのヴォーカルは難しいラインのピッチも安定していて、全体的にチャーミングな雰囲気で非常に魅力的だ。
ホーンはテナー・サックスが2管、バリトンとアルト、トロンボーンが各1管の編成で、ドラムとピアノはダブル、エレキとアコースティック・ギター、12弦ギターを20本分、スレイベルとタンバリンは20回のオーバーダビングを施し、カスタネットは5人!でプレイしているというから恐れ入谷の鬼子母神である。

 

ソウル・ミュージックからのエッセンスが希薄な本アルバムでは珍しく、カーティス・メイフィールド風のギターリフのイントロから導かれる「雨降る部屋で」は、ビーチ・ボーイズのハチロク・バラードを心から愛する角谷が「Your Summer Dream」を意識して作ったという。メロディーラインにはロージー&オリジナルズの「Angel Baby」(フィル・スペクターのプロデュースによりジョン・レノンもカバーしている)のそれを感じさせるが、コーラス・パートはヴェロニカの「I'm So Young」とライチャス・ブラザーズ「( I Love You ) For Sentimental Reasons」(有名なスタンダード・ナンバーでもある)を意識したという。
サビに絡む美しい対位法のストリングス(アレンジ:角谷&深町)からアルト・ソロに雪崩れ込む時ピークとなり、一流ジャズ・サックス奏者である横山貴生による見事なプレイに耳を奪われる。 

因みにこのアナログ7インチは、彼らのオフィシャルサイトの他、リリース元のJET SET等のレコード・ショップで購入出来るので興味を持った読者は是非入手して聴いて欲しい。
ウワノソラ'67 オフィシャルサイト・オンラインストア
 (ウチタカヒデ)


☆Brian Wilson:『Brian Wilson And Friends』(Salvo Sounds &Vision)CD+DVD

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本作は20141214日にラスベガスのVenetian Theatreで行われたスペシャル・ライブ『Brian Wilson & Friends』で、そのBlu-rayが昨年10月に通販オンリーで発売され既に紹介済み。ただし日本での取り扱いがなくアメリカからの直接の通販なので面倒かつ高額だった。ところが、知らぬ間に全く同じものをDVD化、さらにDVDのボーナス映像2曲を除いた音源をCDで付けるという、最近定番化したローリング・ストーンズのWardレコードのArchiveシリーズのパターンでリリースしてくれた。発売は56日だが内容はまったく同じものなので、ここで内容を再掲しておこう。ちなみにWOWWOWで放送したものよりも4曲も多い完全版である。メンバーにはフル登場のアル・ジャーディンの他、ブロンディ・チャプリン、リッキー・ファターも加わり、19724年のビーチ・ボーイズ・メンバー4人が揃ったのだ!個人的には先日の2012年のオリジナル・メンバー5人が揃ったのと匹敵するほどのインパクトがあった。そしてこのライブは『No Pier Pressure』のライブなので、アルバムに参加したネイト・ルイス、セブ、マーク・アイシャムがライブに、そしてスタジオのレコーディングでシー&ヒムまで登場する。音質も画質も最高。まずはブライアンとアルにスポットが当たる中、ダリアンの指揮で「Our Prayer」の見事なア・カペラからスタートする。完璧なハーモニー。続いて演奏を切らずに「Heroes And Villains」へつながる。「Sloop John B.」は後半のア・カペラのハーモニーがレコードと同じで、このブライアン・バンドのハーモニーの上手さには脱帽だ。そして「Dance Dance Dance」「Good Vibrations」とビーチ・ボーイズ・ナンバーが続いたところで、『No Pier Pressure』に突入する。まずはオープニングの「This Beautiful Day」。ブライアンのファルセットのリード・ヴォーカルがしっとりと美しく、ゴージャスなハーモニーにマーク・アイシャムのトランペットで、最高の導入となる。その後はセブが登場、アルバムで大半のリード・ヴォーカルを取ったダンサブルな「Runaway Dancer」を歌い、「Don't Worry Baby」でもリード・ヴォーカルを取る。さてここからがハイライト。ブロンディ・チャンプリンがギター、リッキー・ファターがドラムで登場、『Carl& The Passions』と『In Concert』『Holland』でのビーチ・ボーイズ4人が揃った訳だ。まずは歓迎の意図でブライアンが「Marcella」を歌う。そしてブロンディ・チャプリンのリード・ヴォーカルでの「Wild Honey」と「Sail On Sailor」が最高だ。ソウルフルなビーチ・ボーイズを堪能できる。「Wild Honey」ではヴォーカルもいいがブロンディのギター・ソロもよく、ソロにサックスがからむとキース・リチャードとボビー・キーズを見ているみたいで最高。そして名曲中の名曲「Sail On Sailor」、ブロンディのリード・ヴォーカルだと曲がさらに引き立ち釘付けになってしまった。最後はブロンディのギター・ソロで締め、続いて『No Pier Pressure』へ戻り、ブライアンとあとブロンディとアルがリードを取った「Sail Away」が登場。キャッチーなメロディとからみあうハーモニーが素晴らしい。この後にブロンディ&リッキーはいったん舞台の袖へ下がる。その後はマーク・アイシャムのトランペットの独壇場になる。「Half Moon Bay」、続く「Don't Talk」(WOWWOWでは放送せず)でのマーク・アイシャムのトランペットの音色にただただ酔いしれるばかり。ここも今回のライブのハイライトのひとつだろう。そして明るいネット・ルイスが登場、アルバムでリード・ヴォーカルを取った「Saturday Night」を歌うが、明快なリード・ヴォーカルがピッタリでいい出来だ。そして引き続きネット・ルイスのリードでなんと『Carl& The Passions』から「Hold On Dear Bother」を歌うが、これも感激だ。バックには曲を書いたブロンディとリッキーが再び登場、演奏とハーモニーを付けるが、最後のネット・ルイスの熱唱が素晴らしく、曲が終わった時にネットとブロンディが抱き合ったのが印象に残る。そのあとネットは「Darlin'」も歌う。カールもそうだったが、この高いキーの曲を裏声を使わず軽くこの曲のキーが出るからプロは凄い。この後はスタジオ録音の映像に変わり、シー&ヒムが登場、ブライアンが隣のブースに入ってカウンターのコーラスを付けるアルバムのボサ・ナンバー「On The Island」も見もの。その後は同じくスタジオで「God Only Knows」を歌う。シー&ヒムの個性に合わせた淡々としたとしたアレンジだ。ここからライブ会場に戻りいよいよアル・ジャーディンの出番だ。アルバムでアルがリード・ヴォーカルを取った軽快でコーラスが素晴らしい「The Right Time」を歌った後は、「Wouldn't It Be Nice」と「Help Me Rhonda」でもリード・ヴォーカルを取って会場は一気に盛り上がる。やっぱりアルはオリジナル・メンバーの中で一番、声が出る。2012年のライブでも、マイクじゃなくアルがリードを取ればいいのにと思った曲が何曲もあったほど。アルの歌う「Help Me Rhonda」は本当に盛り上がる。この後はブライアンはリード・ヴォーカルに戻りWOWWOWではカットされていた「All Summer Long」が登場、ハーモニーが爽やかでいい仕上がりだ。最後はブロンディ&リッキーも戻り、「Fun Fun Fun」で大団円。ここでライブは終わりだが、アルバムの「Guess You Had To Be There」が小さくかかり、アルバム収録時の想い出をケイシー・マスグレイヴスが語っているところでエンド・ロール。このブルーレイを見て、今まで低評価していた『Carl& The Passions』などの良さに気付かされた。ブロンディ&リッキーがいた『In Concert』のライブは、ビーチ・ボーイズの中でも最も充実したライブだったので、マイク&ブルースと別れても、この4人でライブを再びやって欲しいなあと改めて思った次第。ボーナス・トラックには本編に入らなかった『That's Why God Made The Radio』からの「Pacific Coast Highway」「Summer's Gone」の2曲が見られる。現在のブライアンのキーで歌われる曲なので、ブライアンのヴォーカルも無理がなく素晴らしいコーラスに彩られ、しっとりとあじわい深い。このオマケの2曲のみ、CDには収録されていない。なお、4月のブライアン・ウィルソンの来日公演はまったく見に行けない体になってしまったので諦めたが、この映像があったので、「ブロンディ・チャプリンも参加」(※リッキー・ファターは?)というニュースを聞いても切歯扼腕という思いが無い。『Pet Sounds』の全曲披露は2回目の来日でやっているし、セットリストでは2曲を除きビーチ・ボーイズ・ナンバーという今までの集大成のような選曲なので、まっいいかという感じだ。私のような考えの人も多いようで、チケットのはけが良くないと言う噂が心配なところだ。(佐野邦彦)

☆Hollies:『The Hollies Vol.2』(Warner/0825646179817)

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Frankie Valli & The Four Seasonsのオリジナルアルバム18枚を紙ジャケでまとめた『The Classic Albums Box』は5800円という安さで度肝を抜いたが、他ではFrankie Valliのソロが83300円、だがその他はMonkeesDoorsなど多数のアーティストの5枚ものボックスが出ていてみな2600円で購入できるので非常にリーズナブルな時代になった。Holliesも既にデビューから5枚目までが『The Hollies Vol.1』でリリースされているが、これはお勧めしない。Holliesのグラハム・ナッシュが在籍した1963年から1967年のアルバム7(今回紹介するVol.2にも2枚入っている)に関しては日本のワーナーから2011年にリリースされたステレオ&モノ仕様+ボーナストラックを購入すべきで、同じくリリースされた『Hollies Greatest+Singles Vol.1』と「Vol.2」もステレオ&モノ仕様でこれも必須、さらにEPやライブ、コンピのみ収録のレアトラックのため『Clarke,Hicks & Nash Years:The Complete Hollies April 1963-October 1968』があるがCD6枚で3800円と安くこれでグラハム・ナッシュのいる黄金のHollies99%コンプリートになる。さてじゃあこのVol.2は何のために必要かと言うと、ご興味があればだが、5枚中3枚がグラハム・ナッシュの代わりにテリー・シルベスターが加入してからのアルバムが順に入りそれは1969年の『Hollies Sings Dylan』と『Hollies Sing Hollies』、1970年の『Confessions Of The Mind』の3枚だ。一緒に入っているグラハム・ナッシュ時代の1967年の『Evolution』(エレキがビンビン鳴る最高にキャッチーな「Have You Ever Loved Somebody」「When Your Light’s Turned On」「The Games We Play」は無敵)と『Butterfly(美しくまさに最高傑作)2枚は、Holliesの頂点の2枚なので、ナッシュが抜けたこの3枚のクオリティの差には驚かされる。その後のHolliesのアルバムはまだまだあるのでVol.3も出るだろうから、1500円、この値段なら資料として買っておけばいいかという程度である。まずナッシュ脱退のきっかけ(一説)となった『Hollies Sings Dylan』はなぜ、全曲オリジナルでやってきたホリーズがボブ・ディランのカバー・アルバムを作る必要があるんだというナッシュの言い分に納得させられる悲しい出来栄えだ。いくらきれいにハモっても少しも心に響かない。あと私自身、ボブ・ディランは正直苦手ジャンルなので、思い入れもない。次の『Hollies Sing Hollies』はオリジナルで、ソロだとメロディアスで甘い歌声の最高の曲を作るテリー・シルベスターの書いた曲に注目したが、ボサ・ノヴァ・タッチの「Look At Life」と牧歌的な「You Love ‘Cos You Like It」がいい程度。アラン・クラークとトニー・ヒックスが書いた「Please Let Me Please」はエレキギターがビンビン響いたポップな曲で良かったがその3曲くらい。『Confessions Of The Mind』で一番良かったのはナッシュの忘れ形見のいつもの3人の共作であるポップな「Survival Of The Fittest」で、その他ではテリー・シルベスターのミディアムのバラード「Isn’t It Nice」と哀調漂う「Man Without A Heart」くらい。なお、シルベスターの3曲はみなアラン・クラークとの共作である。どうもシルベスターはホリーズにいるとホリーズのサウンドに合わせなければならず、持ち前のソングライターとしての力も、シンガーの力も出しにくいことが分かる。(佐野邦彦)
5cd Original Album Series Box Set Vol.2

VANDAに強いる地獄の要求!多額の赤字と、返品の山。自宅では底が抜けるので職場に隠して最後はチリ紙交換に…。そして山下達郎さんとのエピソード

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「本は取次を通して本屋に配本される」ことをご存じだろうか?取次には「トーハン」「日版」とか有名な大手があり、そういう取次を通さないと全国の書店に行きわたることなど不可能。じゃあ新規に作ったミニコミ、私は1991年にVANDAを作ったが、実績も資本もないミニ出版はどうするかといえば、「地方小出版流通センター」という会社に「代行」を頼むしかない。ただし厳しい要求が課される。全国の主要書店に3号分は送りつけるので、その分を刷って納品するようにと。その数は1号に付き6000冊だった。印刷費だけでも3号分で200万を軽く超え、サラリーマンの副業の規模ではないが仕方がない。そして後に大量の返品が戻ってくるのだ。地獄。本屋のバイトをした方なら分かると思うが、書店には毎日大量の新刊の本と雑誌が送られてくる。当然、不要なものを同規模返品しないと置き場所がなくなるので、店員は新刊を置きながら、返品作業を並行して進める。日本は「再販価格維持制度」を堅持しているので、本にディスカウントはなく、原則本屋は遠慮なく本を「仕入価格」で返品できる。送られてきた本をどうディスプレイするかは本屋のセンスであり、新しい本は山ほど来るが、担当者に気に入られ表紙が見える「面出し」してくれれば大成功、しかし大半は本棚にさされ背表紙しか見えず、時間がくるとほぼ自動的に返品される。そうしてVANDAはパイロット版の1号を除く2号から4号が9か月程度全国の書店に置かれた。その頃は何と三カ月に1冊という超ハイペースで作っていたので、新刊を納品すると、大きなダンボールに詰められた返品が「着払い」で倉庫にしていた実家に送られてくる。まったく無名のミニコミが、マスコミに取り上げることもなく売れるなんてことはあり得ない。半数以上は返品され、実家の空き部屋は数千冊の返品の山で床が抜けるほど。これはヤバイと、もう時効(25年前の話)とさせていただきたいが、自分はその頃は先日退職した職場の総務で庁舎管理を担当していた。私は常に庁舎管理を委託している下請け業者の人には笑顔で接し、要望があれば叶うように配慮してきた。人間関係が良好なら何か無理難題が起きた時も、下請け業者の方は快く協力してくれるからだ。だから自分はこの大量の本の山を、職場の一角(空調のみの部屋の空スペース。設備担当者以外入る人はいない)に置かせてもらうよう、設備や、警備員、清掃に頼んで「ナイショね」で快諾を得た。運搬は職場の休日に実家から自分の車でピストン輸送した。指定の3号が終わると、あとはその置いてもらった書店からの注文に変わる。いきなり冊数は激減するが、こちらも手をこまねいているわけではなく、この地方小出版流通センターの書店ルートは仕切りも安く(65%)たいした事がないと半ば見切りをつけ、大手CD店への委託販売の営業に切り替え始めた、そちら方が仕切りも高く大量に購入してくれた。この頃の華はWAVEである。WAVEクアトロやWAVE池袋は特に好意的で、一店で500冊以上売ってくれたこともあるほど。ディスクユニオンのチェーンもよく販売していただいた。その他、北海道から沖縄まで「レコードマップ」でここはと思う店には直取りをお願いし、東京のレコード店は実際に行って取引店へ開拓していく。そしてある日、職場に置いていた大量の返品本を片付けないといけない事態が訪れる。空調の機械のメンテが必要で業者が入るということになり、このまま置いておくとバレるので緊急の処分が必要になった。実家に戻すのは量的に当然無理。少しだけバックナンバー用に実家に戻し、大半の本はちり紙交換をやっている知人に職場まで来てもらって処分した。もちろん作業は職場に誰も来ない日曜の夜。警備員さんや設備の人は分かっているので一切漏れない。業務日誌にも載らないのはそれまでの人間関係あってのこと。そうして数千冊のバックナンバーは「ゴミ」として消えていったのだが、置く場所があれば売れたかも…と後悔する気持ちがあった。苦労して作って、言われたとおり大金をつぎ込んで刷った本をゴミにしてしまう悲しさ。実際、この3冊の在庫はすぐにショートして「在庫切れ」になってしまう。特にVANDA3号にはデビュー時からのファンというとり・みき氏をメイン・インタビューアーにした山下達郎さんの最高のインタビューを掲載していた。新作アルバムの話ではまったく同じ受け答えになるのは分かっていたので、早々にその話題は切り上げ、好きなマニアックな音楽の話や、映画の話など、山下達郎さん、とり・みきさん、そして私の間でしか出来ないコアな話題でインタビューは盛り上がった。あとはどう編集するかだ。お二人の言葉はいじれないので、自分の言葉でポジションを変えて流れを作って素晴らしい内容のインタビューになった。すると山下達郎さんがすぐに反応してくれた。VANDA3号が出た後のソロコンサートで私が中野サンプラザの座席に座っていると山下さんが「えーみなさん。お存知はないかもしれませんが、佐野さんというサラリーマンの方が作っているVANDAというミニコミがありまして、そこに僕のインタビューが載っているのですが、今までのインタビューで最高の内容です。是非読んでいただきたいので見つけたらご覧ください」とまさかの自分の名前まで出して会場で宣伝してくれたのには本当にビックリした。そしてこのインタビューがきっかけで、発足したばかりの「山下達郎オフィシャルファンクラブ」の表紙と、中の4コママンガ「タツローくん」はとり・みきさんの専属となり、今も山下さんととり・みきさんの強い信頼関係は続いている。VANDA3号のインタビューは、山下達郎さんのツアーパンフにリライトされたので「幻の…」にならなくて良かったが、掲載誌のVANDA3号をちり紙交換に出した後は大いに後悔したものだった。ラストエピソード。そのインタビューの時の山下さんの「探究盤」はBruce & Terryの「Don’t Run Away」のシングルだった。私はフォーエヴァーレコードの藤本さんから購入していたが、山下さんは一歩の差で買い逃してしまったようだ。この曲は、オマージュとして山下さんの名曲「Only With You」が作られたほどのブルース・ジョンストンの渾身の傑作。そこで山下さんに「佐野さん、Don’t Run Awayのシングル持ってる?僕の9Minutes Of Tatsu Yamashitaと交換しない?」と尋ねられたものの、この「9Minutes Of Tatsu Yamashita」は今でこそCDのボーナストラックで聴けるが、当時は挙式で配られたと噂された超レア盤で心が動く人も多かったのかもしれないが、実はこのピクチャーレコードも藤本さんから入手していた。ということで丁重にお断りしたのだが、翌々年のレココレの「私のこの1枚」のコーナーに山下さんが「Don’t Run Away」を掲載していた時には本当にほっとしたもの。ついでに思い出したが、この頃に初めてあのビーチ・ボーイズの『SMILE』の最初のブートレッグが日本に入ってきた。もちろんLPで、曲によってはビーチ・ボーイズではない音源もあったまさに最初の「SMILE」だったが、ともかくこの世に形となって表れたのでそれはもう興奮したもの。このブートを入手できたのは大阪のフォーエヴァーレコードの藤本さんだけで4枚だけだった。そのうち2枚は山下さんと私であることは間違いない(笑)このLP、音源的には今は価値がないものだが、最初に見つけた「宝島」の地図の切れ端なんで今も処分せずに持っている。この時期から2004年にブライアン本人が再現するまでの20数年間、世界中のビーチ・ボーイズ・ファンと『SMILE』コレクターが、時々洩れてくるセッション音源のブートを元に幻の『SMILE』に迫ろうと競っていたのは、今となっては楽しい「宝島」探しの旅だった。キャプテンキッドの宝物は今でも見つからないが、秘境中の秘境、トカラ列島の宝島に隠されているとか、沖縄の宮古諸島の大神島の洞窟が怪しいとか、日本にまでそういう噂があり、宝探しは見つからないから楽しい。(佐野邦彦)

初期のVANDAと、その後の「ソフト・ロックA to Z」出版以降の海外のリイシューレーベルの動きが凄かった!

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VANDAというミニコミ作りはアフターファイブのワークスだったが、趣味レベルではなかった。何しろ1991年から3年は年4冊、1994年から2年は年3冊出すのだから本作りだけで、てんてこまい。私は音楽部門が主なので、いかにコレクターを納得させるレベルの原稿が書けるかになる。インターネットがなく、個人のパソコンもない時代なので、情報は主に洋書などを読むことなので時間がかかる。レコードコレクターズ誌がアーティスト特集を始めた頃なので、ともかく最初は「レココレよりも先に特集する」ことを零細のくせに勝手に目標にしていた。原稿はワープロ、それを打ち出して直接版下に使う。写真はアミ分解しないといけないが、お金がないので、そんな委託に出せない。そのため透明な板に小さな穴が開いているものを買ってそれをコピーの時に写真の下に引いて無理矢理アミ分解しようとしたが、写真のクオリティは下がるだけだった。その三か月に一度の入稿日は、千葉にあった印刷所はシャッターに鍵をかけずにいてくれるので、夜中にシャッターを開けて店内で作業(コピーし放題なので助かる)をさせてもらい、明け方に入稿のメモを置いて、そのまま職場へ行った。当然いつも徹夜である。営業ではこの写真はコミケ。その前の10年間、「漫画の手帖」というミニコミをやって1回はコミケ売上1位なんという成績をあげたので、壁を背にした「壁サー」の地位を自動的に与えられ、楽をさせてもらったが、ジャンル違いのコミケにまで売りに行っていたのだ。なにしろ直売りは仕切りがないので助かるから。

4回のネタ探し…の中で、大物は1994年には片付き、それまで知らなかった隠れた大物のワークスに出会う。特に60年代から70年代にかけて全英トップ20ヒットを38曲も書いたTony Macaulayと、25曲書いたRoger Greenaway=Roger Cookに関しては、金の鉱脈を見つけたようなものだった。高揚感のあるキャッチーなメロディと、輝くハーモニー、素晴らしい曲が山ほど見つかるのにまったく他では無視状態だ。この頃は行きつけの下北沢のレコード店に週に何度も行っては片っ端から聴かせてもらってこれはというレコードを見つけては買っていた。二番煎じは絶対NGなので、影響力のある青山のレコード店には一切寄り付かず、渋谷系のレコード店もその影響下にあると判断し行かなかった。(※一時期、ソフト・ロック系を渋谷系などと言われた時期もあったが、渋谷界隈は常に避けていたのでアホなこと言うなと常に思っていた)既にRoger Nicholsは初歩であるSmall Circle Of Friendsをとうに離れ、それ以外に作曲したレコードを追うのが日常に。オールディーズ扱いだったTeddy Randazzo1964年から67年の作品はめくるめく転調と弓に矢をつがえて放つような「タメ」の華麗なプロデュースで大注目、Little Anthony & The ImperialsRoyalettesなどの素晴らしいアルバムがり再評価をスタートする。Barry Mannもそうだ。特に彼の場合は70年代の売れなかったソロアルバムを中心に評価したかった。彼の歌声が好きだったのだ。それ以上に強烈なインパクトがあったのは70年代のNeil Sedaka。オールディーズ歌手としてアメリカでお払い箱になった彼はイギリスに渡り、持ち前の作曲家のとしての才能を一気に開花させる。その実力に驚いた10CCThe Sectionがアルバムごとバックを担当し、イギリスでヒットが生まれてくる。そしてその中の「Laughter In The Rain」が全米でも1位になり一気に全米でも再ブレイク、大人気となる。これらはみな大物なのにレココレでは興味の対象外のようで特集など組まれず、もう日本の音楽マスコミを気にする必要は一切なくなった。Jimmy Webbにしても私が最も高く評価するのはまったく売れなかったがアルバム全部をコンセプトアルバムにした5th Dimension2ndThe Magic Garden』であり、曲ではGlen Campbell60年代の大ヒットや5th Dimensionの「Up Up And Away」。ところがレココレ等世間一般で評価され特集されるのはその後のシンガーソングライター時代で、私はこの時代は興味が持てない。他に世間一般との大きなギャップを感じたのはTerry SylvesterGraham Nash時代のHolliesが好き…これは多くの人と共通する。しかしGraham Nash脱退の後に加入したTerry Sylvesterの評価で、Holliesの中で彼が書いた曲はせいぜい3割くらいしかいいと思える曲はなかったが、ソロとして出したシングルなどを集めた『Terry Sylvester Complete Works 1969-1982』は、この頃のHolliesとは全く違うメロディアスな曲をハーモニーと共に甘いヴォーカルで歌い、極上の曲が並ぶ最高のアルバムだった。どっちがいいのかは私にとっては言うまでもないこと、ただ世間では私のような評価はこの頃は少数だった。

そしてほぼ無名、もしくは実力があって仕事しているのに知名度が無いミュージシャンを数多く発見したのは、この「ソフト・ロックA to Z」の中核のひとつになった。その代表格はRod McBrienだろう。彼が作ったワークスの中で最初の発見はSalt Water Taffyで、その親しみやすいサウンドとキャッチーな曲はVANDAで紹介するやすぐに人気盤になり、私はその中心人物と目されたRod McBrienのワークスを追い始め、その他の売れなかったが良質なシングルを探すコアな旅は、宝物の山だった。その他ではアメリカのセッション・シンガーで、作曲やプロデュースもできるRon Danteのソロ・ワークス。ArchiesCuff Linksのリード・ヴォーカルの成功は有名だが山のようなソロではヒットは生まれなかった。イギリスのセッション・シンガーはTony BurrowsTony MacaulayCookGreenawayはもちろん、John CarterArnoldMartinMorrowなどのブリティッシュ・ポップの中心人物の曲を数多く歌い多くのヒットを飛ばした。Edison LighthouseWhite PlainsFirst Classなどのリード・ヴォーカルが有名だ。しかし自分の名前を出しての数多くのソロ・シングルにヒットは無い。その他ではやはりヒットはないものの、クールで高度なサウンドとハーモニーで一気に注目されたFree Design。再評価の中でその中心人物のChris Dedrickのワークスまで人気を博した。イギリスのBrian Wilsonと呼ばれたTony Rivers60年代のHarmony Grassなどの華麗なハーモニーで一気に注目株になる。

そしてヒットを数多く生みながら、自作自演ではないポップ系グループと言う事でマニアックな取り上げ方を一切されないGary Lewis & The PlayboysClassics IVもセレクトして聴くと最高の曲をたっぷりと楽しめた。そしてそこには前者にはプロデュースにSnuff GarrettとアレンジャーのLeon Russell、後者にはJames Cobb & Buddy Buieという優れたミュージシャンが支えていたので、ハイ・クオリティだった事に気付かされる。

一部に批判を呼んだのは、既にヒットを多く生み、評価もされていたグループをカテゴリーに入れたことだ。例えばAssociationだが、「Never My Love」に触れずに、4thの『Birthday』を最高傑作に置くことで「ソフト・ロック」の狙いを理解してもらうことができる。超大物ながら日本ではまったく人気が出なかったFrankieValli & The Four Seasonsもしかり。Vee-Jay時代を外しPhillip時代、曲では「Dawn」や「I'm Gonna Change」、アルバムでは『Rag Doll』、そしてトータルではMotown時代をベストとすることで、日本で根強いオールディーズイメージを払拭できる。Neil Sedakaもそう。70年代のNeil Sedakaで統一し、オールディーズ時代の60年代は捨てて、元々優れたソングライターであるNeil Sedakaのさらなる進化した曲作りにクローズアップし、いかに70年代の彼が素晴らしいか、VANDA1冊を使って紹介した。Teddy Randazzoもオールディーズの歌手時代は一切無視、オールディーズ時代を払拭した1964年以降に絞って作曲家・プロデューサーとして絶賛だ。バンドでも転調を駆使したメロディ、高度なハーモニーを持ち、そしてビートもあるHolliesZombiesMoody Bluesは当然のごとくに入れた。しかし究極の理想の曲である「Hello Goodbye」や「Penny Lane」があっても、Beatlesをこのカテゴライズに入れるのは反発を恐れて外した。アルバム『Sell Out』を抱えるフーや、『Face To Face』からの一連のアルバムもあるキンクスは、曲的には十分なのに大物過ぎて外した。しかしBeach Boysに関しては本を最初に出した1996年では『Pet Sounds』や『Today』にまだ高い評価を得ていなかったという理由で、初版のみ入れてしまったことに選考基準に中途半端さが生まれたことは否めない。その中CD化が進みだしたLovin’ SpoonfulRascalsは中堅扱いなので入れていた。

このように色々な有名・無名・業界では有名ながら裏方扱いで一般では無名という異なるパターンのアーティストによるポップな曲の数々を、「ソフト・ロック」という言葉で呼んだ。これらをまとめたVANDA18号が瞬時に売り切れ、増刷をかけてもそれもすぐに品切れに。この状況を見ていた音楽之友社より単行本化の打診があり、VANDAとは別の単行本「ソフト・ロックA to Z」を1996年に出版できた。もうひとつの自分のライフワークであるビーチ・ボーイズに関しては翌1997年にシンコーミュージックより「The Beach Boys Complete」で単行本化。ともかく手抜き本を作って後世に後悔することのないようにという決意だったので、自分の椅子の後ろには布団をひいておいて、毎日、限界になるまで原稿を書いてそのまま倒れこむように寝ていた。まともな寝具で寝ない生活を続けると、当然体はボロボロになる。30代前半だからこなせた芸当だった。色々な本を作ってきたものの、その反響の大きさは「ソフト・ロックA to Z」にかなうものはなかった。それまでまったく無名のアーティストや、自作自演ではないポップ系ということで無視されていたバンドや、そのアーティストの曲を作ったプロの作曲家、プロデューサー、そしてアレンジャーへの再評価だったからだ。これらの登場人物は多くの音楽ファンには初耳だったはず。特にポップ系で多くのヒットを生み出していた作曲家やプロデューサーに、耳目を集めさせたのは本懐。日本ではロック至上主義が蔓延し、音楽評論家はポップ系を下に見る輩が多く、そういう人達にうんざりさせられていた。その中でポップ、特に商業ポップ重視の潮流を作れただけで個人的には大満足である。

「ソフト・ロックA to Z」は再販に再販を重ね、さらに3回の改訂版まで出る大ベスト・セラーとなり、日本だけでなく海外の多くのディストリビューターやリイシュー・メーカーが「参考書」代わりに入手していった。前にも書いたが、この本の初版にソフト・ロックの名盤として60数枚のアルバムを紹介したがこの時にCD化されていたのはたったの数枚。ところが現在ではCD化されていないアルバムが23枚残るだけみなCD化された。紹介当時はあまりに無名すぎ、CD化など考えられないなと思っていたアルバムも多かっただけに、振り返ってみると全世界的な再評価の流れを作れた。なお日本のレコード会社でもリイシューはあるが、気持ち的に語りたくないので一切無視させていただく。日本が一過性だったのには理由がある。①会社によっては担当者が一定数のハケを期待できない場合は躊躇しいつまでたっても出さない。②日本のリイシューメーカーからライセンス許諾の依頼があっても許可を躊躇して出さない③担当者が変わると、リイシュー専門家のような人がやってきて一連のリイシューの再発を提案し、リリースされる。同じものが何度も廉価盤になって出るのはその理由。そんな日本の状況など置き去りにして海外では怒涛のリイシューラッシュが始まった。

海外のレーベルでリイシューが始まった時、社長さんから手紙をいただいたのはイギリスのCherry Redと、アメリカのVarese Sarabandeだった。その中でもCherry Redが質・量ともに他のリイシュー・メーカーを圧倒し、アルバムとアルバム未収録シングルを入れるのは当たり前、さらに未発表曲まで入り、こういう良質なリイシュー・メーカーを動かしたのは、本を出した甲斐があったというもの。このCherry Redにはリイシューを受け持つRev-OlaNow SoundsRPMと3つのサブレーベルがあり、それぞれどれだけリイシューされたのか紹介しよう。まず「Rev-Ola」レーベルではPeppermint RainbowEternity’s ChildrenSundownersFun & GamesOctober CountryGordian Knot、そして複数のアルバムがあるアーティストではTommy Roeは「It’s Now Winter’s Day+Phantasy」、Tokensは「Intercourse」、Fifth Dimensionは「The Magic Garden」、Don & The Goodtimesは「So Good」と最重要盤をチョイス、さらにRoger Nichols &Small Circle Of FriendsMillenniumBallroomSagittariusInnocenceTradewindsなどの定番を押さえた。加えて企画ものでTokensが作ったレーベルのB.T.Puppy StoryWhite Whale レーベルStoryなど超マニアックなオムニバスをリリースする充実ぶり。そして「Now Sounds」レーベルも凄い。Mark EricTwin ConnexionHoly MackeralCrittersKappProject3の両レーベルをそれぞれコンプリート、Gary LewisJack Nitzscheプロデュースの「Listen」をStereo&Mono仕様、Association14枚目までMonoでリイシュー、ParadeNew WaveSugar ShoppeCowsills1st3rdPaul Williamsは「Someday Man」がチョイスされた。そして残るRPMレーベルは後述するTeddy RandazzoのワークスであるRoyalettesと、Tony RiversHarmony GrassCastawaysをリリースというもう筆舌に尽くしがたい充実したラインナップだった。当初ソフト・ロック系に熱心でアメリカで牽引役だったVarese Sarabandeは、70年代のNeil SedakaRocketレーベルのアルバム3枚のCD化や、セッション・シンガーのTony Burrowsのワークス物、そして初期の「Sunshine Days」のコンピにはまさにA to Zからの曲をセレクトしていた。

大手が自社ものを出すのは当たり前なので大手レーベルを除外するとして、その他のリイシュー・メーカーではマニアックな内容で他をリードしたイギリスのCastleSanctuaryレーベルも特筆したい。なんといっても全英20ヒットを38曲も書いたというイギリスでトップの実績がありながらVANDA以外誰も注目しなかった作曲兼プロデューサーのTony Macaulay(共作のJohn Macleod含む)のワークスを集めた「Buttercups & Rainbows」という夢のようなコンピを始め、PickettywitchPaper DollsJeffersonFlying MachineLong John BaldryなどTony Macaulayが作曲したワークスを集中してリリースしてくれた。アメリカのSundazedは、伝統的に強いBruce & TerryRip ChordsそしてJan&Deanの「Save For A Rainy Day」というコアな部分をしっかり押さえつつ、Yellow BalloonWendy & Bonnieに加えBuckinghamsCyrkleの全アルバムをリリースした。そしてZombiesの全曲+未発表曲集『Zombie Heaven』のボックスを作り出したBig Beatは、そこのボックス以外のリイシューでZombiesのシングル、モノ、ステレオとあらゆる仕様で出し無敵状態。このBig BeatAceの傘下であり、Aceは昔、Frankie Valli & The Four Seasonsを一手にリリース、シングルオンリーまできちんとカバーしてくれていた。なにしろFour Seasonsの扱いは海外でも軽く、Ace だけが救いの神だったと言えよう。TaragonGary Lewis & The Playboys2イン1や、ベスト盤のClassics IVFoundationsFortunesとそこそこ出しつつSpiral StarecaseComplete Recordingsという快挙を達成する。BGOBeat Goes On)は数少ないながら最重要なCD2イン1でリリースしていて、Neil Sedaka70年にイギリスに渡ってから10CCThe Sectionをバックに従えながら再ブレイクを果たすまでのUK時代の4枚と、あとは1964年~67年、作曲家兼プロデューサーとして無敵だったTeddy Randazzoの最重要ワークスのLittle Anthony & The Imperialsのアルバム4枚をしっかりリリースしてくれた。大手傘下ながらマニアックな仕事では前述メイカー以上ともいえるクオリティを誇るのがまずUniversal傘下のHip-O-SelectFrankie Valli & The Four Seasonsの中でも最も好きなのに最も売れなかったMotown時代の全音源を未発表音源まで入れて「The Motown Years」としてリリース、さらにSpanky & Our Gang3枚のスタジオアルバムだけでなくライブやベスト盤、さらにデビューシングルまで入れた「The Complete Mercury Recordings」という誇るべき作品集があり、Frankie Valli & The Four Seasons を始め超豪華なミュージシャンによるオムニバス盤「And This World War Ⅱ」もここが出していた。Warner傘下のRhino HandmadeMonkeesのボックスものリイシューで知られているがMonkeesをソフト・ロックの中には入れていなかったため、それ以外となるとJan & Deanの幻の「Carnival Of Sound」や、CDではないがTV全話をDVD化してくれたThe Bugaloosは最高の贈りものだった。(日本のものは紹介しないと書いたが、Vivid SoundはライセンスをとってBugaloosのアルバムと、Heaven Bound with Tony ScottiのアルバムをCD化しており、これは特筆しておこう)。あとNeon Philharmonic OrchestraComplete Recordingsもある。アメリカのCollectableは解説もなく資料軽視の作りのCDも多いが、特筆すべきワークスは何と言ってもAndy Williamsの全アルバムのリリースと、Gary Lewis & The Playboys2イン13イン1を出し、Sunraysに関しては全曲+未発表デモに詳細な解説入りというという究極のBoxを出してくれた。フランスにはMagicがある。Tokensの愛弟子のHappeningは師匠以上の洗練されたサウンドでヒットを生み、アルバムはMagicからリイシューされた。このMagicはユニークなCDを作るメイカーとして知られていて、HolliesのコンピではこのMagicCDでないと聴けない貴重なライブ音源が入ったものが複数あるほどだ。そしてC5というレーベルでは、Marmaladeの『Falling Apart At The Seams Plus』がある。このアルバムにはタイトル曲を始めTony Macaulay作の最もキャッチーで、最もハーモニーの効いた軽快なポップナンバーが4曲も入っていて最高の1枚と言えよう。現在でもこのディスクでしか聴けない。また70年代のポップ・ロック・バンド、Pilotのアルバムも、真っ先にCD化していた。サイケ系ではAlan LorberのワークスのOrpheusChameleon ChurchAkarmaから、Rod McBrienのワークスでもあるAstral ProjectionCurt Boettcher関係のBards、そしてOxfordsGear Fabというメーカーから地味にリリースされた。その他では再々リイシューくらいのタイミングで出だしは遅かったがFree Design関係の全リリースを行ったLight In The Atticというレーベルがあり、他ではHoney LTDもリイシューしていたが、ここの社長さんも何度も手紙をくれ熱心なレーベルだった。韓国のBig PinkではRod McBrienGooglesや、CreamレーベルのCollage(※日本ではSmashレーベルの同名グループのCDが出ているが内容は劣り、本で取り上げるレベルではないので外した)そしてInner Dialogueという渋いところをリリースし、日本のVivid Soundが独占的に帯解説を付けて日本盤の用に販売していた。あとこのソフト・ロックのリイシュー・ムーブメントとは関係のないリイシューだが、特筆しておきたいのはBear Familyで、Neil SadakaRCA時代の全音源集『Oh Carol』は、全曲+未発表曲集に止まらず例えば外国語ヴァージョンだけでもイタリア語から始まって日本語の未発表、ヘブライ語に至るまで全てを網羅、レコーディング日までわかり、CD8枚組という究極のリイシューBOXを出してくれた。海外のリイシューレーベルは本当に底知れぬ力がある。

ここに列挙した以外でもドイツのRepertoireは古くはEdison LighthouseのベストCDTurtlesの全CDをリリースするなどの有力なリイシュー・メーカーがゴロゴロしていて次々発掘されていくのに、日本では許可が出ず、リイシュー・メーカー自体数少なく、リイシューも同じものばかり廉価盤、紙ジャケと姿を変えるだけでのリリースしかないのは残念なことだ。ただし、日本ではRolling StonesPaul McCartneyWhoSmall FacesBrian WilsonHolliesといった超大物に関しては、「日本のみのボーナストラック」「日本のみ収録可の音源」を入れてのリリースになるので、こと大物に関しては海外よりも恵まれていることも付け加えておこう。(佐野邦彦)

ブライアン・ウィルソン『ペット・サウンズ』 50周年アニバーサリー・ジャパン・ツアー

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ペット・サウンズ50周年アニバーサリー・ツアーの一環である今回のジャパン・ツアー、筆者は13日の公演のみ参加してきた。

メンバーとセットリストについては下記を参照して欲しい。
基本的には来日前のニュージーランド・オークランドやオーストラリア・シドニーでのセットリストを踏襲しているが、初日である12日のSet 1で「Honkin' Down the Highway」が「Then I Kissed Her」に差し替えられ、2日目の13日には「Honkin' Down the Highway」に戻った。リード・ヴォーカルは共にアル・ジャーディン。
また13日には「Little Deuce Coupe」のあとに「Little Honda」が追加されている。 過去含めブライアンの来日公演の全て参加していないため、細かい比較を含んだレポートは避けるが、今回の東京初日に参加しこの日同行した友人の感想から、パフォーマンス、PAのバランス共に2日目に軍配に上がるとのこと。
なおセットリストのリード・ヴォーカルの注記がない曲では、ブライアンが出せない高域の多くを、アルの息子であるマットが受け持っていた。このようにジャーディン親子の貢献度は非常に高く、今回のツアーの大きな特色になっている。
当然アルがリードを取る曲がフューチャーされており、Set 1では『Friends』収録の「Wake the World」なんて地味ながら味わい深い選曲がされていてマニア心を擽った。
それとブロンディ・チャップリンの参加にも触れずにはいられない。 Set 1の「Wild Honey」から登場し、その後「Funky Pretty」~「Sail On, Sailor」とステージ狭しと動き回る彼の独断場と化していた。
50周年を迎えた『ペット・サウンズ』を再現するという趣旨から言えば、アンサンブルを構築する上でバンマスのポール・マーテンズやマルチ・プレイヤーのプロビン・グレゴリーなど職人ミュージシャンが重宝される中、ブロンディのようなやんちゃな(65歳間近だが)ミュージシャンが一部に参加したことで、バンドにスパイスを与えていたのかも知れない。
その後もメインであるSet 2の「Pet Sounds」では突然タンバリンを持って現れ、ダンスをしながら寡黙に演奏するメンバーに茶々を入れ、アンコールへの起爆剤としての役割も担っていたに違いない。
 再現という点では前回の「Pet Sounds Tour Japan 2002」の構築力には及ばないと感じつつも、ブライアン・ウィルソンとビーチ・ボーイズを愛するファンにとっては、素晴らしいエンターテイメントだったと感じさせる公演だった。 

●メンバー
ブライアン・ウィルソン/Brian Wilson : Vocals, Keyboards
ポール・マーテンズ/Paul Mertens : Music Director, Baritone sax, Tenor sax, Flute, Alto Flute, Clarinet, Harmonica, Bass Harmonica, Vocals
アル・ジャーディン/Al Jardine : Guitars, Vocals
ブロンディ・チャップリン/Blondie Chaplin : Guitar, Vocals, Tambourine
ダリアン・サハナジャ/Darian Sahanaja : Keyboards, Vocals, Vibraphone
ゲイリー・グリフィン/Gary Griffin : Keyboards, Vibraphone, Vocals
マイク・ダミコ/Mike D’Amico : Drums
ネルソン・ブラッグ/Nelson Bragg : Percussion, Vocals
ニック・ワルスコ/Nick Walusko : Guitar, Vocals
プロビン・グレゴリー/Probyn Gregory : Guitar, Keyboards, Trumpet, French horn, Trombone, Tannerin, Vocals
ボブ・リジック/Bob Lizik : Bass
マット・ジャーディン/Matt Jardine : Vocals, Percussion


2016年4月12日(火)東京国際フォーラム ホールA

●Set 1: Greatest Hits & Rare Cuts
Our Prayer
Heroes and Villains
California Girls
Dance, Dance, Dance
I Get Around Shut Down
 (Lead vocals by Al Jardine)
Little Deuce Coupe
 (Lead vocals by Al Jardine)
In My Room
Play Video
Surfer Girl
Don't Worry Baby
 (Lead vocals by Matt Jardine)
Wake the World
 (Lead vocals by Al Jardine)
Add Some Music to Your Day
Then I Kissed Her
 (Lead vocals by Al Jardine)
Darlin'
 (Lead vocals by Darian Sahanaja)
One Kind of Love
Wild Honey
 (Lead vocals & guitar jam by Blondie Chaplin)
Funky Pretty
 (Lead vocals by Blondie Chaplin and more)
Sail On, Sailor
 (Lead vocals by Blondie Chaplin)

●Set 2: Pet Sounds
Wouldn't It Be Nice
  (Lead vocals by Matt Jardine)
You Still Believe in Me
  (Lead vocals by Brian Wilson and Matt Jardine)
That's Not Me
 (Lead vocals by Brian Wilson and Matt Jardine)
Don't Talk (Put Your Head on My Shoulder)
I'm Waiting for the Day
Let's Go Away for Awhile
Sloop John B
 (Lead vocals by Al Jardine)
God Only Knows
I Know There's an Answer
 (Lead vocals by Brian Wilson and Al Jardine)
Here Today
I Just Wasn't Made for These Times
 (Lead vocals by Brian Wilson and more )
Pet Sounds
Caroline, No

●Encore
Good Vibrations
All Summer Long
Help Me, Rhonda
 (Lead vocals by Al Jardine)
Barbara Ann
Surfin' U.S.A.
Fun, Fun, Fun
Love and Mercy


2016年4月13日(水)東京国際フォーラム ホールA

●Set 1: Greatest Hits & Rare Cuts
Our Prayer
Heroes and Villains
California Girls
Dance, Dance, Dance
I Get Around Shut Down
 (Lead vocals by Al Jardine)
Little Deuce Coupe
 (Lead vocals by Al Jardine)
Little Honda
 (Lead vocals by Brian Wilson and Al Jardine)
In My Room
Play Video
Surfer Girl
Don't Worry Baby
 (Lead vocals by Matt Jardine)
Wake the World
 (Lead vocals by Al Jardine)
Add Some Music to Your Day
Honkin' Down the Highway
 (Lead vocals by Al Jardine)
Darlin'
 (Lead vocals by Darian Sahanaja)
One Kind of Love
Wild Honey
 (Lead vocals & guitar jam by Blondie Chaplin)
Funky Pretty
 (Lead vocals by Blondie Chaplin and more)
Sail On, Sailor
 (Lead vocals by Blondie Chaplin)

●Set 2: Pet Sounds
Wouldn't It Be Nice
 (Lead vocals by Matt Jardine)
You Still Believe in Me
 (Lead vocals by Brian Wilson and Matt Jardine)
That's Not Me
 (Lead vocals by Brian Wilson and Matt Jardine)
Don't Talk (Put Your Head on My Shoulder)
I'm Waiting for the Day
Let's Go Away for Awhile
Sloop John B
 (Lead vocals by Al Jardine)
God Only Knows
I Know There's an Answer
 (Lead vocals by Brian Wilson and Al Jardine)
Here Today
I Just Wasn't Made for These Times
 (Lead vocals by Brian Wilson and more )
Pet Sounds
Caroline, No

●Encore
Good Vibrations
All Summer Long
Help Me, Rhonda
 (Lead vocals by Al Jardine)
Barbara Ann
Surfin' U.S.A.
Fun, Fun, Fun
Love and Mercy

(ウチタカヒデ、協力:でにす松本)

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